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「愛してる、そばにいて」
第1章 泡沫に沈む月①

愛してる、そばにいて0005

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 まるでセックスを知ったばかりの10代の若者のように、浴室で激しい交接を繰り返した司とつくしだったが、つくしがのぼせかけるにいたって、やっと司が手早くつくしの体を洗い、ベッドへと運んでくれた。
 ミネラルウォーターを口移しに与えらえれ、そのうち激しく舌を絡ませ合ううちに、再び手足を絡ませ合い、次のラウンドへと突入する。 
 何度目かの頂点を迎える頃には、つくしの息は絶え絶えで、泥のような疲労が全身を覆い、眠気と疲労で半ば朦朧としていた。
 快楽の余韻にひたりながら、半分寝に入っているつくしの額にキスを落とし、髪を撫でる司の顔は、満ち足りて柔らかい。
 しかし、つくしの幸せそうな顔を見ているうちに、満ち足りているはずなのに、疲れているはずなのに、まだつくしの顔を見ていたい、つくしを堪能したいという気持ちが再び新たな欲望を呼び起こしかけ、理性ではつくしを眠らせようと思うのに、本能がつくしの肌に指先を這わせるのを辞めさせてくれない。
 …やばいな、これ以上無理させたら、明日が怖い。
 元々体力もあり、それに応じた精力も持っている司だったが、自分でもおかしいくらいに他の女に興味が抱けない。 
 かつて、実母の楓によって、つくしと別れさせるための計略で、全裸の女をあてがわれたこともあったが、一切反応しなかった。
 空恐ろしいほどのつくしへの執着だったが、その分司のつくしに対する性愛は、心の愛情同様に激しく熱い。
 何度となく「私を抱き殺すつもり!?」と怒られ、そのたびに、つくしに怒られることよりも、つくしの疲労困憊した顔色の悪さや、ぐったりと下手をすると半日以上ベッドから出られない憐れな風情にそのたびに胸を掻き毟られるような罪悪感と憐憫を感じた。
 それなのに、愛すれば愛するほどに、時が過ぎればすぎるほどに、その執着と依存は薄れるどころかなおいっそう深まっている。
 子供が生まれれば少しは落ち着くかと思われたのも、いまは過去のこと。
 まだ、戒が幼いのでそれほど問題にはなっていなかったが、時折我が子である幼い息子にでさえ、つくしの関心を得ていると強い嫉妬を感じる時がある。
 …俺は狂ってる。この女に心底。
 そう感じる度に、つくしを失う恐怖に気が狂いそうになる。
 失う…何を怖れてるんだ、俺は。
 形のないものに怯え、怯える根拠さえも見当たらないと言うのに、いつも心のどこかで不安が滞り続ける。
 それがつくしへの異常なほどの欲情となっているのだと、司自身も気がついてはいた。
 抱いても抱いても、いつか、つくしがどこかへ行ってしまうのではないかと。
 司は、堪らず、つくしのうなじに顔を埋め、キツク吸い上げる。
 微睡んでいたつくしが、微かな吐息を洩らし、途切れ途切れの抗議をする。
 「…ダ、メよ、司。も…う、寝さ…せて?あ、した、起…きない…と、戒と…約束」
 「…わかってるよ、悪い。ちょっと、触っていたかっただけだ。ゆっくり、眠れ」
 名残惜しく頬に口づけを落として、自分もゴロリと横になり、つくしを抱え込む。
 スーッと聞こえる寝息に、つくしの頭に顎を乗せ、頬擦りを繰り返す。
 遅行性の毒のように、じわじわと司を蝕む不安と恐れ。
 それが唐突に司の元へと訪れ、苦悩させる。
 「赦してくれ、つくし。どこにもいかないでくれ」
 眠ったはずのつくしの手が柔らかく司の体を抱きしめ、その背を優しく撫でおろす。
