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「夢で逢えたら…全207話完+α」
第一章 もう一度逢いたい

夢で逢えたら016

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 柔らかい間接灯の明かりが、仄かに手元を照らし、一時の安らぎと休息を求める男女を優しく包み込む。
 手の中のグラスの透明な氷が、ガシャッと小さな音を立てて崩れ落ちるのを見るともなしに見詰めながら、あきらは喉を焼く液体を一息に煽った。
 「一人?良かったら、私たちと一緒しないかしら?」
 鈴を鳴らすような声が、はしゃいで華やかに響く。
 「あ~、残念。俺、待ち合わせしててさ。ごめんね、また縁があったら誘ってよ?」
 遊びなれた洒脱な男の甘い声が、軽やかに女たちをいなす。
 嫌というほど聞きなれた親友の登場を、背後に感じながら、それなりの年も得て、地位も名誉も見合ったものを築いているはずの男の変わらない風情に、あきらはふっと微笑んだ。
 「よお」
 「よお。相変わらずだな?総二郎」
 「ああ、お前もだろ、あきら」
 互いにマメで社交的なタチであることもあって、ほか他の二人の親友たちよりは頻繁に連絡を取り合ってはいたが、それでも怠惰や放蕩が許されていた学生時代とは異なり、会えて半年に一度。
 それが、今回はちょうど休暇で東北を訪れていた類と同時期に、北海道で講演に出ていた総二郎と、イギリス支社勤務から日本本社へと転勤になり帰国していたあきらが待ち合わせて先月末に会ったばかりだった。
 「馬鹿言え、こっちは、すっかり大人しいものさ」
 肩を竦めるあきらは実際、結婚して以来、危険な火遊びからは一切、足を洗っていた。
 それはF4の中で唯一温かい家庭で育ったあきらにとって、政略結婚ではあるとはいえ縁あって夫婦になった妻への当然の礼儀であったし、美作商事重役という立場や、実際、多忙すぎてそんな暇がないこともある。
 「枯れてんなあ」
 そうはいう総二郎にしても、真面目な家庭人とは言い難かったが、馬鹿をやっていた子供時代は遥かに遠い。
 「まあ、それをいうと、俺らの中で司が一番、いまだに破天荒やってるといえるよな」
 あきらの隣のスツールに腰を下ろし、「ドライマティーニ」と総二郎は今夜の一杯目を注文した。
 司の噂はNYと東京という距離があってさえも、あきら達の耳にも届いている。
 幼い頃からの友として支えあった幼少期。
 しかし、ここ数年すっかり疎遠になり、伝え聞く話は経済人としての成功とその光とは真逆に荒れ果てた私生活の汚濁ばかり。
 それでも、一時期の坂から転げ落ちるような転落からは浮上し、危うい均衡を保ちながら、冷徹な覇道を進む友を、二人は心を痛めながらも遠くから見守っていた。
 彼女を失って…。
 何年たっても、生々しい傷を癒すことができないばかりか、血を流し続け、掻き毟る男の哀しみが、憐れでもあり、そういう風に純粋には生きられない二人には空恐ろしいながらもどこか羨ましい。
 「お前から連絡したのか?」
 「ああ、一応な。定期的には連絡は入れてたんだよ、毎回友達甲斐のないけんもほろろな応対ばかりだけどな」
 「…へえ?俺も奴と話すのは5年ぶりか。よく、引っぱり出せたな」
 「いや、それが、今回日本に出張で戻って来るっていうから、ダメもとで誘ってみたんだよ」
 総二郎はあきらの相変わらずの世話焼きぶりに内心苦笑した。
 基本的に個人主義のF4の中にあって、この男は昔から温かく優しい。
 元々そういう傾向があったが、それでも心配性の兄のようなその性状は、彼らが今も忘れがたく思っている一人の少女の影響の名残なのかもしれなかった。
 司や類にとっての運命の女であった彼女…だが、総二郎やあきらにとっても輝かしい青春の一コマを彩ってくれた運命の女だった。
 彼女と出会って、司や類が人間になったように、総二郎やあきらにも多大な影響を及ぼしたのだ。
 「…なんだか、感じが変わってたんだよ」
 総二郎は無言のまま、あきらをじっと見つめ先を促した。
 「元に戻ってきてる…ていうのか、な」
 「牧野がいないのに?」
 「ああ、牧野がいないのに」
 司にとってそれまでの18年より遥かに長くつらい17年だったであろうが、総二郎やあきらの上に過ぎた年月と同じように、司にも等しく時が流れたというのだろうか。
