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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第一章 再会

昏い夜を抜けて002

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 閑静な住宅街を抜けると、ここは本当に東京なのかと思うような一角に出る。
 通り抜けた家々も、音に聞こえた高級住宅街には違いないのだけれど、そこからはまた一段と雰囲気が違う。
 どの家も、塀が高く、延々と続いていて、内部の広さが外側からでも容易に知れる。
 一軒一軒が広大な敷地面積を誇っていて、立派な門前にはこれでもかというような、豪奢な門扉が待ち構えていた。
 渡された住所のメモと地図を見比べ、いかにもなビジネススーツにナップザックという今一ミスマッチな姿のつくしが、一軒の豪邸の門扉に立ちつくす。
 …うーん、ここでいいんだよね?この住所。表札は見当たらないけど、薔薇がたくさんある家ってここだけだものね。
 周辺の家も大した豪邸ばかりだが、ここが東京のど真ん中だとは信じられないほど家と家の間にはえらい間隔があって、それぞれが権を競うようにどの家も特徴的だ。
 遥か昔、連れ込まれた司のお邸ほどには桁外れた感じではなかったけれど、鉄柵から覗く内部の様子が尋常じゃない。
 「す、すごい。ここって本当に日本?」
 思わず独り言がポロリ。
 遥か遠くに見える洋館からは、まるで本物の王侯貴族の王子様やお姫様がいまにも顔を覗かせそうだ。
 けっして近くはない洋館からつくしの佇む門扉まで、赤茶色の煉瓦の道が続き、道に沿った薔薇の垣根の合間に薔薇のアーチが幾重にもかかりっている。
 つくしが幼い頃に夢見た、メルヘンの世界が広がっていた。
 少しの躊躇の後に、インターフォンを押す。
 あまり間を置かずに、『はい』と応答がある。
 「あの…、フレッシュライン商品企画部の牧野と申します。本日、こちらで洋菓子の実演講師を行うお約束なのですが」
 『あ、はい、旦那様から伺っております。お車ですか?』
 「いえ、駅から歩いてきました」
 『そうですか。では、鍵を開けますので、そのまま真っ直ぐ玄関までいらしてください』
 上品な言葉使いだったけれど、これだけ大きなお邸のことなので、おそらくメイドさんなのだろうと見当をつける。
 いやあ、まいった。
 英徳学園の高等部を中退し、父の実家のある田舎の高校を卒業して以来、こういう世界とは無縁な毎日だったから、久々のカルチャーショック。
 思考が英徳に流れて、ついでずっと記憶の底に押し込めてきた人物たちの姿が思い浮かびそうになって軽く頭を振った。
 つくしが玄関先に着くやいなや、タイミング良くエプロン姿の女性が出迎え、笑顔で会釈する。
 「よくいらっしゃいました。こちらへどうぞ」
 通された内部は、これまた外観のイメージに違わず、まるで西洋映画に出てくる貴族のお邸のように美しかった。
 ついキョロキョロと周囲を見回してしまいたくなる欲求を抑えて、余所行きの顔で案内の女性に付き従う。
 やがて辿り着いた応接は、これまた凄かった。
 おそらく仕事関係の応接間ではなく、プライベートな空間なのだろう。
 廊下までの趣味よくまとめられた貴族的な空間とはまた趣が異なり、色とりどりの花や風船が飾られ、カラフルな色合いの家具が可愛らしい。
 趣味は悪くはないのだが、あまりに独特過ぎて賛否両論。
 正直に言えば、あまりに少女趣味過ぎるのだ。
 部屋には応接セットの他に、ドレスかと見まがう丈の長い豪奢なレースのテーブルクロスのかかった長方形のテーブル、ウサギをモチーフにしたピンクの椅子。
 カウンターの向こうにはやはりピンクを基調としたメルヘンチックなキッチンが覗いているので、どうやらここは一体型のLDK(居間・ダイニング・キッチン)というやつらしく、2F分の高さはありそうな天井にはスズランのようなシャンデリアがぶら下がっていた。
 す、凄い。
 いったい、どんな人が住んでるの??
 やや引き攣りながらもポカンとシャンデリアに見入るつくしに、メイドが苦笑しつつも、ソファへと座るように勧めてくる。
 「申し訳ございません。実は午前中のお嬢様方のピアノのレッスンが長引いてまして、奥様もまだ外出先から戻られてないんです」
 「あ、そうなんですか?」
 「はい。すぐ戻られるとの連絡は入っているのですが、もう少々お待ちいただけますでしょうか?」
 長引くようなら出直そうと思っていたものの、待てと言われたなら仕方がない。
 どの道、金持ちの気紛れで呼び出されたようなものなので、ある程度の覚悟はできている。
 一応、ここでボウッとしている間も休日出勤手当はでてるんだしね。義務は果たしますよ。
 内心の溜息を押し隠しつつ、つくしは気を利かせたメイドに渡された雑誌に手を伸ばす。
 出されたお茶は美味しいし、さすがに洋菓子作りをこれから作ろうとやってきたことに対して配慮しているのか、お茶請け代わりのフルーツは、いまにも後光がさすのではないかと思えるほど高そうだ。
 躊躇しつつも出されたんだから、と手を伸ばすと、予想を違わず頬っぺたが落ちそうなほど美味しい~。
 わ、これって、あれだよね?一個8000円くらいする高級マンゴー!
 メロンもきっと、何千円もするマ、マスクメロンとか??
 なんだか、仕事そっちのけで興奮してきてしまう。
 こんなん毎日食べてる人たちが、たかだかコンビニ菓子のレシピを知りたいなんて…金持ちってわからない。
 昔、散々感じた価値観の違いを思い起こしながら、とりあえず時間を潰すべく手元の雑誌をパラパラと捲った。



