「夢で逢えたら…全207話完+α」
第五章 ここより永遠に

夢で逢えたら197

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 さすがに昨日は、pm.21:00の『始まりは突然に』の更新で打ち止め~。
 やれやれ。
 今日の更新一発目は、『夢で逢えたら』になります。
 実は今日、急遽一昨日もう一方の目を手術した母が退院決定!
 いやあ、目て早いんですねぇ。
 まあ、入院しなくても良かったらしいですしね。
 と、いうことで、今日の予定も未定になっちゃいますが、なんとかできる限りの更新にチャレンジしたいと思っていますので、今日も皆さんの応援、お待ちしております!^^!
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 生暖かい感触が、つくしの腹や腕を濡らし、真っ赤な悪夢がつくしの脳裏を責め苛む。
 これは、いつもの夢?
 18年もの間、つくしを散々苦しめ、何度となく夜の静寂に涙させたあの悪夢が、再びつくしの元へと舞い降りた。
 司の体から流れ落ちる血が、命が、つくしの心を真紅に染め上げ、彼女の心を塗り込める。
 「いやああああああああああああああああああ、ああああああああああああああああああああ」
 キーンという耳鳴りがつくしの耳を塞ぎ、司と司の流す血の色以外闇に閉ざされた視界に、やがて、少しづつ感覚が戻る。
 獣のような悲痛な慟哭が聞こえる。
 …ああ、そうだ。
 誰かが叫んでるんだ。 
 なぜ?
 なぜ?
 なぜ?
 凍結した思考がいつまでも空転し、ただ一つの言葉だけがつくしの脳裏を一杯に占める。
 なぜ、こんなことになってしまったのだろう。
 なぜ、こんなことになるの?
 いつも、いつも。
 手を伸ばした途端に、司の手はつくしの手をすり抜けてゆく。
 こんな結末になるために自分たちは出会い、別れ、そしてまた再び出逢うことになったというのだろうか。
 「…のっ」
 ああ、誰…?
 「…牧野っ!」
 もう何も見たくないの。
 何も聞きたくない。
 目を塞ぎ、耳を塞いだまま、私はもう何も知りたくない。
 パアァン!
 甲高い音を立てて鋭い衝撃がつくしの頬を襲い、ひりつく熱に遅れて痛みがやってきた。
 無意識に叩かれた頬を抑えながら、顔を上げると悲痛な顔をした類がつくしの両肩を揺すりながら顔を覗き込んでいた。
 「しっかりしなっ!牧野」
 「…る、類」
 膝に乗る温かな重みが、震える両手を濡らすぬるりとした感触が、茫然としていたつくしの意識を覚醒させ、再び悲鳴の発作を起こしかける。
 パンっ!
 「花沢さんっ!やめてくださいっ」
 駆け寄ってきた桜子が、もう一度叩こうと手をあげた類の手を抑え、制止する。
 「…桜子」
 焦点の合わなかった目に、再び光が宿り、つくしの涙に濡れたグチャグチャの顔が、自分の膝の上を見下ろす。 
 ああ…、道明寺だ。
 綺麗な顔も、クルクルの癖毛も何一つ変わらない。
 でも、この死人のような真っ青な顔は何?
 地面を濡らす、司の腹部から流れ落ちるこの赤い液体は?
 流れ落ちてゆく…永遠につくしの手の届かないところへと司を押し流そうと。
 「あああああああ、ああああ、そんな、そんな…」
 叫び声が先ほどから止まない。
 てっきり自分が上げている悲鳴だとばかり思っていたが、どうやら違う人間のようで、つくしが悲鳴の上がっている方向を見やると、総二郎とあきらに取り押さえられた冴子が取り乱して、悲鳴を上げながら司に駆け寄ろうともがいているところだった。
 半狂乱の女。
 まるで自分の分身のようだ。
 「しっかりして、牧野!いま司を救えるのはあんたしかいないんだっ」
 再び、つくしの体を激しく類が揺さぶり、いい諭す。
 やはりつくしの悲鳴を聞きつけて、戻ってきたレンが一通りの状況を見極めると、急いでつくしの膝上に倒れている司の傍に駆け寄り、意識を確認する。
 「…ダメだ、完全に意識がない」
 動かさないようにして腹部の傷を確認して、懐からハンカチを出し、司の傷口を圧迫しながら険しい眼差しでつくしを振り返った。
 「キャサリン、まだ、終わってない。道明寺さんはまだ生きてる」
 「…生きてるの?道明寺」
 「そうだよ。でも、このままだったら確実に死ぬ。何のために、キャシーは医者になったの?」
 …なぜ?どうして、私は医者になったのだろう。
 凍り付いた思考が、心が、再び血を通わせ、明快な一つの答えを呼び覚ます。
