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「それでも貴方を愛しているから…全97話完+α」
第二章 疑惑…掛違う運命の釦

それでも貴方を愛しているから037

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 たぶん、ほとんど見も知らないあたしにそんな話をしだしたのは、泥酔するほど飲んだお酒の勢いもあるだろう。
 けれど、重いものを含んだその顔は、苦しい、苦しい、苦しくてたまらないから誰か助けて、と、必死に誰かに助けを求めていた。
 たぶん、たまたまそこにいたのがあたしってだけで、園崎さんは何もあたしに話したかったわけじゃない。
 でも一人では抱えきれない何かを、つい吐露してしまったんじゃないだろうか。
 そして、英徳はあたしの出身校でもあり…また、園崎さんと同じ影を知る人間でもあった。
 園崎さんのお母さんが危惧していた通りだったんだ。
 「ずっと忘れられない。もう終わったことだって、逃げて逃げて…英徳を辞めたのに影から逃げきれない」
 「…園崎さん」
 泣きぬれた虚ろな目は、まるで初めてあった時、男たちに蹂躙されていた時のように虚ろで昏く淀んでいた。
 「いまでも夢に見るんです」
 『つかまえてやっちまえっ』
 爆発しそうな心臓。
 恐怖でガンガンと鳴り響く耳鳴り。
 「何度も何度も」
 『やったっ、つかまえたぞ』
 『押さえろっ』
 笑い声。
 園崎さんの声に重なるようにして蘇る遠い記憶の声に、あたしは身震いし、思わず口元を手で覆い隠す。
 「不思議に、事件になった時のことより、あの初めて襲われた高校生の時のことが強く焼き付いていて。もちろん、その後のことも思い出しますけど、あの時の怖かったこととか、辛かったことが忘れられない」
 ふうっという溜息にも似た密やかな吐息に、園崎さんの顔を見直す。
 もう園崎さんの目の虚ろさは消え失せ、元々の理性の光が蘇っていた。
 目が真っ赤で、まるで血の涙が溢れだしているような錯覚に陥る。
 「…ごめんなさい、あたしったら。こんなこと、牧野さんに」
 「いえ」
 モゴモゴとそれだけを返すけど、園崎さんはあまり聞いていないみたいだ。
 たぶん、話したい気持ちが溢れて止まらないんだろう。
 それも、ほとんど見も知らない通りすがりに近いあたしだからこそ話せるのか。
 …あんな場面を見られてしまったことによる彼女なりの開き直りだったのかとも思った。
 「怖くて…一人でいるのが不安で、それでつい自分でもバカなことをしてるってわかっていても、一緒にいてくれる人を捜してしまったり…それで結局、また同じ目に…今度こそは絶対に、間違わないって思うのに」
 園崎さんのお母さんのいってらしたことを思い出す。
 園崎さんが被害にあったのは英徳在学中のいったいいつ頃のことかはわからないけれど、高校生といえばまだ子供と大人の境界線。
 心につけられた傷跡が、かえって自分自身を傷つける方向へと向かってしまっても仕方がないのかもしれない。
 自分から危険な状況に飛び込んで、何度も同じ被害を受けることで苦痛を麻痺させようとする防衛本能や、過去回帰によって克服しようとするとする行動、それらすべてが園崎さんを何度も傷つけ、今なお逃れられない苦痛の中もがき苦しんでいる。
 ポツリポツリと園崎さんの独白は続く。
 「…恋人ができた時もあるんです」
 「……」
 「でも、恋人ができると、男の人って体を求めてくるでしょ?」
 道明寺を思い浮かべて、そっと頭を振る。
 今はあたしのことじゃない。
 でも、あまりに園崎さんの語る独白は、あたしの経験と重なり、正直聞いているのが苦しかった。
 聞きたくない。
 そう言えれば、どんなに良かったか。
 でも、あたしは園崎さんの独白を遮ることも出来なかった。
 園崎さんの叫びはあたしの叫び、園崎さんの苦痛はあたしの苦痛でもあったから。
 ただ、一つだけ違ったのは彼女の恋人は、彼女を傷つけた張本人ではなく、あたしの恋人である道明寺は加害者でもあったのだ。
 「好きなのに。これは強姦なんかじゃないって思うのに、ダメなの。怖くて、嫌で嫌で、気持ち悪くなって吐いてしまったこともある。私…ずっとこんなんなんでしょうか。一生、好きな人とも触れあえないまま、何度でもあの時のことを繰り返して…擦り減っていくのかな」
 啜り泣きに耐えられなくなって、あたしは園崎さんを抱きしめた。
 「大丈夫、きっと大丈夫」
 自分でも何が大丈夫なのかわからないまま、自分に言い聞かせるように何度も何度も園崎さんに語り掛けつづけた。


