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「夢で逢えたら…全207話完+α」
第一章 もう一度逢いたい

夢で逢えたら011

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 「よう!ドクター」
 つい二日前と同じ挨拶で、マーベルに声をかけてきた男は、下を向いて書き物をしていた彼女の頭へ、覆いかぶさるように覗き込んできた。
 高級感漂う甘いコロンの香に、マーベルもさすがにいつかのように声をかけられるまで来訪に気がつかない、なんてことはなかったのだが、黙って通り過ぎると思っていた相手が、ガッツリ声をかけてきたことに、はああ、っとため息をついた。
 「なんだよ?でっかいため息ついて」
 「…わたし、暇じゃないんですけど?」
 「お、奇遇だな、俺もだ」
 奇遇だな、じゃないっ!
 ここ半月、こんな会話が取り交わされている。
 要の病室に司が突然現れて以来、この父親はかつての冷淡さがウソのように、2~3日に一度のわりあいで、わが子の部屋を訪れていた。
 最初はぎこちなかった二人の間柄も、もとより人の思惑など気にもしない傲慢な司と、やはりその父親に似て物怖じしない性格の息子はあっという間に、離れていた時間を縮めるようにして心を通わせていった。
 と、いってもお互い意地っ張りの強情っぱり。
 遠慮があった最初の頃のようなしおらしげな会話など、望むべくもない。
 丸っきり我儘でやんちゃな子供と、それに輪をかけた大きな子供のような父親の掛け合い。
 それでも、見る見る要は明るくなっていった。
 元々、じめついた暗い性格というわけではなかったが、どちらかというと人見知りで(そんなところも父親と似ていたが)、敏感に自分を利用しようとする人間をかぎ分け、他人を容易に受け入れないところがあった要。
 治療や大人の指示にたいしては従順だったが、時折その孤独や寂しさを爆発させることも少なくなかった。
 親子の情愛ってすごいよね。
 この父親にも、要との交流は何か、素晴らしいものをもたらしたようにも思える。
 初めて病院でマーベルと顔を合わせた、虚ろな目をした男は、彼らが顔を合わせるたびに消え失せ、かつては持っていたに相違ない活力を漲らせてきているように感じられた。
 それでも、心のどこかに大きなうっ屈を抱えていて、生々しく今も傷ついているのがわかる。
 それはともかく、マーベルにとって誤算だったのは、司と要の親子の交流にともなって、なぜか、その二人の間に自分までもが引きこまれたことだ。
 司と要がいきなり親子の情を固めようと思っても、長い年月が二人の間に横たわり、互いに気まずいのはわかる。
 だから、初めての土星観賞会にも、病院の中庭で親子の散歩にも、親子で囲む病院食の夕べにも付き合った。
 いくら担当医だからと言って、ここまで深く踏み込むのは医者の領分を侵し過ぎだ。
 ようやく親子の絆を取り戻しつつある二人を前に、マーベルは医師としての本分に戻ろうと一歩引くつもりであったというのに、この父親は!?
 夕に朝に、ついでと称して、要のところに顔を出す折には必ず、マーベルのところにも顔を出すようになってしまった。
 しかも…。
 「なあ、キャサリン?」
 「…」
 「ようっ!てめぇ、俺を無視するな!?」
 「…勝手に、呼び捨てにしないでください、Mr.道明寺」
 「んだよ、そんな他人行儀な呼び方すんなよ?」
 「他人行儀って…赤の他人に違いはありませんが」
 「なんだよ、汗くせぇな!?」
 汗?…クンクンと、思わずマーベルは自分の白衣の臭いを嗅いでしまった。
 確かに、今日二晩連続勤務の当直で、あまりに忙しくてまだシャワーも浴びていない。
 「…水?」
 「あ?」
 いや、いい。
 この見たからに高級品の男は、時たま、というかけっこう頻繁に、よくわからない言い間違いをする。
 「まあ、ともかく、あなたに呼び捨てにされる憶えはありません。Dr.マーベルか、Miss.マーベルと呼んでくだされば」
 「はあ?要だって呼んでるじゃねぇかよ?それに、確か周りの奴らにはキャシー先生とか呼ばせているくせに、俺にはなんで名前呼びの選択肢がないんだよ?自分だけ名前で呼ばれるのが気になるんだったら、俺の事も司でかまわないぜ?」
 「…だから、なんで、そんなことに拘るの?キャシー先生だろうが、Dr.マーベルだろうが、どっちだっていいでしょ?私は単なるあなたの息子の担当医なんだから」
 「っだろ?俺はあんたの患者のお父様なんだよ!とにかく、キャサリン、キャサリン、キャサリン!あ、俺は司ね」
 「…」
 こんな調子で、なぜか気に入られてしまった模様。
 かといって、女として見られているとも思えない。
 「お、シャレっ気のない黒ぶち眼鏡だな~、だから、あんたいまだに男っけないんじゃね?あんたも女やもめになって長いだろうに、周囲に男のオの字もないそうじゃないか?」
 「ど、どっから、そんな情報をっ!」
 コソコソと隠れる気配に、背後でモニターをチェックしていた看護師のエレインをギッと睨む。
 情報ソースはアンタかっ!
