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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第一章 再会

昏い夜を抜けて010

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 交わる視線と視線。
 間接灯の照明の下、糸を引いて唇に垂れた唾液を男自身の赤い舌先がペロリと舐める。
 そんな仕草に、強烈なフェロモンを感じて、驚愕に口をあの形で開けっ放しにしていたつくしの頬が一気に茹蛸のように真紅へと染め上がった。
 女の媚びる甘い声音が、そんな美しい男に纏わりつく。
 まるで蝶が花の甘い芳香に群がるようにうっとりと。
 それが…食虫植物の誘い込む昏い死の接吻だとも知らずに。
 唐突に浮かび上がった思考につくしは頭をふり、凝視していた自分の不躾に気が付いて、そんな二人から顔を背けた。
 「あ、ん、どうしたの?」
 「ん~、ごめん、連れが来たから」
 さっきまで茫洋としていた女がつくしを振り返り、鋭い険を目に浮かべる。
 「やだ!何、まさか、彼女?」
 「ううん、違う。友達の元カノ」
 「な~にそれぇ?」
 類のわけのわからない説明に、女が疑問符を浮かべて、首を傾げている。
 「今は友達の友達…かな。今日は俺、みんなで来てるから、また今度ね」
 「え~。しょうがないなあ、絶対にさっき渡したメアドに連絡してよ?」
 チュッと唇に軽い口づけを一つ。
 名残惜し気に体を離した女は、硬直して根が生えたようにその場に立ち尽くすつくしの頭の天辺から足のつま先までを眺め、嘲るようにフンと鼻を鳴らした。
 そして、横を通り抜け様、毒を囁く。
 「…その顔で、あんたいい気になってんじゃないわよ」
 なんだか、昔あったようなシチュエーションに、つくしの眉がピクリと吊り上がる。
 だが、つくしも昔のような瞬間湯沸かし器的な高校生の子供ではない。
 殴りかかることは避け、拳をギュッと握りしめて口惜しさを押し殺す。
 …なんで、あたしがまたそんなこと言われないといけないのよっ!
 そのかわり、憤りの大半は類へと向かうが、しかし…。
 何食わぬ顔で、立ち尽くすつくしの横を類がすり抜け、通り過ぎる。
 「あ、あのっ!」
 「なに?」
 意外にも返答が返って来て、逆につくしの方が困ってしまった。
 「…えっと、その。さっきの女性は花沢類の知り合い?」
 立ち止まってつくしを見下ろす類の顔は、何の感情も浮かべていなくてつくしには落ち着かない。
 答えないかと半ば諦め、答えたからと言ってどうだというのだと、内心動揺する。
 「知らない」
 「へ?」
 「レストルーム寄ったら、声かけられたからさ。ちょっとしつこかったから、あんたが来てちょうど良かった」
 「はあ」
 さようですか。
 って、見も知らない女と、あんな濃厚ラブシーン?!
 思わず、茫然と類を見上げたつくしに何を思ったのか、二歩、三歩とつくしの元へと長いスライドで戻ってきて、屈んでつくしの顔を覗き込んだ。
 そして…そのまま、キス。
 チュッ。
 綺麗な顔の拡大急接近に驚きに目を見開いていたつくしが、反射的に類の頬を張ろうと手を振り上げる。
 が、一歩先んじた類が、後ろに下がって、クククと喉の奥で含み笑った。
 「すげぇ、凶暴~」
 そのどこか嘲笑を含んだ言葉に、茹蛸のように紅潮していたつくしの顔が今度は青くなり、そして再び赤くなる。
 つくしは片手でキスされた唇を、覆い隠して絶叫した。
 「な、な、な、なっ!何すんのよっ!?」
 叫んだ声はみっともなくうわずって、動揺も顕わだった。
 類はつくしの動揺にも一顧だにせず、邪気もなくニッコリと普通に微笑んでくる。
 堕天使のなんと美しい事か。
 邪気がない?…いや、それどころか、今の類の笑みがどれだけタチが悪く、確信犯的なものであるか、そういう方面では極めて奥手なつくしにだって想像がついた。
 「消毒」
 「はああっ!?」
 そのまま、赤くなったり青くなったりを繰り返すつくしを面白そうに眺めていたと思うと、次の瞬間には未練もなくつくしへと背を向け、歩み去っていった。



 「なによ、あれっ!」
 ぽか~んと類を見送り、そのまま茫然とレストルームの前で佇んでいたところを、やはりトイレに立った総二郎が発見して、怪訝に声をかけた。
 「なにやってんだ、お前?」
 顔の前でヒラヒラと手を上下にフラれ、やっとこさ我に返ったつくしの第一声が、さっきのあれ…。
 「なによ、あれ…って、いったいなんのことだよ?」
 怪訝な顔をされるのも、致し方なし。
 しかし、目の前の女っタラシと先ほどの類の行動が妙に重なり、やや八つ当たり気味にニヤけた美青年ヅラの総二郎の顔をギッと睨む。
 「あんたらって、ホント!節操ないわね、相変わらずっ!」
 「はあ?」
 唐突に噛みつかれ、総二郎は面喰い首を傾げる。
 「あんたといい、美作さんといい、…花沢類といい!」
 思わず、類の下りで語調が荒くなるのは致し方ない。
 なんなのよ!信じられない。
 あれが、本当に花沢類?!
 つくしが類を知っていた高校生時代はもう遥か過去のことで。
 つくしが知っている…知っていたと思っていた当時の彼でさえ、本当は類のほんの一部にしかすぎないことも、大人になったつくしは十分に理解していた。
 けれど、あまりの変貌に、感情がついていかない。
 …あたしの知っている花沢類は、無愛想で何事にも関心が薄くて、見も知らない女の人とキスして、あんな…誘惑するみたいな顔で笑いかけてくる男じゃなかった!
 なんだか、ショックだった。 
 別に類が本当はどんな男だったにしろ、恋人でもなく、友人ですらない、ただ高校時代ホンの一時、同じ場所を共有したことがあると言う知人に毛が生えた程度の関係である自分が、何をショックを受けることがあるのだと、冷静な部分が言うのに、憤りと…哀しみが押さえられない。
 なんなのよ、この嫌な気持ちは!
 あたしがこんなことを思う筋合いなんてないのに。
 でも、後から後から、心の中をもやもやが湧きだしてくる。
 さっき、見たあれは何?
 見も知らぬ女とキスをして、そのすぐ後あたしにからかって、まるで挨拶するくらいの気軽さでキスをするような男が花沢類だなんてやっぱり信じられないよっ。
 静さん…そうだ、静さんはいったいどうしたんだろう。
 関係ないことだと思いながらも、そんな思考をつくしは追うのを辞めることができない。
 それこそ、司のことよりも遥か以前にふんぎりがついたはずの気持ちだったはずだ。
 類が静を追ってフランスへ発った時に…。
 なんで今更こんな気持ちになるのだろう。

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