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「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う④

愛してる、そばにいて0994

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 「へぇ、弁護士さんなんだ。美人なだけじゃなく、賢い人なんだね」
 「そうだな」
 …本当に凄く綺麗な人。
 司の姉の椿も天女と見紛う美女だが、幼馴染みだという女性も椿に負けず劣らず、自分と同じ人間だということが信じられないくらいに美しい女性だった。
 年の頃はおそらく、司よりも2才、3才年上くらいか。
 女神然と美しい微笑みを浮かべた女性は、つくしの目にあまりに眩しく気後れしてしまう。
 けれど、
 …この人だけじゃない。
 司の周りは男女問わず、美しさや聡明さ、数々の美点を備え、誰の目にも一目で特別な存在だと際立つ人々が集い取り巻いている。
 いや、そもそもが司自身がまるで古の男神の如く美しく、人を自然に従わせるカリスマを備えた魅力的な青年だった。
 「つくし?」
 「あ…えっと、この人。この隣で写っている男の人、たしか司の親友だよね?こっちの人も」
 女神の両脇で、彼女に見劣りすることなく泰然と微笑んでいる二人の美丈夫を指差す。
 「ああ、総二郎とあきらな」

 「えっとこの人……瀬名川静さん?瀬名川さんみたいに、この二人もフランスにいま住んでるの?」
 「いや、たまたま別件の用であっちに二人が行った時に示し合わせて静に会ってきたらしい。あいつらも、俺ほどじゃねぇにしろ今はもう家業のビジネスに片足突っ込んでるし、そういう機会でもなきゃ、海外にいる幼馴染みに会うこともできねぇからな」
 「…そうだね」
 たしか総二郎とあきらは司と同年だと聞いているから、今は大学生だろうが、それでも彼らのジュニアとしての立場を思えば、いくら学生だといってもそう呑気にはしていられないのだろう。
 「司も会いたい?」
 「静に?」
 「あ…も、だけど、えっと総二郎さんやあきらさんにもかな?」
 「……………」
 何か妙なことでも言ってしまっただろうか?
 司が片眉をあげ、なぜか不審気な顔で見返してくるのを不思議に思う。
 「なに?」
 「…いや、お前がこいつらのこと総二郎さんとかあきらさんとか、言うからよ」
 「へ?」
 思わぬセリフに変な相槌で返してしまう。
 「だ、だって、苗字聞いてないし、……えっと、前に聞いたっけ?」
 「つーか、お前、日本でこいつらに直接会ったぜ?一応、自己紹介もさせたけど、……もしかして、まるっきり憶えてねぇの?」
 「…あ」
 実はつくしの記憶喪失はすべてを忘れてしまった時点のみだけの話ではなく、その直後―――ニューヨークに渡米してきた前後のあたりまで、時を得るごとに曖昧になってしまい今やほとんど憶えていなかった。
 その時の焦燥や孤独感、恐怖ばかりが印象に残っていて、それだけによけに司に依存してしまっている自覚が有る。
 …会いに来てくれたっていうお父さんやお母さんのことも全然覚えていないし。
 今は時々電話で連絡をくれるが、つくしからは連絡をしたことがなかった。 
 何を話したらいいのかわからない。
 ただ彼らと話すたびに感じる絶望感や寂寥が、ひどく心に堪えていつの間にか忌避してしまっていた。
 …何を言われてるってわけでもないのに。
 「記憶…少しも戻ってねぇんだっけか?」
 責められたわけではない。
 けれど、
 「えっと、……うん。実はサッパリ」
 「記憶の穴があるのって、昔のことだけじゃなく、今もあったりするか?」
 一時期、記憶喪失のこともあって精神科や心療内科の受診をしたこともあったが、つくしの忌避感や道明寺家的事情もあって、今はまったくそうした治療を行ってもいなかった。
 むしろ、司が積極的ではないということもある。
 いや、彼女の欝的な症状に関しては司も心配していたが、大元の原因でもあるだろう記憶喪失の治療に関して司は否定的だった。
 …直接ハッキリと言われたわけじゃないけど。
 これだけ長く傍にいれば、たとえ彼が口に出さなくてもわかることもある。
 司は彼女が記憶を取り戻すことを望んでいない。
 彼女にこれだけ愛情を注ぎ、大切に、まるで真綿に包むようにして優しくしてくれるくらいだから、おそらく記憶を取り戻すことによって彼女の精神状態が一時期のように再び不安定になることを恐れているのに違いなかった。
 …記憶喪失になんかなっちゃうくらいなんだもん。
 つくしの記憶喪失は怪我などによる器質的な問題ではなく、精神的なものが大きく影響していると医師から告げられていた。
 それだけショックなことがあったのだ。
 …事故っていうのも、もしかして。
 「おい?」
 「あ、ご、ごめんなさい。……今は、たぶん大丈夫。こっちのお屋敷に移って来てからのことは、ちゃんと憶えてるし、忘れてたりしてることはないと思う」
 「こっちの屋敷に移ってからって…、てことは、伯父貴んとこで強盗に襲われたこととかも、全然憶えてねぇってことか?」
 安心させるつもりが、逆に眉根を潜められてしまった。
 焦って、全部が全部ではないことを主張する。
 「あ、それは……ハッキリとじゃないけど、でも、なんとなくそういうことがあったってことは、ちゃんと憶えてるから」
 ショッキングな出来事だった。
 どうして自分が、右も左もわからない外国の地で、当時唯一の居場所であった屋敷―――司の下から遠く離れて、一人でそんな物騒な界隈を歩いていたのかはもう、わからなくなってしまっているけれど。
 …司が助けに来てくれなかったら。
 いまだにその時のことを思い出すと、体中に震えが起こるほどに恐ろしい出来事だった。
 しかし、それにしても、司の目がすっと細まって、その視線が彼女のなにかを観察しているかのように、とても冷たく感じるのはどうしてなのか。
 「司?」
 「日本にいた時のことは?」
 「……あ~」 
 記憶を探ってみるが、曖昧に誰かに会って、おそらく司だろう誰かに連れられてニューヨークに来たことは朧げに記憶にあったが、それが本当に自分の記憶なのか、あるいは後に司によって語られたことなのか自信がなかった。
 …家族、お父さんとお母さん、それに弟が会いに来てくれたって、前に司が言ってたよね?
 けれどそれは知識として残っているだけで、やはりその時のシチュエーションやどんな話をして、彼らがどんな人たちだったかといったことはまるで思い出すことができない。 改めて感じる、自分自身の欠落。
 スコンと空いた真っ黒な穴がいかに大きなものなのか思い知らされる瞬間。
 俯き加減に首を横に振るつくしの返事に、司が視線を彼女から反らし、……ポツリと呟きを零す。
 「……じゃあ、類のことは?」
 「え?」
 「花沢類。……俺のダチの一人」




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