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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第一章 再会

昏い夜を抜けて003

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 お金持ちの子だけど、しっかり躾けされてるんだ~。
 つくしの金持ちへのイメージはあまり芳しくない。
 それは偏見というよりも、高校時代に培われた実体験を元にしたものだが、このお邸の一家はそのイメージをいい意味で裏切っているようで、つくしはホッとした。
 これなら、今日一日、嫌な気持ちにさせられずにすみそう。
 「えっと、すいません。あたし…いえ、私もすっかり自己紹介が遅れてしまって。フレッシュライン商品企画部の牧野つくしです。何かと御社にはお世話になっておりまして。当社の柏崎から、ふわとろブッシュフール(つくしの開発した洋菓子名)のレシピをお教えするようにと派遣されてきたのですが」
 「ええ、聞いてます。と、いうか、私たちが無理を言って、せっかくのお休みにわざわざ来ていただいて、ごめんなさいね」
 第一印象に違わず、嫌な人ではないようで、砂糖菓子みたいな若奥様が申し訳なさそうに会釈した。
 「いえ」
 本当はそうだと思っても、一応否定するのが社交辞令というものである。
 「牧野さんのお菓子はとっても美味しくて、私も娘たちもすごいファンなの」
 「はあ」
 こんなお邸の若奥様が、よくコンビニ菓子なんて俗な物を知ってるなと思っていると、
 「実は、娘のお友達がいろいろ教えてくれて、以来、いつもコンビニの新製品はチェックしてるのよ」
 うふふふ、と笑って疑問を答えてくれた。
 「E.M.ローズの社長は私の弟でね、夫に任されて最近設立した会社なの。それで、つい娘がこのお菓子をうちで作りたいなんて、おねだりしてしまって。そうしたらお菓子を作っている会社と懇意にしているからと頼んでくれたみたいなのよ」
 「そうだったんですか」
 聞いてみると、E.M.ローズの社名は公式にはいろいろそれらしいお題目が唱えられているが、オーナーである双子の父親が命名していて、E(絵夢)とM(芽夢)、それに奥様が大好きな薔薇、という意味でつけられた社名だそうな。
 金持ちって…。
 スケールのデカい親馬鹿ぶりに頭痛を憶えつつ、まあ、こんな可愛らしい奥さんと娘たちじゃあ、メロメロでも仕方ないか…とつくしもなんとか無理やりに納得した。
 話してみると、ふわふわしていて掴みどころのなさそうだった若奥様は、意外にもざっくばらんで、すごく話しやすい。
 上品なのに、気取ってなくて、外見と趣味嗜好はまあ、かなり構えてしまうところはあるけれど、お茶目で気さくな女性だった。
 当然、娘たちもとても可愛らしく、いい子たちだ。
 若奥様お嬢様方の方でも、物怖じしなくて、へつらったりおもねったりせず、卑屈なところのないつくしを気に入ってくれたようで、いつの間にか菓子作りをしているうちに、きゃあきゃあ、女子学生同士がじゃれ合うように、本当に楽しい時間を過ごせるようになっていた。
 「…あら?つくしちゃんも英徳出身だったの」
 「はい。高等部だけで、それも中退しちゃったんですけれどね」
 あまり突っ込まれたくなく、ちょっと困って眉尻を下げたつくしをジッと見て、若奥様が小首を傾げる。
 横で絵夢が練った生クリームが弾けて、芽夢の明るい歓声があがった。
 「うちのお兄ちゃん…私の一番上の子供なんだけど、その子も英徳だったのよ」
 まあ、そうだろうなあ、と相槌をうつ。
 絵夢と芽夢の他に、更に上に息子がいるとは驚くが、この辺の御曹司ご令嬢は英徳か永林に行くのが一般的なので別に不思議なことではない。
 「つくしちゃん、22才?23才?それともまだ、20才前なのかしら?」
 「はは…いえ、一応短大出てますんで23才です」
 若奥様の外見も若いが、つくしもよく実年齢より若く見られる。
 さすがに、社会に出て高校生に見られることはなくなったが、大学時代は普通に高校生に見られることが多かった。
 つくしの返答に、あらまあ、と若奥様が目をパチクリとさせて、小首を傾げる。
 そんな顔をしていると、つくしと同年代と言っても通りそうだ。
 …いいなあ、こんなに可愛くて。同じ若く見えるんでも、こういうふうに、美人だったら嬉しいんだけど。
 内心で、溜息一つ。
 別に自分の外見を卑下したことはなかったけれど、高校時代に女以上に美形な連中と関わっていたこともあるだけに、そう思うこともなくはなかった。
 まあ、つくしの場合は、容姿が十人並なことよりも、色気がないことの方が切実な問題だったのだが。
 「…ふ~ん、そうなのね。と、いうことは、もしかしたら、つくしちゃん、お兄ちゃんと同期か後輩なんだわ~」
 「へ?」
 驚いて聞き返そうとしたところへ、
 コンコン、ノックの音が。
 「あ!おにいちゃまだ!」
 「わ~、お帰りなさいっ!」
 双子たちが色めきだつ。
 「あら、噂をすれば、お兄ちゃんが帰ってきたみたい。は~い、はいってらっしゃいな」
 もう一度ノックの音がして、若奥様がドアへと声をかけた。
 双子たちが走り寄って、ドアが開く前に、中から開く。
 ガチャリとドアが開き、そこからつくしとそう変わらない年齢の青年が顔を出す。
 「お、やってるな。…って」
 「…っ!?」
 顔をあげたまま、つくしを見て青年の目が驚きに見開かれる。 
 つくしも、声をかけられないまま。
 優しく繊細な美貌に、柔らかな声、高校生の時よりは年齢を得て、以前よりさらに落ち着いた雰囲気の…。
 そこにいたのは、激しい嵐にも似たつくしの高校時代に親しんだ、美作あきら、その人だった。


 「うわあ、マジかよ?牧野…だよな?」
 本当に驚いたらしく、つくしの上から下まで視線を巡回させ、目を瞬かせている。
 「え?ここって美作さんのお宅なの?」
 もらったメモを思い起こすと、怖れ多くもE.M.ローズの社長の名刺とその裏に住所を書いてもらっただけで、このお宅の名義を確認していなかったことに思い至った。
 社長の名前は『美作』ではなかった。
 なので、てっきり、こちらのお宅も社長の苗字と同じなのだと勝手に解釈していたが、そういえば、さっき、若奥様からE.M.ローズの社長は弟だと聞いたばかりだ。
 「そう、ここ俺ん家。叔父貴からフレッシュラインの洋菓子企画担当者がうちに派遣されてくるって聞いてはいたけど。へえ、牧野だったんか~」
 顔を見合わせて驚き合っているつくしとあきらを交互に眺め、あきらの両腕にぶら下がった双子ちゃんたちが、目をパチクリさせている。
 「お兄ちゃま、つくしちゃんとお知り合いなの?」
 「つくしちゃん、お兄ちゃまを知ってらしたの?」
 二人の言葉が重なり合う。
 「あ~、知り合いもなにも、ダチだぜ、なあ、牧野」
 あっさり躊躇もなく、友達だと言われたことに内心驚きと…喜びを感じつつ、
 「あ、うん。高校時代に親しくさせてもらったの」
 つくしの返答にあきらが微笑んだ。

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