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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第一章 再会

昏い夜を抜けて011

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 「…類、か」
 自分の思考に沈んで勝手に怒っていたつくしが、総二郎らしくない昏い声に、ふと我に返った。
 見上げた総二郎の顔は、いつものおちゃらけたつくしをからかう顔などではなく、どこか沈鬱だった。
 伏せた長い睫毛の影が、まるで彼の憂いを色濃く表しているかのようで、つくしは首を傾げた。
 「西門さん?」
 「ああ、いや。類がどうしたって?」
 「あ、うん。えっと、なんていうか…」
 言い募ろうとして、ハタっと我に返る。
 類が誰と何をしていようと類の勝手であって、またいくら親友であるからといって、そのことを総二郎に話す筋合いでもないだろう。
 「…ううん、なんでもない」
 「なんでもないってことはないだろう?なんでもなくって、お前、俺に噛みついたのか?」
 揶揄るように片眉を吊り上げる総二郎に、曖昧に微笑み返し、
 「ごめんごめん、ちょっと呑みすぎちゃったみたいで。ヤツ当たっちゃったかな」
 「…類のことで?」
 「え…」
 言われて困り、両手を顔の前でフッて、愛想笑いで返す。
 「はは、違うよ。ただ、そのちょっと、花沢類ったらずいぶん変わってたから驚いて」
 「そりゃあ、お前、あいつと最後に会ったのいったい何年前だよ?高校生の時と変わってたって、そんなん当たり前だろ?お前だって、ずいぶん変わったし」
 言われて、なんとはなしに頬に落ちてきたおくれ毛をかき上げる。
 「…そうかな。そうだよね」
 それでも、懐かしくはあっても、あきらや総二郎、桜子は別人のようだと驚愕するほどには変化していなかった。
 もちろん、大人になって、それぞれが素敵な変貌を遂げたと思っていたけれど、それでも総二郎なら総二郎らしい変貌であって、類のような別人のような驚きではなかったのだ。
 変わってない部分もあった。
 だが、それが総二郎たちとは真逆に、懐かしさではなく、戸惑いをつくしにもたらした。
 あまりに変わってしまった部分と、あの頃を彷彿とさせるほどに変わらない…変わらなすぎる部分。
 考え込むつくしの頭を、総二郎がポンポンと軽く叩く。
 「呑みすぎたなら、少し酔いを醒ませよ」
 「あ、うん。そうだね、ありがとう」
 どちらにせよ、いくら再会を果たしたとはいえ、類とつくしは別世界に住んでいるのだ。
 たまたま、懐かしさに一瞬の会合を持とうとも、もう二度と会うこともないのかもしれない。
 どう変わっていようと、つくしに関わりがないことには変わりはなかった。
 「…類は、変わったよ。元に戻っただけなのかもしれねぇけどな」
 「え?」
 総二郎らしからぬ弱々しい笑みを浮かべ、後はもう振り向かずに立ち去って行った。



