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「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う④

愛してる、そばにいて0989

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 一瞬、なんの聞き違いかと耳を疑った。
 しかし、ニヤリと笑った司の顔は、冗談や酔狂を言っているようにはとても思えない
 「は?結婚式を今からって…今ああっ!?」
 驚愕するつくしの手首を無造作に握って、さっさと車から引き出し、彼女の手を引き教会へと向かう。
 当然、後続車からSPたちも出てきて、彼らに追従するが、教会の玄関口の手前で、司が手をひと振り追い払ってしまう。
 「お前らは、ここで待ってろ」 
 SPたちが顔を見合わせ、頷きあって、
 「かしこまりました」
教会の周囲へと散開してゆく。
 同行していた秘書も、SPたちに習って玄関口に控えた。
 ズンズンと半ば引きずられるようにして、教会の内部へと足を踏み入れたつくしは、正直、まだ司の本気を掴みかねて、戸惑って、ただ彼の後を付いて歩くことしかできないでいる。
 …だいたい結婚式って言ったって。
 それなりに財閥の要人とその若妻として、司にしてもつくしにしてもそれなりに畏まった格好はしているものの、どう見ても結婚式の衣装という類の服装でもなければ、参列客がいるわけでもない。
 それ以前に、どう考えても司の言う‘結婚式’というのは、彼の気まぐれ、思いつきであって計画されたものではなかった。
 「………お前のイメージしてる結婚式とはまるで違っちまってるのはわかってる」
 そんな彼女の心の声が聞こえたかのように、前を向いていた司が、ボソリと呟きを落とした。
 いつも力と自信に満ちている彼の声とは思えない、どこか頼りなげなごく密やかな声音の囁きは、彼のほとんどない表情と相余ってどうかするとつくしの気のせいだったのではないかと思えってしまいそうなものだった。 
 けれど、……違った。
 「マジ、ごめんな。……籍を入れた時にも結婚式やってやらねぇで、絶対にいつかすげぇヤツやってやるって約束したくせに、まだ守ってやれてねぇし、この先も、いつそういうのやってやれるか、ハッキリと確約してやれねぇ」
 低音の美しい声に混じった確かな苦痛と罪悪感。
 司が、そのことを気に病んでいることに、これまでつくしは気づいていなかった。
 ―――気づいてあげられていなかった。 
 …どれだけ、あたしが見てないところでこの人は悩んできたんだろう。
 辛いことも苦しいところもけっして彼女には見せず、自信満々にいつも彼女を守ってくれようとしてくれる人。
 自分のことに手一杯で、本当の意味で彼のことを考えてあげたことがあっただろうか。
 ギュッと握り締めてくれる大きな手の温もりこそ、彼が示してくれるつくしへの愛の大きさであり、それがどれほど貴重なものなのか、どうしてこれまで気がつかなかったのか。
 司がつくしを見下ろし、切なく微笑む。
 「約束はもちろん反故にはしねぇ。……いつか絶対に俺が力をつけて、ちゃんともっとすげぇ豪勢な結婚式やってやる」
 「司」
 「お前の父ちゃん、母ちゃん、弟を呼んで、お前にぴったり合う超イかすウェディングドレスをオーダーして、お前を世界中の誰よりも綺麗で、輝いてる幸せな花嫁だと誰もが賞賛するような結婚式ってヤツをやってやるから、今はこれで勘弁してくれ」
 《Je peux?(※仏語 よろしいですか?)準備ができたら、もう少し、祭壇の前にお進みください》
 かけられた言葉にハッと前を向けば、いつの間にか祭壇の前にまで来ていたのか、先ほど司と連れ立って教会の入口までやってきていた神父が柔らかな微笑みを浮かべ二人を見ていた。
 こじんまりとした建物自体は歴史を感じさせてどこか古ぼけてくすんでいたけれど、不似合いなくらいに豪奢なステンドグラスの大窓から差し込む光が神々しく、彼らを祝福してくれている。
 …綺麗。
 たとえたくさんの参列者に祝福されずとも、美しい衣装を纏い荘厳な音楽に迎えられずとも、幸せな結婚式だとつくしには思える。
 司の真心と彼のつくしへの愛情が、どんな豪華な結婚式よりも、彼女にとって素晴らしく温かで、……美しいと心に染み入った。
 正規の手順を踏んだものではなかったから、あくまでもママゴトの延長で、何もかもがイレギュラーなものだったけれど。
 どう話をつけたのか、本来は神父が執り行う式の一切は省略されて、神父はただ立ち会いのみを依頼されたらしい。
 あるいは、厳格な手順を踏んだ式をしか執り行わない神父が、許可を出したのもそんな理由からだったのかもしれなかった。
 ‘結婚式’とは言われたものの、本当にブツけ本番、我流の簡略化された儀式に、どうすればいいのか困惑しているつくしの、すでに結婚指輪をしている手を握り締めた司が、神父ではなく、つくしへと向き直り彼女だけを見つめ、
 「誓うぞ」
一言宣言して、神への誓約ではなく、彼らしい愛の言葉をつくしへと告げる。
 「好きだ。愛してる。俺はお前にめちゃくちゃ惚れてる。たとえお前が俺をどう思っていようと、……どんなお前でも、俺の気持ちは絶対に変わらない。だから、俺を見てくれ、…どこにも行くな。この命ある限り、一生お前を想い続ける。今度こそ俺がお前を守る、誰よりも大事にして幸せにしてみせるから」
 「司」 
 「俺は信じてもいねぇ神になんかじゃなく、お前自身に誓う」
 なんと答えて良いのかわからない。
 彼の熱い想いに答える言葉がなかった。
 ぼわっと頭に熱が集まって、胸がドキドキと高鳴る。
 ―――こんなにも美しく、魅力的な男に熱烈な愛の言葉を告げられて、何も感じずにいられる女などいはしないだろう。
 つくしはけっして石で出来ているわけでもなければ、カラカラに枯れてしまった老婆でもないのだから。
 …あたしは。
 「あたしは………っ」
 …あたしも好きだと言ってあげたい。
 愛してる、ずっとそばにいると言ってあげたいという情動が湧き上がる。
 それなのに、心の奥底に凝るわだかまりをどうしても拭い去ることができないのだ。
 彼の愛を信じられないわけではないのに、それなのに、心のどこかで司を信じてはいけないと叫んでいる女の悲鳴が聞こえていた―――ずっと。
 その声は、彼女が‘目覚めた’その時からずっと心の奥底に住み着いて、それでも少しづつ遠ざかり、小さくなってはいたけれど。
 それでもけっしてなくなることはなかった。
 そして、おそらくこの先も。
 …昔のことを思い出せれば。
 きっとこの不可解な猜疑心と不信を消し去ることができるのに。
 サラリと優しく髪を撫で下ろされ、いつの間にか俯けてしまっていた顔をハッと上げ、司を見上げる。
 …いけない。
 司が誓ったのだから、自分もなにかを言わなければならないに違いない。
 しかし、たとえ無神論者であるにしても、今この場で偽りの誓を口にするつもりにはとてもなけれなかった。
 「あの、……あのっ」




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