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「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う④

愛してる、そばにいて1001

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 …やっぱり司もまだ20才そこそこの青年なんだよね。
 「なに?」
 ついマジマジと見入ってしまっていたらしく、嬉しそうにハンドルを握っている司が彼女の視線に気が付いて、チラリと振り返る。
 「ううん。…えっと、どう?いい感じ?」
 車は走ればいい、彼の言うランボルギーニだのフェラーリだのの区別がつかない手合いのつくしには、どう話題を振ればいいのか思い当たらず、曖昧ながらもとりあえず無難だと思われる質問をひねり出した。
 「すげぇいい。乗り心地でいうなら、断然日本車の方がいいけどよ、スポーツカーはやっぱ運動性能が一番の焦点なんだよな」
 「へぇ?」
 「前と次でそう極端に性能があがることもそうそうねぇんだよ。その点、こいつは前のバージョンより、ずいぶん加速が鋭く仕上げられてて、めちゃ気持ちいいぜ。サーキット行くともっと違いがわかるんだろうが、この車の路面との密着感、操作性もかなりあがってるみたいだぜ?」
 「そうなんだぁ」
 相槌を打ちはしているが、ハッキリ言ってつくしにはチンプンカンプンな話だ。
 それでも珍しくご機嫌で饒舌に話す司の様子から、つくしにも彼の嬉しさ、楽しさが十分に伝わってくる。
 展示場からグルリと周辺を回って、一通りのチェックができたらしい。
 車が戻る頃合に、他のブランドショップと同様、ほとんど店の人間がそうでなのではないかという出迎えを受ける。
 「ちょっとディーラーと話すけど、横で聞いててもお前退屈だろ?そっちに飲み物と菓子用意してあるらしいから、お前はそこでお茶でもしてれば?」
 たしかにつくしがその場にいてもどうしようもないことなので、司に勧められたとおり、彼がディーラーと話してる間、用意されたお茶を飲みながら雑誌を呼んで時間を潰すことにする。
 「うわぁ、美味しそう」
 本場とは違うが、どこぞの高級レストランやカフェ顔負けのアフターヌーンティというやつで、三段重ねのスタンドにのったお菓子やサンドイッチに目を輝かせる。
 もちろん、いまさらつくしにも珍しいものではない。
 けれど、場所変わりところ変われば、というヤツで、店々で出されるお茶にしてもお菓子にしても、一つとして同じものはなく、それぞれに美味しさも違うものだ。
 どこからかデリバリーで持ってこさせたのだろうが、さすがに道明寺邸の超一流パティシエが作ったものや、五つ星レストランのデザートとは比べるべくないが、久しぶりの外出に疲れた体を甘いものが癒してくれる。
 …ていうか。
 昨夜…もはや今日のことだが…に引き続き今朝も、司の土産のケーキをパクついたことを思い出す。
 「うは、やばやば」
 つい調子に乗って食べてしまったが、ここ最近体重も増え出してダイエットの必要性も感じ始めていたところだ。
 …司はもっと太れとか言うけど。
 生まれながらに恵まれたスタイルなど持ち合わせていないのだ。
 ただでさえ貧弱な体型に、この上、贅肉でもついた日には目も当てられない。
 …お義姉さんとか、凄い食べても全然太らないのよね。
 女神もかくやという司の姉のを思い出し、小さく溜息をつく。
 世の中というのは本当に不公平なもので、片や美貌ばかりか抜群のスタイルまで有し、何もかもに恵まれた女性もいるかと思えば、自分のように取り柄を探すことの方は少ない人間もいる。
 …別に卑下してるつもりはないんだけど。
 少なくても、ニューヨークに連れてこられたばかりの頃よりは多少なりとも進歩しているつもりだ。
 それでも身近に、二物どころか、三物も四物も、数え切れないほどに美質を天から与えられた人間を見知っているとついそんなことを考えてしまってナーバスになることもある。
 つくしはサンドイッチを食べながら、つらつらとそんなことを考え、膝の上の雑誌をパラパラと繰ってゆく。