 それから2時間もすると、そろそろつくしも限界を感じてきた。
 ついつい思考は類へと戻ってゆくのだが、さりとて斜め対面側の類に目を向けるのも気が引けて、半ばやけくそのように桜子にだけ意識を集中させる。
 男たちもだいぶ出来上がって、プライベートの会合のはずがいつの間にか仕事の話へと集中しがちだったから、つくしの呑みすぎた体たらくもそれほど不自然ではなかった。
 それでもさすがにフェミニストたち。
 何くれとなく、桜子やつくしにも話題を振り、完全に二手に分かれて、というわけでもない。
 「…へえ?じゃあ、牧野っていま、あきらんとこの会社とけっこう取引ある会社にいるのか」
 「うん、ついこの間まで、美作さんと関わり合いがあるなんて知らなかったけどね」
 「まあな、俺もE.M.ローズの常務になったのもつい最近だしな。その前はイギリスだったから、わからなくても無理はない」
 「へえ?そうだったんだ」
 さすがはF4はグローバルだと感心する。
 司はアメリカ、類はフランス、あきらはイギリスと、唯一日本にいるのは総二郎だけだが、その総二郎だとて昨今の日本芸能のグローバル化に従い、海外講演で国外に出ることも増えていると言う。
 「なあなあ、あきらんとこの社名の由来聞いたかよ?」
 総二郎がニヤリとあきらを横目で見やり、面白そうに告げ口する。
 ヒクヒクと唇の端を引き攣らせ、あきらが総二郎の口を塞ごうと、手を伸ばす。
 「いいじゃねぇかよ!知ってるやつは知ってるんだから。今更だろ?」
 「黙れ!お前は、だいたい口が軽すぎんだよ!」
 「え~、由来ってなんなんです?」
 桜子が興味津々で、総二郎に身を乗り出す。
 「先輩も聞きたいですよね!」
 あきらの憮然とした顔に、困ってつくしが曖昧に微笑む。
 「あ~、あたしはその、美作さんに直接聞いたから」
 「なんだよ!自分で言いまわってるんじゃねぇか。つまんねぇな、妙に嫌がるから、言うのが面白かったのに」
 「てめぇ!」
 昔はよくつくしと司をからかっていた総二郎だったが、元から他人をおちょくるのが好きだったのだろう。
 ターゲットをあきらに移しても、悪戯っ子の子供のようで、文化雑誌に威厳漂う生真面目な顔で載っている文化人とは思えない年相応の青年の顔だ。
 そういうあきらの憮然とした顔も、美作商事の切れ者ジュニアとはかけ離れ、表情が柔らかく、この気の置けない時間を楽しんでいることが十分に伺える。
 類は…といえば、呑みはじめた当初のようにつくしを見ることはなく、高校時代のイメージのとおり、眠そうにほとんど会話に加わることなく、話しかけられた時だけポツポツと答えている。
 それでも楽しんでいないわけではないようで、不思議に先ほど冷たいと思った昏い眼差しは消えていた。
 「桜子は、ネイルサロン経営か。あってるつーか、あんま、意外性はないが」
 「ええ、性分にあってるんですよね。ネイルサロンといっても、トータル美容もやってますから、元々興味のある分野でもありましたし」
 桜子の顔は、自信に満ち、輝いている。
 綺麗になった…元々綺麗な子だったけど、こうして久しぶりに再会した桜子は、今の自分の生き方が本人の言う様にあっているのだろう、同性のつくしから見てもとても魅力的に見えた。
 「けど、お前いいのか?三条家でも跡取りってお前だけだろ?大学の頃までは、けっこういい男探しに腐心してたように思ってたけどな」
 あきらの意外そうな言い方に、桜子が目を瞬かせ、にっこりと小首を傾げる。
 「もちろん!今でも素敵な男性を募集していますよ。仕事と恋は別です。三条家の為にも条件にあった素晴らしい殿方を捕まえなければ」
 エネルギッシュで可愛くて、そのうえ賢くて…腹黒いとなったら、どんな男も意のままだろう。
 「…なんですか、その失礼な言い草は」
 心の中で言ったつもりだった台詞がまたも口から出ていたらしく、桜子に綺麗な顔で凄まれ、あはは…と乾いた笑いをあげつつ、こめかみをポリポリ。
 「いやあ、桜子なら、どんな素敵な男性でも望みのままだろうなあ~と」
 その言葉になぜか、憮然とされる。
 「何言ってんですか。先輩が言うと嫌味ですよ」
 嫌そうに言われ、つくしがキョトンとして首を傾げる。
 それに、総二郎とあきらが苦笑しているのを見て、なおさらつくしの頭は疑問符だらけになった。
 「…お前、そりゃあ、いくらなんでも無邪気すぎるだろう」
 「え?なにが??」
 「…いや」
 「いいんですよ、先輩が鈍いのは今さらですし、昔のことですもの。今だったら、絶対に先輩に負けたりしません!」
 「…だから、何がだつーの」
 妙に奮起している桜子の様子にやれやれと、頭を振る。
 「で、先輩の方はどうなんです?まさか、いまだに男の一人もいない、なんて言うんじゃないでしょうねぇ?」

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