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「愛してる、そばにいて」
第1章 泡沫に沈む月①

愛してる、そばにいて0023

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 「は、花沢さまっ!」
 つくしの顔を知らなかった女も、目の前に立つ優美な男の顔はよく知っていたらしく、怒りにまだらになっていた顔が、今度は羞恥に真っ赤になる。
 「あ、あの、その」
 しどろもどろになりながら、類を見あげる女の顔には、類に対する間違えようのない称賛と、戸惑いがあった。
 「公共の場所では人に迷惑をかけない。小さな子供のやることだから、確かに周囲の理解は大事だけど、だからといって親が野放しにすることは違うんじゃない?確かに俺らには関係ないことかもしれないけど、彼女の言ったことは間違ってない。あんたが親としての監督義務を果たしていれば、彼女も口出しすることはなかったはずだ」
 「で、でもっ。この人は、うちの子を叩いたんですよっ!口で言えばすむことなのに、暴力を振るうなんてっ」
 類には面と向かって反論できないぶんだけつくしに対する怒りが増加してきたらしく、つくしを見る目には確かな憎しみが宿っていた。
 確かに、暴力はいけなかったかもしれない。
 つい自分の子供や夫に対する(度々司にもゲンコツを落としていた)要領で手が出てしまったけれど、いくらしょうもない悪たれどもだとはいえ、他人の子供だ。
 口で言って聞くような連中かはともかく、つくしも相手の険のこもった睨みと、類の呆れたような視線にちょっとだけ反省した。
 「えっと、その、そのことについては…」
 自分が悪いことをしたとは思わないけれど、非があるなら認めなければ相手に対して説得力がない。
 つくしは、手を挙げたことに関してのみ謝罪の言葉を口にしかけ、
 「あらあ、どうしたの?つくしちゃん。それに類まで??」
 華やかな声が、緊迫した一同の中心に割って入った。
 「…あ、お姉さん」
 間が悪いことに、トイレから戻ってきた椿が、首を傾げながら歩み寄ってくる。
 「あらあら、どうしたのここ?ずいぶん、すごいことになってるわねぇ。プールサイドでガラス片は危ないわよ」
 眉根を寄せ周囲を観察していた椿が、つくしと類を見、その二人に相対している女へと視線を移す。
 「あら、あなた、確か、笠原コーポレーションの…」
 先ほどはわからなかったようだが、婚家がホテル業を中心に展開している同業種ということもあってか、相手の顔を思い出したらしく、眉根を寄せて声をかけた。
 「あ、あなたさまはっ!」
 「私の義妹になにか?」
 「え?義妹…さまですかっ!?」
 ギョッとつくしへと、女が視線を戻す。
 椿が義妹と言ったら、椿の実弟である司の妻しか存在しない。
 と、いうことは。
 「ま、まさか、道明寺…さま、の?」
 真っ青になったその顔には、恐怖がある。 
 「ママ?」
 さっきまで威勢を上げていた母の気弱になった態度に、子供が不審げに見上げ、その手をそっとひいた。
 問い掛けられ、困った様に頷くつくしの顔を、まるで化け物にでも出くわした顔で凝視し、次の瞬間には、女は息子たちの頭を両手で床に擦り付けんばかりに、平謝りしだす。
 「な、なんて、失礼なことをっ!申し訳ありませんっ」
 つくしの言い分にではなく、つくしの身分、立場に平伏した相手の態度に、つくしは内心苦い思いを抱く。
 こんなことは、もちろん初めてではない。
 正しいことを正しいからではなく、つくしの…夫である司の地位が、彼女の正当性を相手に認めさせ、もし、つくしが司の妻でなければ、逆に間違っていると糾弾されるのだろう。
 その不気味で、醜悪な論理がつくしには馴染まず、ひどく冷え冷えとした気持ちにさせられる。
 だが、さっきまで頑なに従業員を見下し、謝る気配などなかった親子が平謝りでつくしたちばかりか従業員にまで頭を下げるさまを苦い思いで見送り、そっと溜息をつく。
 「…大丈夫?つくしちゃん」
 「あ、はい、すいません、なんでもないです」
