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「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う④

愛してる、そばにいて1004

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 「テーブルが邪魔で、抱きつけねぇっ。キスもできねぇじゃねぇか!」
 「ええっ!?」
 司のセリフにつくしがギョッと仰け反る。
 今彼女をこの腕の中に抱きしめて、キスを贈りたい。
 気持ちのままに立ち上がって、自分の言葉のとおりに行動しようとしている司に気がついたらしいつくしが、慌てて彼を思い留まらせようと押し留め出す。
 「つ、司、お、落ち着いて!いくらここが個室だって言ったって、公共の場だよっ!」
 「この嬉しさを、全身でお前に伝えたいんだよ!」 
 「わ、わかったから。司の喜んでくれる気持ちはもう~本当にわかったから!!」
 司は有言実行の男だ。
 ここで思いとどまらせなければ、人前でも構わずやりたいようにやることを十二分にわかっているからだろう。
 つくしが焦って裏返った声で、半ば絶叫する。
 「ドウドウドウ」
 「……おい、だから俺は馬じゃねぇって」
 いつだがの会話を繰り返す。
 「はははは…。でもまあ、ほら、給仕さんもなにごとかとびっくりしてるじゃない?」
 前菜の皿を手に入ってきたギャルソンが、怪訝に立ち止まって部屋に入りあぐねているのを横目で見やり、つくしが仰け反ったまま引き攣り笑う。
 それでも彼女の顔が、本気で彼を嫌がったり怖がっているわけではないのは司にもわかる。
 あれほど強固にこんがらがって、まるで交わるこることができなかった互いの感情が、簡単に理解し得た。
 司が喜んでいることを、嬉しいと感じてくれている彼女。
 そして、きっと彼女もまた、今の―――この喜びや気持ちを感じてくれている。
 顔を真っ赤にしてビクつきつつも、それでも照れ臭そうに笑ってくれる彼女がこの上なく可愛くて……愛しい。
 彼女に恋してることには、気がついていた。
 あの凶行の日にはもう。
 けれど、自分には‘愛しい’という感情がなかった―――いや、求めるばかりで‘愛する’ということを知らなかったから失敗した。
 つまらないプライドを捨て、ただ彼女に乞えば良かっただけなのに。
 彼女を壊してしまうくらいなら、何度となく自分が傷ついても、ただ愛しさを伝え続けて愛を乞うべきだったのだ。
 愛されたかったのなら、愛するべきだったのだといまさらながらに悟って。
 …本当にごめんな。
 もはやけっして口にすることができない言葉だったけれど、あの日の―――記憶を失う前までの彼女へと己が犯してしまって彼女への非道と罪を心の内で懺悔し謝罪する。
 愛してる、の言葉とともに。




