FC2ブログ

「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う④

愛してる、そばにいて0991

 ←愛してる、そばにいて0990 →愛してる、そばにいて0992
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 拗ねたつくしを布団から誘き出すことに成功して、司の髪がつくしの手によって乾く頃には彼女の機嫌も直っていた。
 「…ふっ」
 思わず失笑した彼の笑い声に気がついたらしいつくしが、ドライヤーのスイッチをオフにしつつ、怪訝に首を傾げる。
 「なに?」
 「…あ?」
 「今、笑ったでしょ?」
 子供みたいにコロコロと気分を変えて、あれほど恥ずかしがって怒っていたはずなのに、そんなこともあっさりと忘れて楽しそうな彼女の単純さがおかしかったのだと、正直に言ったらきっとまた彼女の機嫌を損ねてしまうのだろう。
 「いや。……なんか楽しそうだと思ってよ。お前って基本けっこう世話好きだよな?」
 「うーん、そうかなぁ。特別世話好きとまでは言わないけど、まあ、確かにこうやって司の髪を乾かしたり、何かしてあげるのってイヤじゃないかなぁ。うん…楽しいかも。司の髪って、凄く癖が強くて真っ黒だから固そうなのに、こうやって触れてるとフワフワで手触りがいいよね」
 「そうか?」
 こうやって―――と、つくしが司の髪の中にくぐらせていた手で、彼の髪をふわりと梳く。
 …すげぇ気持ちいい。
 「ペットとか飼ったことない…っていうか、記憶にはないけど、なんかきっとこんな感じなのかなぁ、とかね」
 「……………ペット」
 「あ、悪い意味じゃなく」
 司の微妙な表情に、つくしが慌てて訂正する。
 ペット扱いにはいろいろ思うところがあったけれど、しかし、つくしの口から出た‘ペット’の一言に、黙り込んでしまう。
 「司?」
 「いや……まあ、お前が楽しいなら、別になんでもいいけどよ。それよりお前も風呂入ってこいよ。時間はまだそんなに遅くねぇけど、けっこう今日は移動移動で疲れたろ?」
 「ああ……うん」
 ニューヨークにいる時のように、どこか追い詰められた必要さで勉強に励んでいるわけではないが、それでもここ数日の、司の仕事に付き合っての移動に次ぐ移動は、体力的にひどく大変だったに違いない。
 …そのわりには、こっちに居る方が顔色は良さそうか。
 司もつくしが、道明寺家に馴染めていないことは気がついていた。
 しかし、それがどうしてなのか、どうしてやれば彼女にとっても良いことなのか、生まれながらにそのつくしにとっては居づらい場所で生まれ育った司には理解してやりがたい部分でもある。
 「なぁ」
 「うん?なぁに?」
 ドライヤーのプラグを抜いて、洗面室に向かいかけていたつくしが司の呼びかけに、なんとはなしに振り返る。
 「ヤなことや、して欲しいことあったら、なんでも言えよ?」
 「え?」
 「俺に遠慮すんな。どんなことでもしてやるし、手に入れてやる。な?」
 「………うん」
 小さく微笑んで素直に頷いたつくしの顔は、しかし、まったく嬉しそうなものではなく曖昧で、どこか困ったようなものであることが、司の焦燥を煽る。
 彼女はいまだ完全には司を信頼していない。
 その事実に、苦く遣る瀬無い想いが胸に広がってゆくのを、司は感じていた。
 …それでも、俺はっ。




*****




 寝支度を整え、先に布団に入ってしばらくして、司の方も持ち込みの仕事や勉強にひと段落ついたのか、つくしが横になっているベッドの脇へと滑り込んできた。
 彼女がベッドに横になって、かれこれ1時間近く。
 隣に横たわっている彼女が寝ていることを疑っていないのか、起きている時にはそれなりに「おやすみ」の挨拶をしてくれる司も、無言で常夜灯以外の電気を消し横になっただけで特に何も声をかけてこない。
 それでも、彼女が起きていようといまいと、欠かさずしてくるお休みのキスをしようとだろう、彼に背を向けているつくしの体にお負いかぶるようにして、司が身体を伸び上がらせて彼女の顔を覗き込んできた。
 「…んだよ、起きてたのかよ?」
 狸寝入りしていたつもりはないが、それでも寝ていると思っていた司にしてみれば驚いたのだろう。
 目が合ってしまい、わずかに仰け反るようにして身を引いている。
 しかし、何も言わないつくしに小さく苦笑して、優しく彼女の頬に添えた手で彼女の顔を仰向かせると、頬へとチュッとキスを落とした。
 頬に、瞼へ、額へとキスを落とすと、最後に手の甲へ。
 …きっと司みたいな人を王子様っていうんだろうな。
 そんなことを思う。
 どこまでも彼の愛情を感じさせる仕草は甘く優しく、どれだけ彼が自分を愛してくれているのかストレートに伝えてくれていた。
 「明日も早いし、もう寝ようぜ?」
 「……ん」
 唇へも、欲望を伴わない羽のように軽いキスを一つ落とすと、司がベッドへと身体を戻した。
 「フ―――ッ」
 長く細く息を吐き出すと、言葉のとおりに寝るつもりらしく司は目を閉じてしまった。
 いつものように、彼女の身体を抱き込むこともなければ……、以前のように欲望のままにその大きな手を彼女の衣服の中に忍ばせることもなく。
 ―――お前が俺に抱かれてもいいって思えるまで、待つ。
 その言葉通りに。
 今度はつくしの方が、身体を起こして振り返り、司の顔をジッと見下ろす。
 自分が今、何を言い出そうとしているのか、迷う気持ちと恐れと……けれど、そうしなければならないという義務感の間で、つくしは揺れ動いていた。
 「なんだよ?眠れないのか?」
 さすがに彼女の視線に気がついたのだろう。
 目を瞑っていた司が目を開け、自分の顔を無言で見下ろしている彼女の顔を不審げに見上げた。
 「……つくし?」
 唇を噛み締めた舐めて、口を開くことを何度も繰り返してしまう。
 それでも―――。
 眉根を寄せ、身じろいだ司が身体を起こしかける。
 「いいよ」
 「は?」
 「シても……、あたしのこと、抱いてもいいよ」




web拍手 by FC2

関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【愛してる、そばにいて0990】へ
  • 【愛してる、そばにいて0992】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【愛してる、そばにいて0990】へ
  • 【愛してる、そばにいて0992】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク