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「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う④

愛してる、そばにいて0988

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 本来ならば望むまま、やりたいことだけをやり、どんな贅沢や娯楽に耽って遊び暮らすことも許された身の上だというのに、つくしゆえに、生まれながらに用意された運命に逆らい、いらぬ苦労を背負って。
 もしかしたら、これまで彼は努力らしい努力をしたこともなかったかもしれない。
 …赤ちゃんのことだって。
 きっと辛かったのは、つくしだけじゃない。
 むしろ、赤ん坊の誕生を望み、彼女との間に子供を欲しがっていたのは司の方だったのだ。
 「………俺、絶対に離さねぇから」
 「え?」
 顔を伏せたまま、てっきり眠ってしまったのかと思っていたが司がボソリと呟く。
 「お前がまだ、俺のことを愛せてないのは俺もわかってる」
 「……っ」
 初めて言い当てられた自分の気持ちに息を飲む。
 いや、おそらく司も以前から感じていただろう。
 いまだ彼を愛することができていない彼女を。
 大きな手が自分の髪を梳くつくしの手を探り、ギュッと掴み寄せた。
 「それでもいい。……俺がお前を好きなんだ。惚れてんだ」
 「つ…かさ」
 降り注ぐようにして与えられる彼の愛の言葉は、いつも熱くて真摯で…なぜか切なくて。
 何度繰り返されようとも、けっしてサラリと流すことなどできないほどに重く、彼は真剣だった。
 「お前のためならなんでもしてやる。どんなことでもしてみせる。……けど、お前を逃がしてやることだけはできねぇ」
 「……………」
 「だから、今度こそ、待つよ。お前が俺に惚れるまで、俺に抱かれてもいいって思えるまで、待つ」
 コクリと唾を飲み込み、つくしは言葉を探す。
 「本当はお前が俺に抱かれたいって思えるまでって、そう言えればいいんだろうけどな。俺はお前が欲しい、お前に触れたい…抱きたいのが本音だから、そんなカッコいいこと言ってやれねぇ」
 司の顔が自嘲に引き歪む。
 司の言葉はあまりに身勝手なのに、それなのに。
 …あたしは。
 「ごめんな、こんな俺で。こんなにもお前が好きで。………でも、愛してる。お前だけを愛してる。だから、ずっと俺の傍にいろ、どこにも行くな」




*****



 司の出張に同伴して7日目。
 日程的にはちょうど半分を過ぎたあたりになるが、ここに来てつくしも初めて司のビジネスの一貫に関与させてもらえた。
 当初からの予定どおり支社での講話会にグループ専務夫人として同伴した、帰りの車中。
 わかっていたことだが、
 …やっぱり凄い浮いてたよね。
 いつものように生まれがどうの、庶民出身がどうのというよりも、おそらくつくしの年齢と外見的なもの。
 司の方は西欧人の中に混じってさえ、18才に見えない容貌の持ち主だったからそれほど違和感はなかっただろうが、種々様々な人種の中にあってさえ特に童顔なつくしは、そんな会社の重役夫人にはとても見えなかったのだろう。
 中には、‘え?まさか小学生?’、そんな声が聞こえて思わず視線を向けた先、声の主と視線があってしまって双方気まずい思いをした。
 その人物の話し相手が‘と、東洋人は若く見えるからっ’そんなフォローを入れていたが、若く見えるだけではなく実際につくしは年齢的にも若いのだ。
 …16、17の小娘が交じるには、かなり身の程知らずな場所だったよね。
 司の手前、誰も大きな声でいうことはなかったが、しかし、自分のせいで司までもが子供扱いされ侮られたのではないかと、つくしはずっと気にかかっていた。
 過ぎたことはいまさらではあったけれど。
 それでも、彼らの話しているフランス話が大まかであっても聞き取れたことは嬉しかった。
 かなり訛りもひどく、必ずしも正確に聞き取れていたとは限らないが、つくしの挨拶も概ね通じていたようで、これまでの努力が成果となって報われた気さえする。
 「……あ」
 通りかかった街路の向こう、こじんまりとして歴史を感じる美しい教会に目が惹かれた。
 ちょうど結婚式を終えたところなのか、花嫁と花婿の姿は見えなかったが、開け放たれた教会のドアから、参列客なのだろうわりにフォーマルな服装の人々がゾロゾロと出てくるところだ。
 …なんか、スーツの人もいるけど、けっこうカジュアルな服装の人もいるよね?
 同じお揃いのワンピースを来たブライズメイドらしき女性陣もいるので間違いはないと思うが、微妙に迷うところではある。
 「なに?」
 「へ?」
 送迎の車に乗り込んで以来、案内役兼現地での秘書とパソコンを前に話し込んでいた司に声をかけられ振り返ると、打ち合わせも一段落ついたのか、秘書はパソコンに向き合い、司は車窓の向こうに見入っていたつくしの後ろでいつの間にか彼女が眺めていた窓を覗き込んでいた。
 「ずいぶん見入ってっけど、なんかおもしれぇもんでもあったか?」
 「…あ~、面白いってわけでもないんだけど、あれ、結婚式だよね?」
 「かな?」
 今日は日曜日ではないが、もしや日曜礼拝のような催しかもしれないとも思っていたのだが、司に同意される。
 「そっかぁ」
 …どうせなら、花婿さんと花嫁さんが出てきたところとか見たかったかも。
 そんなことを思って、特にこだわりなく、再び窓の外の景色へと向かう。
 人々の波が道路を横切って、車の横を通り過ぎてゆく。
 司もヨーロッパで出くわしたそんな慶次に気持ちが惹かれたのだろうか。
 賑わいざわめく人々の様子を、ぼんやりと見つめていた。
 「……よし」
 唐突に司が掛け声をかけ、シートに凭れていた身体を起こしたのを、つくしが怪訝に振り返る。
 「司?」
 「おいっ、どっかそこらへんの適当なところで車停めろ」




*****



 『ちょっと待ってろ』という司の背を車の窓越しに見送って、彼が消えた教会の建物を物珍しく覗き込む。
 日本でもそれなりに教会を見かけはするが、やはり本場……常に宗教が人々の心と土地に根付いている場所でのそれは、ずいぶん印象が違った。
 低い建物と長閑な田園風景の中にあって、ニョキッと突き出た建物は、青い空への高く伸びて、大都会の高層ビルの方よりもなぜかより天に近い気がする。
 …あたしはキリスト教徒じゃないけど、それでもやっぱりこういう教会の建物には厳かな気持ちになるよね。
 そんなことを思う。
 ‘ちょっと’という言葉のとおり、そう時間をかけることなく、教会の神父だろう聖職者らしい中年の男性と司がドア口まで出てきて、片手を挙げ神父に会釈をした司が、つくしの乗る車へと戻って来る。
 しかし、後部座席のドアを開けただけで、再びシートに腰を下ろすことなく、つくしへと手を差し伸べてた。
 「来いよ」
 「え?」
 「神父とナシつけてきた。……あそこで、今から、二人だけの結婚式をしようぜ?」




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