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「それでも貴方を愛しているから…全97話完+α」
第一章 悪夢再来

それでも貴方を愛しているから005

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 絶対的優位に満ちた厭らしい笑み。
 下卑た笑い声。
 こちらの怯えを敏感に感じ取り、それが返って男たちの加虐心を煽り、更に残酷にしてゆく。
 『見くびらないでよね!お坊ちゃん方。あたしは好きでもない男には指一本触れさせないんだから』
 内心震える声に気が付かれるんじゃないかと怯えながら、握りしめた拳に精いっぱいの虚勢を込めて、男たちを殴り飛ばす。
 『おもしろいじゃん』
 『つかまえてやっちまえっ!』
 誰かっ。
 怖い。
 怖いっ!
 もつれる足を精一杯に動かして…。
 後ろから、あたしの長い髪がグンッと引っ張られる!
 ダメっ
 転んだらっ
 『やったっ。捕まえたぞ』
 『おさえろっ!』
 男たちが馬乗りにあたしの体に伸し掛かる。
 足だ。
 カツン、カツーン。
 本来の記憶の中にはなかった音が混じる。
 オーダーメイドの革靴の黒光が、放課後の夕陽を移す廊下を不吉に反射する。 
 あたしを押さえつける男たちの歪んだ顔の向こう側に見えるのは…。
 やだ、やだ、見たくない。
 違う、見たくない。
 こんなの嘘だ。
 あの時、あたしは助けられた。
 あいつは、いなかった。
 「…の」
 自分の意思とは裏腹に、皺ひとつないスラックスを履いた長い足をさかのぼり、普通の人間には着こなすことの難しい幾何学模様のオシャレなベスト、ネクタイ、そして…。
 やだ――っ! 
 「おいっ!牧野っ」
 思いっきり揺すられて、気が付けば、涙に濡れた目を開け、ぼんやりと上向けて、目に映ったのは、シャープなラインの現代的なシャンデリアが灯す間接照明の仄かな明かり。
 夢?ここって、道明寺の。
 …豆電球まで、格調高いんだから。
 そんな下らない感想を抱いたその瞬間。
 「いやあっ!」
 覗き込んできた彫刻のように整った顔を思いっきり、押しのけていた。
 「っ!おいっ」
 鳴りやまない耳鳴りと、壊れそうに動悸うつ胸の鼓動を抱え、自分を守るように思わず俯けて丸まってしまったあたしを、道明寺が困惑したように見下ろす。
 「…牧野」
 絶句してしばらく、わたしを見つめていたようだったけれど、しばらくすると溜息を一つこぼし、道明寺が立ち上がった。
 そして、すぐに戻ってきて、夢の余韻で震えの止まらないあたしの目の前に、ミネラルウォーターのペットボトルをそっと差し出す。
 「飲めよ」
 落ち着いた道明寺の声音に、いつの間にかあたしの騒めいていた心も落ち着きを取り戻し始める。
 湿らせる程度に、渡されたお水を一口口に含む。
 「…うん。ごめん、ありがとう」
 小さく呟いて受け取ったあたしの頭を、道明寺がそっと撫でて、何度も慰めるように梳いてくれる。
 そんな優しい仕草に、悪夢で粗ぶっていたあたしの心も凪いで、そっと甘えるように道明寺の逞しい胸に頭をもたれかけた。
 ベッドの端に腰かけて、半身を乗り出していた道明寺が、そのままあたしの横に滑り込み、柔らかくあたしの頭を抱き込んで、抱きしめた背を上下にさすってくれる。
 「あたし、魘されてた?」
 「ああ、けっこうな」
 「ごめん、起こしちゃったね」
 サイドテーブルの時計を横目で見てみると、時刻はまだam.4:00を少し過ぎたところ。
 まだ、外は薄暗く、夜明けはまだ遠い。
 記憶は、道明寺家の車に乗ったところで途切れているから、どうやらあたしは迎えの車に乗り込んですぐにいつのもように眠り込み、そのまま、ベッドで寝かされたらしい。
