「それでも貴方を愛しているから…全97話完+α」
第一章 悪夢再来

それでも貴方を愛しているから016

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 「道明寺さんは憶えてくださっていなかったみたいですけどね」
 園崎さんは、ちょっと寂しそうにだろうか、複雑な顔で微笑んだ。
 あたしも何て答えていいか、わからない。
 園崎さんも、園崎さんのお母さんも、いわゆるセレブと言われる人たちのようには見えなかった。
 もちろん、総合病院の個室に何日も入院していられるくらいだから、うちよりは遥かに経済状態は良いのだろうけれど。
 そうでなかったとしても、あの道明寺にクラスメートだという理由だけでは記憶に残っていなかったのは、全然不思議なことじゃなかった。
 下手をしたら3年間一緒でも、憶えていないかも。
 「……」
 「牧野さんのことは、ちょうど私が英徳学園を辞めるちょっと前に、赤札を貼られてたのを知ってました」
 「え?」
 まさか、あたしのことまで知ってる?
 …そりゃあ、そうか。
 学園あげての大騒ぎだったもんね…。
 あたしらと同時期に在学していた人が、知らないはずがない。
 でも、あたしはそんなことより、園崎さんが「英徳を辞めた」という言葉の方が気になった。
 当時、少ないながらにも中途退学してゆく人たちがいたことを知っている。
 道明寺。
 赤札。
 苛め。
 あたしもその中に、『自主退学』以外は全部当てはまってるんだけどね。
 「…まさか、当時赤札を貼られていた人と道明寺さんが一緒にいらっしゃると思わなくて、後でびっくりしましたけど」
 「そ、そ、そうですか…。そうですよね」
 「ええ、はい」
 なんとなく、たとえ予想通りにしたってあたしのせいなんかじゃないのに、なんとなく居た堪れなくて園崎さんの顔が見づらい。
 でも、聞かないのは、それはそれで気になって仕方がない。
 「えっと、その、もしかして英徳を辞めれられたのって…」
 「はい?」
 「あ、ごめんなさい。いきなり、個人的なことを」
 けど、問い返され、もう一度聞く気にはなれなかった。
 ところが園崎さんの方は、あたしのそのわけのわからない聞き方でも理解してくれたらしく、一つ頷いて答えてくれた。
 「ああ、いえ。私は赤札を貼られたことはありませんよ」
 「え?あ、ははは、そ、そうですか。そうですよね」
 他人ごとなのに、なんとなくホッとしてしまって気が抜けてしまった。
 「牧野さんは赤札を貼られて、英徳を辞められたんですか?」
 「…あ、いえ。一応、高等部は卒業して、いま、英徳学園の4年生に在籍しています」
 「そうですか。えらいですね、あんなに大変な目にあわれたのに、学校を辞めないでちゃんと卒業もして、その上大学もだなんて」
 園崎さんが少しだけ微笑む。
 その顔に浮かぶ尊敬に、なんとも面映ゆく居た堪れないような気持ちで、あたしは俯いた。
 …すごいだなんて。
 本当はいつだって逃げ出したかったし、できることならあたしも平穏無事に高校生活を送って、去りたかった。
 それが高校ばかりか大学まで英徳で過ごすことになったのは、道明寺のせい。
 まあ、大学の費用を出してくれて、勉強をさせてくれたのには感謝しているけど、よくよく考えればそもそもあたしの人生がここまで大幅に変遷をさせられたのは、そもそも道明寺のせいだった。
 これは責任転嫁じゃないよね?
 「私なんて英徳を辞めて、田舎の高校に編入したんですけど、なんだかいろいろ上手くいかなくって…。浪人したり、大学も休みがちだったから、一年留年しちゃって、本当は私、牧野さんより一学年上のはずなのに、まだ大学3年生なんです」
 「…そうですか」
 本当にいろいろあったんだな、って園崎さんの顔を見ているとわかる。
 あたしのように赤札が原因で英徳を辞めたってわけじゃないって言ってたけど、家の都合という感じでもなく、何か重いものがあったのだと察せられた。
 なんとはなしに、しんみりした気分に陥って、あたしは俯いて手持無沙汰に自分の手をなんとなくこすり合わせる。
 ふと、道明寺からプレゼントされた腕時計が気になって、無意識の意識というべきか、何とはなしにその腕時計を包み込むように反対側の掌で包み込んだ。
 たぶん、英徳の気配を持つ人に、あたしはいかにも自分で買ったんじゃないというのがバレバレな高級時計を見られたくなかったんだ。
 英徳ではもちろん、あたしと道明寺の付き合いは知れ渡っている。
