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「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う④

愛してる、そばにいて1002

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 なんだかんだで時間が過ぎてしまい、結局どこかのおしゃれなカフェでお茶をすることもなく、今日のデートは今来ている衣類のショッピングとショールームでの車の鑑賞、そして、それに伴うディーラーの説明に、司が気に入った車の試乗と購入の手続きで、一日の大半が終わってしまっていた。
 …まあ、元々午後からだったし。
 常日頃から仕事や学習に追われている司のこと。
 オフだとは言え、丸一日というわけではなかったし、それこそ午後にも多少食い込んでしまってのことだったから、つくしもある程度弁えていて、ただ司と気晴らしに出かけられたことだけで満足していた。
 しかし、
 「はぁ~、ホント、マジ悪かった」
 なぜか司に思いっきり落ち込まれてしまっている。
 車の展示場から出て、薄闇が下りだした夕闇の空を見上げ顔を顰め、待ち受けていたリムジンに乗り込んだ途端、長い足に両肘をついてうな垂れ、いきなりの盛大な溜息だ。
 「なんで謝るの?」
 「……今日は、お前の好きなところに連れて行ってやるって言ってたろ?」
 「うん?」
 「なのに、結局、服買って、車見て……それでもう夕方になっちまったじゃねぇか」
 「あぁ~」
 たしかに司の言うとおりだったけれど、
 「司の方こそ、日頃から行きたいところがあっても私用で出かけたりできないんだから、たまの休みくらい好きなことして?」
 「カフェにも入れなかったし」
 司の落ち込みが深い。
 不謹慎な話だが、まるで叱られた子供が項垂れているような情けない顔になんだか無性に笑いたくなってしまって、つくしは困った。
 …可愛いとか言ったら、きっと怒られちゃうよね。
 こんなに大きくて偉そうな男なのに、彼に対して何度となく思った感慨。
 プライドが高い、司には言うべきことではないだろうが、そんな司が愛しいと思う、どこか擽ったい気持ちと。
 しかし、そんなことはおくびにも出すことなく、つくしはうーんとクビを捻った。
 「でもね、私は昨日も今朝も司が買ってきてくれたお土産のケーキ食べちゃったし、さっきの展示場でも凄い豪華なアフターヌーンティをご馳走になったから、それで十分嬉しかったから大満足なの。……えっと、司の方こそあんまりのんびりお茶とかできなかったから、もしかしてどこかに入りたかった?」
 サンドイッチくらいはつまんでいたが、ほとんどディーラーとの交渉で、ロクに飲み物も飲んでいなかったはずだ。
 「いや、俺はいいんだけどよ。……あんまりショップでの買い物も楽しめてなかったみたいだし、ホントはチェルシーマーケットとかに行ってみたかったんじゃねぇの?」
 妙に具体的な場所の名称に内心で首を傾げた。
 それにしても、司は本当につくしのことをよく見ている。
 自分では彼女の為にあれこれと買い揃えてくれようとする司の意を汲んで、彼の為に楽しんでいるフリをちゃんとしていたつもりなのだが、いかにも高級ブランドショップ的な販売員にベッタリと張り付かれ、あれこれ着せ替え人形よろしく着替えさせれお追従を織り交ぜながら売り込まれるショッピングに正直馴染めなかったのだ。
 …お屋敷に行商の人を呼んで買い物をするのも似たようなものだけど。
 「なんなら今から行くか?」
 「ん~、いいよ。もうすぐお夕飯の時間ただもん。どこかのホテルのレストランを予約してるんだよね?」
 チェルシーマーケットは、元々は製菓会社のクッキー工場だった建物をリノベートして作られた巨大マーケットで、ベーカリーからワインショップ、スーパーマーケット、本屋までもあり、ニューヨーク中の有名店が集まっていると言っても過言ではないスポットだ。
 どの店も代表的な店ばかりで、室内型マーケットの元祖とも言える。
 残念ながら4年近くもの間、ニューヨークに在住しているつくしだったが、いまだ訪れたことがなかったから、たしかに司の言うとおりニューヨークを離れる前に一度くらいは行ってみたいと思う。
 …あ、そっか。さっきの雑誌。
 どうやら司は、先ほど彼がディーラーとの交渉を済ませるまでの間、時間潰しに彼女が読んでいた雑誌のページを引き合いに出したらしいと、つくしも気がついた。
 …ホント、よく見ててくれる。
