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「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う④

愛してる、そばにいて1000

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 「あんま天気良くねぇな」
 司の言葉に、彼の腕に手をかけて腕を組んでいたつくしも、空を見上げて首を傾げる。
 「そうだね。天気予報だと夜には晴れるって言ってたけど」
 くすんだ空はど陰鬱な影を地上に落とし、今にも雨が降り出しそうに見える。
 10月のニューヨークは一年のうちでも最も美しい月の一つで、外出するに最適なシーズンだ。
 朝夕は肌寒かったりもするが、日中は適度に暖かく、街中のどこに行くにも快適だ。
 それだけに一ヶ月を通して様々なビックイベントも開催され、セントラルパークをはじめとする多くの公園や街角で紅葉が楽しめる。
 雨が降ることもそれほど多くはないが、それでもにわか雨や一時的な通り雨が降ることがよくあるから、もしかしたらそうした雨に降られてしまうことがあるかもしれない。
 「……どうする?車を呼ぶ?」
 「もう疲れたか?」
 ソーホーの司御用達の高級ブランド店でショッピングを楽しみ、それぞれが互いの為に選んだ洋服を着て、腕を組んでニューヨークの街をおしゃべりしながら散歩するデート。 セレブでも一般庶民でもそう変わることのない恋人たちの一コマ。
 もちろん数メートル離れたところでは、SPたちが彼らを護衛しているが、まるで普通の恋人同士のようなこの貴重な時間がつくしは殊の他楽しかった。
 司は普段、散歩どころか5分の距離を歩くことも滅多にしない。
 それは彼個人の嗜好がどうというよりも、分刻みのスケジュールと、大財閥の御曹司という立場による保安上の理由からだ。
 本来なら、たとえSPたちを従えているにせよ、誘拐や襲撃の危険を侵すような行為はするべきではないことはつくしもわかっていることなのに。
 ギュッと司の腕をギュッと抱え込み、ジャケットの袖を掴み締める。 
 「なんだよ?」
 「もうちょっとだけ、……こうやって歩いてたらダメかな?」
 「もうちょっと…って、別にお前が疲れてないなら、お前の好きにしていいって言ったろ?好きなだけ俺を連れまわせよ」
 「はは…連れまわせって」
 つくしの性格上、とてもできないことだが、司の顔は大真面目でどうやら本気らしい。 司は本来、けっして他人の意思に従うような人間ではない。
 むしろ自由気まま、他人を従わせることこそ本分だろうに、彼はそうして常に彼女を慮り、つくしを甘やかしてくれる。
 「めったにこうやってお前に付き合ってやれることなんかねぇんだ。……ニューヨークに来て4年も近いつーのに、お前、ロクにこっちの見所なんて知らねぇだろ?」
 「そうでもないよ。ブロードウェイとか美術館とか、博物館なんかにはけっこう行かせてもらってるし」
 司がつくしに掴ませていない方の手で、彼女の頭をくしゃりと撫でる。
 「バカ、そんなのお前が好きで行ってんじゃねぇだろ。上流階級の情操教育だなんだのって、ババアが寄越した家庭教師の押し付けじゃねぇか。それか、ウチの事業関連の付き合いで、連れ回されてんだから」
 司が顔を顰める。
 「イヤイヤなわけじゃないよ」
 「否応無しって意味では同じことじゃねぇか」
 「……………」
 つくしも否定することはできない。
 それでもそうした教育を受けられることはありがたいことであるし、感謝しこそすれ司のように、ただ彼の両親を悪く思うことはつくしにはできなかった。
 …私が物知らずなことは本当のことだもん。
 意図がどこにあるのだろうと、お金をかけてまで教養を身につけさせてもらっているのだ。
 いまはいたらぬ嫁だけれど、少しでも彼らに認められるようになって和解したい。
 家族になりたいとそう思っている―――司の為に。
 黙り込んでしまったつくしの様子に、司もかえって自分の気遣いがせっかくのデートを台無しにしてしまいかねないと思ったらしい。
 あえてそれ以上、突き詰めることなく話題を変えてくれる。
 「それにしても、お前、さっきからショーウィンドーを見てるばっかで、全然買い物しねぇよな?店、入ろうって俺が言っても、見てるだけだって言って入りたがらねぇし。なんか気に入ったものとか、欲しいものとかねぇの?」
 「…ん~」
 つくしとしては、司とただこうして練り歩いて、お店や街並みや、通りかかる人々の様子を見て回るだけでも楽しい。
 目を引くものもあるし、気になる物もあったが、元々物に溢れた生活だ。
 そこに新たな何かを欲しいという欲望はあまり沸かなかった。
 …家具とかだって、凄い有名な職人さんが作ったものを、超一流のインテリア・デザイナーさんが配置してたりするんだもんね。
 そこへセンスの欠片もないファンシーグッズや、小物を置く勇気はつくしにはない。
 司からは好きにやりたいようにやればいいと言われているし、おそらくそうしてまったく差し支えないのだろうけれど。
 それ以上に、この界隈は高級ブランドブティックばかりが立ち並んでいて、何処の店にしても道明寺家に出入りしていたから、あらためて目新しくどれが欲しいという欲求が沸かない。
 そもそもが、インテリアどころか、身に付ける衣類やアクセサリーの類、すべてが身に着けきれないほどにすでに揃えられていて、あるものの中からいくらでも選ぶことができる環境なのだ。
 いまさら何が欲しいとあらたなものを要求する気持ちになれなかった。
 …私って、やっぱり元々庶民出身なんだよね。
 記憶になくても、生まれ育った環境というものが、自然に価値観として見についているのか。
 かといって、この最上級の物しか手にしない男を、自分に合わせさせ、チープな品々を販売するような店に連れて行けるはずもない。
 「司の方こそ、何か買いたいものとかないの?」
 「俺?」 
 愚問であることは、尋ねる前からわかってはいる。
 学生時代はこうして自分が出向いて買い物をすることもあったそうだが、今の司は時間がないこともあって、ショップの行商の方を自邸に呼び寄せて好きなものを購入する。
 あるいは、デザインそのものを自分の為にさせることも少なくない。
 「車」
 「は?」
 「お前と二人で乗るのに、小型のクルーザーなんかも欲しいけど、どのみちしばらくは海出るような時間も取れそうにねぇし。たしかランボルギーニのニューモデルが出てるはずなんだよな」
 「……………」
 クルーザー。
 道明寺家の広大な屋敷に住んでいて、いまさら驚くことでもないかもしれないが、こういう時にいまだに司の感覚とのギャップを感じてしまう。
 まるでちょっとした洋服やアクセサリーを買う感覚で、船や車を買う話をする。
 そして、実際見るだけではなく、気に入ったものがあればポンと買ってしまうのだろう。
 …ていうか、服とかアクセサリーも凄い金額なんだろうけど。
 つくしは買ってもらうばかりで、現金を持つ生活をしていなかったし、出入りの行商からの購入品やショップでの買い物はもちろんのこと、こうして誰かと出かけるおりの外食ですら、値段の類を見ない生活を送っていたから、自分が今身につけているものの価値さえも知らなかった。
 それでも、自分がいま享受している生活が、けっして一般庶民が味わえるような普通の生活ではないことは十二分に理解している。
 …シンデレラみたいな生活。
 司との結婚当時、巷に流布された自分への呼称が脳裏に蘇る。
 「ショールーム見に行っていいか?」
 「もちろん」




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