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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第一章 再会

昏い夜を抜けて012

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 「ぶふっ」
 桜子に突然フラれ、思わずつくしは口に含んだ水に噎せた。
 「げへ、げほげほっ!」
 「おいおい。大丈夫かよ」
 桜子が仰け反りつつも、ハンカチを手渡してくれ、あきらがわざわざ席を立って背中をさすってくれる。
 口元を拭いてくれようとする桜子と、あきらに軽く手で断って、息を整えた。
 「…まったく、落ち着けよな。いくつだよ、お前」
 「ほ、ほ、ほっといて!西門さん。急に、変なこと桜子がフるからでしょ?」
 「別に、変なこと、なんてフってませんよ。単純に、彼氏の一人もいないのかなあという好奇心です。その様子だと、いないみたいですね、やれやれ」
 「マジか?花の命は短いんだぜ、つくしちゃん?」
 「…牧野は、堅いからな」
 すっかり、男はいない…ということに決定づけられてしまったらしい。
 でもなんとなく、この連中に堂々と彼氏がいる…と申告するのも抵抗がある。
 どうせ、もう二度とは会わないかもしれない人たちだし。
 誤解にしても、そのままでいっか~と思い始めた時、
 「…へえ?牧野、彼氏いないんだ」
 ん?
 唐突に割り入った声に、一同が思わず類の方へと注意を向けた。
 「それなら、俺が牧野の彼氏に立候補しようかな?」
 「へっ?」
 目を見開いたつくしだけでなく、横であれほど体裁を気にする桜子がぐふっと噎せ込み、総二郎までもが呑み込み損ねたお酒に噎せている。
 横を見てみれば、席に戻りかけていたあきらまでもが驚いて、棒立ちに突っ立っていた。
 「…なに?みんな。牧野のことを言えないじゃん」
 「る、る、類、お前…」
 やっと言葉を絞り出したあきらが、何と言葉を継いでいいのか迷い、絶句した。
 「お前たちのその間って、いったいどういう意味なんだろうね。ね?牧野」
 「…え?あ、いや、その…」
 つくしには無意味な言葉にもならない言葉を連ねることしかできない。
 いえ、あんたの意図の方があたしにはわかりかねるのですが。
 測り兼ねる男の薄らとした笑みは、そそのかすようでもあり…。
 「本気なのか?類?」
 「どうして?牧野、ずいぶん綺麗になってるし、今フリーなんでしょ?俺も特に決まった女がいるわけじゃないし、どう?」
 どうって。
 「…類、お前、決まった女がいるわけじゃないって言ったって」
 総二郎の顔が険しく類を見返し、あきらも眉根を寄せている。
 「…先輩」
 小声で囁きかけてくる桜子の声でつくしがハッとすると、そのタイミングで類がニヤッと微笑んだ。
 「どう?俺じゃあ不服?」
 何度も何度も味わった違和感。
 目の前の男が、本当に花沢類なのか…そんな馬鹿なことばかりが頭に浮かぶ。
 憧れて、手が届かなかった夢そのものみたいな男に口説かれているというのに、つくしの頭に浮かぶのはそんな違和感ばかりで、少しのトキメキもない。
 誰、この人?
 不機嫌な顔でつくしを拒絶し、冷たい言葉しか吐かなかった出会ったばかりの頃の類。
 『うるさいな、興味ない、他人のことは』
 『面倒くせーな女って』
 邪険に切り捨てられた。
 そして、最後に会った日の晴れやかな笑顔。
 涙ににじんだ、ビー玉みたいな瞳が、薄茶の髪の毛が、モスグリーンのセーターが、空港で見たあの時のまま、ずっとつくしの心に残って忘れられなかったと言うのに…。
 「ぷっ!あはははははっ。なんだよ、みんな、そんなに驚くようなこと?挨拶みたいなもんだろ?ちょっと、いいなって思った女がいたら、お前らだって口説くだろ?」
 張りつめた空気が、類の妙にあっけらかんとした笑いに、逆に妙な空気を運ぶ。
 「…ちょっと、いいって、マジなのかよ、類。牧野のこと?」
 「だから、ちょっといいなって思ったんだけど、牧野がいやなら別にいいよ」
 別にいいって。
 あまりにお気楽な言いように、つくしの唇の端がヒクリと引き攣る。
 「あ、がっかりした?もしかして。やっぱり、俺と付き合う?」
 「る、類!よせ、牧野は司のっ!」
 立ち上がった総二郎に、類が冷たい視線を注ぐ。
 さっきまでのお気楽な雰囲気が嘘のような、冷酷な何かを含んだ視線に、一瞬まともに浴びたつくしがブルリと体を震わせた。
 なんて、暗い昏い目…。
 「牧野は今、司の女ってわけじゃないんだろ?さっき、別れたって牧野自身も言ってたし、お前らもそうじゃないとは言わなかった。そもそも拘るなって言ってたお前が、そんなこと言うなんて、バカじゃない?」
 「類!」
 「ダチの女、ね…お前にそういうことを言われるとは思わなかったな、総二郎」
 「よせ、類、それに総二郎も。こんなところで話す話じゃないだろ?」
 あきらが仲裁に入る。
 いきなりの緊迫した空気に、つくしと桜子が顔を見合わせ、息をひそめた。
 「こんなところで話す話じゃないって、いったいどこで話したらいいんだろうね?俺ら、もう何年もまともに会ってなかっただろ?公式の場以外で」
 「…類、まり子さんのことは」
 顔を強張らせた総二郎を、類は片手で制する。
 「それ、もう終わった話でしょ?あきら、お前から総二郎に言っておいてって頼んだじゃん。話しておいてくれなかったの?」
 どうでも良さそうな投げやりな言い方に、温厚なあきらも憮然とする。
 「人に面倒を押し付けるなよ。俺の忠告はいっさい聞かないくせに、世話だけかけるな。いい加減にしろよ」
 「そう。じゃあ、今言うね。総二郎、公式にお前のうちにうちから通達行っただろ?この件はもう決着済。別にお前に対して含みもないし、確執もない。面倒なだけだから、終わりにして。以上、これだけ。わかった?」
 本当に面倒くさそうな類の言い方が、彼の真意だとわかる。
 遣る瀬無そうに溜息一つつき、固まったように自分たちの成り行きを見守っている桜子とつくしに目を止め、総二郎は頷いた。
 「…ああ、わかった。お前に何を言っても無駄だということが。お前がそれでいいなら、俺も何も言うことはない」
 「悪いな、牧野、桜子」
 如才ないあきらが、肩身が狭そうに固唾を飲んでいる二人に謝罪する。
 「え?あ、いや、別に」
 「ええ、何も聞いてませんよ、私たちは。ね?先輩」
 「うん、そうだね」
 白々しくても、他者の出る幕じゃなく、二人は確信的に口裏を合わせる。
 実際になんのことか、つくしにはわかりかねる話題であるのだし。
 思わぬF3の確執を聞いてしまった気まずさに、上手く笑顔が作れない。
 だが、そんな中でも、元凶であるはずの当の類の方は、気まずくさせた自覚もないのか、平然として再び、つくしへと視線を向ける。
 「で?どうするの?」
 「え?な、なにが?」
 なんだか、すでにドッと疲れているつくしへと、なおもわけのわからない態度をとってくる類が理解できない。
 「俺の女になる話」

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