 「…あいつは、牧野を完全に失ったわけじゃないしな」
 ぼんやりとグラスを見つめながら、言うともなしに口にした総二郎にあきらは遣る瀬無く首を振った。
 「マキノか…。俺にはわからないよ。類じゃないが、あいつがどう変わろうと俺にとって奴は、大切なダチだし仲間だ。だから、できればどんな人間であれ、司をこっち側に繋ぎ止めてくれるならそれはそれでかまわないという気もするし」
 「気苦労な奴だな、お前も」
 「性分だからな」
 苦笑してグラスとグラスを軽く、打ち合わせる。
 と、カウンターに出してあったあきらの携帯電話が、ぶーぶー、という振動音を響かせ、待ち人からの連絡を知らせた。
 メッセージを読み込み、あきらが立ち上がる。
 「行こうぜ、着いたみたいだ」 
 総二郎も残った酒を一気に飲みほし、立ち上がった。
 「まあ、ともかく、久しぶりに帰ってきて、俺たちにやっと会おうって気になった司ちゃんでもいじりにいきますか」

 
 5年ぶりに再会した司は、男としても世界有数の大企業を背負う財界人としても脂がのり、自信と覇気に満ちている。
 一方無駄なところをそぎ落とした精悍な顔や体は、少し窶れ、日頃の激務を垣間見させていた。
 しかし、総二郎が目を見張ったのは、ほんの若い一時を除いて、いつもどこか暗い影と心の荒みを纏っていた司の雰囲気がガラリと変わっていたことだ。
 いつもどこか陰の気の威圧感に満ちていた司の空気は、懐かしい過去を思い起こさせる柔らかいものを帯びている。
 総二郎よりは最近に会合を果たしているはずのあきらにしても意外だったのか、総二郎と顔を見合わせ、お互いの心中を語らずとも顕にしていた。
 「久しぶりだな、あきら、総二郎」
 「あ、ああ、2年ぶりか、司」
 「俺は、5年ぶりだぞ。ずいぶん、お見限りだったな」
 「多忙だったからな、お互い様だろ?総二郎」
 メープルの最上階ロイヤルスウィート。
 かつて、道明寺の邸とともに彼らの溜まり場の一つだったこの部屋に3人集まるのも5年ぶりだった。
 司に促されて、総二郎とあきらが向かいのソファーに腰を下ろす。
 すでに用意され、冷やされていたシャンパンをグラスにサーブして、司は数年ぶりに再会した友と旧交を温めた。
 「しばらく、日本にいるのか?」
 「いや、今週いっぱいだけ。来週には、NYに戻る。あきらは、日本に戻ってきてるんだろ?」
 「ああ。しばらくは定住かな。総二郎もここのところ、あっちこち海外の拠点に飛んでるんだよな?」
 「まあ、お前らほどじゃないけどな」
 彼女がいた時には、いつでも持つことができた穏やかな時間…。
 「…なんだよ、司。ずいぶん、お前、雰囲気がかわったな」
 「あ?」
 総二郎がニヤリと笑ってウィンクをよこす。
 「さては、惚れた女でもできたか?」
 「バカ言ってんじゃねぇよ。あるか、そんなこと」
 「そっかあ?ここんとこ、NYでも女遊び、控えてるんだろ?」
 「よく知ってんな、そんなこと」
 相変わらずの情報通に、司が苦笑をもらす。
 「総二郎は、世界中に女のネットワークがあるからな」
 あきらが半分冗談、半分本気で混ぜっ返す。
 「そうそう、最近、息子の入院している病院に日参してるんだって?」
 驚いたようにあきらが司を見やる。
 前々から心臓の悪い司の一人息子が、入退院を繰り返していることは知っていたが、司が子煩悩だと聞いたことがなかった。
 家族を大事にしているあきらにしてみれば、そんな司の息子に対して不憫な思いも抱いていたのだが。
 「ま、あな。前の女房が大見得切って親権持って行ったガキだが、今度は再婚するんだとかで押し付けてきやがったからな」
 「引き取ったのか?」
 「あれでも道明寺の唯一の後継者だ。ババアが喜び勇んで迎え入れたんだが、一応、親が俺だしな」
 「…一応って、間違いもなくお前の子だろう。いい加減にしておけよ、司」
 あきらが、不快気に眉間を寄せる。
 「ああ、そうだな。小煩せぇ医者に説教されちまってよ」
 「「お前が?」」
 シャンパンを一口口に含んで、司が苦笑する。
 案にそうして、そうした司の顔は不機嫌ではなかった。
 「なんだよな、親の責任とか、ヤルことやった結果とか?言われてみればもっともだ。ガキの頃の俺がそれでグレたんだ、それを繰り返すのもカッコわりぃなと」
 どうやら、照れているらしい司に総二郎とあきらは顔を見合わす。