 その優しい感触に、やがては司のささくれ立った心も癒され、健やかな眠りの世界へと誘われた。


 案の定、次の日の朝、つくしはベッドから起き上がることができなかった。
 心配して纏わりつく戒を抱き上げ、司はメイドへと受け渡す。
 「…お母さんの看病するんだっ!」
 「お前が纏わりついている方が、よっぽどつくしの疲れが増すさ。飯食ってきたら、遊びに連れて行ってやるから、さっさと先行ってろ」
 ブーブー言う戒を先に行かせ、掛布を被って不機嫌に司を睨み付けるつくしの傍らへと腰を下ろす。
 掛布の端から覗く、艶やかな黒髪を撫で、かくれんぼ状態のつくしを覗き込んだ。
 「…機嫌直せよ」
 「戒と約束してたのに…」
 「悪かったって」
 「久々の司のお休みで、戒、楽しみにしてたんだよ?お父さんとお母さんと3人でお出かけなんて、久しぶりだってっ!」
 「だから、ごめんって言ってんだろ?…って、うげっ」
 掛布を剥ぎ取って、顔を見ようと近づいてきた司の高い鼻がつまみ上げられる。
 とてもじゃないが、道明寺社の社員たちにはとてもじゃないが見せられない姿だ。
 愛妻に鼻をツマまれ、悲鳴をあげている冷徹なカリスマ副社長。
 「は、はにゃせ、ごらあ」
 「ぶーっ、その顔最高!普段澄ました副社長さまがっ、て。ちょっ、あははははは、ば、やめ、いやだ、はははははっ!」
 鼻をつままれたお返しにくすぐる司の手から逃れ、身をよじって身を反らすものの、司の必要な手は追いかけてくる。
 「バカッ!体がまだ辛いんだから、よけいな体力つかわすなっ!」
 一喝されて、ニヤリと笑いつつも、司が手を引く。
 「勝った」
 「勝ち負けじゃないでしょ、まったく。もうっ、早く、戒のところ行ってやって?あの子、一人で食事するの苦手なんだから」
 「贅沢な奴だな。毎日お前とメシ食べてるくせに、一日くらい我慢できねぇの?」
 半ば本気で言ってる司に、呆れてしまう。
 「4才の子供に何言ってんだか。ほらっ」
 「わかったよ。お前にも後でちゃんと食べさせてやっから。それとも先に食うか?」
 「いいって。今はあんまり食欲ないっていうか、どちらかというともう一眠りしたいって感じ。たまにしかお邸にいれないあんたの世話してあげられなくって悪いけど」
 申し訳ながるつくしの頭をクシャクシャっと撫でて、司が立ち上がる。
 つくしが寝込んでいる大半の原因は司なのだ。
 無理な荒淫を強いて、こうしてつくしに負担をかけている。
 毎度学習能力のない自分にうんざりだが、そんな司を赦すつくしゆえの甘えでもある。
 ごめんな…。
 謝罪の言葉は口には出せず、
 「…いい子で寝てろ」
 今度こそ踵を返し、自分を待っている息子の元へと足を進める。
 「ねえ」
 が、寝るのかと思ったつくしに声をかけられ、振り向くと照れ臭そうに笑うつくしと目が合う。
 「そろそろ、本当にもう一人できてもいい頃だと思わない?」
 「なんだ?もう次のお誘いか?」
 揶揄る司につくしが中指を立て、どこでそんな下品な仕草を憶えてきたんだと司が頭を抱えるのを、つくしが笑う。
 「冗談じゃないのよ、本気の話」
 「…俺は、戒一人でもいいけどな」
 半分本音、半分嘘。
 戒が生まれた時、この世にこんなにも愛しい存在がつくし以外に自分にできるとは思わなかった。
 つくし自身は意識したことはなかったが、確かにつくしは司の餓えた愛情を埋め、さらには大きく膨らませた。
 司を満たし、司を幸福にすることができるただ一人の女。
 司の愛情をさらに増やし、どこまでも広げる可能性を持つ唯一の存在。
 だが、司の為にもたくさんの子供を増やしたいと願ったつくしには、密かなる悩みがあった。
