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「愛してる、そばにいて」
第1章 泡沫に沈む月②

愛してる、そばにいて0031

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 つくしの逆切れになお怒りをかきたてられ、司が凶暴な力で体を拘束したまま、つくしに怒声を発した。
 「お前は俺が目を離すとすぐに昔から類の傍をウロチョロしやがってっ。なんでだよっ。何話してたっ。またアイツに見惚れて、岡惚れしやがったのかよっ」
 折れんばかりに締め付けられた手首が痛い。
 抑えつけられた体が軋み、噴き出す汗に、つくしは視界を遮られ、じわじわと得体のしれない恐怖が体中を駆け巡る。
 …いやだ、ダメ。もう、これ以上。
 そうは思うのに、噴出しかけた恐怖に囚われたくなくって、虚勢を張リ続ける。
 「い、痛いっ。離してよっ。あ、あ、あん…た、な、に、言ってんの?わけ、わかんない。なんで、わたしが…」
 パニックが近づいていた。
 「類のやつに見惚れてただろっ?この間のパーティで」
 「なっ」
 「お前は身持ちが堅い女だ。そんなことはわかってる。俺という夫がいて、俺以外の男には浮気どころか、いままで目もくれなかったよな?」
 恐怖に凍り付いた頭が空転し、まとまりが付かない。
 司の全身から発する禍々しい気に圧倒され、つくしの心臓は激しい動悸をうち、歯の根がガチガチとなる。
 「なんで、類なんだよ。よりによって、なんでまた類にお前は気をとられるんだっ」
 息が苦しい。
 喘ぐように、つくしはなんとか言葉を絞りだした。
 「は、花沢類とは私、ホント、本当になに…もっ」
 「…っ!?おまえ、その呼び方っ」
 司の顔から表情が消える。
 そのまま、司は掴んだつくしの手首を強引に引っ張り、そばにあったソファへと乱暴に突き飛ばした。
 「え?きゃあっ!?」
 「何があった。何を話したんだよっ。言え、言えよっ」
 「や、やめて、司。何も話してなんかないわ。お願い、やめてっ!」
 「また、アイツが好きになったのか?あの時みたいに、アイツを見つめて、アイツを選んで…。赦さねぇっ。お前は俺の女だっ。俺だけのモノなんだっ!!」
 『なにしてんの、座れば?』
 突然につくしの脳裏に現れる幻惑。
 その姿は、ビー玉の目の柔らかい美貌の青年の姿を形どる。
 『よくもこの俺をコケにしてくれたな。この淫売が。お前を、メチャクチャにしてやる』
 つくしの恐怖が足音を立てて追いかけてくる。
 昏い、真っ黒な闇を映したような狂気を含んだ目。 
 怖い、怖い、怖いっ。
 『…この目が類を映すのか。この唇が俺以外の男の名前を呼ぶのか。絶対に赦さねぇ。お前は俺の…』
 「いやああああああああああぁぁ、来ないでぇぇっ」
 つくしの喉から、この世の物とも思えない絶叫が迸った。
 最大限の恐怖、最高の拒絶。
 抑えつけた男の体を死にもの狂いで蹴り上げ、身をよじり、逃れようと暴れまくる。
 突然のつくしの暴発に、司は驚き、一瞬にして自分の昏い思念を霧散させた。
 「つ、くしっ?」
 「あああああああああああああああああああああああああああ」
 すでにパニック状態に陥ったつくしの目には、目の前の男が誰であるのか、もはや何がどうなっているのかさえもわからない。
 ただ、この手を抑えつける怖ろしい力、体の上にのしかかる厭わしい熱を排除することだけに執心し、転げまわる。
 ドンドンドンドンっ!ドンドンドンドンっ!!
 「若旦那様っ!若奥様っ!!」
 タマの動揺した叫びが、ドアの外から扉を叩く音と共に冷静さを失っていた司の耳にも届き、頭を冷やす。
 脱力した司の腕から逃れ、転がり落ちる様にソファから床へと落下したつくしが、体を小さく丸め、まるで瘧の発作のように震えながら、喘鳴を上げ続けた。
 バアアァァーンッ!
 鍵がかかっていなかったことにやっと気が付いたタマが、数人の男性使用人とともに部屋の中へと飛び込んでくる。
 だが、つくしの絶叫から、外でハラハラと様子を伺っていた老婆は凄惨な惨状を予測していたのだが、予想に反して床を這うつくしを発見し、茫然と立ち尽くして見下ろす司の姿に棒立ちになった。
 「いやだ、いやだ、いやあああああああ」
 またも叫び声をあげて頭を床に打ち付け始めたつくしに仰天し、タマが急いで歩み寄って抱きしめ、制止する。
 「しっかり!若奥様、気をしっかり持って。何も怖い事なんてありませんよっ!」
 「つくし!」
 我に返った司がつくしに歩み寄ろうとして、タマに視線で押し留められる。
 抱き起されたつくしの目には恐怖に彩られた虚ろさのみがあって、司のことなど夫とも認識していない。
 それどころか、司の一挙一動が彼女の狂気に火をつけ、怯えさせる。
 冷水を浴びせられたかのような恐怖が、司にも去来した。
 つくしの恐怖し、自分を全身で拒絶する姿に過去の罪がフラッシュバックし、体を震わせる。
 何物をも畏れるものなどないはずの司だったが、つくしの虚ろな目が、恐慌の叫びが、時を巻き戻したかのような錯覚を起こさせ、そして自分のバカな嫉妬のもたらした結果に怯え苛まれる。
 …つくしは、男の怒声が嫌いだった。
 普段のじゃれ合い程度の司の乱暴な物言いにはびくともしないくらいには回復しはしていたが、以前のつくしはまるで怯えた小動物のように司の感情に敏感で一挙一動を怖れていた。
 それは消えた記憶の名残だったのか、それとも本当は記憶の底に押し込めただけでいつ噴出してもおかしくはないことの証明だとでもいうのか、司が我を忘れて激昂すると、揺り動かされる過去につくしは恐怖し、発狂したように我を忘れ怯え、泣き咽ぶ。
 そしてその姿に、司もまた過去を彷彿とさせ、つくしを失う恐怖に体と心は凍り付き…そうした数年を抜けて現在があったはずだったというのに、またも進歩のない自分は、そんな苦しい過去をもう一度繰り返そうとしている。
 「…すまない、タマ。つくしのことを頼む」
 司はタマに一礼し、重い足取りを引きずり夫婦の寝室を出る。
 あとには、つくしのすすり泣く声が彼の後を追いかけ、いつまでもいつまでも、彼の凍える心をひび割れさせ、この先待つ恐怖を増幅させた。




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