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「それでも貴方を愛しているから…全97話完+α」
第三章 暗転…目に見えないもの、希求する魂

それでも貴方を愛しているから039

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 「…先輩、先日から、ううん、ここ1ヵ月以上、なんだか変ですよね?顔色も悪いし、なんだか思いつめた顔ばかりしている。…それって、道明寺さんとのお泊りデートのことを伺った頃からだと思うんですけど?」
 「……」
 「私には先輩の苦しんでらっしゃることを話せませんか?さっきの男はなんなんです?」
 真摯に問い掛けられる言葉に、言葉に含まれるあたしへの気遣いと心配に、涙が零れそうになる。
 あたしには…友達がいる。
 こうして心配してくれて、真摯に力になってくれようとする友達が。
 そう思うだけで活力が湧いてきて、慰められる。
 「後で、桜子にも聞いてほしいことがあるの。できたら…滋さんも一緒に」



 道明寺の病室の前には予想通りSPが控えていて、残念ながら顔見知りの人たちではなかった。
 桜子とあたしが姿を現すと、不審そうな顔を向けてきたものの、すでに桜子が言ったように花沢類から連絡がいっていたのだろう黙って入り口を開けてくれた。
 「桜子?」
 私が部屋へ入ろうとすると、桜子は一歩下がって中へは入ろうとしない。
 「私は遠慮します。あとで皆さんがいらしてからお邪魔しますよ」
 「え?でも」
 「とりあえずは、ラウンジで待ってますから。たぶんまだ、道明寺さんも眠ってらっしゃると思いますし」
 考えてみれば類から連絡をもらってそう何時間もたっているわけではない。
 何が原因で倒れたのかは聞いていないけど、重篤な状態ではないとは言っていたものの、入院しているくらいなのだから安静が必要なのは確かだった。
 実際、本人が起きていればもっと騒々しくてもおかしくはない室内からはコトリとも物音がしない。
 その静けさが、なんだかあたしの奇妙な不安をかきたて、一人で道明寺の病室に入ることを躊躇させる。
 「じゃあ、またあとで先輩」
 けれど桜子はさっさと踵を返してしまっていて、それをあえて呼び止める理由もない。 覚悟を決めて室内へと入り、パタンとなるべく音をたてないように病室のドアを閉める。
 室内は廊下以上に快適な温度に保たれていて、豪奢な内装が病院のようには思えない。
 高級ホテルの一室だと見まがうような、けれどただ一点、まるでこの部屋の装飾の一つである彫刻のように美しい男が、青白い顔で横たわって、ポツンポツンという、点滴の音と共に激しい違和感を放射していた。
 明るい日差しの中、まるで眠り姫のようだったよ、と言ったら、コイツもあたしも笑い転げられるだろうか。
 …コイツだったら、笑うより青筋たてて怒り出すか。
 そんな、今のコイツと自分の現状に相反することを想像して、小さく笑みを零す。
 その声が、自分でもわかるほど弱々しく、空々しくて。
 自分でも自覚している…それが現実逃避にすぎないことを。
 完全に深い眠りの中なのか、顔を照らす日差しにもピクリとも動かない。
 それが不憫に思えて、あたしは窓辺に歩み寄りそっと遮光カーテンを引いて、室内に柔らかい平穏を取り戻す。
 なんなのよ、道明寺。
 ふいにそんな想いが沸き起こる。
 こんなのズルイよ。
 いつもはまるで強靭な肉体を誇示する野生の獣のように、強い眼光で傲慢に周囲を睥睨している男なのに、目を閉じて、青白い美貌を頼りなげに晒しているだけで、印象が180度異なる。
 とりあえず、点滴はしているものの、類から聞いていたように重篤な様子でないのは、ベッド周りの様子から十分察せられた。 
 …隠れた病でも発見された、というのでなければ、おそらく無茶をしたあげくの過労か。
 先日顔を合わせた時も、気まずい中でコイツの顔が疲れてやつれていることには気が付いていたのに。
 こうして改めて少し痩せてこけた頬や、目の下の濃い隈を見ていると遣る瀬無い気持ちにさせられる。
 あたしのことなんかに…。
 あたしのことなんかに、いつまでもかかずらわらせていい男なんかじゃないんだ。
 ちっぽけな恋愛とか、そんなものに気をとられてよそ見をしている暇なんかこの男にはない。
 元々、家柄も財力も、この男の役に立つものなど何一つない身の上で、釣り合うはずのないあたしが、さらにこの男によけいな気を回させ、分刻みでハードな毎日を強いられているその貴重な時間までも奪ってしまう。
 …益になるどころか、害だよ。
 固まった様に動けないままに、道明寺の秀麗な顔を見下ろしながら、シンと冷えた思考と胸の痛みが改めて身の内を凍えさせる。
 震える指先を伸ばして、そんなに長いこと会わなかったわけでもないのに、すでに懐かしささえ覚える柔らかい癖っ毛に触れようとして…。
 でも、触れる寸前、あたしは手を胸元に引き寄せ反対側の手で抑えた。
 けれど、とても堪え切れなくて、ポトンポトンと握りしめた手元に落ちた滴に誘われるようにして、嗚咽が漏れだすのを片手で抑えて堪えた。
 ダメだ、泣いたら。
 なんだろう、あたし。
 昔は泣くのが嫌いだった。
 人前で泣くのが苦手で、強い自分が自慢だったのに。
 道明寺と出会ってから、たくさんの涙を堪えて、呑みこんで。
 青白く透き通っていた、彫刻のように美しい男の瞼がわずかに震えた。
 スッと開かれた黒い目は、茫洋としていて、やっぱりいつものような強い輝きが見えない。
 息を呑むあたしの前で、眠っていた道明寺の瞼が二度、三度と瞬きを繰り返し、ふとあたしへと視線を向けた。
 「……」
 何を思っているのだろう、あたしの心を探るようにジッとあたしを見つめ、そのまま何も言わない。
 気が付かれただろうか。
 急いで目元に滲んでいた涙をぬぐい、頬をゴシゴシとこすって、泣いていた痕跡を消し去る。
 そして、その沈黙に先に耐え切れなくなったあたしが、乾いた唇を舌先で湿らせ、やっとの思いで言葉を無理やり絞り出した。
 「…大丈夫?気分悪くない?…その、先生か看護師さん呼んでこようか?」
 やっと出た言葉はそんな他人行儀なもので、道明寺の目に気のせいだろうか、わずかに影が差し、長い睫毛を伏せて、再びあたしを見た時にはいつもの強い光を取り戻していた。
 「ああ、少し眩暈がするが、どうってことねぇよ。お前、なんで、ここにいる?」

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