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「夢で逢えたら…全207話完+α」
第一章 もう一度逢いたい

夢で逢えたら020

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 約10日の日本出張を終え、NYに戻ると、山ほどの決裁書類と企画案件、10年たってもほとんど変化のない親友の何食わぬ顔が待っていた。
 巷の女性たちには王子様と呼ばれ、整いすぎてやもすれば冷酷に見られがちな司と異なり、いくつになっても柔らかい砂糖菓子のような外見と、裏腹な食わせ物である男は、ふあああぁと緊張感のない欠伸を漏らして、目に涙を浮かべている。
 …狸め。
 「…と、いうことをもちまして、第一回目のワールド・テラーモール・プロジェクトの参画企業担当顔合わせおよび、折衝会議を終了したいと思います」
 司会を務めていた道明寺側の担当者の〆を受けて、各会社の担当者たちが次々に席を立ち、会議室の中央に坐していた司に挨拶し、室を後にする。
 その最後に、周囲の反応など意に介さない男が、悠然と立ち上がり、今日、初めて司の前に立った。
 「司、久しぶり」
 離れていた歳月をまったく感じさせない態度で、黒い尻尾が見えそうな胡散臭い笑みを浮かべると、司が肘かけている会議テーブルの脇に体をもたれさせかけ、長い足を組む。
 「…よう、10年ぶりか?類」
 「ん~、12年ぶりくらいじゃない?確か、司が交通事故にあって以来だからね」
 一刻も早く、自分が突き放してしまったつくしの行方を知りたくて、類やF2に連絡をとった。
 突然の豹変にも唯一戸惑わず、淡々とつくしの死と墓所を知らせたのは、この親友だった。
 「あれから、多少、態度も改まったみたいだけど、相変わらず投げやりにやってるみたいじゃない?」
 「お前は、相変わらず、昼行燈か?」
 失礼な物言いにも腹を立てず、類は肩を竦めて揶揄るように司を見返した。
 「言ってくれるよね、ゾンビのくせして。あきらに聞いた話だと、ずいぶん酷かったみたいだけど、実際会ってみると、なんだか噂とずいぶん違うじゃない?」
 噂など聞かずともロクなもんじゃないとわかる。
 そして実際、そうした噂と実情は司に限り、そうかけ離れたものでもなかった。
 冷酷・冷徹・非道。
 そして、荒廃した私生活。
 記憶を失う前の破天荒・無軌道さが、無気力・冷淡に変化しただけだ。
 「なんだ、会ってみたら、どうだっていうんだ?」
 つくしがビー玉の目と称した色の薄い怜悧な眼差しが、司を見透かすように眇められる。
 司と類は炎と水、光と影、正反対でありながら表裏一体。
 根本が同じだ。
 現れ方が異なるだけで、その生い立ちも孤独もよく似ていて、愛した女まで同じだった。
 司は焼けつくすように激しく愛し求めて、地獄の業火の中に取り残された。
 類は見守る愛を選択して、昇華できぬままに、再び虚無に追いつかれてしまった。
 だからこそ、類は司を本人よりも理解していたし、司は逆に類が理解できなかったのである。
 そして、類でなくても、そうたとえばあきらや総二郎のようにごく近しいものであればわかる程の変化を、司は見せていた。
 「牧野を見つけたの?」
 「あ?何言ってるんだ、お前?」
 怪訝に眉を顰めながらも、鋭い眼光を発してくる司に、類は首を傾げる。
 「好きな女ができたんだって?」
 「…なんだ、そりゃ。誰から聞いたガゼネタだよ」
 「ふ~ん?総二郎の話だと5年くらい前からマジに付き合ってる女がいるそうじゃない」