 「お、いいもん食ってんな?」
 「あ、うん。司も食べる?」
 「おう」
 珍しく食べ物に興味を示し、歩み寄ってきた司がつくしの隣の席に腰掛け、彼女の手のサンドイッチをくれと言外に催促してくるのに、笑って手渡してやる。
 「どうするの?さっきの車、買う?」
 「……どうすっか」
 試乗している時の司の言動や様子からして、車を気に入ったらしいことはあきらかだ。
 それなのに―――。
 「気に入ったんだよね?買わないの?」
 司が即決しないのはこれまた珍しい。
 いつもは、とりあえずどうしても欲しいものではなくても、少しでも気に入れば購入してしまうのが常なのだ。
 それだけの資産がある。
 比して彼には時間がない。
 だから、欲しいものは欲しい時に、値段の高低や価値に関わらず手に入れる。
 たとえそれが車だろうと、船だろうとーーーおそらく人であろうと。
 司が欲しいものを我慢することはなかったし、実際に彼が我慢する必要などどんな理由からもないのだ。
 けれど、逆に、どうする?というように、つくしの顔を窺っている司の表情に、ふと彼女も気がついた。
 …あれ?まさか私の意見を気にしてる?
 もしかして、彼なりのつくしへの配慮なのだろうか。
 以前、やはり同じように気に入ったからと言って、とんでもない金額の高級車を思いつきで何台も購入する彼に、つくしが難色を見せたことがある。
 その時にしても、
 『……え、こんなに何台も買っちゃうの?』
とは言ってしまったものの、反対までしたつもりではなかった。
 そもそもいくら夫婦だとはいえ、司の財布のことにまで口出しをする権利が自分にあるとはつくしは思っていない。
 元々司はそういう資産家の御曹司の生まれなのだし、ただ親の脛を齧っているというわけではなく、それらの物を買うだけの資金を自分自身で稼いでいる男なのだ。
 ただ彼に養われているだけの自分がとやかく言うようなことではないだろう。
 「反対しねぇの?」
 「え、しないよ?」
 「歓迎してるって顔でもねぇけど?」
 「まあ……乗る暇もないのに、とは思うけどね」
 それも一台ではなく、まるでコレクションのように司は何台もの高級車を保有しているのだ。
 その上またさらに。
 「でも、司はせっかく報酬を得ても普段めったに自分の為に使う暇もないし、そういうふうに欲しい物を得るためにこそ、仕事って頑張れるものだよね?だから、いいんじゃないかな?」
 その他にも社員とその家族の生活が、とか、世界経済がとかいう建前もあるが、人間個人の目的としてはそんなものだろう。
 司が手に入れたがって購入するものは、彼の責任や負担からすれば、けっして彼にとって身分不相応なものではなかった。
 司にとって、おそらくそうしたランボルギーニだ、フェラーリだ、なんちゃらという高級車を買うのも、一般庶民がちょっとした時計やアクセサリーを買うのと似たようなものなのだ。
 …経済の活性化?
 持てるものが消費するのが、世の中の経済を円滑に推進させるための原動力だという経済学の教師の教えも脳裏に蘇る。
 「バカ。誰が車なんかを買うために仕事を頑張るかよ」
 「……え?」
 「俺が米搗きばったみたく這いずり回って、狸爺どもと渡り合って仕事してんのも、寝る暇も惜しんで勉強して地位を固めたいのも、全部お前の為だろ?」
 「…っ」
 「ついでに、新しい車が欲しいのも、お前を助手席に乗せてドライブしたいだけ」
 虚を突かれてポカンとして、……すぐに彼の言った意味を理解したつくしが赤面する。
 「ま、残念ながらニューヨークじゃほとんどそんな機会はなかったけどな。ヨーロッパに出れば、ババアどもの監視も緩んで締めつけも楽になっからさ。そしたら今よりは少しは時間もできるだろうし、あの車や今まで買った車ももっと有効活用して楽しもうぜ?」
 ニヤリと笑って司が片手を上げ、少し離れたところで控えて彼らを窺っている揉み手のディーラーを呼び寄せた。
 ‘Hey!(※おい)さっきの車、買うから屋敷に納車しておいて’




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