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「愛してる、そばにいて」
第1章 泡沫に沈む月①

愛してる、そばにいて0024

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 意外なことに、類は何気に子守に長けていて、見た目子供には敬遠されそうなタイプに見えるというのに、戒と咲はすっかり類に懐いてしまっていた。
 戒より一つ年上で5才の咲は、おしゃまで、どちらかというと大人の女性と同様、類の容姿や王子様な雰囲気に傾倒していたけれど、戒の方は類の体を使った遊びにすっかり参ってしまったようだ。
 「なんていうか、あんた意外に子守上手じゃない」
 関心半分、呆れたような椿の言葉に、背中に咲、片手に戒をぶら下げた類が苦笑する。
 「もしかして、身近に子供がいる環境なんですか?」
 「母方の従兄の家に最近子供が生まれたって話は聞いたけど、親戚づきあいほとんどないし。戒や咲が遊び方教えてくれたかな」
 首を傾げる類を見上げ、戒がキラキラした目で類を見上げる。
 「ねね、類もうちに遊びにおいでよ」
 一同はすでに水着から着替え、そろそろ帰宅しようかとラウンジで一息ついたところだった。
 つくしの足の怪我も幸い大したことがなく、場所が場所だったので歩くには多少不便があるものの、それでも特に支えもなくわずかに足を引きずるくらいで一人で歩行できている。
 「…戒、大人の人を呼び捨てにしたらダメでしょ」
 ねめつけるつくしに小さく舌を出して、後ろに隠れる戒の頭を類がクシャクシャにかき混ぜた。 
 「いいよ、オジサン呼ばわりされるのも嫌だし。戒とは今日、友達になったしね」
 「ね~」
 人見知りの強い戒が珍しいことだ。
 類にしてみてもそれほどとっつきやすい感じじゃなかったのに、戒や咲との短い交流の間にずいぶん雰囲気が変わっている気がする。
 クールで冷めた印象だったのに、つかみどころのなさはそのままに、浮かべる微笑みがどこか柔らかい。
 「いいなあ、咲も類ちゃんって呼んでいい?」
 「いいよ、咲のママは、俺にとってお姉さんみたいなもんだしね」
 肩を竦めながらも、苦笑する椿の類を見る目は司を見る時のように慈愛に満ちている。
 司ほどとは言わないまでも、確かに椿にとって類は幼い時からよく知っている弟のようなものだった。
 「俺のお母さんは?」
 「ん~、友達?」
 「…え?」
 意外な類の言葉に、つくしが目を瞠る。
 「それに、戒のパパは俺の親友」
 「えー、本当?!お父さんと友達なの?」
 驚いて目を見開く戒に、類が目を細め優しく微笑む。
 「そ。お前くらい小さい時に、友達になったんだよ」
 「へえぇ?どうやって友達になったの?!」
 実は密かに友達が欲しいと思っている戒は興味津々だ。
 戒が日本で生まれ育っていれば、少なくても日本に在住している総二郎やあきらとは懇意にしていただろうに、すれ違う年月に父親の友人の顔も知らず、また司も忙しいからかあまり友人たちの話を戒やつくしの前でしなかった。
 つくしにしてみても、類の話には興味がある。
 …もしかしたら、かつてこの魅力的な男性と自分は本当に友達だったことがあったのだろうか?
 とても信じられない。
 しかし、夫の司と幼い頃からの親友で、同時期に同じ高校に在学していたのだ。
 ある意味先輩後輩なのは司と同じ。
 1,2度にしろ、つくしが記憶を失った当時も見舞いにきてくれたことがあったのだから、友達というのもあながちありえないことではないのかもしれなかった。
 そうと思えば、類に感じる不思議な慕わしさ、懐かしさもゆえないことではないのか。
 つくし自身、元々の性格はともかく、17才以前の記憶を失うと言う筆舌に尽くしがたい経験ゆえに、他人に対して今一開けっ広げになれず、また、それ以降慣れぬ上流階級という特殊な世界に飛び込むことになり、人間不信になるような経験を数多く味わされた結果、警戒心もそれなりに強い。
 それなのに、なぜか何の根拠もないのに、類は自分を傷つけない人間だと、妙な確信があった。
 なぜなのだろう?あれほど愛してくれている司には、時々得体のしれない怖れと不安を感じることがあるというのに。
 このまま誰もが不必要だと言う過去を忘れ、ただ司を愛し、戒を大切に幸せな毎日を過ごしていければいいじゃないかという思いとは裏腹に、本当にいいの?このままで。
 欺瞞に目を瞑り、真実から耳を塞ぎ、本当に自分を取り戻せないままに一生を終えて良いのかと、どこかで声がする。
 類なら、司が教えてくれない真実を話してくれるだろうか。
 彼なら、本当につくしが望めば、たとえそこに彼女が傷つく何かがあったのだとしても、包み隠さず真実を教えてくれる気がする。
 「あの…」
 椿や戒たちの存在さえ忘れ、つくしが類へと問いかけようと口を開きかけた。
 「ママ、私、おトイレ」
 類の背中に乗っていた咲が恥ずかしそうに、椿に告げる。 
 「…俺も行きたい」 
 続いて戒も。
 「あら、じゃあ、ちょっと私が連れてゆくわね」
 「あ、お姉さん、私が行きます」
 立ち上がりかけたつくしを椿が制する。
 「いいわよ、つくしちゃん。足を怪我をしているんですもの、私が行ってくるわ」
 「俺が行こうか?」
 「やだ!恥ずかしいから、類ちゃんは来ないでっ!」
 類も名乗りを上げるが、小さな貴婦人の反発を食らって、早々に引き下がる。
 「ま、咲もこれでも小さいながらに、レディのつもりだから」
 「いや、悪い。立派な貴婦人に、失礼だったね」
 丁寧に謝る類に頬を染め、咲が鷹揚に頷く。
 その様が、これまた生意気で可愛らしい。
 「戒は俺が連れてゆこうか?」
 「いいよ、俺は一人できるよ」
 まあとりあえず、椿がついていれば、大丈夫には違いなかった。
 