 そして、相好を崩して立ち上がり、突然二人がかりで司を羽交い絞めにして、ワシャワシャとその頭を掻き回した。
 「今頃かよ~っ!司~」
 「今頃でも、やっと大人になってくれて、お兄さんは嬉しい!」
 「ば、バカやめろっ!」
 イイ年した大の男が、じゃれ合って小突きあっている。
 さすがに、お互いに気恥ずかしさもあって苦笑してすぐに元に戻ったが、そうしてみると、どこかあったブランクのある気まずい空気がいつの間にか払拭されて、懐かしい気安さが戻っていた。
 「しっかし、病院ってメイルズフォートだよな?司をギャフンと言わせるようなそんなイイ女な女医なんて、あそこにいたかな?」
 なんで女医だとわかるんだよ~と呆れる司に、うんうんと総二郎とあきらが頷き合う。
 「男が変わる裏側には必ず女がいるにきまってんだろ?つうか、そうでもなけりゃ、お前が聞く耳もつかよ?」
 「てめぇじゃねえんだ。人を女好きみたいに」
 「おいおい、司ちゃん。ここのところのアメリカゴシップ誌のご活躍は日本でも聞いてるよん?それに比べれば、俺らなんかおとなしいもんだよな?」
 「おいっ、俺をお前らと一緒にすんな。いつまでも遊びにうつつを抜かしてるのはお前らだけだ。俺は愛妻家なんだ」
 一昔前だったら何言ってるんだで一蹴だったが、確かに結婚して以来のあきらは模範的な夫であり、父親だった。
 「まあ、司の場合、女好きってよりも鬼畜って感じだったけど。おっかしいな、俺もあの病院には数年前、留学していた姪っ子が入院していて、けっこう内情に詳しいんだよな」
 マーベルから小耳に挟んだ女医や看護師たちとの艶話を思い出して、司は皮肉げに片頬をあげる。
 「…お前があの病院を徘徊していた頃に、ちょうどその女は出張していて留守にしていたらしいからな。知らないんじゃないか?」
 「なんだよ、やっぱり女医じゃん?ちゃっかり、そんな個人的な話するような仲にもうなってるわけ?」
 興味津々な総二郎&あきらに対して、司は淡泊だ。
 「別に、2,3度食事に行っただけだ」
 あきらがひゅ~っと口笛を吹く。
 2,3度食事だって?
 司が愛したあの少女を失って以来、女をビジネスの道具か、ストレスの捌け口としてしか扱ってこなかった司が?
 「美人?」
 問われてちょっと、考えてみる。
 「ま、あ、それなりに美人なんじゃねぇ?色気ねぇけどな」
 「へえ?」
 「付き合ってんのか?」
 「まさか、そういうんじゃねぇよ。単に要の主治医にと、引き抜き交渉しているだけだ。要が懐いているし、医者としても悪くない」
 「個人的に食事にまで誘ってるんだろ?」
 食い下がるあきらに、ピクリと司の片眉がひきつった。
 「やたらと食いつくな。俺に女を焚き付けてどうする?女に特に不自由しちゃいねぇよ?」
 「…別に焚き付けちゃあいねぇが。もう、いいんじゃねぇの…て思ってな」
 「なにが、だ」
 司の声が一段、低く下がる。
 それに気が付いていないわけでもないだろうに、総二郎は淡々と続けた。
 「諦めの悪いのはお前も類も昔から変わらねぇからな。俺たちが何言ってもしょうがねぇだろうけど、ここんところ俺たちからも背を向けて、人生後ろ向きに突っ走って、陰の気背負ってたお前が、久しぶりに会ってみりゃ、なんだか悪くない方向に変わってるみたいだったからな」
 「ああ?何言ってやがんだ」
 「…よせ、総二郎」
 気色ばむ司に対して総二郎は冷静だ。
 せっかく和やかな雰囲気に従事していた場を荒らしはしないかと、あきらがハラハラと間を取り持つ。
 「ま、関係ないけどな。イイ年した大の男に、今更俺がお節介してやる道理もねぇし。でもよ、どんな女か知らねぇけど、過去の残骸にいつまでもしがみ付いてるより、どんな女でもよほどお前にとっていいんじゃねぇかと思うぜ」
 「…」
 「類には会わせて、つうか話してないんだろ?お前のマキノのこと」
 「てめぇら、類には言ってねぇだろうな?」
 「…なに、盗られると思ってるのかよ。お前のマキノをよ?」
 総二郎の問いに、一瞬司は押し黙り、顔を上げ、窓から覗く煌びやかな夜景に目を向けた。
 「とられる?類のやつは…あいつを認めないだろうし、そもそも気にも留めないだろうよ」
 そんな女に執着してるだなんて、焼きが回ったよね、司も…類の声がくっきりと耳に蘇った気がして、司は瞼をそっと下げた。

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