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「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う⑤

愛してる、そばにいて1013

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 「へぇ、そんなによく見えるんだ?」
 「……派手は派手だな」
 「綺麗なんでしょ?」
 「まあな」
 嵐のような情熱的な一時が過ぎ、汗ばむ素肌にこもる熱と荒いでいた息が収まり出した頃、なんとはなしにポツリと呟いた話に司も応じてくれて、思いつくままに雑談していた。
 「私からしたら羨ましい環境だけど、感動薄いよねぇ。ホント司ったら、贅沢者なんだから」
 「……ふっ」
 ボヤくつくしの言葉に、司が失笑する。
 しかし、もちろんそれは馬鹿にしているとか、嘲笑しているというわけではなく、彼女がそんなたわいなことでも大げさに驚いたり、大真面目に反応するのが面白いと思っているのがよくわかる柔らかな笑み。
 「俺にしてみれば、景気は景色だからな。第一、いくら夜景がイイって言ったって、こっちは仕事してっし、毎日のことだからそんなに感動もねぇよ」
 「それもそっかぁ」
 …こういうのをピロートークって言うのかなぁ。
 司はおしゃべりな男ではないが、かといって意外にも無口というほどではなく、つくしが話しかければ、うるさがらずに遮ることなく話を聞いてくれたし、ポツリポツリとでも返事を返してくれる。
 また、気が向けば、自分から思いついて話してくれることもあったが、やはり日頃の多忙から、どうしてもゆっくりと雑談を交わす暇などなく、性的交渉のなかったこの数年間、ベッドに入ればすぐに寝入ってしまうのがほとんどの常で、こうしてたわいない話をするのも本当に久しぶりのことだった。
 抱き寄せてくれる司のたくましい胸に手を置き顔を伏せて、その温もりに酔う。
 以前はどこか居た堪れなかったこうした時間も自分の心持ち一つでこうも違うものなのかと驚かされる。
 …司はずっと優しかったけど。
 それでもどうしても自分が望んではいない関係を強要されていると、といった被害者意識をどうしても拭うことができず、かといってそんな自分の気持ちを正直に彼にいうことができない自分の意気地のなさと優柔不断を、自己嫌悪に陥ったり。
 けれど、彼の体温が心地よいと素直に感じることのできる自分が嬉しい。
 ドクンドクンと力強く鼓動打つ司の心臓の音と、彼の低くゆったりとした声を聴いていると気持ちが落ち着いた。
 …それに、司って凄くいい匂いだし。
 いつものコロンの香りはすっかり汗に流され、いつもはそれほど濃くはない司の体臭がいつもより強く香る。
 けれど、その匂いさえ、イヤだとはもう思わなかった。
 …不思議だよね。
 もともと不快な臭いなどではなく、彼にぴったりのその甘い香りを奇妙に嫌悪していた時があったのは、どうしてなんだろう。
 その答えを突き詰めるのは、どこか空恐ろしいような何かを呼び起こしてしまいそうで、つくしは小さく首を振り、そんな思いを振り払った。
 「なに?」
 「え?……あ、いや。ここの居間の夜景も凄く綺麗だったんだろうなって」
 おそらく‘夜景’も、司が彼女との今日のデートの為に、用意してくれたプランの一つだったのだろう。
 …恋人とかじゃなく、夫婦なのに。
 司にはそんなところがある。
 美形ではあるが、野性味溢れ、硬派な見かけや性格とは裏腹に、愛している女をどこまでも甘やかしたがるロマンチストな部分。
 つくしの言葉に横たえていた身体を、彼女ごと司がわずかに起こす。
 「今から、見てくるか?」
 「……ええ?」
 「行こうぜ?」
 今にも手を引かれて、連れて行かれそうだ。
 「……ん、でも、ちょっと今はまだカラダが怠いし」
 ちょっと…というには、かなり控えめな表現だったが。
 しかし、司も言葉を濁したつくしの状態を察してくれたらしい。
 「抱いて行ってやるよ」
 彼女の返事しだいで、本当に抱き抱えて連れて行かれてしまいそうだ。
 しかし、つくしは今こうしている時間が失われてしまうことの方が惜しかった。
 ヌクヌクと二人で温かな布団にくるまって、たわいない話をする時間。
 ごく平凡なようでいて、彼ら二人にはそれこそめったに訪れることのない貴重なもの。
 「ん~、……夜景かぁ」
 「なんだよ?見たくねぇの?」
 「そうじゃないけど、……でも、司がいつも見ている景色とは違うわけだよね。司がいつも見てる会社からの夜景だったら、そりゃあ見てみたいとは思うけど、今はこうして司と話してたいかなぁ」
 正直な気持ち。
 いつもは気後れしたり、遠慮してしまってどうしても彼の意に逆らうようなマネをするとができないつくしだったが…。
 「そ、そうか?」
 つくしの言葉の何にか、妙に司がテレテレと照れて、顔を赤らめ、再び彼女を抱えて布団へと潜り込む。
 チュッ、チュッと顔中に振らされるキスの雨がくすぐったくて、クスクスと笑ってしまう。
 「もうっ、なぁに?」
 「……お前が、ずいぶん可愛いセリフ吐くからよ」
 「ええ?」
 「俺がいつも見てる景色じゃねぇんなら、それほど見る価値もねぇ……俺が見てるものをお前も見たいっていう意味なんだろ?」
 「……………」
 そんなつもりではなかったけれど。
 …でも、た、たしかにそんな意味かも?
 「可愛いヤツ」 
 ギュウギュウと抱きすくめられて、裸の胸に押し付けられて、息苦しいくらいなのに笑ってしまう。
 「やだ、そんなふうにギュウギュウ抱きつかれたら苦しいよ」
 自分でも甘ったれた声が出ている自覚がある。
 …恥ずかしい。
 でも、幸せで。
 「なんだかくすぐったいし」
 「うるせぇ、もうしばらく黙って可愛がられてろ」
 「え~?」
 さすがに力は緩めてくれたが、言葉のとおりひとしきりつくしを抱きしめて、キスをして、つくしを笑わせて……。 
 「もうっ、司ったら」
 しかし、司もそれで満足したのか、抱きしめたままの彼女の髪を撫で、優しく素肌の背を撫でて、話を再開した。
 「それでも……」
 「うん?」
 「それでもな、真夜中にふっと何かの拍子に、書類から顔をあげて窓の外を見ることもあんだよ」
 「……うん」
 再び身体を横たえた司が、その景色を思い浮かべるように遠くに視線をやり、つくしの頭のてっぺんにチュッとキスを落とす。
 「全然、普段は気が付いたりしねぇけど、なにげに真昼間よりすげぇ明るいんだよな」 「へぇ?」
 「空港から見た夜景だけでも感動してたお前だからな。会社から見下ろす夜景も一度くらい見せてやりてぇって、いつも思ってたんだよな」
 昼間よりも明るい電気の明かりなどつくしには想像もつかないが、かすかな微笑みを浮かべ、優しく微笑んでくれる司の顔をこうして見上げている、二人で同じ夜景を想像しているだけで十分、その景色を眺めている以上に満足だった。
 「けど、会社にはババアもいるし、お前こっちに来るのイヤがるだろ?」
 「………」
 姑である司の母親に会うことを忌避しているのを、察せられていることに居た堪れない。
 …わかられてないはずはないけど。
 それでも、楓は司の生みの母親なのだ。
 どれほど彼自身は、自身の母親を悪しざまに言っていようとも、そのことをつくしは忘れるつもりはなかった。 
 「ニューヨークを離れる前に、一度くらい見せてやりたかったよな」
 「……司」
 彼の優しさがくすぐったくも、……なぜか切ないのはなぜだろう。
 愛にストレートな彼はいつも彼女を愛していることを隠さない。
 愛情を惜しみなく与えてくれていた。 
 それでも、つくしにとって彼は謎の多い男だった。
 その最たるものが―――、
 「ね、司」
 「……?」
 つくしの背を撫でていた司の手が止まって、彼女の顔を無言で見下ろす。
 「司は、どうして私が好きなの?」



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