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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第一章 再会

昏い夜を抜けて014

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 「…どうしたんだ?」
 桜子にしては珍しく落ち着かない様子に、あきらが気が付いた。
 「え?あ、すいません。なんか、先輩遅くないですか?」
 彼氏からの電話で席を立ったつくしだったが、気が付けばもう30分あまりも戻ってこない。
 「ラブトークで忙しくて、戻ってくるのを忘れてんじゃないのか?」
 肩を竦めてニヤつく総二郎に小首を傾げ、桜子がその姿を捜すようにつくしが歩いていった店外へと視線を戻す。
 「…気になるなら見てきてやろうか?」
 見かねたあきらが、立ち上がりかける。
 「あ、いえ。いいです。もしかしたら、そのままレストルームにでも行かれて、一休みされているのかもしれませんし…」
 「まあ、酒に弱いアイツにしてはけっこう早いペースで呑んでたしな」
 桜子に制されて、とりあえずあきらももうしばらく待つことにしたらしく、再びソファへと腰を落ち着けた。
 「そういえば、類の奴も戻ってこねぇな」
 「そうだな、眠そうだったから、そのまま帰っちまったんじゃね?」
 ちょっと外の空気を吸ってくると言って席を立った類が戻ってこない。
 ありえない話ではないので、微妙な空気が流れる。
 「…先輩、動揺してらっしゃいましたね」
 「初恋の君ってか?」
 「まさか、やけぼっくりに火が付いたとか言いてぇのかよ、総二郎」
 眉根を寄せるあきらの心配げな顔に、グラスを傾け、総二郎がはっ、と両手を広げ肩を竦める。
 「あんなん恋愛じゃあねぇよ。一過性の麻疹みたいなもんだ。恋に夢見るお子ちゃまの憧れってやつだな」
 「そうですか?私も花沢さんがまだ日本にいらした頃、先輩のそばにいなかったので詳しくは知りませんが、傍目にはとてもお好きだったように見えましたけど…」
 「まあな、牧野は好きだったんだろうけどな」
 あきらが総二郎を見やる。
 「そりゃそうだろ、ガキの恋だって恋は恋だ。ましてや、あの頃、赤札貼られて苛められていた牧野を唯一庇っていたのが類だ」
 当時を思い起こす。
 我ながら、何と陰湿でガキ臭いことをやっていたのかと、思い出すことすら汚点だったが、それに気が付かせてくれたのもつくしだった。
 どうせ将来が決められているのだから…と、何事にも投げやりになり、大人になるまでの自由な時間を自堕落に過ごした。
 他人の痛みに鈍感になり、荒れ果てていた司を留めることすら思いつかなかった。
 子供だった…それだけでは許されないこともたくさんしたのだろう。
 真正面からつくしだけがただ一人、あの小さな体で彼らの前に立ちはだかり、お前たちは間違っているのだ、と突きつけた。
 司がまず惹かれ、そして総二郎とあきらもその輝きに魅せられた。
 その中で、類のつくしへの立場は彼らF4の中でも特殊だった。
 最初はいつものように無関心のように思えた類だったけれど、司の赤札遊びに加わることもなかったが、制止するようなこともなかったはずの類が、なぜかつくしにだけは違う態度をとった。
 一時は司と相対することになっても、つくしを庇ったのだ。
 恋とか愛とか、そういった感情を類がつくしに持っていたとは、総二郎たちも思わない。
 当時の類には静がいて、類にとって静だけがすべてだったのだ。
 だが、確かにつくしもまた、類にとっては特別だったのだろう。
 幼い頃から類を知っている総二郎たちをして、知らなかった類の顔を引き出し、類に対しても多大な影響を及ぼした。
 それが、類に、去ってゆく静を追ってフランスに行かせるなどという青天の霹靂の行動を起こさせることになった。
 しかし、そのことが類にとってまた新たな変化をもたらすことになったというのは皮肉なことであっただろう。
 フランスで類に何が起こったのか、親友である総二郎とあきらも知らない。
 伝え聞くばかりでは、静と現在のフランス大統領である人物との婚約話が持ち上がり、類が身を引いた…ということだったが。
 「牧野にとって、結局、司とのことはなんだったんだろうな」
 ポツリとあきらが呟く。
 「さあな。司の方は間違いもなく、惚れまくってたけどな」
 「…先輩もお好きだったと思いますよ」
 「そうか?」
 総二郎とあきらが顔を見合わせる。
 「愛にもいろいろな形があるんです。…ただ先輩は、そのことに気が付かれていたかどうか」
 「…牧野は奥手で、司は猪突猛進。どちらも初心同士。結局、付き合ってる間、お手て繋いで清い関係だけってか?」
 「かあああぁぁっ!たまんねぇな」
 すでに甘いも酸いも吸いわけ、恋愛の汚泥に浸りつくした彼らには、つくしや司の初心さがむず痒く、面映ゆかった。
 だが、それだけに憧れる部分も多く、心の底では羨ましく思っていたことも互いに自覚している。
 「やっぱり、ちょっと、私、先輩のこと見てきます」
 「…お、類からだ」
 胸元で鳴ったバイブの音に、あきらが携帯電話を取り出す。
 桜子が席を立って、店外へと向かったのをあきらが留める。
 「ちょっと待て、桜子」
 「はい?」
 難しい顔をして、あきらが携帯電話の画面を凝視したまま口ごもる。
 「なんだよ、あきら」
 「…酔いつぶれた牧野を類が送っていくらしい。先に帰るってよ」
 妙な沈黙が一同の間に横たわり、同じ表情でお互いの顔を見やった。



