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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第一章 再会

昏い夜を抜けて008

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 突然割り入ってきた涼やかな声に、一同が一瞬、沈黙に陥る。
 つくしもとっさに誰からの言葉だかわからなくて、目を瞬かせた。
 「なに?聞いちゃまずかった?」
 さっきまで、黙々と聞いているのか聞いていないのか、酒を一人傾け、眠そうにしていた類が、小首を傾げていた。
 大人の男って見かけになった癖に、こういう仕草はいまだに似あうのね…呆れ半分、感心半分。
 つくしが何も言えずにいると、桜子が総二郎を見やり、総二郎があきらを見やる。
 俺?とあきらが自分を指さしながら、つくしに視線を向けるので、つくしは困って曖昧に微笑んだ。
 それに溜息一つついて、仕方なしにあきらが口を開く。
 「牧野、類に俺から話すぞ、いいよな?」
 「あ、うん。かまわないよ。それこそ昔のことだし」
 自分でどう言ったらいいのかなんて、よけいにわからない。
 なぜだか、類には言いたくなかった。
 司と自分の交際など。
 「牧野が司に赤札貼られてたのは憶えてるよな?」
 「さすがに、そこまでボケっちゃいないよ。今思うと、あいつも大概ガキ臭いことやってたよね」
 「…あんたらも同罪だったけどね」
 あまりに他人事な言い方に、カチンと来て、思わず言わずもがなな言葉が付いて出る。 類はキョトンとし、学生時代何度か諫言してやった過去がある総二郎とあきらは気まずげに顔を見合わせた。
 「ごめん、続けて」
 いま、そんな断罪を言い募っても仕方がない。
 「…で、実は司のやつ、本当は牧野のことが好きだったらしくって」
 「ふ~ん、やっぱりそうだったんだ?」
 「なんだよ、類、やっぱりって、気が付いてたのか?」
 意外そうに体を起こして類を見返す総二郎に、類が肩を竦める。
 「気が付いてたって…お前らだってわかってただろ?司のは、まるっきり小学生の好きな子苛め。気になって気を引きたかったから…ってやつ」
 改めて言われてしまえば、つくしもそうだったんだろうな、とは思うけれど、そんなことが理由であの凄惨な苛め体験をさせられたのではたまったものじゃなかった。
 小学生の好きな子苛めは大概他愛無いものだったが、司の場合は犯罪スレスレ、下手をすれば好かれたこちらの心が病みそうなとんでもなく迷惑なものだったのだ。
 好きだったから…で許される問題じゃない。
 「まあな。で、なんだ。幼稚なヤツも、お前がその…フランスに渡っちまって、やっと自覚したんだか、認めたんだか、牧野にアタックしだしてな」
 「へえ?そうなんだ?」
 自分で言いだしたわりに、なぜだかすでにどうでも良さそうなのは、気のせいだろうか。
 別に強く関心を示して欲しいわけではなかったが、途中欠伸なんかして、あからさまに適当な類の態度に、説明するあきらの顔も引き攣っている。
 自分が話をフッてきたんだろうが!
 あきらの内心の声が聞こえそうだ。
 「でも、なんで、俺がフランスへ行ったことと、司が牧野にアタックしだしたことが関係あるわけ?」
 思わず類とつくし以外の全員が顔を見合わせ、その後なんとも言えぬ間のまま、つくしへと視線を向ける。
 うっ。
 その視線の意味が十二分にわかって、つくしは思わず赤面し、火照る顔を反らしかけて、不思議な色合いをした類の目と合ってしまった。
 やだ~。
 よもや、初恋の君本人に、今更この年になって告白?するハメになるとは。
 当時、類もつくしの気持ちを知っていたのではないかと思う。
 なのに、こんなところで再びそれを暴き立てられる羞恥に、つくしは酔った頭でさらに酒を煽らなければやっていられなかった。
 「…まあ、なんだっていいじゃねぇか。とにかく、お前がいなくなってから、牧野と司は付き合いだしたんだよ」
 「ふうん?…じゃあ、牧野って今も司と付き合ってるわけ?司、大河原財閥のなんとかって令嬢と婚約してなかったっけ?」
 またも沈黙が落ちる。
 「えっとね、花沢類。その、高校生の時には、え~、ちょっとの期間、道明寺とあたしがその、付き合ったりとかそういうこともあったんだけど」
 何と言ったら事実と近いのか…いや、結局は、別れた、その一言に尽きるのだが。
 「…道明寺さんのお母様が、ひどくお二人の交際に反対されたんですよ。それで、道明寺さんと大河原財閥の令嬢…滋さんとの婚約とか…いろいろ持ち上がって」
 見かねて口を挟んだ桜子に、いま気が付いたかのように類が怪訝な顔を向ける。
 「あんた、確か、旧華族の…三条家だっけ?そこの令嬢かなんかだよね?あきらか総二郎の女なの?」
 その言葉に、酒を口に含んでいた総二郎とあきらが同時に噴き出す。
 「ぶっ!おい、勘弁しろよ~!」
 「そうだ!馬鹿っ。この間のパーティで紹介しただろ?」
 桜子の方は平然と蠱惑的な笑みを浮かべ、類をそそのかすように、誘惑するように見つめた。
 しかし、類の方はそんな桜子の眼差しにも、ピクリとも反応せず、ただ、冷たく無関心に見つめ返すだけだ。
 お前は、なんでここにいる…と。
 傍にいるつくしの方が、その冷淡な視線に身震いをするくらい。
 昔、つくしが類の周りをうろついていた頃の視線と重なる。
 どこまでも拒絶的で、無機質な眼差し。
 まるで物を見るかのようだと感じるのは、穿ちすぎか。
 「桜子はいろいろあって、俺らの仲間になったんだよ。もちろん、牧野もな。今じゃあ、男女を超えたダチだ」
 「へ~、お前らがねぇ」
 類の顔には何の揶揄も含まれていなかったが、わずかに意外さも含まれていたのは気のせいではないはずだ。。
 ほとんど感情のないかのような有るかなきかの反応しか寄越さない青年だったが、わずかなりとも感情の流れがあることがわかってつくしはホッとする。
 初めて出会った頃の類もそうだった。
 そして、いくらかしてだんだんと類の内面を知るようになり、彼が決して感情がないのではなく、ただ、自分の感情にさえ無関心で内に閉じこもり、他人を拒否しているゆえに感情を表に出せないだけなのだと、つくしは知っていた。
 当の類は自覚していたか、していなかったかはわからないが、少なくてもつくしは彼のわかりづらい優しさにも気が付いていたし、実際に感謝してもしきれないほどにたくさんのことをしてもらったのだ。
 類には幸せになってもらいたい。
 そう思って、見送ったあの少女の日。
 なのに、なぜ、類はまた、こんな昏い目をしているのだろう。
 あの日、あの時見送った晴れ晴れとした強い眼差しではなく、またも閉じこもってしまった虚無的な目。
 類の目は、昔大好きだったビー玉のように綺麗だったが、同時にどこか虚ろで見つめることが哀しかった。
 「じゃあ、結局、あれだけ嫌がらせして、牧野を振り回したあげく、付き合ったと思ったら、司が牧野のこと捨てたわけだ」
 ズバリと言いにくいことをいう類の言葉に、なんとも返答のしようもない。
 実とは違うのだから、否定してもいいのだが、だとしたら事実をどう告げるべきか、あきらが逡巡しているのをつくしは見て取った。
 「…あたしから、別れようって言ったんだよ」

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