 今更そんなことを隠したってどうしようもないけど、そのことを知らない人にわざわざ悟られたくなかった。
 「ホント、びっくり。久しぶりにお会いした道明寺さんにも驚いたけど、赤札を貼られたあなたと一緒だったのがもっと驚きで」
 「…はあ」
 「えっと、その道明寺さんとは?」
 なぜ、一緒に?
 …そりゃあ、そうだよね。誰が見たって疑問に思うと思う。
 苛めの加害者と被害者。
 それ以前に、超有名な資産家の御曹司と、庶民の中でも底辺に所属する(F4言うところの)パンピー女。
 どう好意的に見ても、不自然でしかありえない組み合わせ。
 「え…あの、」
 言葉を濁したあたしに、園崎さんがシュンとする。
 「あ、すいません、わたしこそ立ち入ったことを」
 「いえ」
 「ただ、なんだか、私も…その、あの時…は、パニックしていたからあんまり憶えていないんですけど、なんだか昔の道明寺さんとは雰囲気変わっていたなあとか、今思えば思い起こしてみたり」
 さすがに、先日の夜のことは言いにくそうに小さな呟き声になっていたけれど、意外に拘りなく園崎さんの口からあっさり出てきて驚く。
 なんだか…違和感というか、園崎さんてすごい強い人なんだなあって。
 病院に入院しちゃうくらい…当然だよね…、心の傷になってしまう出来事に出会って、まだ数日しかたっていないのに、自分から口にできる。
 そもそも、その関係者だった(目撃者)あたしに会うことができるだけでも、あたしにしてみれば驚きだった。
 あたしだったら、あたしだったら…会いたくない。
 会いたくないし、きっと何も話したくないだろう。
 目を塞ぎ、耳を塞ぎ、血の涙を流しながら、きっと誰にも知られないように普段とまったく変わりなく過ごす。
 …関係者になんて会ったら、きっと知らないふりしちゃうだろうな、たとえ恩人だったとしても。
 「なんていうか、昔から素敵な人でしたけど、もっと苦しそうな感じの人だったから」
 「…園崎さん」
 「苦しそうで寂しそう?私なんかがこんな風に思っていたなんて、おこがましいんですけどね」
 「そうですか」
 当時の道明寺の印象なんて最低最悪で、凶暴だとか狂犬まがいだとか、触れれば切れそうな印象ばかりが勝って、そんな風に思ったことはなかった。
 ただ、道明寺をよく知るようになって、あいつの内面の繊細さや優しさ、情の深さ…愛情に飢えた寂しがり屋な部分を見せてくれるようになって、やっとあたしは気が付くことができるようになったのだ。
 園崎さんって、観察眼が鋭いのかな…それとも?
 「英徳辞めたのって、道明寺さんが原因ではないんですけど、なんていうか、その…学校が嫌だったっていうか、いろいろ辛くて」
 「……」
 「赤札を貼られてまで頑張っていらした牧野さんにはお恥ずかしいんですけど、私なりに頑張ったつもりだったけど、どうしてもダメっていうか、どうしても苦しくて、弱くて…」
 園崎さんの顔が暗く陰る。
 「それって…」
 ガチャリ。
 「遅くなってごめんなさいね。けっこう売店が混んでいて、レジが進まなくて」
 突然かけられた声に、あたしは驚いて椅子から腰を浮かせて、振り返った。
 どうやら、案外時間がたっていたみたい。
 先ほど、売店にお茶を買いにいってらした園崎さんのお母さんが帰ってきていた。
 ふと気が付けば、窓から差す西日もだいぶ傾いている。
 やだ、いけない。
 手て隠していた腕時計を確認すると、うげっ!やばいタイムセールが始まっちゃうっ!?
 「あ、いえ、すいません、あたしこそ。すっかり長居をしてしまって。そろそろ、あたしもお暇しますから」
 「ええっ?そんなもう少しごゆっくりなさって」
 お母さんはあたふたと慌てて、手にぶら下げたビニールからお茶のペットボトルを取り出しつつ、椅子を再び勧めてくれる。
 「お母さん、あんまりお引止めしたらかえってご迷惑だよ」
 「でも、かすみ」
 「いえ、迷惑なんてことは。でも、すいません、実はちょっとこの後、用事がありまして」
 ペコリと頭を下げてドアへと向かうと、お母さんもついてきて名残を惜しんでくれた。
 「あら。それは残念ねぇ」
 「はい。今日は携帯電話をお届けに伺っただけなので。その、園崎さんのお怪我がそれほどひどくなさそうで安心しました」
 ベッドの上の園崎さんも、もう一度丁寧に頭を下げてくれる。
 「本当に、ありがとうございました、牧野さん」
 「いえ、本当に、それは。じゃあ、あたし、これで失礼します」

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