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「夢で逢えたら…全207話完+α」
第一章 もう一度逢いたい

夢で逢えたら013

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 「おい、ついたぞ」
 揺り起こされて目を開けてみれば、数日ぶりに目にする近所の街並みに、マーベルは一気に覚醒する。
 「あっ!」
 その様子を見守っていた司は、組んだ長い両足に、書類を乗せたまま、スーツの内ポケットから高級感漂うブランド物のハンカチを放り投げてよこした。
 「拭けよ、よだれ」
 「っ!」
 急いで口元を覆ってみれば、確かに、涎の痕が…。
 クククッと含み笑う、司の顔は本当に楽しそうだ。
 「…女じゃねぇな。いい年して、普通、涎なんか垂らすか?」
 「うっさいわね!疲れてたのよっ」
 照れ隠しに怒鳴り返しながら、遠慮なく高そうなハンカチで口元をゴシゴシと拭ってやる。
 だが、拭いたハンカチをどうしたものかと、マーベルはしばし迷って、結局手元のハンドバッグに入れることにした。
 まさか、涎つきのハンカチをそのまま、赤の他人の男性に返すわけにもいかない。
 「で、ここからどういくんだ?運転手も困って、さっきから、この周辺適当に流させてるんだけど?」
 「あ~、ありがとう。ここで、もういいです。なんだか、一眠りさせてもらったら、体調も回復したし」
 マーベルの言うとおり、確かにさっきまで死人みたいだった顔色も回復して、うっすらと頬に赤みも差している。
 クリクリッとした大きな目が、生き生きと輝きだしていた。
 「言えよ、ここまで来たんだ。家まで送ろうと、ここで車から降ろそうと大して違いはないんだろ?どうせなら、どんなところに住んでいるのか見てやるよ」
 「ええ~。それもちょっと…」
 「なんだよ、嫌なのかよ?」
 嫌というか…正直、困る。
 担当する患者を通して顔見知りとなっている男だったが、所詮担当医と、患者の家族という間柄。
 ほとんど赤の他人の男性に、自宅を知られるのも抵抗があった。
 でも、さすがにここまで送ってきてもらって、『もう元気になったので、さようなら』というわけにもいくまい。
 少なくても、マーベルにはそんな恩知らずなことはできなかった。
 「えっと、そこの角を右に曲がってもらって…」
 仕方なく指示を出すと、間もなく、数日ぶりの我が家が目に入った。
 「あ、そこのマンション」
 高さ10Fになるかという、築20年ほどのそこそこ高級なマンションで、けっこうな家賃も設定されていると思しき、ドアマンも立っていた。
 「…へえ?けっこう年収があるとはいえ、一介の医者にしてはいいところに住んでるんだな?」
 「まあ、親の遺産も兼ねてるし、かな。あなたほどじゃないでしょうけど」
 「俺と比べるだけ無駄だ」
 「あ、そ」
 マーベルが肩を竦めたところで、運転席を降りた運転手が後部座席のドアを開ける。
 「ありがとうござます」
 運転手に声をかけ、車の外に降りると、改めてマーベルは車の中に鎮座する男に向かっても丁寧に頭を下げて、改めて礼を述べる。
 「今日は、ありがとうござました。本当に、助かったわ」
 「おう。あんた、今日はもう非番?」
 「あ、うん。今日と明日一日はお休みかな。本当は、一週間くらい休暇でも欲しいところなんだけど、そうはいかないでしょうね」
 ふう、と週明けからのハードスケジュールを思い浮かべて、青色吐息だ。
 「まあ、今日は今から、夜までガッツリ眠りたいわ…」
 「だな。じゃ、またな」
 「ええ、さようなら」
 マーベルが頭を下げると、運転手が後部座席のドアを締め、尊大な男の姿は長い車の車体に消える。
 やがて、ゆっくりとリムジンが昼の住宅街を後にし、マーベルの帰宅に気がついたドアマンの溌剌とした声が彼女に掛けられた。

 「おかえり」
 かけられた声に、振り向いたマーベルは、青年の満面の笑みに迎えられ、彼女自身も満面の笑みで答えた。
 「レン!いたの!?おはよう!!」
 熱烈に抱擁され、苦笑気味の青年は、ポンポンと落ち着くようにマーベルの背中をゆっくりと叩いた。
 首を完全に仰向けないと視界に入らないくらい背の高い青年の片頬を掌で撫でながら、マーベルは、笑み崩れるのを抑えられない。
 「もうっ!この子はっ!?大学が夏休みに入ってすぐ、サイクルツーリングになんかでかけちゃって!もう、どれだけ心配してたと思うのよっ」
 「…悪い」
 「この前だって、わざわざ忙しいところを空港まで迎えにいってあげたのに、友達の家に泊まりに行っちゃうし!まさか、一か月以上もマトモに顔を合わせられなかったなんて、薄情にもほどがあるわっ」
 はは…と、気まずそうに頭をかく青年の頭をガシガシと両手で揺さぶり、マーベルは甘えるように青年の胸元に顔を寄せ、ギュッと抱きしめた。
 「私も宿直続きで家に帰ってこれなかったから、レンだけのせいじゃないけど、心配してたんだから…」
 「うん、ごめん、本当に。でも、俺にとって、必要なことだったから。だけど、これで俺ももう迷わないよ。俺、来年、医学部を目指す(※アメリカではどんなに早い人でも4年間の大学を卒業した後にしか医学部に入学できない…そうです)」
 「医大…って、レン、あなた」
 チュっと、マーベルの頬にキスを一つ落として、レンは彼女の肩に手をまわし、奥のキッチンへと促す。
 「…軽食作ってあるよ。今日も、徹夜だったんでしょ?それ食べて、一先ず眠りなよ?話はそれから」
 「う、うん」
 「もうちょっと、キャシーにはパトロンでいてもらわないとダメだけど、いずれは俺がちゃんと面倒みるよ。安心して?」
 悪戯っぽく微笑む少年の顔に、幼い頃の面影を見出して、マーベルは嬉しそうに微笑み返した。

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