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「中・短編」
Short story(1話完結)

あたりまえの幸福(つくし)

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 目が覚めると、大好きな人がいて、おはようって言える幸せ。
 何でもないことに笑って、つまらないことで喧嘩して、でもすぐに仲直り。
 プライドが高くて、他のひとには絶対に謝ったりできない男なのに、あたしには必ず先にごめん、て謝ってくれる。
 ホントは素直になりたいの。
 意地を張ったりしないで、ちゃんとあたしも悪かったの、大好き、こんな可愛くないあたしだけど、嫌いにならないで、って言いたい。
 でも、なんでか、あいつの怒ったキレイな顔を見ていると、怖くなっちゃて、不安になって、そんな弱々しい自分が嫌で思ってもみなかったことを言ってしまう。
 こんなにもあいつことで頭は一杯で、そんなあたしを知られるのが恥ずかしくって、わざとあいつを傷つける言葉を言っちゃうの。
 あ、と思った時にはもう後には引けなくって、せっかくめったにないアイツのオフを一緒に過ごそうって、楽しみにしていたのに、進歩のないあたしはまた墓穴を掘ってしまう。
 「もういやっ!あんたの顔なんて見ていたくない。帰るからっ!?」
 「勝手にしろっ!」
 こちらを見ることもしないで、吐き捨てられた。
 グッと涙が込み上げそうになったけれど、馬鹿なあたしはまた謝る機会を逸して、お屋敷を飛び出した。
 なんでなんだろう。
 なんであたしは、こんな悲しい思いをしてあいつを傷つけて、一番大切な人なのにあいつにだけは素直になれないの?
 追いかけてきてくれないかと、飛び出してきた勢いとは裏腹に、わざとゆっくり歩いて、見かけだけは肩を怒らせ意地を張っている。
 いったい誰のために?なんのために?そんなのあたしだってわかるはずがない。
 すごくすごくゆっくり歩いたのに、あいつの歩幅の大きな足音は聞こえない。
 何度も何度も振り返りたいのを我慢して、とうとうお屋敷の塀が途切れたところで、後ろを振り返った。
 誰もいない。
 あいつの困ったような、強張った顔がなくって、あたしは一気に悲しくなった。
 怒ってるんだ…あたりまえだ。
 許してくれてないんだ…どうしよう。
 悲しみと不安と怖さでいっぱいいっぱいになって、あたしはしゃがみこんでしまった。
 人目なんて気にもならないで、道の真ん中に踞り、膝を抱えて顔を伏せてすすり泣く。
 「おまえ、なにやってんの?」
 呆れたような聞きなれた低い声に驚いて顔をあげると、ふてくされて不機嫌な顔をしたアイツが、鉄柵の向こうでこっちを見ていた。
 ポロリとまた涙がこぼれた。
 コイツの前で泣くなんて、まるで泣き落としで許してもらおうとしてるみたいで、いやだった。
 まだ、意地を張るか、あたし。
 でも、それが、あたし、牧野つくしなんだもん。
 「ばっかじゃねぇ、ガキじゃあるまいし、こんな道端で座りこんでべそかいてよ」
 ため息ついて、柵に手をかけた道明寺が、一気に塀の上へとよじ登る。
 大きな体躯なのに、少しも重鈍さなんてなくって、身軽に柵を飛び越えた。
 あっという間にあたしの傍らに立ったのになにも言わずにあたしから顔を背けてる。
 気まずい沈黙。
 しばらく互いに無言でそっぽをむきあって、互いに相手が何かをいってくれないかと望んでる。
 そんなことはわかるのに、どうしてあたしったら、魔法の言葉が言えないの?
  「ありがとうと、ごめんなさいは魔法の言葉だよ」って、コイツのお母さんに教えてあげたのはあたしなのに。
 今は、どうやってきっかけをつくったらいいのかと、こっちが聞きたいくらい。
 「ごめんなっ」
 えっ?
 「悪かったよ。お前の意思を無視する真似して、すまなかった」
 ささいな、本当にささいなことで。
 単に平凡な女のあたしが、道明寺みたいな男と付き合ってるなんて、知り合い程度の人に知られたくないとか。
 庶民のあたしが、道明寺と付き合うのなんて、お金目当てに決まってるとか、そんな色眼鏡で見られたくないなんて、ちっぽけなあたしの自尊心。
 先に仕事が終わった道明寺が、暗くなった夜道を歩いてお屋敷までやってくるあたしを心配して、バイト先に迎えに来てくれた。
 『絶対に、迎えにきたりしないで、って言ってあったのに!あんたと付き合ってるなんて、周囲にバレたらどんなことになるかっ。少しはあたしの立場も考えてよ!』
 確かにむやみに騒ぎ立てられたり、皆の態度が変わったり、過去に幾度となく経験した苦い思い出だったけれど、言い方ってものがあったはずなんだ。
 あるいは、心配性のこの人を心配させないように、あたしは庶民だからと頑なに断ったりしないで、道明寺から寄越される車の送迎やタクシーでの移動だって許容すべきだったんだよね。
 あげくのはてに、ただあたしを想って心配してくれただけのこの人に、辛く当たって、謝らせている。
 あたしは自分が情けなくなった。
 愛されることに慣れて傲慢で、自我ばかりが肥大した嫌な女。
 「ダメか?ムカついて、まだ許せない?」
 俺様男の癖に、困惑して困ったような声音に、ただ俯いて頭を撫でられるままだったあたしは、ひえひえっと、泣き出してしまった。
 「お、おい?」
 焦って抱き込んでくる大きくて広い背中に両手を回し、あたしこそ、ごめんねと言おうとしたのに、嗚咽で上手くしゃべれない。
 やっぱり、コイツが悪いんだ。
 あたしを甘やかして真綿でくるむように、愛して慈しむことしかしないこの男のせいで、あたしは堕落してしまった。
 よわっちくて、ワガママで、甘えたがりの最低最悪の女に。
  「泣くなよ。お前が泣くとどうしたらいいかわからなくなる。お前のためならなんでもしてやるし、どんなことでも我慢する。でも、お前は幸せに笑っててくれよ」
 眠る時に愛する人の顔見て、抱きしめられて、キスされて、おやすみと言える幸せ。
 些細なことに怒って喧嘩して、ちっとも素直じゃないけどこれだけは本当なの。
 この世の誰よりあんたを愛してる。
 だからあたしを嫌わないで、ずっと側にいて。
 あんたが抱き締めてくれるだけで、あたしはなにもいらないから。
 必要なのはあんただけ。



~Fin~


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素敵

こんな日常のさりげないひとこまで、つくしと司の心の中がのぞけて、本当に嬉しいです!なにも事件がなくても二人の結びつきが深くなっていく過程を観るような・・・
ほかのお話も大好きで一日に何度ものぞいているのですが、こんなお話も大歓迎!ぜひまたシリーズでやってください。

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