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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第一章 再会

昏い夜を抜けて001

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 「牧野!4番、○ブンイ○ブングループ購買企画検討部の山崎さんから」
 「は~い」
 返事と同時に内線電話が鳴り、2コールを待たずに受話器をあげる。
 「はい、フレッシュライン商品企画部・洋菓子担当牧野です」
 決まり文句の応答に電話の向こうにいる相手がクスリと笑う。
 『相変わらず元気だなあ。そっち、調子どう?』
 気安く楽しげな声に、つくしもつられてウキウキとした気持ちが湧き上がってくる。
 でも、ここは会社。
 どうやら相手の方は、外出中の電話のようで、ぷわーーっという警告音の後にガタンゴトンとかすかに電車の音が聞こえてきていた。
 「山崎さんは、外回り中ですか?」
 『そ。今日は直帰だから、けっこう早く帰れそうなんだよ。今晩、夕飯一緒にどうかと思ってさ』
 つくしは引き出しの中から手早くスケジュール帳を取り出し、パラパラと捲って午後からのスケジュールを確認する。
 15時の商品開発会議の後、ミーティング。
 18時からのロー△ンさんのデイリー部の担当者との打ち合わせが終われば、帰れるか。
 心の内で試算し、
 「はい、少し遅くなってしまいますが、19時半頃でよろしければ」
 『OK!じゃあ、いつものところで待ってるよ。…明日は土曜日だから、多少遅くなっても大丈夫だろ?』
 語尾に含まれた甘い響きに、カッと赤面しそうになって、ここがどこであるかを心に唱えてなんとか動揺を乗り越える。
 20才も半ば近くにもなって、いまだにこんな恋人の誘い一つで一々狼狽えてしまう自分が少し歯痒い。
 『お、そろそろ駅に着くから。またな』
 「あ、はい。では、また」
 別れの挨拶を交わし、汗をかいた手をニギニギ握ったり開いたりしながら受話器を置き、溜息一つ。
 ふと、視線を感じて顔を横に向けると、隣の席に座る同期で入社以来の親友の松坂香帆がニンマリ、ニヤニヤ、からかうよ~という顔でつくしを見上げていた。
 一言でも口を開けばカラかわれることは目に見えているので、コホンと咳払い一つ、何食わぬ顔でやりかけの仕事に向かう。
 えっと、今期の販売戦略の主力商品は…。
 あえて無視しているつくしに物足りなさ全開で、声をかけてくれないとなったら、今度は自分からちょっかいをかけてきた。
 わざわざ顔を覗き込んで、こっち見てみてアピール。
 それでも、ダメならと、トントン、とさっきスケジュールを確認したまま、机の上に開きっぱなしだった手帳を突っつき注意を促してくる。
 「ねね、今晩の予定書き忘れてるよ。彼氏とお夕飯の後、某ホテルでお・と・ま・り…で?」
 「なっ!?」
 さすがに最後の某ホテル…からは声が潜められていたけれど、それでも謹直であるべき職場でのとんでもない発言に、つくしはバッと周囲を見回し焦りまくる。
 つくしの顔はすっかり真っ赤に紅潮しまっていて、ギロリと睨み付けた香帆は悪びれもせず、楽しそうにクスクス笑いで机に懐いていた。
 「もうっ!なんてこというのよ、香帆!」
 「…誰も聞いてないって。もう、つくしったら真っ赤!可愛んだから~」
 「からかわないでくれる!?」
 憤然としつつも、指摘された場所に、『○ブン山崎pm.19:30』と書き込み、ついでに他の箇所もチェックする。
 「そんなことだから、す~ぐ何の電話かバレちゃうんだよ~」
 「…あんただけだよ、そんなふうに穿ってくるのは!」
 と、いいつつ、山崎との出会いから、二人が交際するに至るまで、何かと相談してきた香帆だからこそ、なんでもお見通しなのは仕方がなかった。
 そうやってからかってくる香帆だったけれど、つくしにとって気の置けない友人で、気のいい彼女は何かとつくしの力になってくれていた。
