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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第一章 再会

昏い夜を抜けて005

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 なんだかんだと夕食も御馳走になり、つくしは美作家の車でアパートまで送ってもらうこととなった。
 明日は月曜日だし、職場もこちらから通勤しても大して変わらないのだから、泊まれと誘われもしたけれど、さすがに昔からの友人で家族の他にもたくさん人が住み込んでいて、部屋数も腐るほどあるとはいえ、恋人や家族でもない男性の家につくしの常識では泊まるわけにはいかなかった。
 「なんだよ、泊まっていけばいいのによ」
 「うん、でも、弟も待ってるし」
 「ま、それならしゃーねぇのか?大学生にもなりゃ、女の一人もいるだろうし、姉ちゃんが帰ってこないくらいどうってことないと思うけどな」
 怪訝そうなあきらを邪険にいなし、車に乗り込み、改めて礼を言う。
 「今日は、本当にごちそうさま。本当は、お菓子のレシピを伝授?する講師役だったはずなのに、すっかり夕食までいただいて」
 「良かったらまた来いよ。お袋はすっかりお前を気にいってるし、妹たちも懐いてるからなあ。ああ見えて、けっこう珍しいんだぜ?見も知らない人間と初対面でああも打ち解けるって」
 「え?そうなの?本当なら光栄だけど」
 「ホント、ホント。で、ほれ、これ、俺の連絡先」
 名刺を渡され、促がされて裏を見ると、手書きで携帯番号とメルアドが書きこまれている。
 「俺の個人携帯の番号とメルアド。まあ、俺も忙しいからいつでもでれるわけじゃねぇけど、また、連絡とりあおうぜ」
 「ええ?いいのお?美作さんの彼女に恨まれるのはごめんなんだけど?」
 「俺、いま、フリーだもん。たとえ、付き合ってても、ほれ、たかだか女友達に嫉妬したりとか、干渉したりするような相手とは付き合わねぇし」
 言外に含まれた相変わらずの交友関係に呆れ果てる。
 「…って、まだ不倫なわけ?」
 「バカッ!シッ」
 いるわけがないというのに、周囲を見回して母親や妹たちの存在を気にするあきらに、つくしも一応謝罪する。
 「悪かったわよ。家族にも紹介できない交際なんてどうかと、あたしなんかは思うけど。ま、とりあえず、ありがと。一応、いただいておきます」
 「おう。また、みんなで集まろうぜ。司は…まあ、あいつはNYだし、ここ数年日本には戻ってきてないから無理だろうが、近々総二郎や類とも飲むんだ。日程決まったら呼ぶから来いよ」
 「うん、そうだね。都合が付けば」
 都合がつかないのは、むしろ経済界でも著名人であるあきらたちの方だろう。
 一介のペーペー社員にお呼びがかかるなど恐れ多い。
 つくし的には、半ば社交辞令でも良かった。
 曖昧な返答に、念を押す必要があると感じたのか、あきらが意外な人物の名前も口にする。
 「…桜子憶えてるか?」
 「え?桜子って、あの桜子?」
 記憶にも鮮やかな少女。
 桜子には痛い目にも合わされたが、友達とも言ってよい関係になっていた。
 道明寺との関係で悩んでいた時には、慰めてもらった時もある。
 だが、つくしが学校をやめると、立場などの違いもあって、次第に疎遠になっていた。
 今では年に一度の時候の挨拶の手紙のやり取りくらいなものである。
 つくし自身も、英徳という別世界を、司を含めて忘れ去ってしまいたかったというところもあった。
 あれから、少し大人になって、多少は過去の屈託からも卒業できたのだろうか。
 こうしてあきらと再会しても、あの時のような拒絶感や罪悪感は蘇らない。
 だが、思えばそうした感情も、あきらが司に連なる人だったからというだけのことで、あきら個人に対して含むことがあったわけではなかったから、もしかしたら、司が日本から遠く離れ、NYという異国にいるが故の余裕なのかもしれなかった。
 道明寺には悪いことをした。
 つくしの苦悩の根源。
 「聞いてっか?」
 「え?あ、うん。桜子でしょ?」
 「ああ。あいつ、いま、ネイルサロンのチェーンをいくつか経営してんだけどよ」
 「へえ?すごいねぇ、それは!」
 「大学時代に親の財産使って一念発起したみたいだけど、けっこう当たってな。それなりに名の売れた女実業家ってやつで、いまだに俺らとも付き合いあるんだよ」
 「そうなんだ~!」
 「ああ、だから、桜子も呼ぶから、絶対に来いよ」
 「…うん、わかった」
 「じゃ、連絡するからな。またな!」
 「うん、おやすみなさい」
 別れの挨拶を交し合い、車のドアを閉める。
 夜の闇を疾走する車の窓から覗いたあきらの顔は、不思議に6年前の高校生時代の面影へと、回帰しているようにつくしには思えた。



