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「愛してる、そばにいて」
第1章 泡沫に沈む月②

愛してる、そばにいて0041

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 「…つくしっ!!」
 バアアァーーーァァンッ。
 今にもドアを叩き壊さんばかりに飛び込んできた司は、いつもの冷静沈着で冷徹な独裁者の顔を脱ぎ捨て、隠し切れぬ心配に顔色を青く歪ませていた。
 自分の横で眠る我が子のクルクルの頭を撫でながら、可愛い寝顔をジッと見つめていたつくしが、司のたてた大音響に顔を顰める。
 「はあ、はあ、はあ。お前っ、大丈夫かっ!?」
 つくしの案外平気そうな顔に安堵したのか、大きく息を吐きだし、大股にベッドへと歩み寄った司だったが、怪訝に眉根を寄せる。
 「…って、なんで、こいつ、こんなところで寝てんだ?検査の結果は異常なかったんだろ?」
 疑問符を浮かべつつも、実際に可愛い息子の無事な姿に司もホッと表情を緩めた。
 「ん…。帰っていいって言われたんだけど、すごく私のことを心配してたらしいし。私が目を覚ました時には、戒、寝ちゃってたから。無理言って、この子も一晩泊めてもらったの。まだ、あんたも帰ってなかったし、目が覚めた時に一人じゃあ可哀想でしょ?」
 「んなこと言ったって、こんなせめえベッドで二人じゃお前がゆっくり休めないじゃん。ここ、付き添いの控え室もついてんだから、そっちのベッドに寝かせろよ。メイドが泊まってんの?」
 「ううん、絵里ちゃんが来てくれて、タマさんは泊まるように指示してくれたみたいなんだけど、ここ完全看護だし、たいした怪我でもないから帰ってもらった…明日の朝、タマさんが来てくれるって」
 「ふ…ん」
 何気ない会話を交わしながらも、司は不可思議な違和感を覚えた。
 何かがおかしいのだ。
 違和感を感じているのに、その正体がわからない。 
 「…つくし?」
 奇妙な間が、二人の間に横たわっていた。
 司を見ていつもはパアッと弾けるような笑顔も、司の非常識に呆れて怒る可愛い怒り顔もそこにはない。
 ただ、どこかひんやりとしたガラス玉のような目が、感情のアップダウンで揺れ動く司の顔を見つめ返していた。
 司の中をじんわりとした怖れが這い上ってくる。
 だが、その怖れを振り払い、何も気づかぬふりで問い掛ける。
 「どうしたんだ?つくし…」
 司はつくしの怪我も忘れ、とっさに伸ばした手で彼女の肩を少し乱暴に揺すった。
 「…あ、痛っう」
 「え?」
 「肩…痛めてんだから、乱暴にしないでよっ」
 夢から覚めたようなつくしの目が瞬き、痛みに顔を歪めて司の手を振り払った。
 いつもの歯切れの良い文句がやっとポンポンと出てきて、つくしが唇を尖らせる。
 「あ、わりぃ。てか、怪我酷いのか?」
 予感めいた何かを感じながらも、司は彼女の様子が普段通りになってきたことに安堵し、再び心配を蘇らせた。
 「ん…、レントゲン撮ったんだけど、肩の方は骨にまで異常はなくって単なる打ち身程度みたい。…でも、右足首はヒビ入ってるって」
 その言葉に、司はバッと即座に布団の上掛けをはぐり、痛々しく包帯の巻かれたつくしの足を険しい顔で凝視する。
 「…おまっ、もがもが、もごっ」
 司がまたも大きな声を出そうとしたことに気が付き、つくしがその口を痛めていない方の手で塞いだ。
 「う~う~、う~む~む~」
 「しっ、司。ここ、病院だよ、静かにしてっ」
 司もつくしの怪我を慮って、彼女の手を乱暴に引き剥がすことはできない。
 仕方なく、不本意ではあるものの、指示に従う意思を表して重く頷くにとどめる。
 つくしの手が離れると、途端に、不機嫌に唇を歪ませ不平を零した。
 「…どうせ、ここは他の病室とも離れてんだから、気にすることねぇんだよ。怪我してまで、他人のことを気にしてんじゃねぇ」
 「気にするもしないも、そういう問題じゃないのっ。常識でしょ。まったく、あんたは」
 はあああっと溜息を落とすつくしをジッと見つめ、次いで司はその華奢な体ををそっと引き寄せた。
 「…司?」 
 柔らかく抱きしめてきた腕と体は小刻みに震えていて、つくしの痛めていない方の肩先に埋められた顔が小さく何度も息を吐く。
 「…お前だ」
 「……」 
 まるで嗚咽を堪えるようなその仕草に、つくしは司の彼女を無事を確認するまで感じていた恐怖と不安を悟った。
 つくしの心が、じんわりとした愛しさに包まれる。
 いつも、いつも彼は言葉だけでなく、全身で彼女への愛情を叫んできた。
 その眼差し、腕、指先、心臓の鼓動でさえも、つくしを愛してる、彼女にそばにいて欲しいと訴え続けてきたのだ。
 愛おしい。
 それほどまでに自分を愛し、求めてくれる男性をどうして愛さずにいられるものか。
 これほどに美しく、強く、優しい男に縋りつかれ、彼を抱きしめずにいられる女などいるはずがない。
 たとえ何があったのだとしても。
 つくしは厳然たる天啓に打たれ、心の奥底に滞っていた昏く陰惨な何かを打ち払う。
 自らの意志で、司への愛で。
 そして、それを口にはせず、ただ心のままに司を抱きしめ返す。
 「…司」
 「……」
 「司、ごめんね?」
 いつもは痛いくらいに抱きしめてくるのに、どこか儚く、そしてこの上なく優しい。
 司の俯けて顔をあげぬ肩先につくしも顔を乗せ、そっとうなじに口づけを落とした。
 いつもとは逆に。
 司を慰めるために、つくしがここにいて、確かに無事で彼の傍にいることを実感してもらうために何度でも。
 ここが私の場所。
 この腕の中にいることだけが、私の真実。
 心を決めてしまえば、あれほどに怖かった過去が、すべてが、もはや昔にあった哀しい記憶の一片でしかないとつくしは諦めることができる。
 昔よりも今が大事だから。
 司が声を震わせ、ポツリとこぼす。 
 「お前、俺の心臓止める気かよ。…お前の無事を聞いても、お前の姿を見るまで俺がどんなに…」
 怖かったか…。
 司の声にならない言葉を感じとり、つくしは愛しい男の頬を両手で包み込んだ。
 掌の温もりが伝わればいい。
 「ごめん、本当にごめん。私は、無事だよ?ずっと、あんたのそばにいるから」
 言外の意味をこめて。
 「つくし」
 二人見つめ合い、その眼の中にある気持ちを確かめ合って。
 司がそっと目を閉じると、引き寄せられるようにつくしがその唇へと唇を重ねる。
 つくしの背に回った司の手が彼女の背を支え、そのまま二人はベッドへと徐々に、徐々に体を倒し、重なりあった。




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