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「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う⑤

愛してる、そばにいて1010

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 …私なんて捨てていまえば、きっとそれですむ話なのに。
 司の妻として、さまざまなことを学び、道明寺財閥の威容もある程度理解できるようになった今でも、その全てを把握しきれないほどに、道明寺財閥は巨大で強大な一族だ。
 そして、そんな一族の頂点に立つべきものとして、生まれながらにあらゆるものを与えられ、自身も兼ね備えた人物である司が、それらのものすべてを捨ててまでも彼女に執着するその理由が、つくしにはまったくわからなかった。
 それでも―――。
 いつの間にか、絆されてゆくものがある。
 あるいは、それは単なる諦めで、彼の愛に呪縛されただけのことかもしれない。
 けれど、こうして抱きしめられていることがイヤじゃない。
 もし、司が自分の地位をとって、彼女を捨てる決断のしたとしたら、それが一番最善のことだと思う。
 たぶん司にとっても、もしかしたら―――彼女にとっても。
 なのに、それが現実になったなら、たぶん、自分は平気でいられなかっただろう。
 以前のように、もう彼から逃げ出そうとは思えないのが答えなのかもしれない。
 …これは本当に愛なの?
 彼のように、自分も彼を愛しているのだろうか?
 そう疑う気持ちもいまだ心のどこかに根付いて消せないでいるというのに。
 この胸の中にいることが、とても心地良いことに気がついたのはいつかだろう。
 世界中のどんなものからも守られているような安心感。
 そして、それはけっして比喩だけではなく、きっと司は何者からも彼女を守ってくれるのだ。
 …私はそれを知っている。
 彼女をこの世の誰よりも、誰と比べることもできないくらいに愛してくれている男性。
 「とりあえず……」
 柔らかく彼女を抱きしめてくれていた司の腕の力が緩んで、ポンポンといつものように彼女の頭を優しく叩いて、司が彼女の体を押し出す。
 「風呂行ってこいよ」
 迷ったものの、つくしも素直に頷いて、ベッドを離れる。
 しかし、後ろ髪引かれる思いで、ベッドに残る司を振り返った。
 「えっと、司ももう寝る?」 
 「……そうだな。どうするか」
 彼女の心の中で二つの相反する自分が、まったく違う声をあげている。
 …私は。
 「もし、司が、…………まだ、それほど疲れていないのなら」
 司が怪訝に顔を上げて、わずかに首を傾げ彼女を見返した。
 「私がお風呂を出るまで、眠らないで待ってて欲しいの」
 



*****




 「は?それってどういう意味だ?」
 まだ、何か自分に話したいことがあるのだろうか?
 そんなことを一瞬思って、しかし、真っ赤になった彼女の横顔に、あらぬ期待が沸き起こる。
 …今、こいつ、なんて言った?
 ただ言葉そのままの意味でしかないのか、あるいは?
 …まさか?
 「じ、じゃあ、わ、私、お、お風呂行って…くる、からっ、ちゃんと待っててねっ」
 上擦った声であきらかに挙動不審に言いおいて、逃げるように寝室を出て行ったつくしの背を見送って、さきほど交わしたばかりの会話を、司は何度も反芻した。
 …起きて待ってろって言ってたよな?
 話があるのなら、会話の流れでそのまま話してしまえば良かったことで、日頃の彼の疲労を慮ってなにかと心配する彼女が、わざわざ彼を呼び止めて置く必要などなかったはずだ。
 …けど。
 自分を戒める声と、期待する声が交互に彼の脳裏に湧き上がって彼を惑わした。
 つくしを抱きたい。
 この3年間何度となく、現れては必死で押し殺してきた欲望。
 司はけっして枯れてしまった老人などではない。
 つくしを愛している。
 彼女へと告げたその言葉のとおりに。
 当然、愛している女がいれば、抱きたくなるのが男の本性で、同じベッドで寝起きしていて、その欲望を抑えるのは若い彼には至難の業だった。
 おそらく彼が強く望めば、つくしは拒まなかっただろう。
 これまでのように。
 …でも、それじゃ意味がねぇんだ。
 これまでの過ちの繰り返し。
 けっして、つくしが本当の意味で彼を愛してくれることはないだろうことがわかっていたから。
 …同情されたいんじゃない。
 義理や依存からくる諦めから、身体を投げ出させたいわけではなかった。
 もちろん、それでもいいという気持ちもないではなかったけれど。
 9割方の本気と、残り1割の痩せ我慢。
 しかし、もう、彼はそうしたものでは満足できなかった。
 …俺はお前に愛されたい。
 自分と同じ気持ちで、彼女に愛されたかった。
 今度こそ。
 考え込んでいるうちに、いつの間にかそれなりの時間が経っていたらしい。
 ガチャリというドアノブの音に、顔をあげる。
 バスローブ姿のつくしが、気後れしたように恐る恐ると言った感じで、ソロソロとドアの向こうから姿を現し、……パタリと後ろ手にドアを閉めた。
 その姿を見た途端に、ストンと胸に滑り落ちた彼女の先ほどの言葉の意味合い。
 興奮と喜びとわずかな戸惑いと、………そして。
 真っ赤な顔のつくしが、俯き加減に司の視線から視線を反らしてベッドへと戻ってくる。
 「早かったな」
 「そ、そうかな?」
 上擦った声の小さな震えに、なぜか泣きたいような……怒りたいような不可思議な感情に襲われかけ、司が泣き笑いのような複雑な笑みを浮かべる。
 「………バッカじゃねぇの?」 
 「え?」 
 虚を突かれたつくしが、キョトンと赤いままの顔を上げ司の顔を見返してくる。
 彼女が首を傾げるのにさえ、司はむしょうに腹が立った。
 4年もの間こうやって二人で生きてきて、………何年も男としての欲望を堪えてまで今度こそ守ってやりたいと思っている彼の気持ちを、いまだ理解してくれない彼女がむしょうに腹立たしく遣る瀬無い。
 「生まれながらに保証された地位とやらを危うくさせられて、島流しになる俺が可哀想にでもなったか?」
 つくしの目が、大きく見開かれる。
 「ちがっ……きゃあっ!?」
 
 


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