 起きている時には快適な空調の冷たい風が、シーツから出た素肌の肩先と背中をひんやりと冷やす。
 ブルリと肌寒さを感じて、深い眠りの中に沈んでいたつくしは、傍らの温もりの中へもぐりこむ様に体を縮こませ、身を寄せた。
 柔らかい温もりが、ひどく心地よい。 
 頬を寄せると、ドクンドクンという力強く規則正しい鼓動の音と、優しい感触、爽やかな柑橘系の良い匂いが包み込んできて、ホッと和む。
 …なんだか、気持ちイイ~。
 幼い頃に、父や母が抱きしめてくれた時のような、安心感。
 ふうっと、つくしの意識が浮上した。
 「ん、…眩し…い」
 途端に瞼越しに感じる、窓から差し込む陽の光の眩しさ。
 まだ醒めきらない眠気に、目を瞬かせながら、ハッキリしない視界を茫洋とあたりに彷徨わせる。
 ど…こ、ここ?
 つくしには馴染みのない高い高い真っ白な天井、どこだかの豪邸に掛かっていたような高級そうなシャンデリア型の照明。
 そこかしこに配置された、庶民の生活にはありえない高級な家具や装飾品の数々。
 え?
 急激に、意識が覚醒する。
 「…ん」
 低い小さな声が超至近で呻き声を洩らし、つくしの裸の腰をギュッと抱きしめた。
 え?え?ええっ!?
 驚愕に、思考が固まり、まともな何かを考えることができない。
 頬に触れる逞しい裸の胸、温かな体温、わずかに汗ばむ素肌の感触。
 鈍感で奥手なつくしにだとて、一目瞭然なこの状況。
 あまりの衝撃に震える唇を片手で覆い、まるで断末魔のような喘鳴を洩らしてしまいそうな声を押し殺す。
 自分を囲い込んでいる主を起こすことが怖かった。
 叫び出して、現実に立ち戻るのはこの上なく怖ろしい。
 掌で唇を覆ったまま、おそるおそる顔を仰向け、素肌の主へと視線を向ける。
 女にはありえない逞しい肩幅、クッキリと浮かび上がった太く優美な鎖骨、男にしてはすべらかで美しい肌、時折ゴクリと喉仏が動いて、つくしとの性の違いをハッキリと思い知らせる。
 薄らと生え出した髭さえも、男の美貌を損ねるどころか、その甘さに男の色気を加えて神々しいばかりだ。
 花沢類…?
 何度、目を瞬かせて見直しても、顎の下から見えるその美貌の主は、間違いなくつくしの初恋の男性だ。
 夢で見たことさえもないシチュエーションに、つくしの頭は混乱と恐怖に、真っ白だった。 
 ありえない…。
 こんな状況。
 なんで、どうして。
 こんな状況に陥る以前の記憶を探るが、ガンガンと鳴り響く二日酔いの頭痛に遮られて、少しも蘇ってこない。
 どうしよう、どうしよう。
 たった一つの言葉だけがつくしの脳裏を何度も何度も、浮かび上がっては消え、再び頭一杯に膨れ上がる。
 「…どうしたら」
 半ばパニックになりながらつい口から洩れた声に、ハッ類の様子を伺うも、別段その声に起きた気配もなく、
 「ん…」
 と再び呻いて、寝返りを打った。
