FC2ブログ

「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う⑤

愛してる、そばにいて1011

 ←愛してる、そばにいて1010 →愛してる、そばにいて1012
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 ビクッと体が咄嗟に怖じけてしまったのは、単なる条件反射だったと思う。
 唐突に司に腕を掴まれ押し倒されて、気がつけば、真上に彼を見上げていた。
 …司が怖いからじゃない。
 つくしの顔の脇に両肘をついて、彼女を見下ろす司の顔は、辛そうに引き歪んで自嘲の笑みを唇の端に刻んでいた。
 …ああ。
 こんな顔をさせたいわけじゃないのに。
 「ほらな。俺がちょっとのしかかっただけで、ビクついて、身体なんてガチガチに強張っちまってんじゃねぇか」
 「………それは」
 自分でもどうしようもないことだ。
 けれど、司に誤解されたくない。
 彼が望んでいるように、まごう事なき愛情で愛しているとはまでは言ってあげられなくても、個の胸の奥に息づいている想いがある。
 「私も、……幸せになりたい」
 「っ」
 「今でもたぶん十分幸せなんだと思う。司が私を大事にしてくれて、愛されて。でも、守られるだけじゃなく、私も司を守りたいし、大事にしたい。愛して、あなたにも幸せだと感じて欲しいの」
 愛されたからといって、必ずしも愛せるものだとは限らない。
 けれど、少なくても、つくしは思ったのだ。
 彼を愛してあげたい。
 いや、あげたいなどとはおこがましい。
 愛したい。
 彼を愛して、彼にも幸せを感じてもらいたい。
 誰かを愛したのなら、幸せをその相手にも感じてもらうことこそ幸せというもので、彼にそう感じて欲しいの願っているのなら、それは……。
 躊躇する気持ちを叱咤して、頼りなげに切れ長の目を揺らす司の頬へとそっと手を伸ばす。
 …本当に綺麗な人。
 この世にこれほど美しい人がいるなんて、それもそんな人がこんなにも平凡で普通の女である自分を熱愛してくれていることが信じられない。
 だから、時々今この時この瞬間が、誰かの見た夢なのではないかと思うことがあるのかもしれない。
 それでもただそれを甘受して、揺蕩うだけでは本当の意味で幸せなのだと言えないから。
 「いつも気持ちをハッキリと言葉や態度で伝えてくれる、愛していると言ってくれる司みたいじゃなくて、………曖昧なままでの私でごめんなさい。でも、私も、このままじゃダメだと思うから。司に甘えているばかりで、司を幸せにしてあげられていない自分じゃイヤなの。司のことも幸せにしてあげたい。これからも司とずっと一緒に生きていきたい」
 司の顔に浮かんだのは、いくつもの感情と迷い。
 最初は、苦しげだった彼の顔が、徐々につくしの言葉を理解するにつれ、驚きに目が見開かれ、何度も口を開いては閉じることを繰り返し、いつも傲慢なまでに自信に溢れた男の顔が期待と不安に揺れ動き、半信半疑だったものが、徐々に喜びに満ちてゆくのがつくしの目に映ってた。
 美しい人が幸せそうに微笑む顔の、なんと美しいことか。
 ともすれば魂を抜かれ、見惚れたまま言葉を失ってしまいそうな危惧に、司の顔から視線をわずかに反らし、懸命に自分の心の中から自分なりの言葉を探した。
 「待っててくれてる司の気持ちは嬉しいけど、でも、司にも私にもう遠慮しないで欲しいって……その、……えっと……それで」
 …抱いて欲しい。
 不安も迷いも―――疑いもなにもかも、司の情熱と温もりですべてを塗り替えて、今ある現実を実感させて欲しい。
 そう口に出そうと決意を決めていたはずなのに、いざ、そう口に出すことがいかにも難しい。
 気持ちの抵抗感からというよりも、照れと恥ずかしさから。
 …わ、私ったら。
 結婚して何年も経っていて、それどころか二度も妊娠した経験があるというのに、何をいまさらカマトトぶっているのかと自分で自分に呆れてしまう。
 …ちゃんと、言わなきゃ。
 すべてはそこから始まるのだから……きっと。
 「ちゃ、ちゃんと自分の気持ちを言わなきゃっって。……だから、う~、そのぉ、わ、わ、私を…私を」
 何度も言葉につまり、結局は言えずにわけのわからない前置きへとまた戻って、だが、このままでは拉致があかないと自分じ自分に焦れったくなってしまう。
 …うひぃ~、どうしたらいいの?
 自分自身でさえ、何を言っているのかわからないのだ。
 短気な司では、焦れったいなどというものではないだろう。
 今、彼がどんな顔をしているかわからない。
 それでも、エイヤっと、気持ちを奮い立たせ、司へと視線を戻す。
 「だ、抱い……んっ」
 しかし、言葉を継ぐ前に、いきなり降ってきた唇に唇を塞がれ、言葉を遮られた。
 「つか…さ」
 「…いい、もう何も言わなくて」
 「でも……」
 「いいんだ。お前の気持ちはわかったから」
 唇を離した司が、つくしに顔を見せることもないまま、彼女に覆いかぶさったまま彼女のうなじへと顔を埋め、ささやき声にも似た小さな声で呟く。
 「愛してる」
 「……司?」 
 「たとえお前がまだ俺ほどに俺を愛してくれてはいなくても、それでもいいんだ。……どんなお前でも、俺はお前を愛してる。俺がお前に惚れてんだ」
 3年前、……あの日、二人だけの結婚式で、司が彼女へと誓ってくれた言葉。
 ―――お前を愛してるから離してやることができない、と。
 そして、その言葉通り、司はけっして彼女を離すことがなかった。
 生まれながらの自分の運命から弾かれ、本来なら辿るべきではない逆境に立ちはだかれても、その誓いのとおり、彼は誰よりもつくしを優先し、愛し続けてくれた。
 ずっと。
 動物のオスとしての、当たり前の衝動さえ押し殺し、ただ彼女に笑って欲しい、傍にいてくれればそれでいい、と。
 これほどまでに美しく、魅力的な男性にこれほどまでに愛され、大切にされて、それで彼を愛さずにいられる女はいるだろうか。
 こんなにも求められ、激しい愛を向けられて。
 「それに、お前もけっこうもう俺に惚れてるんじゃね?」
 冗談めかした言葉に目を瞬かせ、つくしもクスリと笑う。
 こんな時なのに楽しくなってしまうなんて、初めてのことだった。
 …そうかもしれない。
 心で肯定して、つくしが返事を返す前に司が真面目な声音に戻って。
 「好きだ。愛してる」
 司の唇が、まるで消えない焼印を押すように、彼女の顔中にキスの雨を降らせ、ゆっくりと大きな手が彼女の全身を這う。
 けれど、かつてのように、つくしが身体を固くするたび、身震いするたびに、司は手を止め、彼女の怯えを気遣い、ゆっくりと彼女の心と身体を解して蕩かしてゆく。
 「ずっとお前だけ」
 まるで厳かな誓いのような愛の言葉とともに、司の熱い求愛が全身に降り注ぎ、つくしの目尻から悲しみや苦悩ではない涙が、一筋ぽろりと零れ落ちた。




web拍手 by FC2

 
関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【愛してる、そばにいて1010】へ
  • 【愛してる、そばにいて1012】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【愛してる、そばにいて1010】へ
  • 【愛してる、そばにいて1012】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク