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「それでも貴方を愛しているから…全97話完+α」
第二章 疑惑…掛違う運命の釦

それでも貴方を愛しているから022

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 「…加納さん」
 名指しで呼びかけられたら返事をしないわけにはいかない。
 第一、あたし自身が黙ってるんだから、相手があたしの隔意に気が付くはずもない。
 それでも、他の人に対するのと同じようになんて接することができないでいたから、もしかしたら何か感じていることがあるのかもしれなかったけれど、加納浩輔はいつも屈託なく声をかけてきた。
 第三者が現れて、西門さんが余所行きの顔になる。
 「あ、西門さんですよねっ!お久しぶりです」
 怪訝に眉を顰めながらも、如才がない西門さんは軽く頷き返す。
 「ああ?どこかで会ったかな?」 
 「…ああ、いえ、憶えてくださっていなくても無理もありません」
 加納浩輔は、如才なく微笑み、鷹揚に頷く。
 「西門さんとは同じクラスになったことがなかったから、直接にはあまり。でも1、2年生の頃は道明寺さんと同じクラスでした。先日までイギリスに留学してたんですけど、高校3年生の初めの頃まで俺も英徳に在学してたんです。日本に戻ってきて、こっちの大学院に復学…編入かな、しましたけどね」
 「へえ?」
 愛想は悪くないものの、明らかに興味なさそうに頷いた西門さんは本当に憶えていないみたいだ。
 あたしだって、同じクラスになったことがない人のことは憶えてないけど、加納浩輔は道明寺の手下だったのに、西門さんは知らなかったのかな。
 でも、当時、加納浩輔に限らず、道明寺やF4の取り巻きはたくさんいた。
 というか、英徳学園そのものがF4の取り巻きみたいなものだったので、西門さんたちにとっては道明寺の手下とはいえ加納浩輔は有象無象の一人にすぎなかったのかもしれない。
 下手をしたら、道明寺さえもが加納浩輔を憶えていない可能性さえあった。
 彼らF4にはそうした冷たさや、残酷性がある。
 高校時代に比べればいろいろとずいぶん変わったと思う彼らだったけれど、そういうところはいまでも、そう変わりはなかった。
 興味がない相手にはとことん、冷淡。
 「…なに?牧野の友達?」
 問われた問いに、強烈な拒否感が湧き上がる。
 とっさに睨み上げた視線に、逆に西門さんの方が戸惑ったような視線を返してきた。
 いけない…西門さんは何も知らないんだ。
 あの時のことを知らなかったのかどうか…それはわからないけど。
 そう心のどこかで囁く声があったけれど、それでも、いまはもう昔のことだ。
 不思議に、道明寺に対してはこだわらずにいられないのに、西門さんに対しては割り切ることができた。
 本当に割り切ってるのかなんて、もちろん自分でもわかりはしないけど、少なくても…こうして顔を見るのも苦痛に感じるほどじゃない。
 「同じゼミを取ってるんですよ。明後日は、倉科教授が北海道に講演会にでることになってるから、その前に牧野さんからのレポートを受け取りたいって伝言受けてて」
 「あ、そういえば。でも、帰ってらしてからでも良かったのに」
 先日提出を前に、教授に相談に乗ってもらうことを約束していたのを思いだした。
 「牧野さんのレポートをぜひ、早く見たいんだって。教授に期待されてるんだね」
 「…いや、そんな」
 「相談自体は帰ってから乗るってことだから、その間にわからないことは溝口や俺に相談してよ。教授のようには当然いかないけど、多少は俺たち、これでも牧野さんの先輩だからね」
 爽やかに微笑む顔が、素直に見れない。
 「牧野?」
 それでも厚意を示されて、無視するわけにはいかず、あたしは張り付けたような微妙な笑顔で微笑み返し、頷いた。
 第一、こんな屈託西門さんに知られたくない。
 カンの良い西門さんが、そんなあたしに気が付かないはずがないことを、あたしはすっかり失念していた。
 あたしは、とりあえず加納浩輔との会話をできるだけ手短に済ませたくて、素直に頷き礼を言う。
 本当に相談するつもりなど、もちろん欠片ともなかったけれど。
 「…ありがとうございます。その時は、ぜひ、よろしくお願いします」
 「うん、同じ研究する仲間なんだから遠慮しないで。じゃあ、また。西門さんも失礼します」
 愛想よく頷き、加納浩輔が西門さんにも丁寧に会釈した。
 こんなところは、いかにも純粋な英徳の人間なんだな。
 彼らF4は特別。
 英徳学園に在学する人間たちにとって、彼らに君臨する特権階級。
 特権階級意識の強い彼らさえもが認める特別な存在。 
 「ああ」
 同じ年だというのに、尊大に頷く西門さんは、何かを感じたようにあたしと加納浩輔を交互に見ていた。
 口数が多い男だと言うのに、考え込むような西門さんの間が怖い。
 「…あたしも帰るわ。さっきの話だけど、ちゃんとあたしから連絡とるから心配しないで」
 「て、おいっ。待てよ、つくしちゃん!」
 「…つくし?」
 あたしはもう、西門さんによけいな詮索をされたくなくって、足早にその場を歩き出す。
 踵を返しかけていた加納浩輔があたしを不審そうに見ているのには気が付かなかった。



 「牧野さん、この資料、もう読んだ?」
 離れて座っていたのに、わざわざあたしの隣に移動してきた加納浩輔が、手に持った冊子をあたしの手元へと置いた。
 「え…、いえ、まだ」
 「これ、中々いいよ、読んでみて?」
 隔意を持っているあたしに本当に気が付かないのか、そっけもない返答しか返さないあたしに、ニッコリと微笑んでくる。
 F4を見慣れているあたしからすれば何も感じないけれど、なぜかたびたび声をかけてくるようになった加納浩輔を見た同期生の女友達は、きゃあきゃあとあたしと加納浩輔の間柄を勘ぐった。
 あたしにしてみれば間違ってもありえない話だし、加納浩輔だってそういう意図をもって近づいてきているわけではないだろう。
 実際、校外で会う誘いを受けたことなどなかったし、あくまでも同じ研究室の一員としての節度ある態度は崩していない。
 単純に、人見知りしているあたしを気遣って、なにくれとなく話しかけているように思えた。
 …悪い人じゃないのかも。
 いまさら、過去のことをあげつらねって、何かと気を使ってくれる相手を嫌う不毛さに自分でも疲れてきていた。
 それをいうなら、すべての元凶である道明寺を赦して、あまつさえ恋人という関係を築いているのだから、その道明寺の命令を聞いただけの相手を疎むのは論旨に会わない話なのかもしれない。
 そうは思いつつ、実際に顔を合わせれば、当時の恐怖や遣る瀬無い思いが湧き上がってきて、とてもじゃないけど普通に談笑する気持ちになれない。
 そして、加納浩輔の存在へのストレスがかさむにつれ、道明寺との関係もギクシャクしてきていた。

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