FC2ブログ

「昏い夜を抜けて…全483話完」
第一章 再会

昏い夜を抜けて007

 ←それでも貴方を愛しているから034 →それでも貴方を愛しているから035
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 彼らが出会い、笑い、憤り、泣いて、共に過ごした時代は、ちょうど子供と大人の狭間。
 この時期、女は大きく変わる…実際に、数年ぶりに再会した桜子は以前よりさらに美しく変化し、大輪の花の様相を呈していた。
 しかし、男だって、変わる。
 つくしは、メイプルの地下のバーに移動した先、VIP専用スペースに設えられた重厚なソファに腰を下ろして、供されたカクテルを舐め、チラリチラリと斜め対面側に座る類へと視線を移す。
 柔らかな茶色の髪をオールバックに撫でつけ、パラリと額にかかる美貌は歳月を得て、王子様の甘さから脱却し、年齢に似合わぬ落ち着きと自信を身に着け、大人の男の色気を内包している。
 クールで、ストイックな魅力…。
 そんな類が、時折、つくしの視線に気が付いたように目を向け、つくしはつい視線を反らせて何くわなさを装う。
 ビー玉のような感情を映さない淡い色合いの瞳だけが、あの頃と変わらない気がして、つくしはまるで彼に憧れた初心な少女時代のようにドキドキと動悸を速めた。
 なに、ドキドキしちゃってるのよ。
 初恋の君だなんて、もうカビも生えちゃうくらい昔の話じゃないの。
 そう思うのに、ついその存在に、空気に、酔わされ惹かれてしまう。
 「先輩、そんなちびちび飲んじゃって。相変わらず、弱いんですか?お酒」
 隣に座った桜子に突然ふられ、目を瞬かせる。
 「え?あ、うん。昔よりはそれでも飲めるようになったけど。つーか、あんたら、みんな水みたいにガバガバ呑みすぎ。明日は休日のあたしはともかく、あんたらは明日も仕事あるんでしょ?」
 つくしの問いかけに、あきらが苦笑し、総二郎が肩を竦める。
 「一応、セーブしてるよ、これでも。ご推察の通り、俺、明日から北海道」
 「牧野、年食っても相変わらず、説教くせーな。見た目はガキみたいなのに、けっこう根性はおばさん?」
 総二郎の失礼な物言いに、親指を下にして見せ、わざと険立てて睨み付けてやる。
 「殺すわよ、あんた。相変わらず、失礼ね!」
 「そういうとこ変わってねぇな。俺にそんなこと言う女なんてお前くらいなもんだぜ。見た目はまあ、確かに相変わらず若いけど、ガキみたいつーのは冗談。牧野、お前ずいぶん綺麗になったじゃん」
 ニヤニヤ笑う総二郎の顔に浮かぶのは、親しい友への親愛がある。
 言葉じりは軟派だったけれど、口調に口説くような浮ついたものはなくって、つくしも内心こんな綺麗な男に、綺麗になったと言われて気恥ずかしいものはあったが、何食わぬ顔で礼を言う。
 「…もう、そっちこそ、本当に変わってないんだから。あたしは騙されないからいいけど、褒めてもらったみたいだから、一応お礼は言っておく」
 「て、西門さん、真面目に先輩のこと口説いてるんじゃないんですか?」
 横からカラかってくる桜子に、総二郎が大げさにはあ?と驚いた顔で否定する。
 「んなわけないだろ?いくら綺麗になったって言ったって、今更コイツを口説いたりすっかよ。ダチはダチ、いくら俺が節操なくても、それは変わんねぇの」
 「ま、そりゃそうだ。俺もマジで牧野は綺麗になったと思うけどよ、高校生ん時の強烈な牧野見てて、とてもじゃないけど、俺の手に余るって思うしな」
 「…何よ、人をまるで怪獣みたいに」
 「怪獣つーか、珍獣だろ?!」
 「「まさに!?」」
 総二郎のツッコミに、あきら、桜子が声を合わせて歓声を上げる。
 それを聞いて、子供っぽいとは思いつつ、ついついつくしも唇を尖らせ、頬を膨らめさせた。
 クスクス笑う声が聞こえて、そちらへと顔を向けると、類が口元を抑えて小さく笑ってる。
 今日初めてマトモに視線があって、つくしは赤面した。
 や、やだ、こんな顔見られちゃって…。
 どうも調子が崩れる。
 総二郎やあきらとは、高校時代、司との交際を通じてかなり親密な友情を育てた。
 だが、類は静を追いかけてフランスへと旅立ってしまったため、あの頃の、どうにも切ない初恋のまま…美しい思い出のままに時を止めてしまった感がある。
 今さら…とは思うのに、ついついあの頃の初心な少女時代のまま、類の一挙一動に反応してしまう自分が気恥ずかしかった。
 「まあ、いくつになっても変わんねぇ珍獣はともかく、桜子は会うたびにイイ女になるな」
 「…だから、誰が珍獣なのよ」
 ボヤくつくしをさりげなく無視して、あきらがとりなすように桜子に話をフると、桜子も心得たとばかりに嫣然と微笑む。
 その自信に満ちた笑みが、彼女をなおいっそう魅力的にみせ、自分を知る女の艶をなおいっそう引き立たせるのだ。
 「光栄ですわ。皆さんの注目は先輩にばかりいっていて、私にはひとかけらも向けてくださらないのかと、少し哀しく思っていたところです」
 「…よく言うわよ。あたしを踏み台にしても、無理やりにでも注目させ…っ!痛いっ」
 ギュウッと足をピンヒールで踏みつけられ、ソファの下に屈みこんで踏まれた足を撫でる。
 ちょっと!マジで踏んだわね。
 あんたのヒールは凶器なんだから、手加減しろっ!
 「先輩、大丈夫ですか?呑みすぎたのかしら?」
 心配そうにのぞき込む桜子にグイグイと背中を押されて、本当に吐き気がしそうで苦情を言いつのれない。
 もちろん、心配そうなのは声ばかりで、つくしを見る目は意地悪にキラキラと輝いている。
 相変わらず大したタマのようだった。



