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「それでも貴方を愛しているから…全97話完+α」
第三章 暗転…目に見えないもの、希求する魂

それでも貴方を愛しているから044

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 「…で、道明寺からも距離を置くってことで、同意したっていうか」
 微妙な空気が横たわり、誰も言葉を発せずにいる。
 あたしはあたしで、ずっと心の底でわだかまっていた想いを吐きだし、ドッと疲労を感じていた。
 桜子が仕方なさそうに、フッと息を吐く。
 「きっと、道明寺さんは納得しているわけではないと思いますよ」
 「…そうかな」
 「先輩は納得してるんですか?」
 納得も何も、元々言いだしたのはあたしだ。
 ただ、道明寺からも同意の…同意らしい返事を聞いて、嬉しいどころか胸を隙間風が吹き抜けるような空虚さに塞がれてしまったように感じた。
 追いかけられたら逃げたくなるのに、引かれてしまうとそれがまた苦しいなんて…どこまであたしは我儘なんだ。
 何も答えないあたしに、桜子がお茶のお代りを注いでくれた。
 「英徳の赤札の噂は聞いたことあったけど、そんなことまでされてたなんて…」
 暗い声に、あたしが顔を上げると、片肘をついて紅茶のカップを覗き込んでいた滋さんが、カチンとソーサーを指先で弾いた。
 滋さんの顔は、彼女らしからぬ頼りなげな表情が浮かんでいて、彼女がかなりショックを受けていることを物語っていた。
 そりゃそうか…滋さん、道明寺のことが好きだったんだもんね。
 いくら好きだったとはいえ、平気で陰湿な弱い者いじめをしたり、女を腹いせで集団レイプさせようとしたことがあるなんて聞いて、ショックじゃないはずがない。
 あたしだって、あの頃の道明寺は本当に最低だったと思うし。
 「司、そんなにひどかったんだ?」
 その問いかけに、なんとも答えようがなくて、桜子や優紀と顔を見合わせる。
 「滋さんは知りませんからね。本当に荒れていた頃の道明寺さん」
 初めてF4を…道明寺を見かけた時のことを思いだす。
 通りすがりに肩が触れただけ…それだけで街のチンピラよろしく相手を殴り倒したアイツの目は昏く淀んでいた。
 見かけばかりはそこらへんのアイドルにも負けない容姿をしていながら、生ゴミにも劣る性根だと一目で敬遠した。
 放射するオーラが雰囲気が、絶対に関わってはいけない人種だと、あたしの本能に訴えたというのに。
 …人生って本当にわからない。
 クスリと自嘲の笑みが洩れる。
 でも、そうしてイレギュラー中のイレギュラーな出会いを果たして、こんな誰もが想像しえない関係になって…結局、こんな風に特にこれといった原因もないまま、簡単に別れてしまうかもしれないなんて、ね。
 「…原因はありますよ。それも凄い原因が」
 桜子の言葉に、またも独り言を垂れ流しにしていた事実に気が付くけど、今更だし、どうでもいい。
 「昨日、あたしもつくしから…そのイロイロ聞いて、カウンセラーに相談した方がいいって話したんです」
 桜子や滋さんにはあたし自身が、そして道明寺を含んだF4には優紀たちが、あたしの今の心情を話して、これからのことを話し合う。
 そんなことを相談しあったのだと優紀が言って、桜子が大きく頷いた。
 「そうですね、私もそれがいいと思います。先輩と道明寺さんじゃ、まともに話し合いになる前に言いあいになって、なおさら拗れるのがオチですよ。まずは、私たちでF3にお話して、F3から改めて話していただくのがベストだと思います」
 優紀と滋さんが大きく頷く。
 本当のことを言えば、こんなごく微妙な経験を他人…特に男性に知られることには抵抗がある。
 F3とはいえ、というか、彼らだからこそというべきなのかもしれないけれど、あの時の気持ちやそれからの苦しみをあたしは本当は知られたくなかった。
 苦しみ…といったって、ずっと意識してきたわけじゃない。
 だけど、こうして改めて自覚してみると、あの頃の経験はあたしのまだ20年そこそこの人生でも特に悲惨で、トンデモナイ経験だったことを実感する。
 いくら鈍いあたしだとはいえ、何も感じてないわけじゃないんだなあ。
 なんて、他人事みたいに。
 滋さんが迷ったようにあたしを見て、またカップに視線を落とし、再度あたしを見た。
 「ねえ、…つくしは大丈夫なの?」
 「え?」
 「司に…話すのは当然のことだと思うよ。でも、それってなんの為?」
 何のため?
 滋さんの言いたいことがわからない。
 「滋さん、それってどういう意味です?」
 桜子が逆に問い返す。
 でも問い返した桜子は実は滋さんが何を言いたいのかわかっていたのだと思う。
 チラッとあたしを見て、困った様に微笑んだからだ。
 「司のしたこと、F3が加担したこと、本当に酷いと思う。女として、親友として、そんなことされたつくしの為に怒髪天をつく思いだけどさ、つくし自身は司を赦したいの?」
 あたしは目を見開く。
 桜子が滋さんに頷き、後を引き継ぐ。
 「…きっかけは確かに、そのお気の毒な女性への暴行事件だったと思いますけど、なんだかんだで先輩と道明寺さんがこんなに長い年月、プラトニックな関係に終始していた理由もそこらへんにあるのかもしれません」
 「それって」
 「男性そのものに対する恐怖心と拒絶感、それに道明寺さんへの憤りと…憎悪です」
 「…憎悪って桜子」
 「憎悪ですよ、滋さん。愛してたって、憎むことはできます。愛してるからこそ、許せないということもありますけれど」
 コツンと胸の中に、冷たい氷が滑り落ちてゆく。
 いつも悪夢の最後に出てくる道明寺は、氷のような冷たい昏い目をして、あの男…加納浩輔と同じ表情をしていた。
 自分に屈服し、怖れる相手に対する愉悦。
 自分の絶対的優位を愉しんでいた。
 …それは、道明寺の家庭環境が孤独だったからとか、愛情を知らなかったからとか、そんなことは理由にならない。
 自分が苦しいからと言って他人を傷つけていいなんてころはないのだ。
 あの世界で…英徳で、道明寺は冷酷非道で絶対的な権力者として君臨していたのだから。
 「つくし…加害者である司と付き合い続けることができる?今更かもしれないけど、司と付き合い続けるということは、司の罪と常に向い合っていくってことなんじゃないかな」
 ハッと滋さんの顔を見返す。
 「もし…もし、司を赦すことができないなら、司といることで苦しむことしかできないのなら、お互いの為に…別れるということも選択肢の一つなのかもしれない、よね」
 言いにくそうに紡がれる滋さんの言葉。
 滋さんの言葉は、あたしがずっと心の奥底で考えていたことを形にしたようで、何も言葉を返すことができなかった。
 道明寺を赦せるのか…そして、すべてに蓋をして付き合い、愛し続けていけるのか。
 あるいは…。
 結局、どちらにしろ終着点はここに戻る。

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