 恥ずかしがら23才にもなって奥手で、ろくな恋愛経験もなかったつくしは、当初、山崎が自分にアプローチしてきているなどとは夢にも思っていなかったのである。
 実はそれまでも、何度か似たような機会があった。
 けれど、つくし本人が中々その気になれないこともあったけれど、何より、彼女自身の生来の鈍感が災いし、大概、相手の気持ちに気が付かないうちに話は終わってしまうことが大半だった。
 恋愛を拒絶しているわけではない。
 それでも、高校時代に熱く激しすぎる感情に翻弄された経験が、ただでさえ恋愛には不向きな性格をしていたつくしをさらに縁遠くしてしまったのだ。
 人より思い込みや感情の起伏が激しくて、情熱的な司ほどに熱い思いをぶつけてくる人間などそうそういるはずがない。
 と、なれば、そんな彼の気持ちでさえ中々気が付かなかったつくしが、一般的な常識人であり、背景も普通人にすぎない山崎との交際を始められたのは奇跡に近いものだったのかもしれなかった。
 そして、その奇跡に大いに貢献したのが香帆だった。
 たまたまつくしとコンビを組んでの担当だった仕事で知り合った山崎が、親しくなった香帆に相談を持ち掛け、彼氏いない歴6年を爆走中だったつくしを説き伏せ、始まった交際。
 構えてしまっていたつくしに対し、山崎はどこまでも辛抱強かった。
 4才も年上で、元々温厚な性格だった山崎となら、つくしが昔から望んでいた穏やかで平凡な人生を送るためのパートナーとして最適なのだろう。
 「あれ?部長から回ってきたあの話、明後日なんだ?」
 「…え?」
 再び覗き込まれて、もう一度手元の手帳を見直す。
 『E.M.R 常務宅pm.13:00~』と書きこんである。
 つくしの務める食品企画会社フレッシュラインの重要な取引先のE.M.ローズ.コーポレーション(Easy=容易に Mind=心 を薔薇色にする食品を提供する会社を目指しているらしい)常務のお宅で菓子作り指導をするというもの。
 なんでも、前期凄まじいまでの売り上げで好評だったフレッシュラインの洋菓子の、熱烈なファンだとかいう社長の親族である常務の家族からの希望で、その洋菓子の開発を手掛けた担当者であるつくしが特にと願われて、そのレシピを伝授するために常務の自宅へ訪問することになっていたのだった。
 思いっきり公私混同した依頼だったが、E.M.ローズ.コーポレーションはフレッシュラインにとって重要な顧客だ。
 わりと新しい会社とはいえ、バックには大きな企業も控え、いまではフレッシュラインの売上のかなりも占めている。
 そうそう邪険にはできない相手なのだ。
 つくしにしてみれば、気紛れな金持ちの相手は高校時代でもう辟易している。
 かなり気の重い仕事だったが、部長どころか実は社長からの直々のお達しであれば、拒否できる筋合いではなかった。
 「ふ~ん、日曜日だっていうのに災難だったねぇ」
 「まあねぇ。でもま、お菓子作りだけ数時間教えてくれば、その日一日休日残業手当つくしね。特別ボーナスも弾んでくれるって部長も約束してくれたし」
 「え~、いいなあ。あたしがかわりたい~」
 羨ましそうな香帆に、苦笑を浮かべつつ。
 「できたらあたしもかわってもらいたいけど…」 
 「そりゃ、ま、無理だよね。あんたが考案したレシピなんだし、特にというお達しじゃあねぇ~」
 ガックリと項垂れるつくしの背中をバンバン叩いて、
 「ま!今日は彼氏に優しくしてもらって、十分充電して明後日に備えなよ。それに確か、そこの常務ってあたしらとたいして年も変わらない、すっごい美形だって噂聞いたことある気がする~。社長の御曹司らしいから、上手くやれば玉の輿とか?」
 高校時代散々実の母親から耳にタコができるほど言い聞かされてきた台詞にうんざりしながらも、つくしは肩を竦めて、バタンとスケジュール帳を閉じた。

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