 結局、園崎さんの酔いが何とか醒めて、曲りなりとも論理的に物事を考えられるようになった頃には、午前を過ぎていた。
 さすがに、この時間に家に帰すのも気の毒で、携帯から家に電話してもらい、うちに泊めた。
 ちょうど両親も弟も外泊中で家にいなかったことだし。
 隣り合わせた布団に横になって、話すともなく思いつくままに、お互いのことを話し、英徳時代のことも口にした。
 躊躇しながら問い掛けた問い…。
 「…もしかして、園崎さんをその、酷い目に合わせた相手って、道明寺の…その命令で?」
 歯切れ悪く尋ねるあたしの顔を見詰め、園崎さんはちょっとだけ考えてかぶりを振った。
 「たぶん、違うと思う。道明寺さんとは確かにクラスメイトだった時もあるけど、その頃、道明寺さんってほとんど学校に来なかったし。接点がなかったから、不興を買うような接触ってなかったもの」
 「そっか~」
 ほっと息を吐いたあたしに、園崎さんは優しく微笑んだ。
 なんというか、最初に優紀に間違えただけあって、優紀に雰囲気が似ている。
 髪型とかそんなこともあるのかもしれなかったけれど、ふんわりとした柔らかい雰囲気がそう思わせたのかもしれなかった。
 ただ、優紀と違うのは、なよやかに見えて優紀は芯が強く、かなりしっかりしている。
 柳に風という塩梅に、滅多なことでは折れなかった。
 園崎さんにはその強さがなくって、風にも耐えられない儚さ脆さが前面にたつ。
 でも、穏やかでとても優しい…そんな辛い目にあっているなんて、あたしまで哀しい思いのしてしまうようなか弱げな人でもあった。 
 「…牧野さんって、本当にカッコよかったものね」
 「え~、そんな、あの時はもう無我夢中で。カッコイイとか、そんなこと思う余裕もなかったよ!…あ、ごめんななさい。先輩にいつの間にかずっとタメ口になってましたね」
 いつの間にか忘れてしまっていた敬語に、ごめんなさいを言うと、園崎さんはフルフルと首をふって、いいの、と言ってくれた。
 「年齢こそ一年年上だけど、学年は下なんだもの。できたら呼び方も名前で呼んでくれたら嬉しいな。私もつくしちゃんて呼んでいい?」
 はにかんだように微笑む園崎さん…かすみさんに抗う理由もなかった。


 次の朝、あたしの両親が帰ってくる前にうちに帰るというかすみさんに我が家の標準食を振る舞い、すごい、すごいと身に余る感嘆をいただいた。
 かすみさんも聞いてみれば、やっぱりけっこうな御嬢様で、確かに道明寺や英徳に在学する学生たちに比べれば一般家庭に近かったかもしれないけれど、会社役員のお父さんと専業主婦のお母さん、年の離れた妹さんがいて、家事など手伝ったことがないとのことだった。
 起きてしばらくは、昨夜の深酒が元で、かすみさんの二日酔いはかなり酷くて嘔吐してしまう一幕もあった。
 幸い、衣服のサイズはあたしとそう変わらず、汚してしまったかすみさんの服の代わりに、あたしの服を貸してあげることとなった。
 恐縮して盛んにお礼を言うかすみさんをタクシーに乗せ、その後ろ姿を見送る。
 なんだか、濃い一日の始まりにあわわと欠伸をして、昨日のこととか、これからの別の事柄へと思考を変える。
 恋にばかりかまけてはいれない。
 まだ、実は就職先も決まっていなかった。
 4年のこの時期に…かなり我ながら呑気なことだったけれど、正直、ギリギリまで迷っていたこともある。
 道明寺は当然、あたしの大学卒業と同時に結婚したがっていたし、就職など言語道断、あたしを外の会社に働かせるなどこれっぽっちもあの傲慢俺様な頭のなかになかったはずだ。
 あたしの方でも、働きたい学んだことを生かしたい…という気持ちと、いずれ道明寺がNYに転勤になることもありえないことどころか、間違いなく来るだろう未来に思いを馳せ、決めかねていたのだ。
 どちらにせよ、結婚よりは元々就職に天秤の針は傾いていた。
 その場合、道明寺系の会社に就職ということになるかどうかは、この先の展開次第なのだろうけれど、とりあえず幾社か就職活動をする必要はあった。
 就職浪人だなんて冗談じゃない。
 うちにはそんな余裕はない。
 ふと、携帯電話に記録したスケジュールを確認しようとして、その着信に気が付いた。
 「あれ?類からだ。なんだろう、まさかもう道明寺がなんか迷惑かけてるわけじゃないよね?」
 とりあえず、納得して冷却期間を置いたはずだ。
 まだ、優紀にアクションを起こしたばかりで、何の話も通ってないはず。
 躊躇しつつ、時間を確認し、着信履歴から類の番号を呼び出し、電話する。
 1コール、2コール…7回目を数えて、かけなおすかと回線遮断表示に手をかける。
 『…牧野?』
 「あ、類。ごめん、忙しかった?また後でかけなおそうか?」
 類の声がどこか堅いようで、慌てて断りを入れる。
 会議中かなんかだったのかな。
 仕事にしてもまだ就業時間には早い時間帯だったけれど、道明寺や類たちの場合、どこで何をしているのか一般庶民とはかけ離れたところがあり、また仕事の面でも日本にいるとは限らないので、場合によってはとんでもなく迷惑な可能性も大だった。
 まあ、元々は類から入った着信への返信なんだけどね。
 『牧野、いまどこ?大学?』
 「え?ああ、昨日から冬休み…。えっと、今、家なんだけど」
 なんだか、類の様子が落ち着かず、変だ。
 なに?
 『いま、タマさんから電話があって、司、倒れたって』
 「…っ!?」
 『今、司、○△×病院にいるそうだからそっちに行ける?』
 道明寺っ!

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