 『…ねぇ~』
 『うん、でも、どうしよう?』
 鈴を転がすような…澄んで可愛らしい声が意外に近い場所から聞こえて、うとうとしていたつくしの意識は浮上した。
 あれ?
 「あ、起きたよ」
 「本当だ~」
 一瞬、つくしは状況がわからなかった。
 目の高さで屈みこんで覗き込む2体のフランス人形。
 じゃなくって…!?
 緩やかなウェーブの長い髪をそれぞれわずかに違うふうに結わえた瓜二つの美貌の少女が、ついつい麗らかな日差しの入り込む快適な室内で眠り込んでいたつくしを覗き込んで、おしゃべりしていたのだ。
 「う、わっ!」
 我に返ったつくしが驚いて、とっさに立ち上がる。
 その勢いに、双子たちも驚き、後退りつつ、キョトンとつくしを見詰めた。
 「あ、あの…」 
 なんとも言えぬお見合い状態になり、つくしは回らぬ頭で次の行動を模索した。
 が、つくしがあたふたしている間に、居間のドアから華やかな声と共に、新たな人物が入ってくる。
 「あらあら、ごめんなさい。すっかりお待たせしてしまって」
 ニッコリ微笑んだ美貌が、つくしを覗き込んでいた少女たちにそっくりだった。
 「あ、いえ。大丈夫です。こちらこそ…その、すっかりくつろいでしまってすいません」
 双子たちは何も言わなかったけれど、よそ様のお宅に呼ばれてすっかり居眠りしてしまっていた気まずさに、つくしは引き攣りつつも、愛想笑いをなんとか浮かべて会釈する。
 「あなたたち、先生にちゃんとご挨拶したの?」
 目の前の美少女たちの母親にしては若い感じもするが、たぶん少女たちは見たところまだ中学校前だろう。
 スラリとしていて、つくしと同じくらいの背丈があるのには驚きだが、顔立ちがあどけなく幼い。
 「こんにちは、先生。絵夢です」
 「先生、こんにちは。芽夢です」
 つくしを見詰めてキョトンとしていた二つの顔が、母親の言葉に丁寧に会釈をして、可愛らしく微笑んだ。

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~ Comment ~

NoTitle

おはようございます。
つまり美作邸に来ちゃったということですね。
続きがたのしみです。
新しいお話がいっぱいで、更新スピードも速いので嬉しいです。
連載抱えすぎて、まだ新しい構想もあるなか、恐縮ですが、夢で逢えたらの続きが読みたくて仕方ありません。
首を長~くして、おまちしていますね。

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