 見覚えのない携帯の着信の番号に、しばし躊躇し、つくしは応答した。
 「…はい」
 『先輩ですか?』
 落ち着いた少し語尾の掠れる艶めかしい女性の声に、つくしは首を傾げる。
 「えっと…あの?」
 『憶えてくださってないんですか?三条です』
 「え?え?桜子?本当に!?」
 意外な名前に、声のトーンが上がる。
 そんな落ち着きのないつくしの声音に、笑いを誘われたのか、少し不満そうだった桜子のクスクス声が電話から届いた。
 『先日、美作さんから連絡いただいて。先輩と再会したって聞いたんです』
 「え~、本当?まだ数日前のことだよ?」
 『美作さんはマメな方ですから、何かと普段から連絡いただいてるんですよ。…まあ、誤解がないように言っておきますけど、それは私だけのことじゃなく、方々の方へのことですからね』
 「わかってるわよ。まあ、お互い独身なんだから、あんたと美作さんが付き合ってたっていけないことはないとは思うけどね」
 『違いますから』
 キッパリ。
 「はあ、別にいいけど。で?どうしたの?いきなり」
 『どうしたの、じゃあありませんよ。まったく、つれないんだから。美作さんと交流を再開するなら、私ともまた会ってください』
 「桜子」
 正直、昔の友人と言え、むしろ昔の友人だからか、立場の違う異性との友人関係というものに躊躇していたつくしだったが、桜子とでは事情が違う。
 『ダメですか?』
 「ううん、ダメなんてとんでもない!嬉しいよ」
 つくしの言葉に、桜子がきゃあっと、普段は澄ましている彼女とは思えない若々しい歓声を上げた。
 『私こそ、嬉しいです。実は、来週、メープルで美作さんからF3の皆さんと懇意会をしようと誘われてるんです。ご一緒しませんか?』
 実はそれを言いたくて電話してきたことを悟り、つくしも桜子のちゃっかりさに呆れてしまう。
 あきらの方も、つくしの逡巡を感じ取り、女友達からなら、と桜子に先に声をかけたのだろう。
 「なによ、それが目的なんじゃないの?本当は」
 『そんなことありませんよ、美作さんとはそれなりにいままでだって良好な関係を築いてますから。まあ、西門さんとはそれほどでもないし、花沢さんとは交流そのものもありませんけどね。でも、先輩とも再会できるし、F3の皆さんとの交流も深められるチャンスなら、一石二鳥ってものです』
 「…相変わらず、ちゃっかりしてんだから!」
 そうはボヤいてみたものの、つくしとの再会も嬉しいと言う桜子の言葉も嘘ではないだろう。
 つくしも日々の忙しさや、引け目、また司を思い起こさせる人々に、避けがちになってはいたが、桜子とは蜘蛛の糸ほどの繋がりではあっても、完全には交流が途絶えてはいなかった。
 年に一度のこととはいえ、それでも手紙のやり取りがあったのは、たぶんに桜子の努力ゆえであったことはつくしも十分にわかっている。
 桜子から手紙を貰ったから返事はかろうじて返していたのであって、間違ってもつくしから連絡するようなことはなかったからだ。
 本当に不義理に友人だった。
 そして、そんな不義理を赦してくれたのも、桜子ゆえ。
 つくしを理解してくれていたからこそ、こうして再び、きっかけを得て連絡してきてくれた。
 6年の間に、どこか拘っていたしこりも気が付かないほどに小さくなり、この気の置けない女友達とならまた交流を始めてもよいのではないだろうか。
 「…あんた、手紙くれたわりには、くだらない男の話ばっかりで、あんたがネイルサロンの経営してるなんて書いてこなかったじゃない」
 『くだらない男の話なんてしてませんよ。中々良い男性がいないって書いただけで。サロンのことは、まあ、奥ゆかしい私としては一々自慢するのもはしたないと思って書かなかっただけです』
 「さようですか」
 『でも、お知りになったのなら、今度ご招待しますよ。先輩の場合は後輩の誼で、すべてのプランを半額にしてさしあげますからね!少しは女を磨いてください』
 「ほっとけ」
 気の置けない女友達は相変わらずの毒舌だった。

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