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「夢で逢えたら…全207話完+α」
第一章 もう一度逢いたい

夢で逢えたら009

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 「よう、ドクター」
 司は、壁に寄りかかっていた姿勢をただすと、ナースステーションのカウンターに肩肘をつき、マーベルたちの方へと身を乗り出した。
 無駄に様になる男だ。
 勝手な噂話に花を咲かせていたところを、当の本人に立ち聞きをされ、バツの悪い思いをしているマーベルとは裏腹に、二人の若い看護師はキャアッと黄色い歓声を上げて目をハート型にしている。
 ゴホン。
 咳払い一つで、気まずさを誤魔化し、マーベルは気を取り直して司に挨拶を返した。
 「…こんにちは、Mr.道明寺」
 「約束どおり来たぜ?」
 偉そうな態度の男を前に、マーベルは不機嫌な顔を隠しもしなかった。
 「…ずいぶん、後倒しになった約束でしたけど」
 「そりゃあ、しょうがねぇだろ。俺は死ぬほど忙しい身だからな。守りたくても守れねぇってことは、普通にあるしよ」
 男の悪びれない言い草にムカつきを憶えるが、マーベルがそれを怒る筋合いじゃない。
 「私は別にかまいませんけどね。あなたが誠実な人であれ、そうでないのであれ、医師として別段関与するところではありません。ただ、ご自分のお子さんのことですから、その子に恥じる言動はおよしになった方が良いと思います」
 司は身を起して、肩を竦める。
 「ま、いいや。で?ドクター、要の病室までちょっと案内してくれね?」
 「1015室です。先日、院長と医長がご案内したと思いますが?そちらの方…」
 マーベルが視線を移すと、影のように司の背後に控えて、大きな手荷物をもつ山之内がひっそりと会釈を返した。
 「秘書の方は、シュナイダー夫人をお連れになった時にもいらしてますし、そう複雑な作りではないので、私の案内は不要かと思いますわ」
 あからさまにアンタの相手は嫌だと言った風情のマーベルに、司は眉根をひそめて不快感を顕にする。
 司に対してこんな物言いをする人間は、そうそういない。
 …たかが一介の内科医のくせに、生意気な女。
 「俺は、アンタに案内しろって言ってんだよ。いちいちウゼェな」
 「なっ!」
 カウンターのサイドへまわり、司はマーベルの細い腕を唐突に掴み寄せ、有無を言わさぬ力で引きずり歩き出した。
 「ちょっ!何するのよっ!」
 「「…先生!!」」
 看護師たちの異口同音の叫びは、マーベルを心配してというより、なぜだか、語尾にハートがついている気がする。
 …アンタたちっ。
 病院内の女たちの間で流れる噂話の内容が、マーベルの脳裏に容易に浮かぶ。
 それはもう、看護師から各科の女医、患者たちの間まで。
 医師はともかく、看護師たちの各科を超えた結束と情報網は侮れないものがあった。
 「もう!なんなのよ、いったい」
 マーベルは強引な司の手を振り払うと、ため息をひとつこぼし、諦めてこの傍若無人な男の希望どおり、要の病室へと先導し始めた。
 デカイ男だけあって、すごい馬鹿力だ。
 そんなに力をこめたように見えないのに、握られた手首はわずかに赤く手形がついていて、痺れている。
 だから、この男と関わるのは嫌なのに…。
 マーベルの心の声など聞くことのできない司は、欲求通りことがやっとすすみ始めたことに機嫌をなおし、マーベルを追い越す勢いの大きなスライドで歩みを進める。
 「どのみち、アンタに要のことで話っていうか、相談があったんだよ」
 「相談?」
 「ああ、わりとこっちに転院させてから要の体調も落ち着いてるようだし、近々退院させて自宅療養ってやつに入るのは可能かってことや、そのための準備とかな」
 「ああ、なるほど。でも、それなら医長を通してもらえば…」
 「あ~あ、あの胃腸の弱そうな禿頭のおっさんな。いつも俺に取り入るのに夢中そうな院長の腰ぎんちゃくだからな~。あんま、退院急ぐと、小うるさそうだしよ」
 うーん、確かに。
 鋭いところをついてくる。
 でも、胃腸の弱そうな医長…って、シャレじゃないわよね?
 思わず軽蔑の眼差しで見てやろうと、司を見上げたマーべルは至極真面目な男の顔を見て、どうやらそういうオヤジギャクではなかったらしいと思いなおす。
 まあ、逆にそれくらいのシャレを言ってくれた方が可愛げあったかも。
 「しっかし、なんだか偉そうなこと言ってたな、アンタ」
 「えっ?」
 意図がつかめず、司を見返すマーベル。
 「アイドルだか、俺たちの写真だか知らないが、そんなん見て若い女どもとキャアキャア騒いでいるミーハー女のくせに、わかったようなことタレやがって」
 司の顔はどこまでも意地悪く、クイッと上がったアルカイックスマイルは、なまじ整った美しい顔をしているだけに、よけいに温かみがない。
 「…ミーハーって。激務の合間の息抜きに、素敵な異性の写真で盛り上がるくらい別にかまわないと思うけど?」
 「へえ?俺の写真が素敵だと、アンタも思うわけ?」
 「いや、全然」
 「ウソつけよ。なんか、アンタ偉そうな講釈垂れてたけど、女は俺みたいな男が好きなんだよ。見栄えのイイ顔とスタイル、金、地位、家柄、何をとっても俺にないものはねぇだろ?」
 どんな顔して言ってるんだろうと、マーベルはうろんな顔にならずにいられない。
 …いい年して馬鹿じゃないの。こいつ、年齢に応じた成長とかってなかったのだろうか。
 ニヤけた顔をしているのかと思ったら、つまらなそうな醒めた顔をしていたので、思わずマーベルは司の顔をジッと見返してしまった。
 「…まあ、それは否定できないわね」
 若い時のマーベルだったら全面的に否定していただろう。
 だが、もう若いとは言えない長い年月を過ごしてきて、甘いも酸いも様々なことを経験した。
 青臭い愛や恋、魂の伴侶よりもわかりやすい形をしたものに価値を見出した方が楽に思える時もある。
 だからと言って、マーベル自身がそう言ったものに靡くかは別のものだったが。
 だろう?
 という風に嘲笑を浮かべた司の顔が、マーベルを見下げる。
 マーベルは、それを真っ直ぐに見返す。
 「でも、それだけじゃ、寂しいじゃない?」
 「じゃあ、何がいるってんだよ?」
 「好み?」 
 「はああ?」
 思わぬ変化球に司は、怪訝に問い返すしかない。
 「ほら、さっき、聞いてなかった?私の好みってあなたみたいな人じゃないのよね?あなたに合わせて、あなた達のF4の中であえて言うなら、花沢類?」
 ま、雑誌じゃあ顔しかわかんないんだけどね。
 いうわりには淡白な物言いに真意をつかめず、司はしばし悩んだ。
 この女、この俺をからかってんのか?
 媚びるでもなく、また、おもねるのでもなく。
 敬遠しているようだが、ある種の人々のように、司に対して悪意や嫉妬をもっているわけでもなさそうだった。
 「しっかし、F4…だっけ?金持ちの坊ちゃんたちなんてロクでもないものと相場が決まってるけど、西門さんや美作さんだけじゃなくって、あなたも女タラシだなんてね」
 「あ?なんだ、それ?」
 「いやいや、話してみるとけっこう印象は違うけど、あなたってゴシップ記事の常連じゃない?先月は、上院議員の一人娘だっけ?その前にも女優やらいろんな女性と噂になってるみたいだし」
 「っとに、ミーハーだな?それでも、一応ホワイトカラーの医者かよ?ゴシップ記事の愛読者だなんて下品もいいとこだぜ?」
 侮蔑的な物言いにも腹をたてるでもなく、マーベルは飄々といなす。
 要のことに対して喰ってかかった同じ女とは思えないが、マーベルは勝気ではあっても、高慢なわけではなかった。
 「医者や看護師みたいな忙しい職種だと、ろくに時間もとれないから、そういう趣味くらいしか見つけられないのよ。あなたもそうでしょうけど、常に時間に縛られてるから、旅行とかにいく暇もないし。せいぜい、他人のロマンスを覗き見?」
 まあ、私も若い女の子達から横流ししてもらってる雑誌をチラみするくらいなんだけどね。
 と悪びれない。
 「信頼度0のゴシップ記事はともかく、こうして実物にあってみたら、そのまんま?なんか軽いし」
 「…おい!俺のどこが軽いんだよ?」
 「何言ってるのよ?初対面に近い女にそれだけ馴れ馴れしくしておいて。普通、いくら自分の容姿に自信があったって、自分に惚れないなんてどうかしてる…みたいな言い方しないわよ」
 「本当のことだ」
 どこへ行っても、司に媚びてこない女はいない…手の届かないところへと行ってしまったあの少女を除けば。
 そういえば、この女も媚びてこないか。
 「それにしたって、総二郎とあきらのゴシップも、こっちで流れてるのか?」
 「うーん、美作さんはそうでもないわねぇ。よき家庭人みたいだから、どちらかといえば、愛妻家ってことで周りが勝手に騒いでいるっていう感じだし。でも、西門さんは、噂じゃなくって、この病院でもけっこう知れた人なのよね」
 マーベルが思わずといったように、小さな笑い声をもらす。
 「なに?」
 「この病院ってここら一帯じゃあ、一二を争う大病院だもの。以前に、西門さんのご家族が急病で入院されたことがあるらしいのよ。その時に関係をもったっていう女医が何人かいるし、声をかけられただけなら看護師の間でけっこうな人数いるわねぇ」
 「…」
 総二郎…相変わらず、マメな奴。
 「…で、アンタも声をかけられた一人というわけか?」
 それとも、関係をもった?
 「ああ、私はその頃、イギリスに経費留学してたから、実物にはお目にかかってないのよね。あなたに負けず劣らぬ美形だったらしいっていうのは聞いているけど」
 「俺の方がいい男だ」
 「へえ?そうなの」
 当たり前に流されてしまっている。
 「あんた…」
 「あ、ここよ。どうぞ?」
 奥まった一角、たった二部屋しかない特別室。
 突然、高級ホテルの廊下のような佇まいにかわった内装の合間、重厚なドアを両脇から固めるようにして椅子を置いていた二人の体格の良い男が立ちあがる。
 「副社長」
 鷹揚に頷き、司が顎をしゃくると、要を守るSPたちは一歩退き、司とマーベル、山之内に場所を譲った。
 コンコン。
 「はい」
 シュナイダー夫人の柔らかい返答が、ドアの向こうから返された。

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