『好きな女』と言われて、自分でもわからないことに一瞬、言葉を詰まらせてしまった。
 だが、5年前…と言われて、すぐに思い出した女の横顔に、司はとても愛する女を思い浮かべたとは思えないような酷薄な笑みを浮かべた。
 「マジに付き合ってる女…か。まあ、そのうち結婚すっかもしれねぇから、そういう意味なら総二郎が言ってる通りなのかもな。どう、お前に言ってるのか、俺は知らねぇが」
 「大したこと聞いてないよ、司の婚約者のことなんか興味ないし。ただ、なんか顔つき戻ってるから、どういう心境の変化なのかと思って」
 かつて司と類の愛した少女が、ビー玉の目と称した薄い色の目が、淡々と司を見返す。
 この友も、一時期が夢だったかのように、変わってしまった…戻っただけなのだろう。
 だが、ここ最近、司は声をそろえたような評価を受けることが増えてきていた。
 雰囲気がかわった。
 人間味が出てきた。
 あたりが柔らかくなった。
 自分では意識していな変化で、大概の人間は司に対して思っていることを忌憚なく言うことなどできないから、そうそう聞こえてこない評価だったが、ごく近しい人間あるいは司の威圧にも屈しない一部の人間には、面と向かって言われていた。
 それが自分にとって言いことなのか、悪いことなのか。
 当の昔に、自分に対して何の興味も抱けなくなっていた司にはどうでも良いことだったが、自分以上に何事にも興味のなさそうな類に同じことを言われてしまうと、多少気にはなる。
 「俺の女に興味あんのか?」
 「それって、噂の婚約者ってこと?」
 「ああ」
 類は肩を竦めた。
 「いや、全然。5年前から付き合ってるって女じゃないでしょ?お前が変わったとしたら、最近の出来事のはずだ。そうじゃなきゃ、総二郎やあきらともっと早くに接触とってたんじゃない?お前、わかりやすいからね」
 だから、そっちには興味ある…と、探るように見据えてくる類に、司の方が内心、困惑していた。
 つっと何もかも見透かすような友の視線を避け、トントンと意味もなく手元のテーブルの上を長い指で弾く。
 自分の内面に問いかけてみても答えなどないから、話をそらすように質問に質問で返した。
 「…お前、まだ、牧野の墓参りに行ってんのか?」
 はぐらかされたことに気が付いていたが、類は特に咎めず、話を続けることを選んだ。
 「まあね。お前は…聞くまでもないかな」
 何のてらいもなく彼女に会いに言っていることを肯定できる類に、軋むような嫉妬を感じる。
 「いつまで、女々しく、しがみついてるつもりなんだよ、てめぇ」
 「しがみついてる…ねぇ。別に俺は、それを否定するつもりもないけど、お互い様なんじゃない?俺は彼女の思い出を愛して、お前は目を背けることで彼女を忘れられない。忘れたくもないんだろうけど。少なくても俺はお前みたいに、彼女に縋って人生世捨て人になってるつもりはないよ。実際、いいなって思う人とはこれまでもちゃんと付き合ったりしてきたし?」
 ただ、彼女を想うように想うほどの人に出会えていないだけだと思う。
 だから、彼女を想うほどとまではいわないまでも、その気になれる時がきたら、結婚もしようと思っているし、温かい家庭というのも持ってみようと思っている。
 彼女なら、きっとそう望んでくれると思うから。
 報われぬ恋の残骸に殉死して、生きた屍を自分のために作りたいなどと決して、思わぬ女だった。
 だから、自ら望んだからとはいえ、長く停滞し続けてきた司が歯がゆく、そして久しぶりに再会した友の変化に、目を見張った。
 恋人の死に殉じ、生きたまま墓石に埋葬されようとしていた男は、彼女を想うように想える人間と出会えたのだろうか?
