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「それでも貴方を愛しているから…全97話完+α」
第二章 疑惑…掛違う運命の釦

それでも貴方を愛しているから024

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 「ごめん、連絡…ちょっと、痛いっ!」
 電話を無視したことを謝ろうとしたのに、乱暴に腕を取られて引きずられる。
 握りしめられた腕がギリギリと苦痛を訴え、思わず悲鳴を上げた。
 「やだっ!痛いったら、離してよっ」
 無言で街路の影に止めてあったリムジンの前まで引きずって来られ、手から買い物袋がとりあげられたと思ったら、運転手さんが開けてくれたドアへと乱暴に放り込まれる。
 「ちょっと!」
 苦情を言う間もなく、今度はあたしが突き飛ばされ、たたらを踏む間もなく、見慣れた高級車の中へ倒れ込んだ。
 それを荷物よろしく抱え上げられ、無理やり奥へと押し入れられる。
 なにがなんだかわからないうちに車の中へ押し込められたあたしは、すぐに続いて入ってきた道明寺を振り返り、噛みついた。
 「なにすんのよっ!あんた、どういうつもり!?」
 「…邸へやれ」
 「やだっ!あんたんちになんか行かないわよっ。ここで降りるっ!!」
 わめいてドアから出ようとしたけど、すでにドアにはロックがかけられ、あたしの意見なんか当然通るわけもない。
 スムーズに走り出したリムジンの中、ガチャガチャと無駄に、ドアノブに食いつくあたしの腕を再び掴んで、道明寺は無理やり自分の対面へとあたしを座らせた。
 あ、あたしは物じゃないのにっ!
 ここのところの道明寺への複雑な鬱屈が、湧き上がった怒りで一気に押し流される。
 あたしの意志を無視して、自分の思う通りにしようとするこの男の意志が、あたしの頭に血を上らせ、怒りとなって噴出した。
 「なんなのよっ!あんた。どういうつもり?!いい加減にしないと、ゆるさないわよっ。いますぐあたしを車から降ろしてっ!?」
 「…どういうつもりなのかは、こっちの台詞だ」
 「…っ!?」
 地を這うような低い獰猛な声に、あたしは一瞬で凍り付いた。
 怖い。
 こんな声、出されたことなんてほとんどない。
 爛々とした眼光が、この男の怒りをあらわに伝え、激しい怒声をあげていないことが逆に深い憤りを思い知らせてくる。
 「会おうと言えば拒否る。電話をすれば、居留守。挙句のはてに、着信拒否だ!」
 「ちゃ、着信拒否なんて、して…ない」
 電源を落としていただけだ。
 「お前、この間、総二郎になんつーた。お前から俺に連絡とる、そう言ったんだよな!?」
 「……」
 言ったのは本当だったけど、脅しつけるように言われることに反骨心が湧き上がり、素直に返事できなかった。
 いや、それ以前に、道明寺の全身から吹き上がる怒気に怖気て声が出せなかったのかもしれない。
 ただこうやって、睨み付けてくる眼光を反らさないように睨み返すだけでも、すごい胆力が必要だった。
 昔から直情的な男で、すぐに怒鳴る、手が出る、が普通のこの男だったけれど、これだけの怒気を浴びせられたのは本当に久しぶり。
 それだけに憤りが激しいことは察せられたけど、ただでさえ処理しきれない気持ちに塞ぎこんでいる今この時のあたしには、覿面な逆鱗だった。
 いやだ。
 この男のキレた顔を見たくない。
 この男の怒声を聞きたくない。
 この男と同じ空気を吸っていたくない。
 気が付いたら、すーっと感情がどこかで抜け落ちてしまっていた。
 「ふざけんなよ、てめぇ、何様のつもりだ?人が下手に出てりゃ、つけあがりやがって。事と次第によっちゃ、ただじゃおかねぇぞ。どういうつもりなのか…」
 少しづつ、無表情だった道明寺の額に薄らとした青筋が浮かんできているのが見える。
 けれど、逆にあたしの感情は冷めて、頭のシンが冴えていた。
 「どういうつもりもなにもないわ。会いたくなかったから会わなかった。電話に出たくなかったから出なかった」
 淡々としたあたしの答えに、道明寺の目が見開かれる。
 言ってはダメだ。
 心の奥底で泣き叫ぶ声が聞こえる。
 言わないでっ。
 言ったらダメ。
 でも、もうあたしは、ここのところの鬱屈が耐えられない。
 逢いたいのに逢いたくない。
 顔を見たいのに、声を聞きたいのに…真逆のことを思う二律背反に疲れ果てて。
 「二人の関係をもう一度考え直したいの」
 「…っ!?」
 ギリっという歯ぎしりの音が聞こえ、気が付いたらリムジンのソファに押し付けられていた。
 両手を道明寺の手に縫いとめられ、馬乗りになった道明寺の体に抑え込まれて、身動きできない。
 そのシチュエーションに過去のフラッシュバックが蘇らせられ、小刻みに震える体を懸命に叱咤する。
 傷ついた獣のような目が、あたしを睨み下ろす。 
 目を反らしたら喰いつかれる。
 でも、哀願したくない。
 怖い。
 負けない。
 「…本気か?」
 「そ…うよ。あたしは力で支配できない」
 カタカタと震えるあたしの体があたしを裏切る。
 けれどけっして反らさないあたしの視線に、やがては道明寺が視線を反らし…。
 あたしの体から退いた道明寺が、押し倒された反動で傍に転げ落ちていたあたしの携帯電話を手に取り、
 バキッ!
 真っ二つに割り砕いた。
 「なっ!なにすんのよっ。キャッ」
 飛びついたあたしを薙ぎ払い、携帯電話を投げ捨てる。
 「…別れねぇぞ」
 「……」
 「どうお前が俺らの関係を考え直そうと、絶対に別れねぇからな」
 「道明寺」
 震える手が前髪をかきあげ、大きく息を吐きだす。
 掌の腹に鮮やかな血が流れ落ちた。
 「…っ、血が」
 道明寺は驚きで硬直したあたしをチラリと見やり、伝い落ちる自分の掌の血に微動だにしない。
 「おい、牧野のうちに戻れ」
 運転手さんに指示を出し、あたしから顔を背ける。
 どこかジーンと鈍っていた頭に再び血が通いだし、あたしはポケットからハンカチを取り出し、道明寺に差し出した。
 「…あの、これ」
 「今日のところは家に帰してやる。けど、このままじゃあ、絶対にすませねぇ」
 あとはあたしには一顧だにせず、道明寺はただただ、通り過ぎる夜の景色へと視線を投じていた。