 他人のことなどまるで興味がなさそうな男が、常に彼女のことだけに関しては事細やかな気遣いを示してくれる。
 今もこうやって…、 
 「なんなら、あっちでお前の気に入った店で夕飯にしてもいいし」
 さすがにつくしも苦笑して、首を横に振った。
 「本当にいいって。………ただでさえ、警備の人が顔を顰めちゃうようなこともさせちゃってると思うのに、今の時間帯からだなんてきっと凄い混んでるもの」
 ソーホーのような高級ティックが立ち並ぶ地域ならばともかくとして、人ごみは司の身の危険を招く可能性を高くする。
 ビジネスの世界に飛び込んでからの司は、本人も積極的に自らを広告塔としてメディアにも露出しだしていた。
 護衛もついていることだし、有名なハリウッドスターたちもお忍びで出歩く姿が目撃されるなど、治安のそれほど極端に悪くないニューヨークだが、それでも彼らもまたボディガードたちを密かに従えている。
 実際に、数多くのセレブたちが誘拐やその他種々の犯罪のターゲットになった実例もあり、元特殊部隊のボディガードを雇っている話などもよく聞く話だった※。
 また、場所によってはけっして安全だとは言えない土地柄でもあり、司誘拐事件だけではなく、会社への逆恨みなどさまざまな犯罪などにも巻き込まれる可能性は否めない立場なのだ。
 「それより、いつか今日買った車の助手席に乗せて、ドライブに連れて行ってくれるんでしょ?」
 「……ああ」
 つくしの言葉にわずかに目を瞬かせ、だが、すぐに嬉しそうな笑みを浮かべる。
 …この顔を見られるだけでいいよ。
 いつも突っ走って疲労困憊の中、彼女に気遣いをくれる彼に、少しの恩返しもできていない。
 だったらせめて、彼の安らぎになってあげたい。
 「お前が好きなところへ、好きなだけ連れてってやる」
 車を購入するたびにそう言いつつ、タンスの肥やしならぬ車庫の肥やしで、つくしを助手席に乗せるどころか、司が自分で車を運転すること自体ほとんどなかったけれど。
 それでもいつでも彼が本気でそう思ってることは、つくしにもわかっている。
 「あれ?…でもさ、司、2年前に免許をとって以来、あんまり運転してないんだよね?」
 「あんまり…つーか、一度もねぇか」
 「ええっ?!」
 道明寺家には当然というのもなんだが、司の保有している車以外にも何台もあれば、運転手も一人どころではなく何人も雇っている。
 だから趣味以外に、主人一家が自分で運転する必要性などまったくないのだ。
 何食わぬ顔で平然と肯定する司が空恐ろしい。
 「暇ねぇし」
 「そ、それはそうだろうけど、ってことは、免許の試験を受けた日だけしか運転したことないってことぉっ?」
 …たしか、さっき公道で走ったよね?
 アメリカでは日本と違い免許を取るのは至って簡易で、州によっても異なるが概ね筆記試験に合格し、規定時間練習後、実技試験に合格すれば一日で免許を取得するのも簡単なのだ。
 試乗運転の折、普通ならディーラーが付き添うのだろうが、司のうぜぇの一言で、単独運転だったことを思い起こす。 
 …も、もしかして、私たちとっても怖いことしてた?
 顔を青ざめさせたつくしの額を、司が苦笑してツンと指先で突っつく。
 「おいこら、なに失礼なこと考えてんだよ?」
 「ええ?!」
 「どうせ石橋叩いて渡るタイプのお前のことだから、俺が運転した車になんか乗ってヤバかったとか思ってんだろ?」
 読まれてしまっている。
 てっきりまたも癖である思っていることを口に出してしまっていたのかと思ったけれど、たとえ口に出していなくてもよほど彼女はわかりやすいらしく、こうして思っていることを読まれてしまうことも珍しくない。
 …そんなに単純なつもりないんだけどな。
 内心で溜息をつきつつ、へへへと苦笑い。
 「まあ、たしかにここ数年はご無沙汰してっけど、心配すんな。車なんて、中防の時から乗り回してっから上手いもんだぜ。こういうのは体がけっこう憶えてるもんだ」
 「そ、そうか、慣れてるんだね。よかった、ハハハハ」
 思わず安堵しかけて、…………絶叫した。
 「よくなぁい!」 




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※ハリウッド俳優のラッセル・クロウやマドンナ、マイケル・ダグラス、フランク・シナトラなど。スピルバーグやサッカーのベッカム夫人のビクトリア・・ベッカムなども未遂ながら、危うくということがあったらしい。ベッカムやマイケル・ダグラスなど、ボディガードで検索するとけっこう情報が出ていたりします^^

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