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「それでも貴方を愛しているから…全97話完+α」
第三章 暗転…目に見えないもの、希求する魂

それでも貴方を愛しているから040

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 「あ、うん。…類から、あんたが倒れたって連絡がきて」
 チッと舌打ちをすると、道明寺は片肘をベッドにつき、体を起こそうとする。
 「ちょっと!急に起きたらダメじゃない!いま、看護師さん呼ぶからっ」
 ナースコールに手を伸ばそうとしたあたしの手を片手で制し、そのままベッドに半身を起こしたヤツは、ベッドヘッドを背もたれに寄りかかり、小さく吐息を吐いた。
 そして、立てた片膝に顔を突っ伏し、片手で顔を覆い隠す。
 その様子が、あたしから話しかけられるのを拒んでいるようにも見えて、あたしは声をかけられないままに、ベッドサイドに立ち尽くした。
 「…今、何時だ」
 「え?」
 問われて腕時計を確認しようとして、道明寺からもらった腕時計を外していたことに思い当たった。
 時間を問うてくる道明寺の腕にも、あの日、おそろいだと嬉しそうに見せてくれた腕時計は見えない。
 それが妙に胸に迫って、キュッと唇を噛みしめて、室内の時計を見まわした。
 「えっと、もうすぐ15時になるところかな」
 「お前、大学は?」
 「…ああ、その、昨日から冬休みなの」
 類にも言った言葉と同じ言葉を繰り返し説明し、道明寺が、そうか、と返すと後はもうとたんに沈黙が落ちる。
 気まずい。
 ここのところ、こんなことばかりだ。
 以前は違った。
 気に入らないことがあれば怒鳴りあい、聞きたいことがあれば気持ちのままに口にした。
 …ああ、でも昔はそんな気まずさも馴染みのものだったと気が付いた。
 高校生の時、こいつの気持ちがわからなくて何度も、こんな想いをしたことがあった。
 でも、あの頃は、あたし自身が自分の気持ちがわからなくって、こいつの熱い眼差しの意味が、あたしに訴えかけてくる何かが、あたしには不思議で居心地が悪くて…。
 そうして、いつの間にか、今の自分は、自分の気持ちも…そして、目の前にいるこいつのことさえもわからなくなっている…あたしって進歩がない。
 ダメだ、こんなんじゃ。
 なにがダメなのか。
 でも、とにかくこのままの状態でいていいはずがない。
 「…あの」
 「俺…」
 互いに口を開き、再び閉じて、お見合い状態になってしまって困惑する。
 「あの、先、いいよ」
 「いや、お前から」
 ぎこちない。
 でも、確かに言いあっていてもラチがあかない。
 「その、あたし、類からあんたが倒れたってことだけ聞いたんだけど、えっと、大丈夫なの…体」
 チラっとあたしを見て、けれどそのまま興味なさそうに顔を反らせたまま、道明寺が頷いた。
 「ああ。寝不足と過労。ここんところ仕事が詰まってたからな」
 予想通りの答えに、内心溜息を禁じ得ない。
 前々からワーカーホリックなところがあって、いつかこんな日が来るんじゃないかと椿お姉さんも心配していた。
 高校生の頃のことを思い出したら、それこそ信じられないことではあるんだけどね。
 ワーカーホリックの道明寺。
 笑えるようで微妙に笑えないよ。
 それでも、日本に帰って来てからは、秘書さんのスケジュール管理にも従う様になって、NY時代のような無茶はしなくなったと聞いていたのに…。
 F3なんかは、あたし効果だな、なんて冷やかし半分に言っていたけど。
 「お前…さ」
 「え?なに?」
 囁きのような小さな声に、一瞬、言葉を聞き逃した。
 「…いや。もうすぐ、お前、誕生日だな」
 「え、あ、うん。そうだね」
 すっかり忘れていた。
 どの道、師走の忙しい時期、昔から家族にも忘れられがちで、せいぜいクリスマスに誕生日を兼てケーキを食べて、それでお終いというのが定番だった。
 子供の頃はそれを寂しいと思うことは多々あったけれど、高校生の頃にはもうそれどころではなくって、気が付けば自分でさえも忘れていたことも少なくない。
 ただ、この男だけが、NYにいてもどんなに忙しくても、その日にお祝いの言葉とプレゼントを贈りつづけてくれた。
