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「それでも貴方を愛しているから…全97話完+α」
第一章 悪夢再来

それでも貴方を愛しているから015

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 病院の前のお花屋さんで小さなアレンジメントを買って、いざ受付の前に立つと、あたしは困ってしまった。
 「すいません、先日入院された園崎かすみさんの病室はどちらでしょうか?」
 体の傷は大したことがなかったみたいだけど、かなり精神的にまいってしまい、神経内科もある総合妙院だったことから園崎さんが入院したことは、道明寺を通じて警察から聞いていた。
 けれどそれ以上のことは聞いていなかったので、病院に直接来てしまったけれど、受付で園崎さんの病室どころか入院中なのか、退院しているのかさえも教えてもらえなかった。
 個人情報保護法も浸透している昨今。
 入院している人の家族か、患者側から直接教えられたわけでなければ、病院は部外者にそういう情報を教えることができないらしい。
 自分はおろか、家族で入院した人なんていなかったから(道明寺の場合は、尋ねなくてもF3の方から連絡してきた)知る機会がなかったけど、さて、困った。
 鞄に入ったままの他人の物の携帯電話を取り出し、重く溜息をつく。
 やっぱり、警察に頼んで渡してもらった方が良かったかな。
 壊れた人形のようなうつろな表情で震えていた彼女が気になって、できればその後の様子を知りたいなんてお節介が頭の隅にあったのが間違いの元だった気がする。
 よくよく考えてみれば、あんなところを見られて、それを思い出させるような相手に会いたいわけもない。
 もう一度だけ、この携帯電話でご家族に連絡とってみようか。
 それで郵送するか、警察に預けるか、病院に預けるか、確認をとる?
 最初から聞けばよかったのだ。
 病院に入院しているかさえもわからないのでは、それこそ個人情報の塊のような携帯電話を受付に預けるわけにもいかず、手の中のピンク色の機体を弄びながら途方に暮れていると、意外そうな声がかかった。
 「…あの?もしかして」
 振り向くと、ママくらいの年代の女性が、あたしの手の中にある携帯電話とストラップ、あたしの顔を交互に見て首を傾げる。
 ふと、その声に聞き覚えがある気がして、思いついたままに聞いてみた。
 「…えっと、もしかして、園崎…かすみさんの?」
 「あ、はい。あの、あなたは?」
 「あたし…私は、先日、かすみさんの携帯電話でご連絡差し上げた、牧野つくしです」
 少しだけ、先日の女性の面影のある人に頭を下げた。