 一同の注意がつくしへと向いた隙をついて、冴子があきらと総二郎の手を振り払い、司の側に膝をついて、意識のない司の体に取りすがり、まるで目の前の出来事が悪夢であるかのように激しく揺さぶった。
 「ふ、副社長、嫌です。道明寺さん!目を開けて」
 普段の冷静沈着で、怜悧な女秘書の面影はまったくない。
 それを見やるあきらと総二郎の顔に苦いものが浮かぶ。
 …確か、秘書の高瀬は司の女だったか。
 見合わせる互いの目が、無言のうちに納得しあう。
 そこにあったのは、どんな形であろうと確かに司を愛し、司の怪我に衝撃を受けた一人の女の姿。
 その姿に、かつて少女の日の自分の衝撃を思い重ね、つくしはハッと我に返る。
 「さわらないでっ!」
 つくしから発せられた鋭い警告の声に、冴子以外の人間全員の視線がつくしに集まった。
 つくしの制止などお構いなしに…いや、おそらく耳にも届いていないのだろう冴子があきらの制止もものともせず、再び司の体へとかけようとした手を、つくしが手痛く叩き落とす。
 「道明寺に、触らないでっ!」
 何とも言えない傷ましさと、気まずさを含んだ顔の総二郎が、つくしの肩を抑えて制止しようとした。
 だが、周囲の者たちがつくしの嫉妬に狂った顔を想像する中、その表情はあくまでも怜悧で理知的なものだ。
 つくしはそっと総二郎の手を自分の肩から下ろすと、今度は噛み含めるようにゆっくりと落ち着いた声音でもう一度、制止の言葉を告げた。
 「触らないで、どんな損傷を追っているとも限らないわ。不用意に、体を動かしてはダメよ。レン、あなた、メイルズフォートで応急処置習ったわね。止血!」
 「もう、やってる」
 「できうる限りのバイタルチェックもお願い」
 つくしの冷静沈着な物言いに、最初のショックから立ち直り、きわめて医師的な判断での発言であることに、一同は気が付いた。
 そのつくしの様子に、やはり動転していた優紀が我に返り、救急車を手配する。
 「…優紀ちゃん、道明寺ホスピタルにも電話を。これから司を運び込む。司ンちの主治医だ」
 あきらの言葉に大きく頷き、再び、携帯電話のタッチパネルに指先を乗せる優紀を、つくしが呼び止めた。
 「優紀、ダメよ。道明寺ホスピタルより聖マルシア医科大学病院の方が近い。それに…あそこには今、動脈瘤手術の権威スペンサー教授がいる!類、聖マルシアに連絡して、講演を行っている教授を引き留めて、なんとしても道明寺の執刀医になってくれるよう承諾させてっ!。貴方自身のツテでも道明寺のツテでもいい、お願いっ」
 つくしらしくない強引な物言いだったが、挑むようなつくしの強い視線を受けて、類も真剣な眼差しで返す。
 「…俺は、残念ながらスペンサー教授には面識もツテもないんだ。でも、なんとかするよ、絶対に」
 だが、その類とつくしの会話に、横合いからあきらが割り込む。
 「類、それは俺に任せろ」
 「美作さん?」
 つくしがあきらを不審げに振り仰ぐ。
 「俺がなんとしても連絡つけて、引き受けさせてやる。イギリスにも病院があるっていっただろ?以前、博士に研究費のバックアップをしたことがある。司は確かにお前の男だが、俺にとっても大切なダチだ、俺はあの時、なんの力もなくて何もしてやれなかった。だが、今は違う!俺に任せろっ」
 あきらの声なき声が、つくしへと発せられる。
 今度は必ず力になる。
 俺らのせいで苦渋を舐めたお前たちへの、それがせめてもの償い。
 あきらも総二郎も高校生当時、責任を感じていた。
 だが、嘆く滋の手前面と向かって懺悔できなかったのだ。
 そんな思いをつくしもまた無言で受け取り、重々しく頷く。
 「わかったわ、お願い。優紀、連絡だけは道明寺ホスピタルにとって。できうる限りの道明寺に関するカルテを大至急で聖マルシアへ送るように指示して」
 「はい」
 「類、あなたはじゃあ、この後混乱に陥る道明寺財閥の調整をお願い。マスコミに対する過剰報道も抑えて。道明寺不在の財閥に力を貸してあげて!申し訳ないけど、西田さんに連絡して必要部署に、このことの報告と連絡、対策を促がさせて」
 「了解」
 次々に指示を出すつくしにしびれを切らせて、総二郎が自分へと注意を向けさせる。
 総二郎もまたあきらと同じ気持ちだったからだ。
 司は幼い頃からの親友であり、つくしは大切な仲間。
 そして、自分の果たしてしまった役割の償いをしたいと、長い年月密かに思い続けてきたのだ。