 なぜか、このナースステーションに頻繁に現れるようになった道明寺父に、ここ内科棟の看護師たちは取り込まれてしまった。
 女だけならばともかく、男までもが道明寺教に入ってしまいかねない勢いだ。
 司の非人間的な美貌と、威圧的なカリスマ性が、体育会系の医療関係者たちのツボにハマってしまったらしい。
 どこにでも例外はいるものだが…。
 「ま、同じヤモメでも、女に困ってない俺を見習えとは言わないが、そんなんじゃ、再婚なんて夢のまた夢だな」
 余計なお世話だっつーの!!
 ブルブルブル。
 一瞬、マーベルは立ちあがったものの、あまりのガキ臭さに我に返って座り直す。
 私は、もう37才、37才、世間的にも立派な大人。
 「…ともかく、私、忙しいのよ。可愛い息子さんがお待ちかねでしょ?さっさと、病室へ急ぎなさいよ」
 「あんたは来ねえの?」
 「言いたくないけど、私が担当しているのは要だけじゃないのっ!いつも、お父さんが面会に来るたんびに立ちあいなんてしてられないわよっ!」
 「あんたんとこの院長は、どうぞ、どうぞ、って言ってたけど?」
 「…」
 そうなのである。
 長いものには巻かれろ体質の院長は、すっかり道明寺副社長に骨抜きで(寄付にか)、一に道明寺司様、二に道明寺司様、三、四がなくって五に道明寺司様なのである。
 司のいうことであれば、なんでも聞け、そもそも要の専属としてマーベルを配属しようとしたくらいである。
 「とにかく…」
 「まあ、それより、あの話考えてくれたか?」
 来たっ!
 「なんだよ、また、だんまりかよ?」
 だんまりせざるえないのである。
 というのも、元は体調が良好の要。
 近いうちに自宅療養へと切り替わるのだが、そのさい、しばらくの間、要の主治医として道明寺邸に付き添って欲しいとの依頼を受けたのだ。
 期間は一年。
 できることなら、半永久的に…などというわけのわからないこともいわれたが、ありえない話である。
 マーベルが医師を志した目的も、医師としてのキャリアも全て捨てるようなもの。
 懐いてくれた要のことは可愛いけれど。
 そして、また司がマーベルに執着するのも、その要可愛さゆえであることはわかっていた。
 司と同じく、要は簡単には人を信用しない。
 その要がマーベルを気に入り、1か月半ほどの短い入院生活の間に、いままでの医師達にはない信頼を示し、懐いた。
 当初は、要と酷薄な親子関係を築いていた司だったが、不器用ながらも要を父親として可愛がるようになった今、マーベルを要の為にぜひとも失いがたい存在へと押し上げてしまったのだ。
 以来、現在の状態にいたる。
 「いい条件を出すと言ってるだろ?さすがに何年もというのは長すぎるかもしれないが、一年くらい要が落ち着くまで邸に住み込んでくれれば俺も安心だし、後は、定期的に主治医として面倒みてくれれば住みこまなくてもかまわない。この先、どこの病院へ勤めたいと希望しても道明寺が口を効くし、病院内での出世も保証する。もちろん、報酬はこの病院に勤めているより3倍は出す。研究費も援助する。悪い話じゃないだろう?」
 悪い話どころか、喉から手が出るほどに望みたい医師は多いだろう。
 でも、一年というべらぼうな拘束期間の他にマーベルには、その話を受けたくない理由もあった。
 「…強引ね。要のことは私も可愛いと思っているけど、それとこれとは別よ。そのお話は先日、キッパリと断らせてもらったと思うんだけど…」
 はっきり言って毎回平行線の話にはうんざりだ。
 ふてくされて、書類に集中したふりをしだしたマーベルに無言の圧力を加えていた司は、気を変えたのか、ふっと威圧感を緩めた。
 う~、こいつの威圧感てハンパない。怖すぎ~。
 内心、マーベルもほっと息をつく。
 周囲はあまりの緊迫感に、コソリとも音を立てるのを恐れ無言になってしまっている。
 ピ、ピ、ピっという機械音だけが、ナースステーションでの唯一の音だ。
 「…そうかよ。ま、いっか、この話はまた、今度でも。じゃあさ、携帯番号教えて?」
 はあ?なんだ、そのナンパみたいなセリフは。
 じゃあさ、じゃないだろう、じゃあさ、じゃあ。
 小さな声で、きゃあ!というナース達の歓声が背後で聞こえる。
 またとんでもない根も葉もない噂話が、病院内に流布するかと思うと怖ろしい。
 「…番号は、院長の方から私に無断で、聞きだされたと思いますけど?」
 「ああ、まあな。けど、あれって仕事用のだろ?俺もだけど、あんた、プライベート用の携帯、別に持ってるよな?」
 持ってるけど…。
 「教えろよ?だいたい、仕事用の携帯もあんた着信拒否してるんだか、初めてかけた時を除けば出たためしもありゃしない」
 あんたは西門かっ!
 そう叫べれば、楽なんだろうけど。
 「どの道、プライベート用の方も着信拒否すれば、同じことだと思う」
 ボソリとつぶやいたマーベルに、
 「やっぱ、着信拒否してやがったのかっ!」
 青筋を立てた司が、怒鳴りつけ、ギャアギャアいい歳の地位ある男と名誉ある職の女とは思えない大騒ぎが、真昼のナースステーションで展開された。

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