 椿が戒と咲を引き連れ、席を外すと、いつもはついているSPもホテルの外で待っているので類と二人っきりだ。
 いくら先日と、今日一日で馴染んできたとはいえ、さすがにいきなりの二人っきりは緊張する。
 もっとも類の方はつくしのような気まずさを全く感じていないか、あるいは感じていることをつくしに悟らせなかった。
 「あ、あのっ」
 沈黙の居心地の悪さに、つくしが意を決する。
 勢い込んだ割に、次の言葉に詰まるつくしに、類がなに?というように言葉を促がした。
 「え、っと、その、さっきはありがとうございました」
 「お礼はもう、言われたけど」
 「あ、庇ってくださったことじゃなくって、その…、怪我をして椅子まで運んでくださったので…。重かったでしょ?」
 「ん~、思ったよりはね。昔はもう少し軽かった気がするけど、幸せ太り?」
 「えぇ?」
 太ったと言われてガーンとなるも、そんなことより、さも昔も抱き上げられたことがあるかのような物言いに驚く。
 「あんたは司の嫁だからね。怪我させたなんて司に知られたらタコ殴りにされるよ。せめて、運ぶくらいしないとね」
 逆に怒られるかな?と、クスクス笑う。
 「もし花沢さんがタコ殴りになんてされたら、私が飛び蹴りします」
 「ぷっ。天下の道明寺財閥の次期総帥を?…あんたらしいね」
 「あ…の?」
 「いや、こっちのこと。ねえ、あんた、花沢さんっていうのやめてよ」
 類の言葉に、つくしの方が目をパチクリとさせる。
 「え…でも、それじゃあ、なんて?」
 問い返されて、少し考え込む様にした類だったが、すぐに悪戯っぽい笑みを浮かべた。
 「花沢類?」
 「え~、花沢類ですか?なんでフルネーム読み?」
 「知らないよ、自分に聞いて?」
 「??」
 「まあ、今のあんたに言っても仕方ないから、とりあえず、花沢類って言ってみな。それとも類でもいいよ」
 「…はあ」
 …いいんだろうか。夫の友達とはいえ、親戚でもない男性の名前を呼び捨てなんかにして。
 て、ああ、高校時代、この人と知り合いだったのか。
 友達?まさか、本当に?
 ジッと見つめられ、なぜかその眼差しに逆らえず、つくしはとりあえず言われたように無難な方で呼んでみる。
 「…えっと、じゃあ、花沢類?」 
 「なんだか懐かしい感じ」



 「…牧野」
 不思議に耳に入ってきた言葉に、桜子は何とはなしに周囲を見回した。
 ふと、遠目に、ラウンジの観葉植物の影に一組のカップルの姿が。
 「桜子?」
 …あれは。
 「知り合い?」
 遊び友達の声に、ゆったりと微笑み、首を振る。
 「ちょっとね、先に行って?」
 嫣然と微笑む美しい美貌に魅入られたかのように男は頷き、素直に彼女を置いてホテルのロビーを歩み去った。
 いつか見たような光景に、クスクス笑いが抑えられない。
 「道明寺さんは、因果応報ってご存知かしら」




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