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「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う④

愛してる、そばにいて1005

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 「司ってイジメっ子よね」
 「そうか?」
 「絶対!そうだよ」
 さすがにもう怒ってはいなそうだったが、それでもいくぶんか先ほどのやり取りを引きずっているのか、どうにもつくしはイジケ気味だ。
 イジメたお詫びに、だいぶ巧みになったとはいえ、解体しづらい魚介類を食べやすいように切り分けてやり、つくしへと戻してやる。
 「うわ、さすが。私がやったら、いまだにこうはいかないんだよね」
 小さくため息をつくつくしに、司も今度はからかうのではなく、表情を改めて真摯にアドバイスする。
 「物心ついた時からマナーだなんだと叩き込まれて、こういうのがずっと日常だった人間と比べてもしょうがねぇだろ?年季が違うんだ」
 「それは……そうなの、かな」
 「ああ。むしろ、3年や4年でここまでカタチにできてるお前の方が、よっぽどすげぇよ」
 司は基本ウソがつけない。
 いや、つけなわけではなかったが、ウソは保身や利得の為にこそ必要なものだから、以前までの司には不必要なものだったのだ。
 それが……。
 「司?」
 「あぁ、いや。…だから、一々、ツマンネーことで落ち込むなってこと」
 「……うん」
 「まあ、さっきは俺のせいで、お前を落ち込ませたんだけどな」
 むうっと再び唇を尖らせかけ、それでも仕方なさそうにつくしが笑った。
 「ホントだよ。……もうイジメないでよね?」
 「お前をイジるの、すげぇ好きなんだけど」
 半分本気の冗談に、つくしも半分だけの本気で怒って手を振りかぶる。
 「……殴るよ?」
 「こえぇ~、こえぇ」
 棒読みでわざとらしく怖がる司に、つくしが顔を顰め―――だが、次の瞬間にはクスクスと笑い出す。
 「もうっ、ホント、しょうがないんだから」
 縮まってゆく距離に、期待をするのは愚かなことだろうか。
 司が貝殻から外してやった牡蠣を口に含み、つくしがニッコリと笑う。
 「美味い?」
 「ん~~っ!すっごく美味しい!!」
 どれだけ所作が美しくなっても、つくしが美味そうに食べる姿だけは変わらない。
 いや、変わった。
 司に虐げられ、食べることさえしなくなったつくしの、これが本当の姿なのだろう。
 司が知らなかった彼女の一面。
 この4年間でたくさんのことを知った。
 かつて、彼女がどんな少女なのか、本当の彼女を知らない自分に愕然とした過去を払拭するように。
 それでも、まだ、彼女が足りない。
 もっともっと彼女を知りたい。
 髪の毛一筋、爪の先まで自分のものなのだと実感できるように、彼女のすべてが知りたかった。
 そして、自分を知ってもらいたい。
 ―――知りたいと思って欲しい。
 彼女に出会う前の自分には、これといって強烈に何かを願うということがなかった。
 願わずとも、望まずとも、なんでも手に入ったから。
 欲しいものも、欲しくないものも、彼が望めば簡単にその手に自ら落ちてきた。
 時には腐り落ちた果肉のように、腐臭を放って。
 「俺はお前が、食ってんの見てるのが好き」
 「へっ?!」
 素っ頓狂な声で、ポカンとしているつくしに小さく笑んで、ワインのグラスに手を伸ばす。
 芳醇な味わい。
 美味い食事に見合う素晴らしい味わい。
 けれど、彼女と一緒でなければ、これほどこれらのものが美味いと感じられただろうか?
 「どうした?ワイン、もっと飲めよ?」
 つくしに合わせて、チョイスした軽めのワイン。
 けれど、最初に美味しいと感動して、一口口にしただけで、つくしはミネラルウォーターのみを先ほどから飲んでいた。
 「うん…あ、でも」
 「美味いって言ってたろ?」
 「美味しかったけどさ?」