 その拍子に、ガッチリとつくしを囲い込んでいた両腕の拘束が解かれ、つくしは瞬時に、その腕から逃れ、巨大なベッドの上で後退る。
 「…あっ…痛っう」 
 瞬間走った馴染みのない、下肢の奥の疼痛に、まるで頭を石で殴られたかのような衝撃を受けた。 
 間違いない。
 …間違えようもない状況ではあるが。
 シーツから飛び出した見慣れた貧弱な体は、素っ裸で、まるで汚らしい痣であるかのように全身に赤い花びらが散っている。
 パラリとシーツの肌蹴た男の姿も当然、下着一つ身にまとってはいなくって…。
 チラリと目に入った、シーツの上に点々と散った薄茶色の血の跡が、つくしを更なる絶望へと追い詰める。
 何故、どうして?
 自覚し始めれば、全身に残る気怠さと酷使されたかのような股関節の痛み、意識するのさえも厭わしい股間の違和感に、つくしの体の震えはますます大きくなった。
 「うっ…、ど、ど、どう、して、うっ」
 唇から出すまいと思っても、嗚咽と悲鳴のような言葉が小さく洩れ続ける。
 二日酔いからばかりでない眩暈と吐き気、そしてあまりのショックに背筋を走った寒気が貧血を呼び、ふらりと再びベッドへと突っ伏しかける。
 「…か、帰らなきゃ」
 帰らなきゃ。
 ただそれだけが、唯一の解決策であるかのように。
 一人、ブツブツと呟き続けるつくしの声に起こされたのだろう、先ほどまで天使のような美しい寝顔を晒していた類が、半覚醒の寝ぼけ声をあげた。
 「…ん、ん?な、に?」
 眩しさに顔を顰め、目の上に掲げた腕で陽の光を遮った類が、目をパッチリと開ける。
 不審に歪んだ類の顔が、パニックに死人のような顔色で硬直しているつくしの顔を見て、得心したように一つ頷き、ふわりと微笑む。
 邪気一つない、まるで何事もなかったかのような悪びれない平然とした微笑み。
 「おはよう、牧野」
 そのビー玉のような薄茶色の瞳の中に映ったつくしの顔は強張り、咀嚼しきれない衝撃に怯えていた。

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NoTitle

次の場面を一日千秋の思いで待っている私です。ところで昏な夜を抜けるのは類なのか、あるいは明かるく生きていたはずのつくしに突然類によって底なし沼のような恐怖の中にひきづりこまれてしまったが愛に目覚めた類によって底なし沼から明るい世界に立ち戻ることをさして暗い夜を抜けてに繋がってなのかと思っているところです。でもひょっとして抜けなかったら、恋愛は相手の命さえかえりみない、究極の自己愛がなければ成り立たないものかもしれない。ならば、と考えると一刻も早くに次が読みたいと思って毎日モンモンとしています。

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