 心配そうな椿に微笑んで見せ、少し離れた場所で自分たちを心配そうに見ていた子供たちにも手を振り、微笑みかける。
 「花沢さんもありがとうございました」
 庇ってくれた類にも頭を下げ、顔を上げると、類が不思議な色を宿した目でつくしをジッと見ていた。
 「あの?」
 あまりに凝視され、戸惑い半分。
 な、なに?なんで、この人、こんなに私のこと見てるの??
 ドキドキと波打つ動悸に、頬を紅潮させかけ、動揺のあまり類の視線から逃れようと足を一歩踏み出し、
 「あっ、痛っつうっ!」
 「つくしちゃん?」
 「…?」
 思わず屈みこんだ先、つくしの足の裏に、鋭いガラスの破片が突き刺さっていた。
 「やだっ!切ったの?」
 顔色を変えた椿が、キッと間近に立っていた従業員へと視線を向ける。
 「ひっ」
 そのあまりの剣幕と目力に、相手が思わず仰け反る。
 「ちょっと、あなたっ!タンカー持ってきてちょうだいっ!救急車よっ!すぐに病院を手配しなくっちゃっ」
 今にも携帯電話を取りに走って、救急車を呼びかねない椿の勢いに、つくしが焦ってガラス片をブチッと手荒に抜いて、椿を呼び止める。
 「あたっ!じゃ、じゃなくって、救急車なんて大げさですよっ!お姉さん。タンカーもいりませんっ!!ダメッ!こっちに来ちゃっ。危ないから戒と咲ちゃんはそっちにいてっ!?」
 しゃがみ込んだつくしを心配した戒と咲が、子供用プールから出てこちらへと足を踏み出すのが目に入り、つくしが慌てて止める。
 「ああ!そうね。咲っ、あんたの方がお姉さんなんだから、戒を見ててっ」
 「俺は、そんなガキじゃないよっ!」
 ぶうっと膨れる戒を、咲がガッチリと掴んで押し留めている。
 淡々とつくしの傍にしゃがみ込んだ類に足の裏を覗き込まれ、つくしは思わず赤面した。
 …やだ、こんな美青年に足の裏を見られるなんて。
 つくしの足の裏も、道明寺エステ軍団によって常に綺麗にケアされていたが、やはりつくしとて妙齢の女、恥ずかしいものがある。
 そんなつくしの羞恥にも頓着せず、けっこうおおざっぱにつくしの足首を右に左にとひねくりまわし、観察した類が、つくしを抱き上げ立ち上がった。
 「ひえっ!」
 「姉ちゃん、救急車は確かに大げさ。さっき、牧野が抜いたヤツ以外、特にガラスは入ってないみたいだから大丈夫だよ」
 「え?そう?」
 「ああ。俺が抱いて運ぶから、タンカーもいらないよ」
 「は、は、花沢さんっ!離してくださいっ。わ、私は大丈夫ですからっ!自分で歩いて移動できますっ」 
 いわゆるお姫様抱っこと言うやつである。
 日本人でありながら、このシチュエーションはつくしにとってそう珍しいことではない。 
 実は、抱き上げられるのは日常茶飯事、珍しいことでもなかったりする。 
 だが、それは夫である司限定のことで、それだって人前では恥ずかしいので、厚顔無恥の夫には断固として拒否している行動なのだ。
 それを夫の友人とはいえ、ほとんど見も知らない男性に抱き上げられるなんて。
 つくしは仰天して、その逞しい腕から降りようと、身をよじり暴れ出した。
 「大人しくしてなっ!」
 突然怒鳴られて、ビクッとつくしが身を縮こませる。
 椿も類の怒鳴り声に驚いたようで、キョトンと類の顔を凝視している。
 はああっと、大きく息を一つ吐き、類は大股でガラスのないプールサイド端のビーチチェアへと大股で歩み寄り、存外に優しい仕草でゆっくりとつくしを下ろしてくれた。
 「救急箱ある?」
 心配して付き従ってきた従業員の方へと顔を向け、尋ねる。
 「はいっ。いま、お持ちします」
 駆け去ってゆく従業員を見送り、類が椿に声をかける。
 「俺が、子供たち見ててあげるよ。姉ちゃん、牧野についててやって?手当もできるでしょ?」
 「ええ、そうね、大丈夫。悪いわね、類」 
 「あ…」
 つくしが声をかける間もなく、キョトンと自分たちを見守っている子供たちへ類が歩み寄ってゆく。
 「とりあえず、一休みしましょうか」
 困った様に微笑む椿に、つくしは一つ頷いた。




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