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「それでも貴方を愛しているから…全97話完+α」
第三章 暗転…目に見えないもの、希求する魂

それでも貴方を愛しているから042

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 「……」
 無言で睨みつけるあたしを、ニヤニヤ笑いで見返す加納浩輔の余裕がわからない。
 思い起こしてみれば、あたしをあの『牧野つくし』だと認識してからのこの男の態度はいつもこうだった。
 優越感と愉悦…そして底冷えする真っ黒な何か。
 この男はどうしてあたしに近づいてくるのだろうか。
 どうしてこんな顔で、あきらかに歓迎していない女に何かと関わってくるの?
 そして…その嗜虐性を含んだギラギラとした目を見ているうちに、唐突に、思い当たった。
 ああ、そうなんだ。
 きっと、そうに違いない。
 この男はあたしが、自分を疎んじているのを知っている。
 元々態度にも表れていただろうし、何度か言葉にしても加納浩輔自身があたしに問い掛けてきていた。
 ましてや、こうしてあたしが高校生の時に集団レイプし損ねた被害者だと気が付いたなら、あたしが自分に対してどう思っているかなんてどんなバカだって自明の理だろう。
 なのに、こうして近づいてくる意図は。
 加納浩輔は、背後に立つ大学病院の巨大な建物を見上げ、まるで窓の向こうに見える病室を透かし見るようにして仰ぎ見た。
 「ん~、誰のお見舞い?友達?親戚??まさか、恋人ってことはないよね?」
 揶揄るようにあたしに戻した視線は、いったい何が言いたいと言うのか。
 無言で脇を通り過ぎようとして無視したあたしの腕を、加納浩輔が握って引き留めた。
 「離してっ!」
 「そんな風に逃げなくてもいいんじゃない?同じゼミの仲間でしょ?」
 あたしの嫌悪感を煽るように、わざと顔を近づけ、クッと傲慢な笑みを浮かべる。
 「用があるなら、さっさと話しなさいよっ」
 「用?別に用なんてないけど。なに意識してんの?あんた、毛を逆撫でたネコみてぇ。それとも…猫に襲われたネズミの方か?」
 ククククと自分が言った言葉に、自分で受けて、含み笑いを洩らす。 
 ネズミ…先ほどのひらめきを後押しするような言葉に、ぶわっとした黒い憎しみが沸き起こる。
 この男の意図?!そんなものはありはしない。
 そうだ。
 この男はあたしの恐怖を愉しんでいる!
 「こんなところで立ち話もなんだからさ、ちょっとお茶しない?」
 「お断りよ、あんたと話す話なんかない」
 「…へえ?それが君の地なんだ?高校生の時と違って嫌に大人しやかだから、どうしたのかと思ってたけど、開き直ったわけ?俺のこと…怖いんだろ?」
 もはや確信だった。
 人の中には、他人の苦痛や恥辱、哀しみを喜ぶ最低のヤツがいる。
 この男がどの程度そのことを自覚しているかはわからないけれど、少なくても今この時、あたしがこの男に対して感じている嫌悪感…その根底からくる恐怖心を面白がっていた。
 かつで道明寺の命令によって他人に対する虐待行為を実行していたのがこの男たちなのだろうけれど、その中には多分にこの男自身の愉しみも含まれていたに違いない。
 それがこの男の元々の性質なのか、それとも道明寺に阿るうちに生まれた性情なのかはわからない。
 でも、少なくてもこの男があたしに寄せる関心…それは、あたしがこの男を無視しえないからこその態度だったんだ。
 「…あんたなんか怖くないわ」
 「そう?じゃあ、なんでそんなに俺を睨むわけ?震えて顔色なんて真っ青になっちゃって、なんだか可哀想なくらいだよ?」
 ああ、俺のせいだっけ?
 調子にのった男の指先があたしの頬へと伸ばされる。
 冗談じゃないっ!
 バッ!
 伸ばされた手を邪険にはたき落とし、肉薄していた体を思いっきり突き飛ばした。
 「うわっ!」
 道明寺ばりの大男だったら無理だっただろうけれど、それでも相手は男。
 油断していなければできないことだったが、あたしが力技に訴えてくるとは思わなかったのだろう、突然の行動にたたらを踏んでよろめき、尻餅をつきかける。
 「…てめぇ、何をするっ!」
 「女の顔に勝手に触れようとするからよっ。痴漢だって言って、騒ぎ立ててもいいのよっ」
 外来の終わった大病院の午後。
 エントランス前とはいえ、人影はほとんど見えない。
 だが、さすがに世間体は気になったようで、あたしの恫喝に加納浩輔は落ち着きなくキョロキョロと周囲を伺った。
 もっとも、疎らな人影も距離があるせいか、特にこちらを誰も注視していない。
 それに力を得たらしく、青くなり真っ赤になった顔が憤怒にかわり、さっきまでの余裕が嘘のように喰いついてくる。
 「相変わらず、生意気な女だなっ!たかだが、西門さんの遊び女の一人のくせにお高くとまってんじゃねっーよ。何様のつもりだ!?」
 「何様?それはあんたのことでしょ?何様も何も、あたしはあたし。何様でもなければ、西門さんとはただの友達!あんたに、そんな言い方される筋合いはないわよっ」
 得体のしれない恐怖感は、拭いさられていた。
 この男の意図さえ知れれば、負けるあたしじゃない。
 こういう輩は弱味を見せれば、とたんに傘にきて助長する。
 そしてさらに図にのって、他人の尊厳を踏みにじることも躊躇しない。
 本当にあの頃のプチ道明寺ってところ?
 この男は、あれから何年もたって、英徳から世間を知っても変わり映えしなかったのか。
 「ハッ。西門さんの女だからそうやって虚勢張ってられるんだろ?バッカじゃねぇーの?あの人がたがだか遊び女の一人や二人に、肩持ってくれると思ってるのかよ?俺が怖いんだったら、大人しく怯えてればいいんだよっ。いい気になりやがって、こっちこいつーたら、こっちこいっ!」
 逆上して本性を晒した醜い男が立ち上がって逼迫しようとする気配に、あたしは一歩後退った。
 いい気になってるのはお前だっつーのっ!
 あたしに手をかけてきたら、そのまま回し蹴りするつもりで覚悟を決める。
 公衆の面前だろうが、構うもんか。
 「先輩っ!?」
 鋭い声が、あたしの胸ぐらを掴もうとしていた加納浩輔の手を留めた。
 一瞬、加納浩輔は強張った顔を駆け寄ってくる桜子へと向け、チッと舌打ちをして身を翻す。
 「…憶えてろ」
 負け犬の遠吠えというのは古今東西問わず、いつでもこういう輩の定番の捨て台詞なんだろうか。
 誰が憶えてるかつーのっ!
 「先輩っ!?」
 「…桜子」
 ハアハア言いながら、走り寄ってきた桜子が険しい視線を走り去ってゆく加納浩輔へと向け、次いであたしを見詰める。
 「いったい何が?!」
 「とりあえず、助かったわ。詳しい話は後でするから。もう用事は終わった?」
 あたしは知らず知らず詰めていた息を吐きだし、ホッと強張っていた両肩を下ろした。

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