 ちょくちょく出入りしては、食べ終わった皿を下げ、あらたな皿を配膳してゆく給仕係をチラチラと窺って、つくしが困ったような顔をする。
 「……司はもう21才だけど、私、まだ20才じゃない?」
 それで司も、つくしが何を気にして、酒を飲もうとしないのかわかった。
 ニューヨークでは、21才以下の若者が飲酒することを法律で禁じている。
 が、
 「誰もお前が21才かどうかなんてわからねぇよ」
 「そうかなぁ?」
 ただでさえ童顔なつくしだ。
 ここアメリカでは、逆に小学生に間違われたことさえある。
 疑わしげなつくしの心配を、司が一笑する。
 「それにたとえそうじゃないってわかったって、誰も気にしたり、咎めたりなんかしねぇって」
 「えぇ~」
 「お前は気にしすぎ。さすがにおおっぴらに店側が、知ってて酒出すこともねぇだろうけど、日本だって、未成年が酒飲んだりしてるだろ?」
 「あ~、そうだね。……うん、高校生も居酒屋でお酒飲んだりすることもあるか。経験からわかるのか、一般常識としてなのか記憶にないからたぶんだけど」
 それを言ったら、司など平気で中高生の頃から飲酒している。
 「まあ、俺が勧めても俺の晩酌にめったに付き合わねぇから、元々酒が好きってわけじゃねぇかのかもしれねぇけど」
 「うーん」
 あるいは生真面目さゆえにか、つくしが付き合い以外にこれまでほとんど飲酒することはなかった。
 「美味しいとは思うから、嫌いじゃないんだと思うけど。……でも、たぶん、私は司と違ってあんまり強くないんだと思う」
 「ふぅん?でも、これ、大した度もねぇぜ?」
 自分だけ度数の高いシェリーかシャンパンを飲んでも良かったが、せっかくだからとつくしに合わせて同じものを飲んでいたから、司にしてみれば水のようなものだ。
 「や……飲みすぎて、酔っ払っちゃったら困るし」
 無理に飲ませるつもりではないが、それでもなぜか自分を窺うようにしながら悩んでいるつくしに、内心で首を傾げる。
 「別にお前酒乱じゃねぇだろ?……寝ちまうだけなら、俺が車まで抱いて連れていってやるし、なんなら上に部屋とってこのままここに泊まってもいいぜ?」
 「え~、お屋敷に帰らないの?」
 あらためて聞き返されると、当初はそんなつもりではなかったが、それも悪くないような気がしてくる。
 …屋敷だとなんだかんだ使用人もいるし、顔を合わせることはなくてもババアがいるかもしれねぇっていう緊張感とかがあるだろうしな。
 つくしにとって、どれだけの月日を過ごそうとも、いまだ道明寺邸が落ち着かない場所で、……もしかしたら記憶を失う以前のように、彼女にとっては豪奢な獄舎であることには変わりないのかもしれなかった。
 それくらいなら、たまの機会くらいできるだけ息抜きをさせてやりたい。
 「…でも、話したいこともあるし」
 「あ?」
 思案に耽ってつくしの言葉を聞き逃してしまったようだ。
 「なんだって?」
 「んんん」
 「…おい?」
 「あ~、うーん」
 隠し事というほどではないようだが、何をいいあぐねているのか、なぜか酒もほとんど飲んでいないというのにみるみる赤くなりだして、司を見てはキョドリ出してしまった。
 「おい、どうし………」
 『…………さいっ!お客様っ』
 個室のドアの向こう、ホールで何事かあったのか、先ほど個室までの案内をしたレストランの支配人らしい人物の焦ったような声が、ついで複数の人間が争うようなざわめきと荒々しい足音。
 「…………?」
 「司?」
 司がドア口の方へと視線を流したのに、つくしも不審げに彼の視線を追って視線を向ける。
 『専務補佐の許可なくお通しすることはできませんっ』
 『司の護衛ごときに咎められる筋合いはないわっ!いいからどかんかっ!私はアレの大伯父だぞっ!!』
 司自身のSPたちと何者かーーーおそらく本人が言うように大伯父が小競り合いあう声が聞こえてすぐ、ノックをも省いて、いきなり外側からドアが乱暴に開けられた。 
 バアァ―――ンッ!!




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