 2人目不妊(第一子は出産済みだけれど、第二子がなかなか授からない状態)。
 実はつくしは二度の流産の経験がある。
 17才の時に司の子を初めて妊娠し、流産。
 その半年後再び身籠ったものの、すぐに流れてしまった。
 おそらく原因は、高校生で妊娠し、庶民の出、低学歴等さまざまな道明寺家の嫁として相応しくないつくしへの楓からの外圧によるストレス。
 いまだ、戒でさえ道明寺家の正式な跡取りとは認めていないほどに、楓の態度は強硬だった。
 それでもつくしが道明寺家に迎え入れられることが赦されたのは、司の強固な姿勢と、すでに既成事実である妊娠が先にあったからだ。
 司はマスコミを利用した。
 それは有益で効果的な方法であったが、なおさら気位の高い楓には許しがたいことでもあり、なおいっそうつくしへの拒絶感を増大させたのは皮肉だった。
 そして、以後5年もの間、司夫婦に子供ができる気配がなく、そのことがよけいにつくしのプレッシャーとなり、ストレスとなっての悪循環。
 だが、5年前、戒が生まれたことにより、認められていないとはいえ、ある意味道明寺家の嫁としての面目躍如となったことも無視しえぬ事実だった。
 そして、そうした流産を重ねた故にか、思わぬほど戒を出産した折に難産だったことが原因だったのか、子供ができにくい体質となってしまったようだ。
 司は気落ちするつくしに、常々、「お前を戒にとられて懲りた」等、つくしの気持ちを慮って、特には第2子を求めないでくれた。
 けれど、司が密かにつくしに似た娘も欲しいと思っているのを、つくしは知っていた。
 司は常につくしを気遣い、つくしの為にあらゆる物、あらゆる気遣い、あらゆる愛情を注いでくれた。
 甘すぎるほどに、愛されて愛され過ぎてどうしてそんなにも…とつくしが逆に不思議に思うほどに。
 そんな司に対して、つくしには司に返すものが何もない。
 地位も財産も家柄もなく、容姿さえ十人並で、肉体美とはいいがたい。
 ちょっと人よりは若く見える外見も、30才近くにもなれば本物の若い娘には叶わないだろう。
 つくしは司に何かをしてあげたかった。
 それが、第2子誕生ということになれば、つくしにとってもこれ以上幸せなことがあるだろうか?
 「私は欲しいの。ダメかな?」
 遠慮がちに聞くつくしに、司が相好を崩す。
 「そんなわけねぇだろ?ガキにお前をとられると確かに妬けちまうけど、お前の子なら、何十人何百人だって大歓迎だ。俺がどんなに戒を可愛いと思ってっか、知ってるだろ?」 
 「…うん、あんたは優しいお父さんだよね」
 本当にそう思っているので、つくしも素直に頷く。
 その言葉に嬉しそうに微笑む司の笑顔が、とても素敵で愛おしい。
 「あんたが賛成してくれるなら、私、日本に帰ったら、ちゃんと不妊外来に通って、真面目に治療したいの。協力してくれる?」
 上目使いで頼まれれば、どんな願いだって司が叶えないはずがない。
 「…ああ、もちろんだ。でも」
 「でも?」
 首を傾げるつくしに、司が難しい顔をする。
 「婦人科てアレだろ?」
 「アレ?」
 問い返されて、顔を真っ赤に染める司の意図が読めない。
 「お前のその…す、素股とか見せたり、あられもない姿見せるんだよな?」
 「バッ!」
 医療的な行為を、破廉恥な物言いに変える司の言葉に、つくしが真っ赤になり、絶句する。
 「俺以外の男がお前の大事なところ見るなんて許せねぇ。絶対に女医にしろよ」
 「バカッ!死ねっ!」
 つくしが投げた枕が司の顔面に的中し、バフンと音を立てて床に転がった。




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