*****




 つくしとのディナーはこの上なく楽しく、心地よいものだった。
 いつも以上に。
 今日の彼女は、ことの他可愛く、多少はいつものように彼に対する気後れや遠慮を見せることもあったが、ほとんど気兼ねなく彼女も彼との時間を楽しんでくれているように感じられた。
 …4年だ。
 いつまで経っても自分に馴染んでくれないと悲観することもできたは、司はそうはしない。
 忌み嫌われ、憎まれて………一緒にいるくらいなら死ぬ方がマシだとまで疎まれていた最悪の時に比べれば、遥かにマシだ。
 …いや、最高だな。
 一度は手放さなければならないと覚悟を決めた彼女と、今もこうして……いや、4年前には予想もしなかった間柄でこうして笑いあえている現在に、司でさえ信じられない思いがする時さえある。
 …夢見てぇだって?乙女かよ。
 我ながら、何を女々しいことを言ってるのかと鼻で笑ってしまう。
 「なに?どうしたの?」
 「あ?」
 「今、司、笑ったでしょ?思い出し笑い?」
 楽しそうに話していたつくしに、キョトンとされてしまい、咄嗟に言葉に詰まる。
 が、
 「あぁ~、………すげぇ綺麗に食ってんからさ?」
 「え?」
 それこそいったい何を言い出すのかという顔で、つくしが怪訝に首を傾げる。
 さっきまで考えていたことを誤魔化すための思いつきに過ぎなかったが、それでも完璧なテーブルマナーで、食べ物を口に運ぶ彼女の姿に感心してもいたから、ウソとは言えない。 
 「いや、これが3年前まで、食事のたびに青色吐息で、四苦八苦して食ってた女かと覆うくらい見事なナイフ裁きになってんなって、感心してた。お前も成長したよな」
 「……ああ」
 つくしもやっと合点が言ったのだろう。
 困ったような曖昧な笑みにはどこか苦いものが含まれていた。
 司はそれが気に入らなくて、彼女には屈託のない笑みだけを浮かべて欲しくて、わざと冗談交じりに彼女をからかう。
 「ほれ、前の政権の時の外相のおっさんちに、私的な晩餐会だとか言ってディナーに招かれた時もよ」
 「ああっ」
 「肉切ってん時に、お前、派手に音立てちまって、注目浴びたのに焦って……ぶっ」
 そんなつもりじゃなかったのに、自分で言い出しておいて、その時のことを思い出して、噴き出してしまう。
 「ちょっと!司っ」
 「に、肉片…す、すっ飛ばしちまったこと、あっただろ。くくくく」
 司にしては珍しいことだが、笑いの発作に襲われて、話が途切れとぎれになってしまった。
 「ひっどぉい!またその話?もう何度その話してるのっ!?忘れてっていつも言ってるのに」
 「くくくく。……だってよ、あれは傑作だった。おっさんのカミさんは、お前がお気に入りだったから、顔を引き攣らせつつも別に怒っちゃいなかったが、お前の方はすっかりテンパっちまって、どう見てもまるわかりだっつーのに、お前、せっせと一生懸命テーブルの奥に落としちまった肉を突っ込んでのが笑えて、笑えて、俺は、マジで笑うのを堪えるのに苦労したんだぜ?」
 自分でもしつこいと思う。
 ―――けっして、以前のようにつくしを嘲るつもりではない。
 けれど、司にからかわれて、顔を赤らめ子供みたいに頬を膨らめ怒るつくしが可愛くて、……以前のように、とまではいかないが、普段遠慮がちなつくしが、この時ばかりは彼に食ってかかるのが嬉しくて、何度となく彼女に怒られてもやめることができないのは、それこそ自分がガキ臭いからこそだと、今でも自分でも自覚があった。
 …好きな子イジメなんて、どんだけガキなんだよって話だよな。
 あるいは、女に怒られたいだなんてマゾなのかもしれない。
 …ありえねぇ。
 そんなことまで思う自分がまたおかしい。
 「……もう、どうしてイヤだっていうのに、またその話するかな。そんなに私を笑い者にして、司は面白い?」
 唇を尖らせていたつくしが、悲しげに目を潤ませ視線を下げてしまう。
 …さすがにやりすぎか。
 つくしを本気で傷つけてしまう前に、司もさすがにそれ以上はからかい続けることをやめ、笑いを収めた。
 「笑い者にしてんじゃねぇよ。……そうやってお前がプンプン怒って、コロコロ表情を変えるのがすげぇ面白くて、可愛いからさ。それ見たさについ怒らせちまうだけ」
 目をパチクリとさせ、半信半疑のような何とも言えない顔で司の顔を見返すつくしへとニヤリと笑って、彼女の小さな手を引き寄せ、その甲にチュッとキスを落とす。
 それでつくしも我に返ったらしい。
 「このイジメっ子!」
 「ぶ―――ッ」
 今度こそ、司は超ご機嫌にゲラゲラと大笑いした。
 



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NoTitle

こ茶子さん、こんばんは♪
>ただ愛しさを伝え続けて愛を乞うべきだったのだ。
何より現在の司に、この気持ちを思い出して つくしと対してほしいです。

こ茶子ワールド大好き💕

こ茶子さんこんばんわ!初めてメールします。
私は高校生の孫がいるばーばです。
花より男子が大好き💕で2次で皆さんが更新してくれる作品も
毎日読んでます。
お休みしているサイトさんも多いのが残念てさすが、
その中でも大好きなこ茶子さんの作品は、ワクワク、ハラハラしながら楽しみに拝見してます。
愛してるそはにいては、戒君がすごく気になっます。
ツクシは全部記憶が戻り自分が、既に司を心から愛して許した事を
早く思い出して欲しいですねー
いつも読み逃げでした。何年もお世話になっていますのに、お礼とお詫びを申し上げます。ありがとうごさいます。
これからもこ茶子さんの作品読んでいきたいなー
文章力の無い私か言うのはなんですか、二次の中では
最上級作品です。頑張ってください!

残念です

いつも楽しみによませてもらっています。
7月23日の更新以降、新しい作品がUPされないようです。
体調のせいですか?

初めてコメントさせていただきますが、こちらのサイトのファンになってからは実はとっても長いです。いつも読み逃げだけして自分だけ楽しんでいました。本当に二次の枠を超えてるというかスケールの広い、緻密な計算の上で、各々の感情の動きを繊細に表現されるこ茶子さんの作品が大好きです。ひどい司のはずなのにいま一人でいる司が心配で、戒くんも救って欲しいし、なによりつくしにも早く気づいて認めてほしいと思いながら毎日毎日楽しみにしています。この暑いなか、体調を崩されてるのであればゆっくり休んでください。
もし、心無い輩の心無い行動が原因でしたら、、、。
熱心なファンは勿論、私のような今まで読み逃げだけしながら実は隠れ大ファンが沢山いることを忘れないでください。今までどれだけ貴女の作品で心を動かされたことか。ありがとうございます。またいつか司とつくし戒くんの幸せなストーリーを読める時をゆっくりお待ちしています。ゆっくり心も身体も休んでください。あえて公開コメントにします。

お茶子さま

お茶子さま***初めてコメントさせていただきます。23日から投稿がなくなにかトラブル発生なのかとても心配しています。。。

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