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「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う⑤

愛してる、そばにいて1009

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 無言になってしまった司を、つくしが窺い小さく首を傾げた。
 「あの……?」
 「……いや」
 彼女が彼に対して拒絶的ではないのを見計らって、司も彼女が座り込んだままのベッドに乗り上げ彼女の横に腰掛ける。
 そんな司の緩くウェーブのかかった髪を見上げて、つくしが申し出る。
 「司、シャワー浴びてきたんだ?まだ、髪、濡れてるけど、ドライヤーしてあげようか?」
 「いや、いい。タオルドライしてきたから、すぐ乾くし。それくらいなら、お前も風呂入って来ちまえよ?……疲れたんじゃねぇの?」
 「……………うん」
 それほどあちらこちら歩き回ったわけではないが、デートの最後の最後でつまらないケチがついてしまった。
 あれほど怯えていたのだ。
 相当精神的に負担をかけられ、疲労を感じているに違いない。
 しかし、つくしは頷きはしたものの、何かを言いあぐねるようにして何度か言葉を飲み込んで、……しかし、結局は口にすることを選んだらしい。
 「さっき、伯父様がおっしゃってたことって、ホント?」
 「…………」
 無言で先を促す司の視線を真っ直ぐに受け止められなかったのか、わずかに目を反らして言葉を続ける。
 「私のせいで、司はヨーロッパ転勤になったってことなの?」
 「………ハァ」
 大伯父はそうは言っていなかったはずだ。
 少なくても、つくしが言ったように、そのものズバリとは。
 つくしは自分に向けられる悪意や感情に鈍感なところはあったけれど、しかし、頭の回転が悪い女ではなかった。
 たとえ含んだ物言いだったとしても、大伯父の言いたいことの意味が推測できたのだろう。
 このことだけでも、あの男は万死に値すると、そう思う。
 「やっぱりそうなの?」
 「別にそういうわけじゃない」
 「……ウソ」
 いつもは司に対してもどこか遠慮がちで、言いたいことのほとんどを飲みこむつくしが、珍しく食い下がってくる。
 「なんで嘘だなんて思うんだよ?」
 少なくても、ただ一つの唯一絶対のウソ以外のウソを、もはや彼がつくしにつくことはないというのに。
 …お前が俺のものだと言ったこと、ただそれだけだ。俺がお前についたウソは。
 「司は道明寺財閥の後継者なんだもの。……MBAの取得を最優先にしなきゃならないこの時期に、本拠地のアメリカや道明寺ホールディングスの主要商業圏の先進七ヵ国(G7)以外の国に派遣されるなんておかしいもの」
 「道明寺が経営展開してるのは、G7だけじゃないぜ?」
 「それはそうかもしれないけど、………でも、司は、開拓的圏域や撤退懸案地域に派遣されるような立場の人じゃないでしょ?」
 つくしも後発ではあっても、マナーや社交術のような花嫁修業的教育だけではなく、道明寺財閥の事業や世界経済、経営学なども学んできている。
 大伯父との会話の中で、彼女なりに察するところがあったのだろう。
 「ま、たしかにお前の言うとおりイレギュラーな人事ではあるな」
 「やっぱり」
 「けど、お前のせいってわけでもない。単純にいつまでたっても暴れ馬で、いっこうに轡を取らせようとしない俺にイラついて、ここらで自分の実力ってものを思い知らせて、鼻っ柱を折ってやろうっていう経営陣の思し召しってヤツだろ」
 嘘ではない。
 その轡を取らせない…という言葉の中に、つくしとの結婚も含まれているというだけのことで。 
 それにしても、彼女のせいだなとと責任転嫁するつもりは、司には欠片もなかった。
 …それだって結局のところ、俺自身が選んだことなんだからな。
 彼女を欺いてまでも。
 つくしのせいではなく、まごうことなく司自身のせいなのだ。
 けれど、つくしはそんな彼の答えだけでは満足できなかったらしい。
 顔を泣きそうに歪め、なおも言い募る。
 「どうしてっ、どうしてなの?!」
 「………………」
 「そこまでされて、どうして司は私に執着するのっ!?」
 どこかで聞き覚えのあるセリフだ。
 …ああ、そうか。
 おそらくたしかに以前にも尋ねられた問いかけだったのだろうけれど、たとえ口に出さずともいつもつくしは彼へと訴えていた。
 ―――私をもう手放して、解放して、と。
 「言ったろ?」
 「……………」
 「愛してるからだ。この世でお前だけが、俺にとって必要な唯一絶対な存在だからだ」
 「……そんな」
 怖じけたように視線を彷徨わせるつくしの頬を両手で掴みあげ、動揺にか揺れ動く彼女の瞳をジッと見据え、この目から、手から、触れ合う素肌から―――自分のすべてから、彼女を乞い求める自分の熱い想いが伝わればいいと掻き口説く。
 「愛してる」
 「………っ」
 「何があったとしても、……たとえお前が望んだとしても、俺は絶対にお前だけは手放せねぇ」

 戸惑って困ってはいても、彼女の顔に浮かんだ表情に恐怖がないことに安堵して、彼女の頬を離して、そっと抱きしめる。
 けっしてもう彼女を壊してしまわないように、……それでも逃がしてしまわないように。
 「お前だって、もうよくわかってんだろ?俺がお前にベタ惚れで、すげぇ執念深いヤツだって」
 「………司」
 「俺はしつこいからな。お前が逃げるなら追いかける。地獄だろうが、どこだろうがっ、追いかけてつかまえてやるから……だから、もう諦めろ」
 何度でも、何回でも。
 ……お前の心に俺が刻み込まれるように。
 「愛してる」の言葉で、彼女を呪縛する。




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