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「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う④

愛してる、そばにいて0992

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 司の視線が居た堪れない。
 布団に顔の半ばを隠して、キョトキョトと視線を彷徨わせて落ち着かない彼女の顔をジッと見るだけで、なんのアクションもとろうとはしてくれない司が今何を考えているのかわからなった。
 …は、恥ずかしい。
 「抱いて…もいい、って、お前、自分の言ってることわかってんの?」
 真剣な顔をしたまま、ニコリとも笑ってくれない司の視線を受け止めきれずに視線を反らして、コクリと一つだけ頷く。
 …司は待つと言ってくれた。
 けれど、
 「だって……きょ、今日は、しょ、初…夜だよ…ね。あたし…たち、結婚式をしたんだ…もん」
 ウェディングドレスや祝福してくれる招待客もなく、……花嫁の誓いの言葉さえもないものであったけれど、それでも司の誓いが、彼の彼女への思いが、どんな華やかな結婚式よりも、彼女には厳粛で尊いものに思えたのだ。
 だから…。
 司が身体を起き上がらせ、彼女の身体を跨いで、両手で彼女の顔を挟み込むようにして覆い被さる。
 ブルリと震えてしまうのは、条件反射にすぎない。
 初夜だとは言っても、実際には何度となく彼に抱かれ、2度までも子を成したのだ。
 …怖いはずがない。
 それでも自分がゴクリと唾を飲み込む音が妙に耳につき、なぜかガチガチに体が強張ってしまう。
 …早く。
 この体がいつものように小刻みに震えだしてしまう前に、あるいは、本当はイヤなのだと叫び出してしまう前にと願う彼女の気持ちとは裏腹に―――、
 「……はっ」
 小さく息を吐き出し、まるで泣き笑いみたいな表情の司が、彼女の顔を囲い込んだまま、彼女の体へと体を重ねた。
 それでも、全部の体重をかけないようにしてくれている司の手が伸びてくれるのを、ギュッと目を瞑り覚悟を決め待ち構える。
 「……………」
 「……………」
 「……………」
 「…………?」
 なのに、つくしの肩先に顔を埋めた司は、緩く彼女を抱きしめるだけで、手を伸ばそうとしない。
 「つ…かさ?」
 眠ってしまったわけではないだろうに、怪訝に声をかけるつくしの問いかけにも司は沈黙したまま微動だにせず、ただ荒ぐ激情と息遣いを堪えて何度も忙しない呼気を繰り返している。
 先に痺れを切らしたのはつくしの方だった。
 「……シ、ないの?」
 …あたしのこと、抱かないの?
 「待つ…って、言った…ろ?」
 「っ」
 「お前、体ガチガチじゃねぇか」
 覚悟は決めていた。
 たとえ自分が望んだわけではないにしても、小さな子供ではあるまいに、司との結婚に抗わなかったのはつくしなのだ。
 …そうだよ。
 たとえそれが‘愛’からではなく、保身と打算―――依存からであっても、肉体を含めた契約である‘結婚’に同意したのはつくし自身。
 それならば、
 …肉体関係を拒むなんて、そんなの不自然なことなんだよね?
 まだ高校生にすぎない彼女にとって、‘結婚’というものへの認識はまだまだ浅く、どこか遠いものだった。
 それでももう1年近くの時を司と共に過ごし、彼との間に幾夜もの夜…温もりを交換した時があったのだ。
 イヤでもわかること。
 「でも…司、あたしのことが…だ、抱きたい、って言ってたよね?」
 「…ああ」
 「だったら、いいよ。その…たしかに、体が強張っちゃったりしてるし、正直…シたいってほどじゃなけど、えっとぉ、…司がシたいなら、いいかなって」
 司は彼女を助けてくれる人だから。
 …いつもあたしを守って優しくしてくれる。
 彼女にはもったいないほどのたくさんの愛情で、まるで真綿に包むようにして慈しんでくれる人。
 時々、それがひどく息苦しくて、申し訳なくて……どうして?の疑問に苛まれてしまう時もあるけれど、それでも。
 …司には感謝してるから。
 「……感謝されたいわけじゃねぇよ」
 ドキリと心臓が鳴った。
 「え?」
 顔を上げた司は、さっきまでの泣き笑いの表情ではなかったけれど、それでも浮かべた表情はけっして甘いものでも幸福なものでもなく、苦いものを含んだ苦笑だった。
 「今、口に出てた」
 「あぁ~」
 そんなつもりはなかったが、なぜかそう指摘されることがここのところ増えてる。
 それでも、司や、メアリなどごく少数の親しい人間に対してだけの稀な癖ではあるけれど。
 バツが悪い思いで片手で口元を抑えた彼女の髪をクシャリと撫で、司が彼女の上から完全に退いた。
 「で、でも、本当に……」
 「無理すんな」
 無理していない……とは言えない。
 「お前がどれだけ自分を誤魔化して覚悟を決めようと、体は正直じゃねぇか」
 「……………」
 「我慢させたいわけじゃない、……無理させたいわけじゃねぇんだ。これまでさんざん俺の欲求に突き合わせておいて、いまさらだだけどな」
 司がゴロリと再び仰向けにベッドへと横たわって、今度はさっきのように彼女の隣に寝るのではなく、そのまま片腕で彼女の身体を引き寄せ、彼女を半ば自分の胸へと抱きあげてしまう。
 「っ!」
 その拍子に足に触れた、司の昂ぶりに気がつき、つくしが息を飲んだ。
 司も彼女が気がついたことがわかったのだろう。
 「反応しちまってんのは仕方ねぇ。俺はお前に惚れてんだし、痩せ我慢にも抱きたくないなんてとてもじゃねぇけど言えねぇ」
 「それならどうして」
 「…お前に嫌われたくない」
 「え?」
 大きな手が何度も何度も彼女の髪を優しく梳いては撫で、彼の愛情を彼女の伝えてくれる。
 …温かい。
 彼女より幾分か高い体温の司の広い胸に抱きしめられていると、まるで世界中のどんなものからも守られているような気がした。
 こうして彼に抱きしめられ、優しさと愛情を分け与えられることを心地よいと思う。
 「だから、お前に嫌われねぇようにお前がヤなことはしない、我慢する。……まだ、俺のこと、嫌ってねぇよな?」
 いつも自信に満ち溢れて、傲慢とすら感じられる司が彼女にだけ見せる不安定な気弱さ。
 心配そうに問いかけてくる彼の頼りなげな顔に、つくしに胸に去来したものは、おそらくこれまでも何度となく生まれた―――愛しさというものだったのに違いない。
 それなのに、まだ、好きだと言ってあげられない。
 愛してると言えない自分がどこかにいるのはなぜなのだろう。
 …嫌いじゃない。
 たぶん‘好き’にはなっている。
 けれど、司が彼女に求めているのは、恩人な身近な人への『like』ではなく、『love』だろうことがわかっているから辛かった。
 …この人を好きになりたい。
 彼が望んでくれているように、愛してあげたいとすら思う。
 ましてや司は彼女が、いや、どんな女性であっても愛するに値する魅力的な男性なのだ。
 …記憶、そうだよ。記憶さえあれば。
 彼を愛して、彼に愛されていた記憶さえ取り戻せれば、きっとこの不可解な、まるで二人の自分がいるかのような奇妙な拒絶感を拭い去ることができるのではないか。
 「それとも、俺のこと嫌いか?」




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