 たとえその日に逢うことができなくても、この傍若無人を絵に描いたような男だけが、あたしの誕生日を忘れずに、電話やメールで「おめでとう」と言い続け、「お前がこの世に生まれてきた日に」と祝福してくれていたのだ。
 意を決したように、顔を上げてあたしを見上げた道明寺の顔を、今度はあたしが真っ直ぐに見返すことができなくって。
 とっさに反らした視線に、自嘲の笑みを浮かべた彼の顔に気が付かなかった。
 「クリスマスは…ちょっと時間とれそうにねぇんだけど、誕生日は…」
 「だ、大丈夫だよっ!あんたも忙しいんだもんねっ。倒れちゃうほど忙しくて、頑張ってるあんたが、クリスマスだなんだと浮かれてる暇なんてないの、よくわかるよ!」
 その言葉の先…クリスマスはダメだけど、あたしの誕生日は。
 道明寺の言い継ごうとしている言葉に思い当たった途端、あたしの口から怒涛のように言葉が飛び出していた。
 「いや、そうじゃなくって、今年こそは一緒に」
 「誕生日だ何だって言ったって、普通の日とかわるわけじゃないもんねっ!」
 道明寺の顔が微妙に、強張る。
 その顔が見たくなくて、なのに、どうしたらいいのかわからなくって、あたしの言葉は止まらない。
 まだ、ダメなんだよ。
 あんたが、あたしの為に、あたしたちの為に、この微妙な関係をなんとかしようと動こうとしてくれているのなんて、あたしだってわかっているんだよ。
 でも、それでもまだ。
 「でも、受験生にとっては追い込みの時期だから、忙しいんだよね。おかげであたしもバイトで大忙し!最後の大詰だから、ガッツリ教えて欲しいって、家庭教師の方もじゅ…塾、そう!塾の方でも引き合いすごくって!お、お正月も近いっていうのに、ホント、じゅ、受験生って大変だよねっ!?」
 なんとか無理に作った笑顔で、意を決して見返した道明寺の顔は…なんの感情も浮かんでなくて。
 「…そうかよ。誕生日、今年も一緒に祝ってやれねぇんだな」
 「道明寺」
 昏い目の色に、ギュッと胸がふり絞られるような痛みを覚えた。
 『今年こそは、クリスマスも誕生日も、全部の記念日、お前と過ごすからな!』
 日本に帰ってきた当初、まるで子供のような顔をしてあたしに宣言した日のことが頭に思い浮かぶ。
 出会った頃はあまりに波乱万丈で、自分のこの男への気持ちがまだハッキリしていなくって自分の誕生日のことなんかを言いだす暇がなかった。
 ずっと後に、『そういえば、お前の誕生日っていつなんだ?』と聞かれ、あたし自身もこだわりなく普通に『うん?12月28日』と答えて、『はああああっ!?なんだよ、それっ!なんで、早く、そんな大事なこと言わないんだっ!?』と怒られたんだ、と懐かしいような、切ないような気分が蘇る。
 「…で、でも、来月!来月のあんたの誕生日の頃には、あんたも、少しは時間がとれるようになるんでしょ?」
 堪らない気持ちになって、つい掘らなくてもいい墓穴を掘ってしまうのあたしのは悪い癖。 
 来月…けれど、それは同時にあたしの切実な願いでもあるんだ。
 こいつの誕生日の頃には、何かを変えたい。 
 変えなきゃいけない。
 そうじゃなければ、あたしたちはきっと…。
 先に待ち受ける真っ黒な予測に、あたしは身震いする。
 「ま、まあ、あんたの誕生日はどうせ、パーティとかで埋まってるんだろうけどさ!」
 無理やり明るい声を出す。
 「その頃は、NYだな」
 「え?」
 聞き違いかと聞き返すあたしの顔を見返す道明寺の顔には、もう何の感情の揺れも見えない。
 「…本当は、断るつもりだったんだけど、お前のスケジュールが空いてないんじゃ、俺だけ空けてても仕方ねぇし」
 「それって…」
 「来週から1ヵ月~2ヶ月ほど、NYに長期出張する」
 胸の中に冷たい氷が落ちたような気がした。
 信じられなくて目を見開くあたしに対して、道明寺はあくまでも淡々として、スッと視線を窓の外へと向けた。
 「今、アメリカでの巨大プロジェクト参加の打診を受けてる」
 「……」
 「期間は1年…あるいは2年、3年と長引く可能性もある。今回の出張はその下準備」
 断るつもりだったのに受けるのは、出張じゃなくってもしかして…転勤なの?
 「俺たち、互いに幻想を抱きすぎていたのかもしれねぇな。離れていたからこそ上手くいっていたというか。お前の言うとおり、少し距離を置く…ていうのは、正解なのかもしれない」

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