 
 
 ふわふわと、なんだか現実味がない。
 夢は見なくなった。
 なのに、眠れない。
 道明寺と決別した…決別したのだろうか、あの日から1週間が過ぎていた。 
 本当だったら、今頃道明寺とバカンスを終え、二人で楽しく笑いあっていたかもしれない。
 そんな馬鹿な後悔じみた思いがこみ上げることもあった。
 何言ってんのよ、今更。
 自分で自分に突っ込みを入れては、苦笑する。
 なんだが、いつまでもウジウジしている自分が自分らしくなくって、情けない。
 ふと、1週間前まで腕に身に着けていた道明寺とおそろいの腕時計の感触を探して、ついまた溜息が零れる。
 道明寺にもらった腕時計は外していた。
 土星のネックレスはどうしようかと迷ったけれど、さすがにこれを外してしまったらすべてが終わってしまう。
 あれほど自分からハッキリしたことを宣言しておいて、今更何が終わっていないというのだろうか。
 このままでは済ませない、と言っていた道明寺からも、着信拒否をするまでもなく何の連絡も入らなくなっていた。
 また新たな仕事が入ったのか、それともさすがにあたしに愛想をつかせたのか、それどころか日本にいるのかさえもわからない。
 あれから同じ大学に在学しているとはいえ、大学院と茶道家元後継者として二足の草鞋を履く西門さんとそうそう出くわすことなどあるはずもなく、ましてや自分から半ば道明寺を切ったあたしが西門さんに道明寺の動向を聞くことなどできるわけもない。
 なんだか、疲れた。
 久しぶりに疲労を自覚した。
 道明寺と付き合っている頃は、疲れも疲れだとは感じなかった。
 勉強して向上すること、働いて自分を養うこと、道明寺からの来ない電話を待つこと、それらすべてがあたしにとっての必要不可欠な日常で、同時に自分らしく生きて英気に満ちた毎日だった。
 たくさん勉強しよう…いつか道明寺の隣に立つ日の為に。
 頑張って働こう…道明寺に恥ずかしくない、一人でも立てる自分でい続けるために。
 電話が来なくても信じてる…こうして待っているだけでも、道明寺を感じることができて幸せだから。
 思えば、すべてが道明寺に繋がっていた。
 でも、一方で、昏い何かが心の底で悶え苦しみ続ける。
 あの時の恐怖が。
 あの日の怒りが。
 道明寺を赦すことができず、また、傷つけられた痛みに涙し続ける。
 こんな気持ちで、道明寺に向き合うことなどできるはずがない。
 たとえ、このことを無視して見なかったことにしたとして、道明寺とよりを戻しても、もう前と同じ気持ちで一緒にいることなどできないのはわかりきっていた。
 でも、だからといってどうすればいいのだろう。
 本当にこのまま…別れてしまっていいの?
 答えのでない問いに、あたしは本当に疲れてきってしまっていた。

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