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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第一章 再会

昏い夜を抜けて013

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 「……っ!?」
 RuRuRuRuRu~、RuRuRuRuRu~
 全員が、ポケットや鞄を探り、携帯電話をチェックする。
 「あ、…あたし、ごめん」
 つくしが、戸惑いつつ、片手をあげ自己申告する。
 うっかりマナーモードにし忘れたこの電話は、間が悪いのか、それともタイムリーなのか。
 横から覗き込んできた桜子が、歓声を上げる。
 「正輝さん?…先輩、彼氏いたんじゃないですかっ!?」
 図星を言い当てられ、思わず赤面する。
 「ちょっと、見ないでよっ。つーか、何で彼氏だとわかるわけ?」
 「そりゃあ、男の名前で苗字じゃなくって名前となったら、たいがい身内か恋人かの二者選択じゃないですか。と、いうか、肯定しましたね」
 「うっ」
 「なんだよ、男いたのか」
 「あの勤労処女がなあ」
 妙に感心したように驚く総二郎とあきらを照れ隠しに睨み、おそるおそる類を見るも、類の顔には何の感情も浮かんでいない。
 さっきまで、つくしを口説いていたことさえ嘘だったかのように、平然と酒に口をつけ、何食わぬ顔で座っている。
 「…なに?」
 「え?ううん」
 「彼氏いるんじゃ、しょうがないね。別に気にしなくてもいいよ?」
 声音自体にも何のこだわりもなく、やはりそれほど真剣に口説いてきたわけはないことが知れる。
 …なに、ガッカリしてるのよ、あたし!
 自分のもやもやとした感情が、何からきているかわからないほど子供ではないつくしは、自分を叱咤し、皆に断って席を立った。
 「いいぞ、牧野、ここで電話して」
 「おう、つくしちゃんのラブトークっつーのはどんなもんなのか、聞いてみたよな」
 「ええ、もしかしたら、ダーリンには可愛くなっちゃってたりして!」
 酔っぱらいどもの与太にヒクつきつつ、
 「あんたたちは、黙って呑んでろ!」
 とりあえず桜子の言う様にいきなり豹変はしてないはず、と普段の自分のラブ通話風景を一応はチェックするつくしだった。



 「…うん、大丈夫。もうそろそろ、帰るから。うん」
 山崎正輝とは、仕事上の付き合いから始まった関係だったが、年が離れているゆえにか、長女気質で頼りない両親を抱える家庭環境から片意地を張りがちのつくしを何かとフォローし、包み込んでくれた。
 類や司の時のような、砂糖菓子のようなトキメキ、激しい感情や熱い恋愛とは無縁な関係ではあったものの、交際が始まって半年、順調に絆を深めていると思う。
 つくしはまだ23才という若さだったが、現在27才、そろそろ28才も間近の山崎は、つくしとの関係に結婚も視野に入れているようだ。 
 つくしの同僚の香帆は誤解していたが、恋愛経験が乏しく、唯一付き合った相手である司との関係も極めて純な関係で終始したつくしは、いまだに年齢のわりに奥手で、付き合っているからと言って容易に関係を進めることに躊躇があった。
 そして、山崎もそうしたつくしの奥手さを尊重し、無理強いしないでくれる。
 つくしと山崎の関係は、他人から見たら高校生となんら変わらぬものであったが、二人の関係は二人なりに順調だった。 
 互いに仕事が忙しいながら、暇を見つけてはなるべく会い、マメな性格な山崎は何かと電話やメールをくれる
 これが、平凡な幸せってものなんだろうな…とつくしは満足していた。
 「え?…うん、わかった、楽しみにしてる。はは…正輝さんたら。え、やだよ、恥ずかしいもん」
 自分で自分の甘い声が気恥ずかしい。
 桜子あたりに聞かれたら、やっぱりカワイコぶってると言われること間違いなしだ。
 でも、そんな風に、自然に乙女になれる自分が嫌いじゃないし、そんな平凡で優しい関係が嬉しかった。
 本当は久しぶりに早く帰れるという山崎と約束していて、仕事帰りに食事を一緒にする予定だったのだが、桜子からの連絡でF3との会合を優先してしまった。
 それにも山崎は快く送り出してくれて、結局、そのまま残業している山崎から帰るコールをもらったのである。 
 男友達と会うって言っておいたから、その牽制もあるのかも。
 何食わぬ顔をしていたものの、ホンのちょっとはやきもちを焼いてくれたのか、微笑ましい気持ちにクスリと笑みが洩れる。
 明日の休日は山崎が半日休日出勤を余儀なくされていたので、午後から会うことになっていた。
 迎えに行こうかと言ってくれた山崎の気遣いが、こそばゆい。
 が、明日も早朝から仕事の山崎を呼び出すような常識は持ち合わせていないつくしは、山崎の心遣いを丁重に断り、明日の予定を簡単に確認しあって、電話を切る。
 もう時間は23時すぎ。
 さすがに、終電の時間も差し迫ってくるので、場を辞する頃合いだろう。
 桜子、あきら、総二郎…そして類。
 煌びやかで美しい人たちは、相も変わらず光り輝いていた。
 懐かしい気持ちもあったが、やはり別世界の住人。
 彼らとの出会いは貴重で、今も一生の思い出だとは思っているが、この先そうそう会うこともないだろう。
 もしかしたら、仕事上の付き合いのあるあきらとは顔を合わせる機会もあるかもしれなかったが、それにしてもこちらは一介の平社員で、あきらは会社役員。
 どう考えても、そんなに機会があるものではなさそうだ。
 花沢類。
 彼のことを考えると、なんとも割り切れないような、複雑な心境が蘇る。
 携帯を懐にしまい、一歩踏み出すと、かなり足元が怪しい。
 やはり、類との再会に冷静でいられず、またあまりの変貌ぶりに、酒が進みすぎたようだ。
 呑みすぎの酩酊が、足元を覚束なくさせる。
 …まずいな。
 自分でも自覚があるだけに、始末におえない。
 とりあえず、誰にも迷惑をかけたくないので、すぐそばにあったソファに腰掛け、酔いを醒ます。
 うっかり、皆の前に戻ったら、とんでもない醜態を晒しそうで、そんな無様は冗談ではなかった。
 …桜子に迷惑かけたくないし、いくらなんでもここからタクシーはきついな。
 気が付けば、思っていた以上に張っていた気が緩んで、酩酊と共に眠気が襲ってくる。 ちょっとだけ…。
 ちょっとだけ、休んだらみんなにお別れをして。
 カツン、コツン、カッ。
 つくしの意識は、堪え切れぬ眠気に、沈み込んでしまった。



 ふわふわ、ふわふわ。
 ふわふわ、ふわふわ。
 なんだか、ユラユラと揺れている。 
 揺れているのは自分の頭なのか、地面の方なのか。
 不思議な浮遊感に、つくしは「ん…」と吐息が洩れる。
 クスリ。
 誰かが笑った気がした。
 「…なんだか、変わらないんだな、あんただけは」
 誰かの声が聞こえる。
 懐かしい声。
 でも、あたしが知っているこの声は、こんな言い方じゃなくって。
 この夜こそが、つくしを見果てぬ昏い夜へと誘い、足掻いても足掻いても絡めとる闇の腕へと陥らせることを、深く眠るつくしは知る由もなかった。

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