 酒が進んでくると、だんだん話は昔話へと花が咲き、最初は禁句のようだった司の話もチラホラとでるようになった。
 つくしにしても、あえていつもは思い出さないようにしているくらいには拘っていた思い出だったが、こうして当時の懐かしい友人たちと再会しては、司の話題も出るのは自然のこと。
 いつもよりペースの速い酒のせいか、意外にもあまり抵抗感はなかった。
 「…司と牧野、なんだかんだとくっついて、司のお袋の妨害にもめげずに付き合っていけるかも、なんて思ってたんだがな」
 総二郎の言葉に、つくしも曖昧に微笑むしかない。
 「大河原だっけ、司の婚約者」
 「…おい、総二郎」
 嗜めるあきらの言葉にも、総二郎は言葉を辞めない。
 「今更だろ?過去にあったことはいくら言葉を濁したって変えられねぇんだ。牧野だって、いつまでも何年も前のガキの頃のことを拘っちゃいねぇだろ?」
 総二郎の言葉は確認すると言うより、拘ったってしょうがないんだぞ、とつくしに言い聞かせているようでもある。
 隣の桜子が心配そうに、つくしを見ていた。
 「…まあね。拘ってるか、拘っていないかと言われたら、そりゃあ、あえて口にするほどさばけてはいないけど、確かに西門さんのいうとおり、もう何年も前のことだよ」
 「そうだ。もう終わったことなんだよ、それをいつまでも禁句にして、俺らまで気まずくなるってのはおかしな話だろうが。あえて、傷を抉る必要はねぇが、俺らまでもが変に勘ぐって、牧野にこだわらせてどうする。牧野にだって、牧野の時間が流れてたんだろ?」
 言われてみればそうだ。
 司のことは忘れがたかった。
 だが、そうだからと言って、司にも時間が流れていたように、つくしにも平等に時間は流れ、いつしか、司のことばかり考えることはできなくなっていた。
 そうして、司に大河原滋という婚約者が存在したように、つくしにもつくしなりの平凡な恋愛や毎日が存在して、その流れの中でそれなりに幸福に、それなりに平穏に毎日を過ごしてきた。
 この困惑が、司の名前が出てきた故でなく、その司の名前にいつまでも周囲の友人たちが気を使い、拘っていることが原因だったのだと、総二郎の言葉でつくしも気が付いた。
 「俺らと会えば司の名前が出てくるってことはわかっていたはずなのに、こうして俺らに会う気になったんだ。牧野も、そういう意味では吹っ切れてるんだよ」
 総二郎の言葉に力を得て、横で自分を見ている桜子へと安心させるように、頷きかける。
 それにホッと表情を緩めて、桜子が膝の上のつくしの手をそっと握りしめ、離した。
 「…ねえ、その話から言うと、なに?牧野って司と付き合ってたの?」

◇交流・意見交換 『こ茶子の部屋』へ
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ

↓ランキングの協力もよろしくです♪
ブログランキング・にほんブログ村へ 💛 
いつも応援ありがとうございます^^!

web拍手 by FC2

関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【それでも貴方を愛しているから034】へ
  • 【それでも貴方を愛しているから035】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

NoTitle

類つきの更新待ってました!
とても楽しみにしています。
無理の無い範囲でがんばって下さい
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【それでも貴方を愛しているから034】へ
  • 【それでも貴方を愛しているから035】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク