「夢で逢えたら…全207話完+α」
第五章 ここより永遠に

夢で逢えたら196

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 『夢で逢えたら』本日二回目の更新。
 今日は…何も言うことはありません。
 追伸?…みんなが寝静まってから書くので、時間との勝負ですが、もう一話更新できたら、褒めてくださいねw
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 「道明じ、司」
 思わぬほど近くで発せられた声に、司が怪訝に背後を伺う。
 その瞬間…。
 「うわっ!」
 「きゃああっ」
 無精ひげの覆われた薄汚い格好をした男の周囲にいた記者たちが各々悲鳴を上げ、ズサッと飛び退る。
 「…副社長!」 
 「…っ!」
 2人のSPが緊張感をみなぎらせ、司の前方に立ちふさがった。
 男は、不思議に殺気を感じさせない淡々さで、ポケットから取り出した果物ナイフを前に身構えている。
 一見、司を狙っているようで、決められた手順を踏んでいるだけのような男の冷静さが、司にはどこか引っかかった。
 「おいっ!撮れ!スクープだっ」
 「…なんだ、怨恨か?」
 「早く!カメラ、カメラ」
 惨事の予感に、マスコミ根性が蘇ったのか、一時は騒然とした人々に妙な興奮が湧き上がった。
 「…なんだ、てめぇ」
 「どう明寺、司。道みょう寺ざい閥のせいで、俺の家族はたいへんな目にあった。おもい知れ」
 よくよく聞いてみれば、どこか訛りの強い言葉は、たどたどしい。
 …なんだ?
 「お…」
 声をかけようとした瞬間、男が唐突に雄たけびをあげ、司の方へと踊りかかった。
 「WHOOOooooo!!hijo de puta~!!」
 ドウォッ!!!とどよめきが立ち上り、甲高い恐怖の悲鳴があたりを響き渡る。 
 司の正面に立ちはだかっていたSPが、男の腕を掴み、もう一人のSPが背後から男を羽交い絞めにした。
 そのまま、男の腕を掴んだSPが凶器を手刀で叩き落とし、二人ががりで暴れる男を抑えつける。
 「は、放せ!ころ、コロすっ」
 暴れまわる男の扱いに手こずり、虚を突かれて大柄な体格の男に弾き飛ばされたSPの体が、周りを取り囲む野次馬たちの足元に転げ出された。 
 すると、スクープを得ようとして前に出ていた記者たちが再び飛びのき、どよめく。
 起き上がろうとした男のひざ裏を、とっさに司が蹴りあげ、衝撃に耐えられず前ののめりになった男の体に、改めて復帰したSPが体重を乗せた。
 興奮して騒ぎ立てる男を怜悧な眼差しで見下ろしていた司は、言い知れぬ昏い予感に眉を顰め、自分の中の不安の理由を探り、思考の渦へと沈み込んだ。

 
 ドウォッ!!!と司を残してきた埠頭で上がった声に、つくしはハッと背後を顧みた。
 遠く、黒集りになっているその奥の司の姿は伺いしれない。
 傍にへばりついていた記者たちも、背後の騒ぎの様子に、つくしへの取材を諦め、走り去ってゆく。
 同じく背後を振り返っている総二郎を見上げると、つくしの視線を感じて見返してきた総二郎と目と目を交し合う。
 「…西門さん、今の?」
 「ダメだ。俺たちは、道明寺邸にたどり着くのが先決だ。ちょうど、うぜえ記者連中も巻けたことだし、気を散らすなよ」
 「でも…」
 そのまま総二郎の言葉を振り切って、戻っていきそうな青い顔のつくしの二の腕を掴みよせ、総二郎は頑なに首を振った。
 「司の気持ちを考えろ。第一、お前が行ってなんになる?ヤツは自分の身の始末は自分でできる奴だぜ、信じてやれよ」
 もっともな総二郎の物言いに、戻りたい気持ちを抑え、素直に総二郎に従う。
 が、続いて起こったどよめきに、つくしの強いた我慢が音を立てて崩れ去った。
 「…道明寺っ!!」 
 予測していた総二郎が、つくしの体を羽交い絞める。 
 戸惑い、追従してきた2人のSPが指示を求めて総二郎を振り仰ぐも、総二郎は手を出すなと、首を振った。
 「落ち着けっ!大丈夫だからっ」
 「でもっ!」
 「頼む、牧野、今は俺に従ってくれっ」
 総二郎とて司が大丈夫だという確信などなかったが、冷静に考えればあの司がそう簡単にどうにかされるはずもない。
 取り囲んでいるのは暴徒などでなく、多少暴走気味だとはいえ、司に取材を試みようとしているだけのごく普通の記者たちなのだ。
 万が一にも、一般人相手に司が遅れを取るはずがない。
 そうは思いつつ、高校生時代から人一倍体力も格闘術にも優れていた司が、かつて意図もたやすく暴漢に襲われ命を落としかけた。
 しかも、この港で、この状況で!
 一応は総二郎の懇願を受けて暴れるのは諦めたようだったが、つくしは両手を口に当てて嗚咽を堪えている。
 そこだけは変わらぬ大きな零れ落ちそうな目から、いまにも涙が零れ落ちそうに潤んでいる。
 …道明寺、道明寺、道明寺!
 つくしの思考は、ただ、司の名前だけで占められていた。
 ただ、あなたの無事を知ることさえできれば。
 そんなつくしの願いを誰よりも強く感じ取った総二郎は、しばし悩んだものの、腕の中のつくしの背中を優しく叩き宥める。
 「…俺が見てくるから。司の無事だけ確認してくるから、お前、先行ってろ」
 つくしが顔を上げて総二郎を見返すと、彼らしい悪戯っぽくも艶っぽい笑みで笑い返してくる。
 「お前も来たいっていうのは却下だかんな。後でバレて猛獣に絞殺されんのはごめんだ」
 「…西門さん」
 「いいな、すぐ追いつくからな。くれぐれも、無謀なことして俺の命を危険に晒すなよ」
 総二郎のふざけた物言いの中に、つくしへの気遣いを感じて、つくしはせめてもの微かな微笑みを浮かべて何度も頷く。
 「じゃあな!大人しくしとけ」
 司がしたようにつくしの額をトンと軽く突き、総二郎が駆け出す。
 「…じゃあ、お前たちはDr.マーベルのこと頼む」
 「はい、確かに」
 「必ず」
 SPたちの返答に、駆け去り様総二郎は頷き、その背中をつくしは祈るような想いで見送った。


 2人のSPに取り押さえられ、拘束された男の様子を見守りながら、司は考え込んでいた。 
 日系人には違いない。
 だが、たどたどしい日本語といい、明らかに護衛のついている司にわざわざ声をかけ、派手なパフォーマンス付きで襲い掛かる必要があるのか。
 いかにも捕まえてくれ、暴行は失敗に終わってしかるべきと自ら語っているようだ。
 「…hijo de puta(※スペイン語のくそ野郎)」
 男の叫びを無意識に復唱する。
 ハッと司はつくしを送り出した方向へと視線を向ける。
 と、次々起こる返事に気が抜けたように騒めき、司を遠巻きにする人々の間をかき分けて、先ほどつくしと一緒に送り出したはずの総二郎が戻ってきた。
 「司ぁっ!」
 「…っ!?総二郎、お前、なんで?牧野はっ!!?」
 傍に歩み寄った総二郎の襟首を、焦った司が締め上げる。
 「っ!何しやがんだよっ」
 「牧野はどうしたんだっ、てめぇ」
 「落ち着け!司。牧野はSPが先に車に乗せてるはずだ。牧野がお前を心配して…」
 言葉半ばで司は総二郎を乱暴に突き放し、人々を蹴散らし、総二郎がきた方向へと駆けだす。
 「おい!待てよ、司。お前、大丈夫なのかっ!?」
 司の形相と威圧を受けて人垣が割れ、人気の切れた向こうからつくしにつけていたはずの二人のSPが駆け寄ってくるのが見える。
 「…っ!?」 
 「なっ、牧野はっ!?」
 総二郎の叫びを後ろに、司は滲み出る冷や汗を拭いもせず、一心不乱に走り続けた。


 前後して、十数分前。
 総二郎に促され、嫌々ながらその指示に従ったつくしだったが、目の前に現れた人物の意外さに目を瞠った。
 「…高瀬さん」
 「お久しぶりです、マーベル先生」
 NYに駐留しているはずの冴子の出現に驚き、言葉を出せずにいるつくしに、冴子は丁寧に会釈し微笑んだ。
 「副社長に命じられてお待ちしておりました。車はすぐそこに用意しています。報道陣に気が付かれないうちにお早くお乗りください」
 「え、ええ。でも、まだ西門さんが」
 「はい、車でお待ちいただければ、特別仕様の車です。何事か不測の事態が起こったとしても安心ですので、とりあえず移動を」
 高瀬のもっともな物言いに、つくしが頷き付き従う。
 そのつくしの背後に続こうとした二人のSPを高瀬が制した。
 「…副社長が負傷されたわ、二人はあちらの応援を」
 「道明寺がっ!?」
 声をあげたつくし同様、2人のSPが驚き顔を見合わせる。
 「ええ、暴漢に襲われて、幸い命に別状はありませんが、場が雑然としてしまいまして。取り押さえた犯人でリーとエバンスでは、二次三次と何か不測の自体が起こったおりには対処できません。マーベル先生は私がお守りします。車に乗ってロックしてしまえば、装甲車でも持ってこない限り心配ありません。2人は早く、副社長の元へ」
 「しかし…」
 司から直接つくしの護衛を命じられ、総二郎からも指示されている二人は、冴子からの指示に戸惑い、従いかねている。
 「…私からもお願いします。こちらは誰も注目していないから、高瀬さんにお願いすれば大丈夫。どうか、どうか、お願いします」
 何度も護衛する本人から懇願され、普段から司の名代として彼らに指示を伝えることも多い冴子の言葉に、二人も決心する。
 「わかりました。何かありましたら、けっして無理をなさらず、我々に危機を伝えてください」 
 SPの一人が自分の襟首につけていた超小型マイクを取り外し、高瀬へと受け渡す。
 重々しく頷いて、高瀬が自分の襟首にマイクを付けるのを見届けると、二人は司の元へと走り出した。
 「高瀬さん、いつ日本へ?」
 「つい数時間前です。副社長より、日本到着時間の連絡を受けておりましたので、指示を受けてこちらでお待ちしてました」
 高瀬の物言いは理路整然としてどこもおかしなところはない。 
 だが、何かしっくりこないものをつくしは感じていた。
 それは何か?
 …高瀬さんは、私を何度も助けてくれたし、道明寺にもとても忠実な秘書さんだって。
 その思いで自分の不安な気持ちを押し隠す。
 だが、埠頭に立ち並ぶ倉庫の建物群を抜け、角を曲がって大通りへと出ようとしたその時…。
 「…牧野っ!?」
 心配で心配で、ずっとその名前だけを心の中で唱え続けていた当の男の声が背後から追いすがる。
 一瞬、昏く眉根を寄せた高瀬の表情に不審を憶えたものの、もう一度呼ばれた司の声に、つくしは我慢できずに振り返った。
 「牧野ぉっ!!」
 「道明寺っ!!」
 あれほど心配した司の無事な姿に、つくしは抑えていた不安な気持ちが涙に変わって頬を伝っていくのを感じる。
 あっという間につくしの元へと追いついた司が、息を切らせてつくしの眼前に立つ。
 「…はあ、はあ、はあ、ぶ、無事か?牧野」
 「あ、あんたこそ!大丈夫?怪我はないの?」
 互いの無事を喜びあい、膝に手を当て屈みこんだ姿勢で荒い息をついていた司が、つくしを抱きしめようと体を起こす。
 「牧野」
 「道明寺」
 愛しい女へと手を差し伸べ、微笑む司の手をつくしが握ろうと手を差し出す。
 と、泣き笑いのつくしの後に立つ女の姿に司が目を見開く。
 …高瀬?
 意外な人物の登場に司が二の句を告げようと口を開きかけた瞬間、つくしの背後、倉庫の影、高瀬の横合いから一人の男がゆらりと現れた。
 男から立ち上がる明らかな殺気。
 その手元に鈍く光る…。
 「…っ!?」
 ガバッ。
 司がつくしの体を抱き込み、体を反転させる。
 ギュウッ。
 ドッ。
 つくしにも伝わる強い衝撃。
 時間が止まってしまったかのような錯覚に、つくしが喉に張りつく声を懸命に絞り出す。
 「どう、みょう…じ?」
 あの日の願いが、何度も何度も繰り返し蘇る。
 お願い。
 嵐を起こさないで。
 司の足元、真っ赤な血が一滴、二滴としたたり落ち…。
 やがては、かつてつくしが流した涙のように滂沱と溢れ。
 つくしを抱きしめたまま、ズルズルと司の体が崩れ落ち、とっさに司の頭を抱きしめるつくしの体を伝い落ちた。
 呼気が裏返る。
 悪夢、悪夢、悪夢っ。
 「い、いやああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ~っ!道明寺っ!!」
 つくしの絶叫が哀しく悲痛に木魂した。

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