 携帯電話とお見舞いの品だけを渡して病院を去る予定だったけれど、園崎さんのお母さんの強力な勧めで園崎さんの病室を訪ねることになった。
 あたしに声をかけた中年の女性は、やはりあの事件の日…携帯電話で連絡をとりあった園崎さんのお母さんで、娘さんのお見舞いに病院へとちょうど訪れたところだったそう。
 恐縮するあたしに、お母さんは何度も何度もお礼を言い、
 「本当に、本当にその節はありがとうございました。あなたのおかげでうちの娘は」
 涙ぐんではあたしを慌てさせた。
 「…いえ、あたしは偶然通りかかっただけで。その…いろいろと手配したのは、えっと、あたしの…友人の男性で、彼がいなければあたしは何のお役にも立てなかったと思います」
 道明寺をなんと紹介していいかわからず、とりあえず『友人』ということで話を進める。
 おいっ!誰が友人だっ。俺はお前の男だろっ!!
 心の奥底の道明寺が、あたしを罵倒している気がして、ちょっとだけ躊躇ってしまった。
 「たとえそうだとしても、牧野さんが何くれとなく娘を気遣ってくださったことにはかわりません。かすみも、あの時のことはあまり話したがらないのですが、牧野さんのことは本当に良くしてくださったと、ポツポツと話してまして…」
 大変な時だろうに、そんなことまで気遣えるかすみさんに、あたしの方が感心してしまった。
 礼儀正しくて、気遣いの人なんだろうな。
 あんなことになってしまって、どんなに苦しい毎日を過ごしていることか、想像に難くない。
 でも、あたしはそういうふうには言わなかった。
 人からしてみれば、他人にそんな大変なことを気安く『わかる』なんて言われて嬉しいはずもない。
 非力な自分。
 女という性を持っているだけで、男には想像することさえもできない酷い仕打ちを容易に受けてしまう屈辱。
 大きな手が、強靭な腕が、凶暴な力が女を簡単に屈服させ、蹂躙する。
 怖い、苦しい、辛い、悔しい、哀しい…そして恨めしい。
 ありとあらゆる負の感情。
 促がされて病室の前に立つと、まずは園崎さんのお母さんが先に入って中へと招き入れられた。
 「こんにちは」
 ベッドに体を起こしていた女性…たしかにあの夜、虚ろな眼差しであたしに助けを求めていた女性がこちらを見て、驚いたように目を見開いていた。
 「あ…」
 「ごめんなさい、急に。えっと、お体の調子はいかがですか?」
 なんとも言いようがなく無難な質問をして、ドア口でそこから動きかねていると、
 「まあまあ、どうぞ、もっと奥にお入りになって。良かったら、こちらの椅子に座ってくださいな」
 お母さんが気を使って、ベッドわきの椅子へと誘ってくれた。
 でも、正直、ついお母さんの言うままにここまで来てしまったけれど、こうして面と向かいあっても、あの夜以外に面識のないあたしにかけられる言葉なんてあるはずもなくて…。
 「あら、私ったら、お茶の買い置きがないわ」
 「あ、いえ、おかまいなく」
 慌てているお母さんに遠慮するものの、
 「いえいえ、せっかく牧野さんがいらしてくださったのに、そんなわけにはいきませんよ。ちょっと待っていてくださいね。下の売店で何か買ってきますから」
 「いえ!そんな、本当にすぐお暇しますので」
 「そんなこと言わず、お茶よりジュースやコーヒーの方がイイかしら?」
 「…あ、いや、お茶で大丈夫ですけど」
 みなまで言い終わらないうちに、お母さんは満足そうに微笑んで、「じゃあ、ちょっと待っててくださいね」とあたしが止める間もなく病室を出ていってしまった。
 急いで立ち上がろうとしたけど、一度椅子に腰を下ろしてしまった以上、お母さんがいなくなったからと言ってすぐに帰るわけにもいかない。
 ついお母さんが出て行かれたドアを名残惜しく見つめてしまったけれど、覚悟を決めてさっきから無言の園崎さんへと視線を戻した。
 「…あの」
 「この間は」
 同時に言葉が重なって、顔を見合わせてしまった。
 「えっと、先にどうぞ」
 「い、いえ、牧野さんから」
 「…じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて。えっと、実は突然伺ったのは、園崎さんの携帯電話をこの間お借りして、うっかりそのまま持ち帰ってしまったからなんです。お返ししたらすぐに帰ろうと思ってたんですけれど」
 園崎さんは目をパチクリさせて、ちょっとの間だけ首を傾げて考え込むと、ああ、と頷いた。
 「そういえば、ここ数日なかったかも。なんだか、携帯どころという気分じゃなかったので、全然気が付かなかったです」
 儚く微笑んだ顔は、意外にもしっかりとしていて、精神的な問題で入院している人には見えなかった。
 けれど、人には見えなくても、その傷だらけの顔以上に、きっと心の中に無数に傷跡が残っているに違いない。
 数日前に強く殴られて痛々しく腫れあがっていた頬や目の上は、まだ薄らと赤みが残っていて、あちらこちらに貼られたガーゼやテープが見るに堪えない。
 ふと伏せられる眼差しが、どこか病的に痩せこけて青白い顔が、彼女の心痛をどんな雄弁な言葉よりも強く、哀しくあたしに訴えかけていた。
 「あの、私もいいですか?」
 「え、あ、はい、どうぞ」
 「まずは、お礼を。先日は助けていただいてありがとうございました」
 園崎さんは両手をベッドの掛布の上について丁寧に頭を下げてくれる。
 「あ、いえ、そんな。あたしは何も」
 恐縮しつつも、さきほどお母さんに伝えたのと同じように、園崎さんへも伝える。
 「えっと、園崎さんを…そのお助けして、いろいろと手配してくれたのは、そ、その、憶えてらっしゃるかわからないんですが、あたしじゃなくってあたしの友人の方で」
 「道明寺さん…ですよね」
 警察から名前を聞いていたのだろうと、あたしは疑問に思わなかった。
 「ええ、そうです。あたしは、ただうろたえるばかりで、ほとんど何もしてさしあげられなくて…」
 「いえ、そんな、牧野さんが力づけてくださったことは、私一生忘れません」
 「はは、…そんな」
 なんとも過分な園崎さんの気持ちに、言葉を続けられない。
 あたし、本当に何もできなかったんだし。
 あの時あたしがしたことといえば、何の考えもなく無謀な行動をとって、茫然としていただけ。
 道明寺がいなかったら、あたしも一緒に被害者に連座していたかもしれず、そうじゃなくても、とてもじゃないけど冷静な対応をして、危機を潜り抜けて、他人を助けることなんてきっとできなかった。
 「…まさか、道明寺さんと牧野さんに助けていただくなんて、思いもしなかった」
 「え?」
 呟かれた声に、びっくりして思わず園崎さんの顔を見返す。
 困った様な、なんとも微妙な表情を浮かべた園崎さんからは、思いもよらない言葉が飛び出した。
 「…私、英徳学園出身なんです」
 「えっ!?」
 「高等部1年生の時には、道明寺さんとも同じクラスだったこともあるんです。3年生の時には花沢さんと一緒だったかな」

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