 友のために、彼女のために、それならば喜ばしいと思いながらも、同時に心のどこかで寂寥を感じるのを類は自覚していた。
 矛盾しているな。
 この純粋な友ならば、恋に殉じて生きながら死んだままでいて欲しかったとでも?彼女の為に…。
 「類、今…お前、女いるのか?」
 彼女のように愛することができる相手ということだろう、と類は思う。
 それならば…。
 「結婚は…花沢の後継者を一緒に育ててもいいか、と思える女性はいたよ。それなりにね」
 「じゃあ、なんで結婚しなかったんだよ?」
 「結婚して、子供作って、その人を自分以上に愛して、大切にしていけるかな、って考えた。結婚を考えた時はいつもね。でも、想像できないんだ。なんだか、非現実的っていうのかな、今更熱く激しい恋愛なんて望んでいるわけじゃないんだけど、いい夫になって奥さんの為に自分の何かを犠牲にしてまで努力したり、我慢したりできる自分ていうのを思い描けなかったよ」
 司は類らしい物言いに、思わず失笑をもらす。
 「我慢?努力?なんじゃそりゃ、惚れるってそんなもんじゃねぇだろ。逆か、後継者つくる義務ってやつに、そんなもん必要か?籍入れて、家の対面ってやつを立てて、適当に子作りしてやりゃあ十分だろ?」
 「あきらが頭抱えそうだね。お前なら、まあ、そうだろうねぇ」
 愛か義務か。
 愛した女と結婚できたのなら、司はさぞ、愛した女を大切にし、彼のすべてを賭けて愛する女の幸福を守るために全身全霊を傾けただろう。
 政略結婚で、望まぬ結婚を強いられたなら、司はさぞ冷淡で冷酷な夫になったことだろう…実際に、そうなった。
 冷たい結婚の果てに、この世に産み落とした要という少年を犠牲にして。
 「…でも、俺は絶望しているわけじゃないんだ」
 類は一人ごちる。
 いつの日か、彼女を愛した時のように、誰かを愛する自分を諦めたわけではない。
 だから、やさしい妥協に揺れながらも、こうして独り身を通してしまっているのかもしれない。
 「…ああ、そういえば、お前の息子に先日、出くわしたよ」
 「ああ?要にか」
 「なに?他にも司、隠し子でもいるわけ」
 いるかっ、そんなもん!間髪入れずに返されて、類はクッと笑いを噛み殺した。
 なんだか、本当に、こいつは自分を取り戻してきているのかもしれない。
 十数年、司を覆ってきた冷たい沈黙が、取り払われている。
 「顔なんてお前にそっくりだったけど、性格もけっこう似てるよね」
 「そうか?俺よりはおとなしいらしいけどな」
 「うん、まあ、そうだろう。お前と違って生まれつき病弱なんだろ?」
 「ああ。今日明日死ぬような病気じゃねぇが、無理はできねぇ。タマや傍につけてる世話係の話によると、年のわりに聞き分けも悪くないらしい」
 「へえ?司とえらい違いじゃない」
 ワザとらしく目を見張る類に、司が青筋をたてる。
 「でも、病院のほかの子供たちとも上手くやってるみたいだよ?意外に。口の利き方なんかは、お前もロクに育ててないはずなのによく似てたけど、お前なんかよりよほど素直だ」
 「ほっとけ」
 珍しく饒舌かと思えば、類の物言いは、さすがに幼馴染だけあって遠慮がなく、毒舌だ。
 類の甘く柔らかい美貌から、たいていの女性は勘違いするが、その内面はかなり辛口で容赦ない。
 幼馴染の親友である自分たちや、かなり深く繋がっていた彼女は知っていたが、久しぶりに会うとムカつくことも多かった。
 それでも腹の底に司を利用しようと含みを持って近づいてくる者たちとは異なり、類を含めた幼友達たちは、いつでも司の味方だった。
 たとえ表面的な事象に敵味方に別れようと、その心の奥底では互いに心配し、いつも気遣ってくれる貴重な存在だったのだ。
 すさみ、凍えていた司の心は、長くそのことを忘れていたけれど。
 「彼女…Dr.マーベル、面白い人だよね」
 コツコツとテーブルを叩いていた司の指が、動きを止めた。

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管理者のみ閲覧でコメント下さった方へ^^

 こんにちは、初めまして。コメントありがとうございます。「夢で逢えたら」の続きが気になるとコメント下さり、やる気がグンッと上昇いたしました^^花より男子二次小説でありながら、「つくし」ちゃんの名前がほぼでてこない!こんなんで、面白く思ってくれるかなあ…と不安に思ったり。
 でも、ご推察、おおっと感心したり、惜しいと思ったり。
 ここでお返事するのも面白さを損なうと思いますので、むふふふと含み笑いしつつ内緒にしますが、後数話でそこのところの謎「つくしちゃんはどこに!?」が解決するはずです。
 やっぱり、こういう中途半端なところで放置は何なので(いや、ほかのも放置してますが…)、総二郎デート編の前に、「夢で逢えたら」第一章完結?だ!と念じ、頑張ります!
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