 起きて歩いてきた記憶はないから、たぶん、道明寺が抱きかかえて連れてきてくれたんだろうな。
 「って、あたし、パジャマ着てるっ!?」 
 歩いてもこれなかったのに、自分で起きて着替えたなんてこと…。
 思わず、見上げたあたしに、道明寺がニヤリと返す。
 「揺すっても叩いても起きねぇからよ、俺が着替えさせた」
 「ええっ~!?」
 う…そ!
 「ま、まじ?」
 ニヤニヤ笑うバカの顔を見て、羞恥で一気に青ざめる。
 嘘だよね?
 なのに、
 「う、そ」
 ぶはっと噴き出して、ゲラゲラ笑いながら、道明寺があたしの体をぎゅううっと抱きしめてきた。
 「ばっ!」
 今度は怒りで顔が一気に真っ赤になったのが自分でもわかる。
 「おまっ、すげ、百面相!タマだよ。もう、2時回ってたからな、俺が着替えさせてやってもよかったけど、運が良かったな?」
 「もうっ!このアホ!バカ!!どすけべ!」
 ドンドン胸元を叩くものの、敵はびくともしない。
 タマさんか。
 お年寄りは夜が早いのに、申し訳ないことをしたな。
 明日、ああ、もう今日か、謝っておかないと。
 「で、大丈夫か」
 「うん、もう平気」
 「昨日の出来事のせいか?」
 「…たぶん」
 他愛無いやり取りが、さきほどの夢の後味の悪さを消し去ってくれていた。
 それに、しばらくすれば、夢はあたしの記憶から消え失せ、また、何か切っ掛けがなければ沈み込んで現れないこともわかっている。
 でも、いつもの夢だったけど、今日のは少しだけ違っていた。
 それが何か、と深く考える前に、背中を撫でていてくれていた道明寺が、ふああと欠伸をしてベッドに再び寝転がる。
 「もう、一眠りしようぜ」
 ポンポンと自分の腕枕の下、脇を軽くたたいて、あたしにも横になるように促す。
 「ほれ」
 「う、ん」
 ちょっと躊躇したものの、今更だよね、と自分に活をいれ、思い切ってしめされたところに体を横たえた。
 「頭はこっちだろ」
 それでもとても道明寺の腕に頭を乗せるなんてことできなかったあたしの頭をやさしく持ち上げて、向かい合う形であたしの頭を抱え、長い両足であたしの足を挟み、体をギュッと抱き寄せてくる。
 「ちょっ!」
 「うるせぇ、もう、寝ろ。」
 抗議しようと見上げた視線の先、道明寺の綺麗な顔に出すはずっだった言葉が呑み込まれてゆく。
 「また、怖い夢みたら起こしてやるからよ」
 本当に綺麗。
 男の人にこんな形容詞が似合うなんて、ちょっと悔しいけど、そうとしか言いようがない。
 すでに道明寺は眠りに引き込まれかけているのか、長い睫がピクピクと揺れ、わずかに寝息がもれはじめている。
 そうだよね、疲れているんだものね。
 目の下のクマがうっすらと、まだ残っているし、顔色もあんまり良くないような気がする。
 高校生の頃には、多少なりとも残っていた少年らしい頬のラインの肉がさらに削ぎ落とされ、精悍さが増しているけど、わずかに疲労の影も見える。
 ちょっと、痩せたよ、アンタ。
 そうは思っても、道明寺の置かれている現状を知れば知るほど、無理を重ねるこいつに何も言えないジレンマに悩まされる。
 無理しないでよ、体を壊さないで。
 そう言うのは簡単だけれど。
 起こさないようにそっと道明寺の頬に片手を添えて、2,3度軽く撫でて、あたしは目を瞑った。
 「…おやすみなさい、道明寺」
 うん…、という小さな声が聞こえた気がしたけど、あたしよりも体温の高い道明寺のやさしい温もりに、すぐにあたしは再び眠りに引き込まれた。

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