 「俺らにもなんか、指示を出せよ!牧野」
 「もちろんよ、みんなにはそれぞれ、力になってもらうわ。西門さんは、ここの会場整理をお願い。SPたちを指揮して、救急車を円滑に引き込んで、道明寺や私たちがスムーズに退去できるように手配して。滋さん」
 「なに?つくし!言って!?」
 滋も泣いてなんかいられない。
 誰よりも司を愛し、彼の瀕死な姿に苦悩しているつくしが、気丈に振る舞い、司を救おうと奮闘しているのだから。
 つくしの親友を自認するの以上、つくしと司の為にできうる限りの力を尽くすのだ。
 「…レンをお願い。そして、皆を守って。もう、誰も傷ついたりしないように」
 「うん!絶対に」
 そして最後に桜子へと視線を移す。
 その間にも、つくしは司の瞳孔や首筋の脈を確認し、気道を確保しながら、レンと協力して止血と司の状態の把握と維持に努めている。
 「桜子」
 待ち受けていた桜子がしっかりと頷く。
 「はい、先輩、なんなりとお申し付けください」
 「滋さんを支えてあげて。あと、アメリカとドイツにいる道明寺のご家族に連絡を。できるだけ早く、こちらへいらしてくださるように手配を」
 「かしこまりました」
 指示をだして落ち着いてくると、つくしは最後に司の頭を調べ、
 「ふ~、大丈夫、頭は死守したから」
 と、ニッコリと微笑んだ。
 その言い方のあまりの明るさに、沈痛な空気が漂っていた一同の緊張が緩む。
 思わず、総二郎が、
 「はあ?」
 と、呆れたように問い返した。
 土気色の顔色の司の頭を撫でながら、つくしがポツリと呟く。
 「私ね、こいつが記憶喪失なんて奇特なものになったのは、失血のショックなんかじゃなく、あの時、頭を打ち付けたからだと思ってるの」
 「何言ってんだよ、お前」
 怪訝に眉をよせ、総二郎とあきらが突然何を言いだすのかとつくしを心配する。
 「今度はしっかり受け止めたからあたし、バカが悪化することはないから」
 「……」
 「ぷっ、ぷぷぷ。それは、牧野、よくとっさに気を回せたね。俺も、司がこれ以上バカにならなくて済みそうで安心だよ」
 「…類、お前な、同意すんなよ」
 「さすがに、俺、司が気の毒かも」
 命を懸けて庇った女に、バカ呼ばわりされてこのいわれよう。
 長年何度となく迷惑をかけられ、時々小突いてやりたい思いにかられたこともあるあきらだったか、さすがに司に同情する。
 「はは!つくし、あたしもつくしに同感!バカな司も可愛いけど、あんまりバカすぎると財閥の未来が心配だもんねぇ~」
 便乗する滋に、桜子が呆れ、優紀もなんとも言えない微妙な顔をする。
 そぐわない和やかな空気だったが、司が実は死ぬかもしれない事実を皆、直視したくなくて、その馬鹿馬鹿しい会話に気持ちを紛らわせていた。


 間もなく到着した救急車に、司とつくしが乗り込み、類たちが各々、迎えに来ていた車で後を追う。
 その間も、一同はつくしから課せられた役割を果たし、四方への連絡やら手配に大わらわとなっていた。
 リムジンへと乗り込もうとして、さきほど救急車が去っていた方向へと総二郎が視線を巡らす。
 同乗するため、先に車に乗り込んだあきらが、いつまでたっても乗ってこない総二郎にを怪訝に見上げた、総二郎の後ろにいた類も首を傾げる。
 「…どうしたんだよ?」
 「クッ、ククククク」
 突然笑い出した親友に、あきらが片眉を上げる。
 「…総二郎?」
 「昔もすげえ女だと思ってたが、グレードUPしてんな」
 「なんだよ?」
 総二郎も車に乗り込み、あきらの真向かいに座りながら、まだ笑っている。
 「自分の男が死にかけてるってーのに、頭の心配かよっ」
 「牧野は…」
 「わかってる」
 最後に車に乗り込んだ、類が総二郎の思いをくみ取り、苦笑いして補足する。
 「…牧野は、あれで精一杯冷静になろうとしてたんだよ。それと同時に俺らの頭を冷やした」
 「ああ、認めたくねぇが、俺らもパニックって真っ白になってた。ホント、すげえ女だぜ」
 「…そうだな」
 「牧野だからね」
 類の一言につきる。
 一同は、再び、先に出発した救急車に乗る親友とその恋人に思いを馳せずにはいられない。
 今度こそ。
 今度こそは…。
 胸に宿る同じ重ぐるしい思いに、三人は心の底で、長き年月、苦しみと哀しみながら互いを思い続けてきた恋人たちの為に、その無事を真摯に願った。

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