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「それでも貴方を愛しているから…全97話完+α」
第三章 暗転…目に見えないもの、希求する魂

それでも貴方を愛しているから041

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 何がどうなって、こんなことになったんだろうか。
 ちょうど道明寺の様子を見に来た看護師さんが医師の診察を告げたのを期に、あたしは病室を退室した。
 自分で何を言って、どうやって病室を出たのかロクに記憶にない。
 ただ、道明寺のNY転勤の話と別れ際に奴が呟いた『俺たちは互いに幻想を抱きすぎていた。離れていたからこそ上手くいっていた』という言葉ばかりが頭の中をグルグルと回って、吐き気さえした。 
 当たり前だ。
 そう冷静な思考が、ショックを受けている自分を嘲笑う。
 あんな態度をとり続けて、和解しようとする道明寺を突っぱねて、何も言わないで無視し続けたあたしに道明寺が愛想をつかせても仕方がない。
 そもそも別れることさえ考えていたあたしが、何をいまさら当然の結果に驚愕し、狼狽えているのか。
 道明寺が倒れたという報を受けて、この病院を訪れた時とはまったく別の衝撃があたしの頭を麻痺させ、凍える寒さに身を打ち震えさせた。
 嫌だ。嫌だよ、道明寺。
 …これで、楽になれる。もう思い悩むことなんてない。
 なんで、どうして?あんたがあたしの手を離すと言うの?
 …もうどうなってもいい。疲れた。
 相反する思いが、脳裏を空転し、滲む汗が涙なんだかよくわからない。
 視界が歪む。
 「…先輩?どうしたんですか」
 心配そうな怪訝な声がかけたられ、あたしは寄りかかっていた壁から身をもぎ離し、ノロノロと顔をあげた。
 「先輩、その顔色…」
 目を見開く桜子に、必死で唇の端をあげ、何気なさを装う。
 もちろん、そんなことしたって聡い桜子に見透かされないはずはなかったけれど、今自分が衝撃を受けていることを指摘されるのは何よりも嫌だった。
 今さら何を虚勢を張るのか、自分で自分がおかしいもいいところだったけれど、今は誰にも何も言われたくない。
 「えっと、これから道明寺、お医者さんの診察なんだって。意外に…元気そうって言ってもいいのかわからないけど、大丈夫そうだったよ」
 しっかりしろ!あたし。
 震える声を懸命に叱咤するあたしを、険しい視線で見つめる桜子は何を思ったのか、一つ頷き、そっと背に手を当て、ラウンジの方へと誘導してくれる。
 「…少し、休みましょうか。大したものはありませんけど、何か飲み物でも飲みます?」
 「さっきあんたが買ってくれたスポーツドリンクがあるからいいよ、ありがとう」
 「いいえ。今日はいろいろありましたからね。先輩も疲れたんじゃありませんか?」
 いろいろ…桜子はもちろん、あたしの身の上に降りかかった昨夜や今朝のことは知らないから、単純に道明寺が倒れたことを聞いて驚いた、ということだけを言っているんだろうけど、でも、たぶんそれこそいろいろ察しているんだろうな。
 でも、私の気持ちを理解して何も言わないでくれる。
 意地っ張りで、無駄に強情なあたしの自尊心を壊さないように、と。
 何のためのやせ我慢なんだろうね。
 本当は泣きわめきたいのに、冷静さを装って。
 いったい、あたしは何がしたいんだろう。
 その泣きわめきたい理由さえも、自分でわからないくせに。
 「…あたし、帰ってもいいかな?」
 「え?」
 「道明寺…の顔は見たし、あたしがここにいても何もできないだろしね」
 桜子の真っ直ぐな眼差しが見れずに、あたしは視線を反らした。
 ジッとあたしにあてられた視線を感じながら、ぼんやりとそのまま窓の外を眺める。
 白く灰色に濁った空が、なんだか、今のあたしの心の心象のままだと思うのはきっとおあたしの傲慢なんだろう。
 世界はあたしや道明寺に関係なく、不変に存在し、普通に動き続ける。
 大きく息を吐いた気配に、あたしが振り向くと、桜子が優しく微笑んだ。
 「いいですよ、帰りましょう。帰りはF4の誰かに同乗させてもらおうと思っていたので車を帰しちゃいましたから、タクシー呼びましょうか?」
 「え?いや…あたし一人で帰るから」
 「ダメですよ。そんな顔した先輩を一人になんかできません。先輩もきっと、後で一人じゃなくって良かったって思えますよ」
 「桜子…」
 「気持ちが辛い時には人って確かに一人でいたがりますけど、大概本当に一人でいてよいことなんてほとんどありません。…先輩じゃありませんけど、人は一人じゃ生きられない生き物なんですからね」
 ぼんやりと見つめ返す桜子がなんだか滲んでる。
 目を瞬かせて、俯くと、あたしはスンと鼻を鳴らした。
 「…桜子の毒舌聞いてたら確かに、しょんぼりしてらんないかな」
 「その調子ですよ。それに先輩にはいろいろとうかがわなければならないことがあるでしょ?」
 「そう、だね。滋さんも後で来てくれるかな」
 「ええ。連絡しておきますよ。男性陣はいない方がいいですよね?」
 何を察しているのか、桜子の気遣いにうん、と小さく頷く。
 「とりあえず、せっかく来たので道明寺さんのお顔だけ拝見してきます。ここで待っていてくださいますか?」
 「あ、外で待っていていいかな?ちょっと、新鮮な空気が吸いたい…かな」
 この季節らしからぬ生温かな空気の中では、なんだかシャンとできない気がして、こんな時には冷たい刺すような空気に身を晒して、気を引き締めたい。
 寒さで頬が真っ赤に火照るような冷たさは、鎮痛剤のような効果で、この妙に悲劇のヒロインチックな気分に陥ったあたしの頭を冷やしてくれるに違いないから。
 言う傍から、相変わらずもの好きなんだから、と桜子にズケズケと言われ、クスリと笑みが洩れる。
 ほら、もう心が慰められている。
 「わかりました。じゃあ、ついでに先に帰ること、花沢さんたちにも連絡しておきますよ。タクシーを呼んだら連絡しますから、携帯、ちゃんと電源いれておいてくださいね」
 言われて、ハッと懐を探る。
 よ、よかった、充電切れてない。
 電源もとりあえず入っているし、マナーモードにもなってない。
 って、逆に病院じゃあ拙かったか。
 そういえば、F3や滋さん、和也君たちから電話貰ってたのに、返事も返してないな、と思いながら、桜子の気遣いに感謝しつつ頷く。
 とりあえず、桜子が連絡してくれるというんだし、桜子を待ちがてらメールを入れておこうかな。
 忙しい中、あたしまで電話したんじゃあ、かえって申し訳ないだろうし。
 踵を返しながら、あたしは、もう一度だけ今きた廊下…道明寺の病室を透かし見るように振り返り、そっと唇を噛みしめた。



