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「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う⑤

愛してる、そばにいて1015

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 「お前はここでちょっと待ってろ」
 「あ、うん」
 二人でデートして、ホテルに泊まって―――久しぶりの甘い時間を過ごした次の日の朝。
 いや、寝入った時にはすでにもう午前を過ぎていたはずだったが。
 いつもは朝食の準備をして、司を起こすつくしだったが、さすがに今朝はすっかり寝過ごしてしまった。ll
 司の方はといえば、すでに一日の規則正しいスケジュールが体に刻み込まれているのか、早めとはいえなかったが、それでも出社時間に遅れるほど寝過ごすこともなく、むしろ朝っぱらから疲労困憊なつくしの方が司に起こされてしまう始末だ。
 …なんかいつも以上に、凄い元気だし。
 司の方は昨夜までの疲労をすっかり拭い去り、いつも以上に精気に溢れ精力的だ
 …うぅっ、まだ体が怠い。こんなんでこの先、大丈夫かな、私。
 セックスレスはセックスレスで気に病んでいたが、いざ夫婦生活を再開してみれば、してみるでそれはそれで悩ましいことこの上ない。
 有り体に言えば、体が持つだろうか、という、他人様に言えば逆に羨まれてしまうか、生ぬるい視線をしかもらえないだろうけれど。
 …いや、誰にも言えるわけないから、いいんだけどさ。
 ヨタヨタと歩くような醜態は晒してはいないはずだし、司も気を使ってくれたはずなのだが、やはり体格差か、あるいは単なる体力の差なのか、どうしても司と過ごした次の日はカラダがキツく、少なくても午前中いっぱいはそうした影響を拭い去ることができなかった。
 もっとも夫婦とはとはいえ、激務で家を空けがちの司とそう毎日夫婦生活を営めるものでもなかったので、そこまで心配するほどもないかもしれなかったが。
 昨夜の予定では、迎えに寄越させたリムジンに二人で乗り、途中、道明寺邸でつくしを降ろし、そのまま司は出社する予定だったのだが、予定より遅い起床に、どうやらそれは無理だということになって、結局別々の車で帰宅へと予定変更になっていたのだが。
 どうもトラブル発生のようで、2台のリムジンの到着が遅れていた。
 …どうしよ。司も朝一で会議だって言うし、私の方もミス・チャーチルの授業入ってるから、あんまりのんびりしてられないんだけど。
 厳しい家庭教師たちの中でも、特に厳しい教師の顔を思い浮かべ、内心つくしは顔を顰めてため息をつく。
 一般人ならそれはそれでタクシーなり、交通機関を利用しての帰宅も可能だったが、司の場合は諸事情あり、SPたちが乗ってきた車に同乗して司だけ会社に向かうか、あるいは別の方法をとるかと、それほど深刻なことではなかったがその対応に司があれこれSPたちとやり取りしていた。
 そんな彼の姿を目の端に止め、ホテルのエントランスロビーの椅子から、見える範囲の人々をつくしはなんとはなしに眺めていた。
 道明寺家の経営するザ・メイプルとはまた違う雰囲気だが、訪れる人々の階層にそう変わりはない一流ホテルの内装を堪能し、どこかで見たような人々を興味深く観察する。
 あまりあからさまなのも非礼だが、通り過ぎる人々が立ち話をする司をチラリと横目で見て行くのをさらに自分が眺めているのも、それはそれでなんとなく楽しい。
 …あ、あの人、絶対司のことカッコイイとか思ってるよね。
 …あれ、あれってもしかして、まさかハリウッド俳優の?
とか。
 「なにしてんの?」
 背後から聞こえた男の声に、ビクリと体が震えた。
 …日本語?
 ―――はなしてあげなよ。いいから離せって言ってんだよ。
 どこからか、……心の奥底から聞こえた声に、体が小刻みに震える。
 おそるおそる振り返った背後、司の方を見る男女二人のカップルの横顔が見えた。
 おそらく日本人の観光客だろうが、そのどちらの人物にもつくしは見覚えがない。
 当然のことだったが。
 それなのに、なぜか男性の方、おそらくまだ20才前後、あるいは学生だろうか。
 そちらの男性の声が、どうにも聞き覚えがる気がして、どうにも視線を外すことができなかった。
 …どうして?
 いったい自分でもなにが起きたのかわからない。
 けれど、何かが琴線に触れる。
 「いや、あの人って、芸能人じゃないかな、って思って?どっかで見たことある気がするんだけど、雑誌だったかな。…テレビだったかも。ねえ、知らない?」
 「どうでもいいよ、そんなの」
 ―――興味ない、他人のことは。
 「なによ、それぇ!」
 ―――誤解しないで、おれ、こーゆーのキライなだけなんだ。
 興味なさげに冷たくそんな風に言う誰かを知っている気がした。
 冷たいのに、優しくて、けれど……やっぱり、冷たくて。
 助けてくれたと思ったら、彼女を突き放した誰か。
 …誰?
 ふいに、ロビーで流されていたクラッシック曲の曲調が、オーケストラ演奏からバイオリン独奏へと変わる。
 凪いでいた心がなぜか、漣のように波立った。




*****




 「ああ、悪いな。じゃ、それで頼む」
 「かしこまりました」
 とりあえずホテル側に適当な車を2台用意させて、SPを運転手がわりにすることで話はまとまって、司はつくしを待たせているソファを振り返った。
 しかし、当のつくしは何を見ているのか、司ではなく熱心に別の何かを見ていて、彼の話が一段落ついて、自分の方へと歩み寄って来ているのにまるで気が付いていない。
 彼をまったく見ていなかった。
 子供でもあるまいに…と、自分でも思うが、つくしの関心が自分に向いていないことが気に入らない。
 もちろん、かつてのようにそれを全面的に表に出してつくしを咎めるほど愚かではないつもりだったが、しかし、つくしが何を見ているのかわかってそんな分別も吹っ飛び、頭にカッと血が昇った。
 「おいっ!」
 「……………」
 声を荒らげた司に驚いて飛び上がったのはつくしではなく、むしろ彼女が見ていた男の方だった。
 司のように特に人目をそばだてる特徴的な人物というわけでもなく、もちろん女の目を引きつける美男というわけでもないごく平凡な男。
 おそらく日本人、観光客だろう、司やつくしよりも何歳も年下らしい若い男。
 …ガキじゃねぇか。
 しかし、それがわかったからといって、司の頭に昇った血を下げる効果はほとんどなかった。
 ―――つくしが自分ではない男を見ている。
 つくしが呼びかけている司を無視して、その男をジッと見つめたままだったから。
 「どこ見てんだ、てめぇはよっ!」




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