 外に出ると、途端に凍えるような風が吹きすさび、あたしの顔や素肌の手足を氷りつかせる。
 とりあえず日光を求めて周囲を見回すけど、こんな天気じゃあ、どこだって同じ。
 雨はまあ、降る感じじゃないんだけどね。
 仕方なしに、近くの自販機で暖を取るためだけに缶コーヒーを買い、コートのポケットに忍ばせる。
 これが案外馬鹿に出来ない。
 ホッとする温かさに、強張っていた頬が緩む。
 あ~あ、あたしって単純だなあ。 
 こんなことでも小さな幸せを感じちゃうなんて。
 さっきまで、乙女チックな哀しみに打ちひしがれていたはずなのに、こんな些細なことで慰められちゃうなんて。
 …まあ、それ以前に、桜子の気遣いが心に温もりを取り戻してくれたのが大きいのはもちろんなのだけれど。
 とりあえず、どこかに座るかと、キョロキョロと視線を走らせ、ギクリと体が強張った。
 エントランス脇、柱の陰に立つ男が、あたしの視線に答えて前へ出る。
 「…遅かったね。お見舞いにしては早かったのかな?」
 ニヤニヤ笑う男の顔が歪んで見える。
 「けっこう待ったよ、無視するんだもんな、牧野さん」
 カツンコツン、と革靴の音が耳元へと差し迫る。
 それは悪夢の中の過去ではなく、加納浩輔があたしの方へと歩み寄る現実の足音だった。

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